実際にあった話!ボランティア・インターン募集で労働法違反?短期労働者募集とボランティアの境界線
インターン・ボランティア募集でチェックしておきたいポイント
会社でボランティアやインターンを募集し、活用するケースもあると思います。しかし、募集条件を間違うと、無報酬での短期労働者募集と誤解されかねないこともあることを知っていましたか? 実際にあった話を基に、榊社労士に解説していただきました。思わぬ落とし穴に落ちないように注意しましょう。
東京都立大学法学部卒業。2011年、社会保険労務士登録。上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、ベンチャー企業に対しては、忙しい経営者様が安心して本業に集中できるよう、提案型の顧問社労士としてバックオフィスの包括的なサポートを行っている。創業手帳ほか大手ウェブメディアに人気コラムの寄稿多数。『日本一わかりやすい HRテクノロジー活用の教科書』(日本法令)を2019年上梓。
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この記事の目次
インタビューへの同席、そして取材メモを無償で取ってもらうのは違法?
ABC雑誌社では、著名人であるXYさんのインタビューを予定していました。ABC雑誌社の社長は「インタビューに同席したい人や、会いたい人もいるに違いない。一般読者から取材同席する人を募集しよう」と考え、twitterで「XYさんの○月○日のインタビューの手伝いのボランティア・インターンを募集します。ただし、同席する以上はその場でメモをとるのも手伝ってね!」として同席の人材を公募しました。
社長は「我ながらグッドアイディア!」とご満悦でしたが、読者から下記の指摘がありました。
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「本件ですが、民間企業における無報酬での短期労働者募集と思われます。
- 日時・場所の拘束時間の指定
- 成果物の提出の義務付け
等があり本募集が労働基準法に照らして違法ではないでしょうか?」
社長の善意で始まったボランティア募集が一転、労働基準法が指摘される事態になるとは…。いったいどこが悪かったのでしょうか?
榊社労士に解説していただきます。
社労士がポイント解説!インターン・ボランティアの募集はここに気をつけよう
榊:結論から申し上げて、このケースは労働基準法違反には該当しないと考えます。ただし、注意するべき点があるので解説していきます。
また、今回、同席およびメモを依頼するのは、一般の読者の想定であり、プロの業務委託・フリーランサーなど業として行っている方ではないという前提で回答します。
まず、読者の方が指摘しているポイントについては、以下の理由で、労働基準法違反ではありません。
・日時場所、拘束時間の指定
⇒インタビューという業務の性質上、日時を決めるのは社会通念上当然のことであり、使用者が労働者に出勤時刻を決めるというような指揮命令とは根本的に異なるからです。
・成果物の提出の義務付け
⇒議事録の取り方を貴社が細かく指定したり、万が一、提出を怠った場合に、懲戒処分をしたり、損害賠償をするといったような、法的な意味で義務付けをしているわけではなく、あくまでもフラットな関係において、インタビュー係、記録係という、役割分担での協力をお願いしているスタンスだからです。
また、その他に、合法的なボランティアであることを補強する根拠として
・「取材の記録係」という個別具体的なタスクを依頼しているのであり、雇用契約のように、包括的な指揮命令権を取得しようとしているわけではないこと
(仮に、現場で追加の業務や業務内容の変更を依頼されたとしても、本人には断る自由がある)
・著名人に会えること、著名人のインタビューに臨席できること、という貴重な体験を提供する対価として、議事録のお手伝いをお願いしているのであり、考え方によっては、「体験の提供」としてお金を頂いてもおかしくない案件であること
(単なる事務的な会議の議事録取りとは次元が違う話)
などが挙げられると思います。
なお、注意点としましては、募集時に「アシスタント」や「選考」と言った言葉を使ってしまうと、表面的に労働者の募集に見えてしまうと誤解を招くかもしれません。もう少しくだけた表現で取材同行者の方を募集すれば、今回のように誤解をする人が出るのを避けられるかもしれないですね。
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(取材協力:
ポライト社会保険労務士法人代表 榊 裕葵)
(編集: 創業手帳編集部)