KPI・OKRで納得感のある評価を実現!部下の主体性を引き出す人材マネジメント【浜田氏連載その3】
GoogleやFacebookなどでも使われるマネジメント手法をITコンサルタント浜田篤氏が具体的に解説
前回の記事では、タスクマネジメントにおけるKPI・OKRの利用方法やKPI管理シートの作成方法、使い方について紹介しました。KPIやOKRは個人のタスクや進捗を見える化するだけでなく、人事評価や人材マネジメントに活用して、納得感の高い人事評価を実現し個人の成長を促すことも可能です。
今回の記事では、KPI・OKRを人事評価や人材マネジメントへ活用する方法について、続けて浜田氏に伺っていきます。
東京理科大学電気電子情報工学科卒。大手自動車メーカーに就職後、教育ITベンチャーにCTOとして転職を経て個人事業主として独立。スタートアップ企業で培ったシステムのアウトソーシング(外注)ノウハウを活かしてインドの開発パートナーとアライアンスを結び、中小企業のコーポレートページなどの受託開発を中心に行うようになる。さまざまな中小企業経営者の方々と接する過程で、エンジニアのマネジメントや評価、組織設計、ITシステムの事業計画の作り方、といったノウハウに需要があると気づき、現在は経営者向けにITコンサルティングを展開している。
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この記事の目次
KPIやOKRだけでは部下は動かない!
人間はKPIやOKRで目標やToDoを示したからと言って簡単に動いてくれるわけではありません。素直に動いてもらえない場合、KPIやOKRといった手法に問題があるというよりは、コミュニケーションや仕事のアサイン(割り振り)に問題がある場合が多いです。
気持ちよく動いてもらえないケースの多くにおいては、十分な説明や議論がないまま一方的に仕事を振る結果、部下側の視点からするとその仕事の必要性を理解できず、結果納得して業務をしてもらえない状態が起こります。
「プロジェクトの初めや期初にメンバーを集めて、マネージャーが一方的に仕事の概要と割り振りを指示する」といったスタイルになっている場合には、その業務が必要になっている背景なども含めて説明してあげる配慮が必要です。
優秀なマネージャーとして、組織の中で大きな仕事をするためには、メンバーのモチベーション管理も大切です。そのため、部下の感情面でのマネジメントを行っていく方法の一つとして「1on1」を定期的に行うことが重要となります。
組織力を上げる1on1マネジメントとは?
「1on1」とは、文字とおり上司と部下が1対1で面談を行うことです。基本的には、1回あたり10~30分ほどで、週1回、隔週に1回、月に1回など、短いサイクルで定常的に行います。シリコンバレーなどでも行われているマネジメント方法で、日本でもヤフーなどの企業で実施されています。
個別面談とよく混同されますが、個別面談は不定期または半年に1回、年に1回といった形で行われますし、多くは評価や進路に関わる面談です。1on1の面談は、基本的に部下の現状を把握し、能力を引き出し、抱えている問題があれば解決をサポートするために行います。
上司と部下との間で定期的なコミュニケーションと信頼を作り出し、業務やモチベーションをしっかりとマネジメントするために1on1は有効です。前回紹介したKPI管理シートをそのまま1on1面談での資料としても使うことができます。
この1on1面談の中で、KPIやOKRの達成に向けた要素の洗い出しやToDoの洗い出し、担当者のアサインも行っていくことで、モチベーション高く業務に取り組んでもらうことができます。
タスク依頼は1on1で行うのが望ましいのはなぜ?
マネージャーは部下に上手く仕事をアサインしてチーム全体として成果を出すことを期待されます。ただし部下の一人一人の能力は異なり、得意不得意もありますので、一方的に仕事をアサインするよりは、部下の能力やモチベーションが高まりやすいところにアサインしてあげた方が、結果的に全体としてのアウトプットが良くなります。
部下は立場上、マネージャーに意見を言いづらいので、彼らの能力をしっかり引き出す為にも定期的に一人一人の感情や考えを汲み取る配慮が必要になります。1on1に限らず、たまにはランチなどに誘ったりして普段から話しかけたり相談されやすいお兄さん、お姉さん的な立ち位置を目指すのも良いと思います。
1on1でタスク依頼するための流れ
具体的なタスクの依頼方法としては、次のような流れを意識します。
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メンバー個人の視点から、何がKPIの達成に貢献しそうかを考えてもらう
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マネージャーは事前に出てくるアイデアや行ってほしい業務内容を事前に考えておき、用意したものと同じアイデアが出てきた場合は、優先的にその業務を依頼する
このような流れを作ることで、部下は「自分の考えたソリューションがマネージャーに受け入れられた」と感じ、業務を自分に課せられたミッションとして受け止めやすくなります。また、部下が自分の意見を受け入れてもらえたことで、次回以降、自ら進んでアイディアを出して主体的に動いてもらえる風土を作って行くことができます。
もしマネージャーが事前に考えていなかったアイディアが出てきた場合、効果がありそうなら採用して業務としてアサインするのも良いでしょう。良いアイディアが出てこなかった場合は、タスク量などを考慮しながら業務をアサインします。
このようにして、KPI管理シートの項目が埋まったら後でシートをチームメンバー全員と共有します。ちなみにこのKPI管理シートはマネージャー以上の役職の人も閲覧できるものとなります。
