ドローン業界は今後どうなる!? 国内ドローンの雄「テラドローン」に聞いてみた

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年03月に行われた取材時点のものです。

快進撃のテラドローン。自動でチェック・修理も……こんなに進んでいる!


構造的に「これから必ず伸びる業界」というものがあります。

以前であれば、インターネット、EC、シェアリングエコノミー、フィンテックなどがあり、確実に市場が伸びて多くの上場会社・巨大企業ができました。

その最先端であるドローンは、今後の有望市場です。今までは陸での移動が当たり前でしたが、これからはドローンが飛んでいって、物流や作業などで活用できるようになります。

実際に、アメリカではAmazonがドローンを使った「空中倉庫」の特許を出願しており、中国ではドローン物流が現実に使われ始めているのです。

今まで人間が「時間」「お金」「交通渋滞」を乗り越えて移動していたものが、ドローンによって効率化される効果は計り知れないでしょう。

ドローンは元々、黎明期の日本がリードしていた分野でしたが、この分野では海外勢、とくに中国が強力です。そんな中で奮闘しているのが、テラモーターズの兄弟会社のテラドローンです。

なお、テラモーターズ・テラドローンの全体を統括しているのは徳重氏ですが、日本のテラドローンを統括している責任者は神取弘太氏です。今回は、神取氏に創業手帳の大久保が今後のドローン業界や、テラドローンの展望について聞きました。

神取弘太 テラドローン株式会社
Terra Drone Corporation Head of Japanese Operation(日本統括責任者)

本社を東京におき、全国7支社とAPECやEU、アフリカ、オーストラリアなど世界で10支社以上を構え、国内外にてドローンを用いたレーザー・写真測量を実施、高精度3次元図面を短時間で作成、施工管理に役立つサービスを提供。大手ゼネコン・建機メーカー・測量会社等からの案件を中心に、600回以上のドローン測量実績を有し、i-ConstructionのUAV測量実績も全国トップクラス。現在は国内外で250件以上のUAVレーザー計測実績を基に、早稲田大学との共同開発によるオリジナルLiDARシステム「Terra Lidar」の開発に成功。国内外への販売拡大を予定している。ドローン管制システム(UTM)においては、グローバルリーディングカンパニーとして市場を牽引。昨年Unifly社(ベルギー)へ出資を行い現在筆頭株主であり、ヨーロッパ4カ国、アメリカ等海外各国でUTMシステムを展開している。グループ会社はアジアで電動二輪、三輪を製造販売し、海外売上比率85%、年間3万台を売り上げるテラモーターズ株式会社。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ドローンで飛躍的に楽になる近未来とは

出典元:テラドローン株式会社 公式HP

大久保:国土交通省によりドローンの重量規制が200グラムから100グラムに変更されましたね。200グラムのドローンっておもちゃぐらい。さらにそれが小さくなっています。

あまり規制が厳しいのもどうかなと思いますが、どうなんでしょうか?あとは中国のドローンを事実上排除し、日本の官公庁が調達先を変えるとかの動きも気になります。

神取:まず大きさの規制変更ですが、一般のホビー用は影響があるでしょう。

ただ、弊社が扱っている産業用ドローンにはあまり影響がないです。産業用は元々登録しますし、ホビー用のように市街地ではなく、人がいないところを飛ばすものだからです。

あとは、弊社に限って言えば、政府調達のドローンはそこまで大きい市場とは見ていません。

政府のドローンは中国産以外に置き換わると話題にもなりましたが、とはいえ1000台程度なので、民間用のほうがはるかに大きい市場です。

良くも悪くも、実務の現場ではそんなに変わらないという感じです。

大久保:テラドローンではどういった用途が多いんでしょう?

神取:うちでは、電力会社などの大きいインフラ企業が点検や測量に使っています。

例えば、送電線は山にある高い電柱を通って、山間部の発電所から都心に送電しています。なので送電線の点検や維持管理って、人がやるとすごい大変なんです。

そもそも山の中なので行くのが大変ですし、森があっても道はありません。そして、高い鉄塔の上にあるので人間が作業すると手間も時間もかかります。

一方でドローンだと、そういう送電線のチェック・修理などが非常に楽になります。チェックして、そのままちょっとした修理などもできるようになって、それが自動で運行されるんです。

大久保:人間が操縦するのではなく、自動で基本いけるようになってきているんですね。

神取:そうです。ドローンは自動航空が基本になっています。ドローンというハードに目が行きがちですが、ソフトが大事です。それで空からの点検が可能になります。

そしてドローンとソフトを組み合わせることで、目立たないけれども、必要で、大変だったインフラの維持管理が非常に楽に、安全になるんです。ドローンを使えば人間が作業するよりも疲れないですし、見ることだけだったのが、今後は作業もできるようになっていくわけです。

ドローンの「最後の調整」が大事

大久保:ドローンの安全性はどうなんでしょう?

