給与計算のクラウドソフトでこんなに楽になる!導入のメリット解説【榊氏連載その3】

創業手帳

社会保険労務士の榊 裕葵氏が徹底解説!スタートアップ/リモートワークのための人事労務×テクノロジー超活用術

これまでの2回にわたって、”HRテクノロジー(クラウドのシステム)”に詳しい社会保険労務士の榊裕葵氏が、クラウドのシステムの進展と人事労務管理の業務効率化について説明してきました。

コロナの影響がまだまだ終息したとは言い切れない中、人事労務管理のリモート化を実現するこのクラウドのシステムは、ますます重要性を増しています。今回は、人事労務管理業務においてもっとも煩雑な作業をともなう給与計算業務について取り上げます。

給与計算は、「勤怠」「支給」「控除」の3つのステップで計算されます。それぞれ、勤怠の実態を正確に入力、総支給額(額面)を計算し、社会保障費などを控除して手取りの給与を算出します。このプロセスへの、クラウドソフトの活用がどのような効果をもたらすのかについて、解説していきます。

榊 裕葵(さかき ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 代表
東京都立大学法学部卒業。2011年、社会保険労務士登録。上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、ベンチャー企業に対しては、忙しい経営者様が安心して本業に集中できるよう、提案型の顧問社労士としてバックオフィスの包括的なサポートを行っている。創業手帳ほか大手ウェブメディアに人気コラムの寄稿多数。「日本一わかりやすい HRテクノロジー活用の教科書」(日本法令)を2019年上梓。

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勤怠管理の集計・取り込みが自動に!

前回までの連載でも少しふれましたが勤怠管理もクラウドソフトによって集計されていれば、「社員の打刻→給与計算ソフトへの取り込み」が自動的に行われます

API連携やCSV読み込みなどにより、月次の勤務状況を給与計算ソフトに取り入れることができるため、担当者による打ち込みなどの労力が軽減されます。勤怠管理と給与管理のソフトが同じ会社のものであれば、もっとシンプルな設定での取り込みが可能となるでしょう。

現時点(2021年1月時点)では、給与計算のクラウドソフトといえば、freee、マネーフォワード、ジョブカンが3大勢力と言われています。3社ともに背景が異なり、freeeは、初期から勤怠管理から給与計算までをトータルで対応することを目指していました。マネーフォワードは給与計算に強いものの、徐々に勤怠管理サービスも進めてきています。ジョブカンは勤怠管理から出発したサービスですが、給与計算ソフトリリース後は急速に熟成を進めました。現在は、3社とも自社ブランドのサービスで人事労務領域のバックオフィス業務を網羅することを目指しているようです。

もちろん、3社ともに他社の勤怠管理ソフトとも連携できるようになっています。freee、マネーフォワード、ジョブカンは、それぞれAPIもしくはCSVの連携方式に基づき他社の勤怠管理ソフトと連携しています。

「社員の給与マスタ(給与の基本情報)」変更の負担減!

給与計算の業務で残業代を加えたり、欠勤を控除したりなど「金額」の算出を、手動で行っている会社はもうあまりないかと思います。デスクトップPCなどにインストールして利用するソフトウェアでも計算の作業は自動化されています。

金額の計算は効率化が進んでいますが、例えば昇進・昇給など、社員の給与マスタに変更があったときには、担当者がソフトがインストールされているパソコンからログインして行う必要があり、負担や工数がかかっていました。

一方、クラウドソフトを導入している場合は、権限さえあれば誰でもどこからでもこの社員マスタへのアクセスができます。したがって、昇給などで大きく社員の情報が変わるときでも、複数人で作業が分担できるほか、同時並行での作業も可能となります。

また、通勤手当、歩合給、出張手当など、それぞれの経費やインセンティブについてもそれぞれの計算担当者が社員マスタへアクセスして入力できるので、担当ひとりが入力する時のようにボトルネックになりません。

社員マスタの更新や手当など、入力作業の負担が分散するので効率化が進むのです。

ただし、複数の人が同じデータを更新する場合は、履歴の管理を徹底することが必要です。誰かが途中まで更新した内容を上書きしてしまったり、上書き前の古い情報に戻してしまったりと、修正に手戻りが発生してしまうからです。