KPI管理シートの運用方法
KPI管理シートを使ったマネジメント方法を見ていきましょう。
KPI管理シートを共有し、実際に業務が始まったら、進捗に応じてシートをメンバーに埋めてもらいます。1on1面談の機会を定期的に設け、進捗や困りごとなどを確認し、必要なサポートを提供していくとよいでしょう。
ただし、手取り足取りすぎても部下は育ちませんので、彼らに主体的に考え、行動するよう促すことも大切です。また、成果物のチェックを一緒に行うのも部下の成長に効果があります。
KPI管理という意味では、すべての行動を数字で管理できるのが理想です。営業マンのアポの獲得数なら確率がある程度決まっているため、「何件電話した?」「7件です」というようなマネジメントができます。
しかし、改良型の商品ではなくゼロからの新商品開発などでは、完全に数字で管理できない為、その場合はOKRで幾つのKey-Resultをこなしたかで管理してあげた方が良いでしょう。ある機能を10時間でできるだろうと思って開発を始めても、やってみたら20時間かかってしまったり、やってみて5%の効果を見込んでいたが0.5%しか上がらなかったりということもあるからです。
部署によってKPI管理が良いか、OKR管理が良いかは異なるので、その運用方法に関してはマネージャーより上の方と相談して決めましょう。ガチガチにこれらのフレームワーク通りに運用するのが大切な訳ではなく、あくまで会社が事業を大きく成長させていくことが大切なので、会社に合わせて運用しやすいように少しアレンジを入れることも大切です。
評価とフィードバックにも使えるKPI・OKR
KPIやOKRを評価やフィードバックに使うための方法や、達成度やモチベーションアップにつなげるための方法を見ていきましょう。
KPIの実績を基準にした納得のいく評価とフィードバック
部下を評価する時には、タスクの種類や作業量、効率的に業務を進める工夫などを、KPI管理シートを見ながら評価します。KPI管理シートによって、その実績が見える化されているので、実績を基準にした評価が可能です。
これにより、マネージャーは上司に対しても部下1人1人に対しても客観的な説明ができるため、評価に対する納得感も高まります。普段から1on1のコミュニケーションを続けていれば、フィードバックも部下にとって受け入れやすいものになるでしょう。
同時に、部下たちのKPI管理シートの項目の達成状況を見ればマネージャー自身の仕事ぶりも評価しやすくなります。マネージャーのマネジメント力がKPI管理シートに達成率として表れるからです。
部下が円滑に仕事を進められるようにコミュニケーションとサポートを行うことが、マネージャー自身の評価に直接的に反映される仕組みになるため、自然とマネジメントも丁寧になります。
数字で見れない周囲との協調性や 業務への姿勢などの評価をどうするか
定性的な要素についても評価軸に入れてOKです。ウエイトの付け方は業種や会社のカラーによってバランスを上手く調整するとよいでしょう。ただし、基本的には会社というのは営利組織です。そのため、そういった要素よりも、KPI達成につながる成果の比重を少し重めにするとよいでしょう。
また、KPIやOKRの達成度は大切ですが、部下も一人一人向き不向きがありますので、組織全体の目標達効率をあげる為に、一人一人のパフォーマンスを発揮しやすい仕事をできるだけ割り振ってあげることも、マネージャーの大切な役割です。
最近であれば、四半期ごとに、上司・部下・部署の枠を超えて感謝している人にメッセージとともに投票するという制度を取り入れることで、KPIやOKR達成度合いに現れにくい部分を評価に取り入れる会社もあります。
票数の多い人を評価したり表彰したりすることはもちろん、投票者の洞察力なども評価点として加えることで職場の雰囲気が良くなります。
KPI達成のおもしろ戦略事例
余談ですが、体育会系でゴリゴリのとある営業会社に美人の庶務さんを雇い、意図的に彼女に営業資料を作らせてみたという話があります。すると「営業資料の結果報告と改善を口実に彼女と話せる」をモチベーションとして営業マンたちが営業活動を頑張ったそうです。
営業マンたちの営業成績(KPI達成状況)に連動した形で彼女にもボーナスが入る仕組みにしたところ彼女も喜んで彼らをサポートする好循環が生まれ、会社がみるみる大きくなりました。彼女は庶務でしたが、実際には営業マネージャーのような働きをしていたという事例です。
一人一人の部下の努力とそれに対する評価はもちろん大切ですが、適材適所に人をアサインできるか否かで会社全体のアウトプット効率は大きく変わります。
KPIの見える化で見えてくるものは数字だけじゃない
- まとめ
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- メンバーの理解と協力、やる気を引き出すために「1on1」でのマネジメントが効果的
- KPI管理シートの作成を通じて部下のアイデアと自主性を引き出す
- 組織や業務によっては、KPIだけでなくOKRを使ってマネジメントした方がいい場合もある
- KPI管理シートを評価に使うことで、納得感の高い客観的な評価や、適切なフィードバックが可能になる
- KPI管理シートによって、部下だけでなくマネージャー自身の仕事も評価できる
今回は人材マネジメントにKPI管理シートを活用する具体的な方法について紹介しました。次回は、KPI管理シートとガントチャートを利用したスケジュール管理の方法について紹介します。
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(取材協力:
Aeru.me株式会社 代表取締役社長 浜田 篤)
(編集: 創業手帳編集部)