リモートワーク先駆者の組織論 ポップインサイト創業者 池田朋弘氏が語る今後のリモートワークの課題

創業手帳
※このインタビュー内容は2020年05月に行われた取材時点のものです。

リモートワークにおける重要課題はソフト面の充実!遠隔だからこそ必要なコミュニケーションを重視した組織論とは

(2020/05/08更新)

ユーザーテスト業界(アジャイルUXリサーチ)でリモートワークを導入した独自のポジションを築いているポップインサイト。同社はリモートワークの取組みで総務省テレワーク100選にも選出されています。
4つの会社の起業にかかわり(2社はメンバー、2社は社長として)軌道に乗せ、その全てにおいてM&AによるEXITを実現してきた連続起業家の池田朋弘さん。東証一部上場企業の役員である傍ら、いち早くリモートワークを実現し、NHKなど様々なメディアでも取り上げられてきました。
そんな池田さんのリモートワーク組織論を創業手帳の創業者である大久保が聞きました。

池田 朋弘(いけだ ともひろ)ポップインサイト創業者
2008年、早稲田大学卒業。
2008年4月、Webユーザビリティのコンサルティングファーム(株式会社ビービット)に入社。
2013年1月、株式会社ポップインサイトを創業。代表取締役CEOに就任。
2013年1月、株式会社セールスサポートにCMOとして参画。
2015年1月、株式会社MIKATAを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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リモートでも正社員にこだわる独自スタイル

大久保:池田さんの創業したポップインサイトはリモートワークで有名で、総務省にも表彰されています。どのような取り組みをしているのですか?

池田:自分はポップインサイトの創業者であり、エグジットしたメンバーズの執行役員でもあるのですが、メンバーズも総務省のリモートワーク100選にダブルで選んでいただいています。
ポップインサイトは「アジャイルUXリサーチ」という、ユーザーテストやマーケティングの会社なのですが、うちで働く人は基本「リモートかつ正社員」です。

 リモート=業務委託

というパターンの会社もありますが、うちはリモートでも正社員でやっています。
リモートに取り組む会社には2つのタイプがあると考えます。

 正社員を含めて全てリモートにしてしまっている会社

 根幹は本社にあり、一部の社員をリモートにしている会社

この2つで、考え方や運用は大きく違ってきます。
会社の事情にもよりますが、弊社の場合は、会社をまるごとリモートにしています。

このスタイルの場合、根底や考え方から変えていかなければいけません。
そのためには、人材の基準も重要です。
間違った人を入れずに理念に沿った人を入れる仕組みづくりが大事だと考え、
様々な尺度で理念に沿った人を採用しています。

リモートでも一体感を生む仕組み

池田:やりとりの基本はSlackですが、年2回はオフサイトミーティングを実施しています。
社内、幹部候補でもリモートです。

リモートでも、最低1回は会っていることが大事です。

親近感がわくかどうかというさびしい問題もあります。

そのため、知らない人と仕事をしているという感じではなく、親近感、一体感をいかに作るのかを考えています。オンライン飲み会もやっています。

コミュニケーション手段で親近感の深さが違う

池田:コミュニケーション手段は方法によって、情報量が違います。そのため、心理学をベースにアプローチするようにしています。

例えば、電話で音声だけというより、ビデオ会議で顔が見えた方が表情が分かるし、そこに雰囲気や質感の情報が加わります。情報量には階層があり、それを上手く使い分けることが大事です。文脈を読み取ったり表情から相手の心理を察したりするには、よりリアルに近い方が情報量が豊富です。
ただし、一度関係を築けば、その後の仕事はチャットでも良かったりします。

リモートワークに必要なマインドとは

大久保:リモートになると、海外のようなプロフェッショナルな働き方になりますか?

池田:そうですね。仕様を言語化して成果を出すという動きが大事になってきます。
何をするかを論理的に整理できていないケースや、雰囲気の中で空気を伝えようとするようなケースでは、リモートでは難しいでしょう。

リモートワークで最も重要なマインドセットは「自分が発信しない限り、誰も自分の状況に気づいてくれない」ということです。
相手が発言する前に気持ちを理解し、対応していくのを良しとする日本式スタイルは通用しません。そのスタイルのままリモートを続けていると、お互いに不信感・ストレスが生まれる状況となってしまいます。
このような状況を防止するには、「自分から発信しないと、状況が誰にもわからない」という前提をチーム全員が理解するのが重要です。