神取:今のドローンはソフトが優れていて、近づきすぎるとセンサーが働きます。あとは動いている人を認識できるという機能もあります。8キロぐらいあるので、人口密集地域で落ちたり、実際にぶつかったりしたら危ないですからね。

今、電力会社のインフラを請け負っていますが、他にも航空会社や通信会社もあります。そういった縁の下の力持ちのような会社の保守で、弊社は大きなシェアを持っています。

石油・ガス・電気などの重厚長大なインフラ産業は、やはり大きいので変えようとすると時間がかかります。だから、製品に会社を合わせようとすると、時間がかかりすぎるのです。

大企業側が、そのまま使えるぐらいにカスタマイズして対応するのは重要です。その企業特有の運用や事情で「こういう仕様にしなければ使えない」みたいなこともあります。なので製品のベースは同じでいいですが、ユーザーに寄り添って調整する開発が必要です。

テラドローンは、ドローンメーカーではなく、測量とか点検とかのサービスプロバイダーです。産業用は、DJIのドローンの基本的な機能だけではカバーできないのです。

実際に、送電線で傷んでいるところを自動で判別して、修理して、自動で行って変えるとなると、それ専用のカスタマイズやプログラムが必要になります。

産業ごとにフライトシステムが必要になってくるので、テラドローンでは、ドローンに載せるソフトウェアの開発をしています。

テラドローンでは点検や測量をしており、既に弊社で20億円ほどの売上はありますが、市場としてはまだまだで、これから伸びていきます。

産業用は複雑なので、日本のニーズに合ったものにしていく「ドローンソリューション」を進めていきます。つまり、マーケットがあるというより、自分達でマーケットをまさに作っているところです。

中国のDJIは代替できる?

大久保:最近では中国のDJIのドローンが政治に使われない動きもありますが、代替できるんでしょうか?

神取:1位のDJIはシェアが圧倒的なので、全く同じ性能・値段での代替はなかなかしにくいでしょうね。業界的には、1位DJIと2位パロットという感じです。DJIは使いやすく、ユーザービリティで優れています。

実は2010年頃、中国の奥地のドローンが取引されている市場に自分で行って、リサーチしたことがあります。

当時はITの会社役員なので業務上の関係もなく、ドローンも今ほど注目されていなかったですが、なんとなく将来に向けてドローン市場は面白そうなので見に行ったんです。そのときは日本人のバイヤーはほとんどおらず、韓国やアフリカのバイヤーが多かったです。

当時は中国の技術レベルが低く、不良品率が高すぎて、何割かはまともに飛ばないのでビジネスの線は無理だなと思いました。でも、その後に中国のドローン技術は飛躍的に伸びました。

大久保:もともと日本が強そうな分野ですよね。ドローンは日本の大学がリードしたり、モーター系は日本電産、電池はパナソニックとか強いですしね。なんで日本は中国にリードされちゃったんですかね。

日本の場合は規制とか、中国は軍事やITとの親和性からの投資とか、いろいろ原因はあると思いますが。

神取:それは当時の日本の会社が、既存事業のしがらみとかで動けなかったことが大きいと思います。政府というより「起業家・経営者」が大事ですね。

最初から世界を狙う理由

出典元:テラドローン株式会社 公式HP

大久保:どうやって事業を伸ばしているんですか?

神取:自分は日本の責任者ですが、全体の代表であり創業者の徳重のリーダーシップが強いです。コレやるぞ!と。自分も海外に行って事業の準備をしたりとかをしていました。

我々は本気で世界一のメガベンチャーになりたい。だから日本から海外だと遅すぎるので、最初から海外に行っています。今では、日本の他ではインドのビジネスが大きいです。

ドローンのような産業では、国とか規制とか業界のしがらみとかを気にしがちですが、実はあまり関係ありません。世の中を実際に変えていくのは、国ではなく起業家です。

大久保:神取さんはテラドローンの日本の責任者ですが、どういう経緯で会社に入ったんですか?

神取:自分は大学生のインターンから入りました。ここに入った理由は、「メガベンチャーを作るんだ」という壮大なビジョンがあったからです。やりきる雰囲気がありました。4人しかいなかったけど、なぜかそう思えたんです。

起業家はとりあえず新興市場に上場して、いったんそこでゴールという人も多くいます。でも徳重や自分たちは、本気で壮大なビジョンを達成しようと思っています。

そう考えたとき、日本はいろいろな意味で守られていると思いました。でも、海外に出ていくと、「やるんだからやるしかない」という感じで追い込まれますね。難しいけれども、「それやらないとミッション達成できないのであればやるしかない」と奮起できるんです。

例えば、どこかの国に出ていくと決めたら、競合とか現地の代理店とかをバーっと回って事業を作っていきます。

大久保:そういう組織って管理は大変じゃないですかね。

例えば、ある程度成熟した産業だと、サラリーマンでよくあるように査定で決めるとかもできるけれども、形が無いものを評価するのって難易度高いですよね。

神取:新事業や幹部はコミットメントで見るとかですね。もうちょっと社員レベルの営業であれば、普通に会社的な評価はできますね。

大久保:では、改めて会社のミッションについて教えてください。

神取:世界に通用するメガベンチャーを作ることです。兄弟会社の電気バイクを販売しているテラモーターズはメーカーですが、フィンテックなどを絡めて販売しています。

テラモーターズは日本の技術力を活かしたハード事業、さらにはIOT技術を活用したサービス事業を展開しています。

一方でテラドローンは、ドローンの使い方を各産業ごとに当てはめていくというソフト的な仕事です。それぞれで世界的なメガベンチャーを作っていきます。

大久保:ありがとうございました。

ドローン市場における最先端技術やビジネスモデルを生み出すことで、当初からの目標である「メガベンチャー」を本気で作る気概に感銘を受けました。

世の中を実際に変えていくのは、国ではなく起業家であるという精神に基づき、日本での新たなマーケットの開拓を楽しみにしています。

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(取材協力: テラドローン株式会社 日本統括責任者 神取弘太
(編集: 創業手帳編集部)



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