こうしたリスクを防ぐために、エクセルなどで更新管理表を作成しておくとよいでしょう。また、更新情報を整理する担当と、マスタを更新できる担当と範囲を明確にわけておくのもよいでしょう。

なお、さきほど給与計算の「金額計算」は自動化されていると言及しましたが、途中入社や退職の給与の日割り計算など、まだまだクラウドソフトでも対応しきれていない作業があります。クラウドソフトは、日々進化をしていますので、近い将来にこうしたイレギュラー対応についても対応できるようになると信じています。

保険料率の変更があっても自動更新!

給与計算でも最も注意が必要なのは、各種保険料率や税率の変更への対応ではないしょうか。原則として、健康保険料、介護保険料、雇用保険料、源泉所得税率は、毎年見直しや更新が行われています。インストール型の場合は、自分で修正したり更新プログラムをダウンロードする必要がありましたが、クラウドソフトの場合は、自動的に行われます。対応を忘れて古い保険料率のまま支給してしまう心配がありません。また、社会保険料は、毎年4月、5月、6月に支払われた給与の平均額に応じて、9月分から1年間の保険料が決まります。年の途中に昇給などがあり、平均額との差が出てきた場合、報酬額が変わったと判断し、保険料を変えるための手続きをして、システム上も個別に設定を変えなくててはいけません。

さらに、月額変更届という書類年金事務所に提出する必要があります。ただ、昇給がこの保険料改定を必要とする「随時改定」に該当するか「判断」をするのが難しかったのですが、クラウドソフトでは、該当する社員を自動で抽出してくれる機能がついています。属人的な判断が不要となり、判断する労力が大幅に削減されます。

給与明細書はWEBで確認!

給与計算が終了したら、支給日までに明細書を「配付」するという作業があります。手元に「紙」ベースで届けなければならないと思われがちですが、労働基準法なども社員が確認できるよう「交付」せよとしているものの、必ず書面であることまでは求めていません。WEBページでの交付も、社員の同意があれば可能となります。

クラウドソフトを活用すれば、社員個人ごとのページを作成することができます。個人ページにて支給金額を表示することで、給与明細書を紙で配る必要がなくなり、負担の軽減になります。

まとめ

給与計算のクラウドソフトの活用は、これまで手動に頼っていた部分の多くを自動化するため、効率が大幅に向上します。勤怠管理や給与計算は、毎月の作業になるので負担の軽減は会社にとっても重要課題と言えます。積極的にテクノロジーを取り入れることで新たな人的資源配分をもたらす効果が期待できます。

一方で、新しい仕組みを導入する際には、必ず「初期設定」という壁があります。これは、前回でもふれたように避けることはできないので、一時的に工数をかけて対応するとよいでしょう。ただし、給与計算用の社員マスタを更新するのに一から作成する必要はないでしょう。CSVを活用するなど、既存の給与システムからデータを効率的にやりとりできる方法があるはずです。分からないときは、周囲やサポートとして頼れる人に聞くとよいでしょう。

初期設定さえクリアしておけば、その後の運用では上記にでも言及したように「楽」になることがたくさんあります。

「楽」になるのは、人事担当者にとって嬉しいことでもありますが、それは新たな業務の「時間」が生まれることでもあります。会社にとってみれば生産性があまり高いとは言えない「作業」に人をしばりつけずに、社内の人材育成やモチベーションアップ施策の検討など、もっと生産性の期待できる業務への転換も可能になります。この機会にまずは、人事労務周りの業務において何が負担になっているか、整理するところから始めるのもいいでしょう。

次回は、ルールやマニュアルの整備についてご紹介します。「さあ。クラウドソフトを導入しよう」となっても運用がままならなければ意味がありません。効果的な運用のためのルールやマニュアル作りについて解説します。

(次回につづきます)

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(取材協力: ポライト社会保険労務士法人代表 榊 裕葵
(編集: 創業手帳編集部)

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