リモートワークに潜むチャンス

大久保:「職場の空気」を読みながら仕事をするよりも、きちんと仕事の定義を決めたほうが、皆にとって良さそうですね。
飲み会文化など、新しい世代に敬遠されるような昭和スタイルでの、背景情報を濃密に共有することは難しそうですし。
ところで、リモートは採用・人材については地理、時間の革命だと思います。
世界中から人を連れてこれるようになったことで、会社の競争力が高まります。

池田:そうですね。
有名なキラキラした会社でなくても採用できるだけでなく、地味な仕事でも人材が集まるという利点があります。
家庭にいる主婦の方でも、働けないがすごいキャリアを持つ優秀な人はいます。
やはり、優秀な人材の確保がホワイトカラーでは大事です。
弊社のような業種だと、実際に生産性が8倍違うということがあります。

自分は人を見るときに、その人が内向派か、外向派かというのを見ています。
内向型と外向型で一番大きな境目は、「エネルギーが一人でいる時に充填されるか、人と話して充填されるかの違いである」と述べた本がありました。

自分は、内向派です。昔は外向派が偉くなる傾向にありましたが、今は内向派が不利ではない、有利になってきたという時代です。
内向派は自分に向かった考えを深めていくため行動力で制限がありましたが、今はリモートワークやビデオ会議などがその武器になっています。
オフィスに出社する従来の働き方が外向派に有利だとすれば、リモートワークは一人でいることでエネルギーを補填できる内向派に有利だといえるのではないでしょうか。

リモートワークだからこそこだわっているスタイル

大久保:より多くの人に、チャンスができたということですね。
起業家は自分が外向派の要素の人が多いので、組織内の内向派を考慮しないケースがあるので注意が必要ですね。
リモートワークではどういうスタイルで仕事をしていますか?

池田:まず、コミュニケーションが大事ですね。本社でやるより、はるかに考えて設計する必要があります。
基本は1on1での面談が重要です。
半期面談も重要です。
また、Slackで日記やブログのようななものを書くことで帰属意識を高める方法もあります。

例えば、徳島県の神山町の人は、旦那と一緒に移住しました。
リモートワークで有名なところです。
北海道の分別の人は家庭の事情でそこにいます。 
昔なら働く場所が限られて、ハイテク、成長産業への就職など考えられませんでした。
しかし、現在うちでアジャイルUXリサーチの仕事をしています。

つまり、時間と条件の分離が可能になったわけです。
今では女性比率6割に上り、採用活動も積極的に行っています。

大久保:移動時間がなくなるのはまさに革命ですね。
東京ー神奈川で1時間、銀座ー勝どきも電車で20分ほどかかりますし。

池田:商談前の受付に座って待っている何もできない謎の時間とか、地下鉄の細切れ時間とか効率悪いです。
ビデオ会議であれば、仮にトラブルでつながらなくても、別の仕事をすることができます。

大久保:社長やサラリーマンが世界中を旅しながら働くということは現実的に困難でしたが、今では現実味を帯びてきていますね。

池田:そうですね。自分も海外で仕事できるのではないかと思っています。

海外からリモートで、より効率的に生産性を上げるために必要なツールのテクニカルな話になりますが、Slackは、透明性高く、議論見れる+独自スタンプ+未読既読 などが良いです。ハングアウトは、横断検索がメリットです。

中心をリモートに!まずは社長から

池田:社長に情報の渦が生まれます。
だからリモートを推進するには社長をリモートにすることです。
トップが変わることで、会社全体が変わっていきます。
習慣や人の流れが変われば、根付いていきますよ。

池田朋弘note

トップから変わろう!

リモートワークがクローズされ働き方が多様化する中で、自らも環境にこだわらず流動的かつ柔軟であることで会社全体が変わり、やがてはそれが当たり前の社会になると語る池田さん。社長が自らの環境を縛り付けず視野を広げていく中で、様々なアイデアやチャンスに出会うのでしょう。

リモートワークが急速化している昨今において、リモートワークは末端の仕事ではなく、会社の中枢を担う仕事へと変化しています。
そんな時代の到来を見通すかのようにリモートワーカーを社員として採用し、次々に新たな組織を生み出してきた池田さんの話には、リモートワークを有効活用するために見習いたいことがたくさんありました。

創業手帳冊子版では、様々な業種や働き方について起業家や専門家のご意見などを紹介しています。そちらも併せてご覧ください。

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