「飲食業は、コンセプトがカギ」 マグネティックフィールド山本氏直伝「飲食店成功の秘訣」(インタビュー後編)
確かな知識と勇気を持てば、良い結果が待っている
(2017/09/19更新)
Jリーグのサッカー練習生から、25歳で実家の酒屋を継ぎ、日本酒を楽しむ立ち飲みバー「純米酒専門YATA」出店と、異色の経歴の持ち主の山本将守氏。後編では、これから飲食業を始める人に向けて、熱いアドバイスをいただきました!
前編はこちら→サッカー選手から酒屋さんへ。「純米酒専門YATA」山本将守氏が実践する「プロの仕事と経営者の本質」(インタビュー前編)
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株式会社マグネティックフィールド代表取締役
元サッカー選手という経歴の持ち主。25歳で家業の酒屋を継ぐと、酒販業の傍ら山本自身が「第4回世界 きき酒師コンクール」でファイナリストに選出されるなど日本酒業界内でも注目を集めている。
信念があれば非合理的は合理的に変わる
山本:一番重要なのは、お店の空間・コンセプトです。お店を店長に私物化させませんし、お客様にも私物化させません。この空間を守るのが僕の仕事です。度を超えて飲み過ぎた方や、コンセプトに合わないお客様がいらっしゃったら、丁重にお断りしています。
「それで喧嘩になったりしませんか?」ってよく聞かれるんですが、徹底的にコンセプト作りをしているので、お客様は「ここで断られたらしょうがない」って思ってくれるようになりました。
絶対にクオリティの高い人、人としてのレベルが高い人を呼び込むべきだし、そういう人が集まると出会いもおしゃれだし、お店自体のブランディングになります。徹底的に自分たちの信念を貫いてきた結果だと思っています。
名古屋KITTEにオープンしたときは、「なんで日本酒をタップ(※クラフトビールのようなサーバースタイル)で売るの?合理性あるんですか?」ってよく言われました。タップにした理由は至って単純で、「カッコいいから。ワクワクするから」なんです。徹底的にコンセプトを貫いていった結果、自分たちがカッコいい・ワクワクすると思ったものはお客様が我々に求めているものだということが分かっていたんです。
その結果、名古屋KITTE店は超人気店になりました。周りの人が非合理的に思っても、信念を貫けば合理的になるということですね。
山本:そうですね。
例えば、先ほど話した名古屋KITTEは、お酒をケグ(※金属製のサーバー)に詰め替えて量り売りしています。
実は酒税法では「詰め替え」っていう売り方と「量り売り」っていう売り方の2種類があって、エンドユーザーに出す時の表示項目などが変わります。
今回は詰め替えて、量り売りするんですが・・・どっちの売り方にすればいいのか分からないんです。
そこで、量り売りと詰め替えの違いについて、税務署の方と意見交換をした後に、お店をオープンすることになりました。
先ほども言いましたが、実はこういうやり取りってすごい大事なんです。
直接話して情報を得ることで僕は勉強できるし、一つ一つのことに対して、周りの他人の価値観に影響されずに、自分のやりたいことをやることができます。
僕は、「自分のやりたいことをやるためには、人の価値観に頼らずに自分の価値観で生きていけ。」と常々言っています。それに左右されたら、結果が悪かったら人のせいにしちゃいますから。
飲食店を始める時は、コンセプトと信念が重要
山本:日本酒を取り入れる場合は
- 日本酒を売りたいのか
- 料理を売りたいのか
- どっちも売りたいのか
この3つに分かれます。
日本酒を売りたい場合は、それに合う料理・空間を用意しなきゃいけないし、料理を売りたいんだったら、料理に合う日本酒・空間を用意しなければいけません。同じ日本酒をテーマにしても、揃えるものは全然変わってきます。外食産業全体に言えることですが、コンセプトというものはその後の方向性を確定させるものですので、しっかり考えて決めないといけませんね。
例えば、「日本酒が流行ってきたから、日本酒を扱ってみようか」っていう感じで、流行を上手く取り入れていくこともテクニックですが、弊社は人に味を伝えたい、うまさを伝えたい、感動を伝えたいっていう信念があるので、流行に流されないコンセプトを作っています。
今はコンセプトがいい加減なお店が本当に多いです。
飲食店を始めるなら、お金の計算とかよりも、まず先に「何を伝えたいのか」、「その店を持って何がしたいのか」を考えてほしいですね。
山本:唎酒師は最低限の資格だと思います。先ほども話しましたが、SSIは公平な立場で教えてくれるので、それを提供者として覚えるのは当たり前です。本当に勉強したいなら、まずは公平なところで勉強するのは価値があるんだと思います。僕がもう1回最初から勉強したとしても、やっぱりSSIですね。
山本:今、自分が見ているところだけでなく、もっと様々な角度から物事を見ると、思わぬところからアイディアが生まれてきます。
日本酒の場合ですと、銘柄や味だけでなく、提供方法を考案することでも新たな可能性を見出すことができます。
そうやって培っていった知識をフル活用して、みんながワクワクするようなお店を創っていくことができたら良いですよね。確かな知識で勇気を持ってやっていけば、きっといい方向に転がると思います。
(取材協力:株式会社マグネティックフィールド/山本将守)
(編集:創業手帳編集部)