“教育”から“エンタメ”での起業へ。連続起業家&投資家・宮地俊充は起業家のココを見る
株式会社ティーンスピリット 代表 宮地俊充インタビュー
(2018/09/27更新)
近年、複数回にわたり起業するシリアルアントレプレナー(連続起業家)が増えてきています。その一人・宮地俊充氏は、オンライン英会話スクールを創業後、大手予備校に売却。新たに総合エンタメ企業『ティーンスピリット』を立ち上げ、さらに個人投資家としても活動しています。
そんな宮地氏に、起業家としての挑戦と、投資家の視点から見た「起業家に必要な要素」をお伺いしました。
1981年生、静岡県出身。青山学院大学在学中から放送作家として活動。大学卒業後、公認会計士試験合格。監査法人、金融業界、ITベンチャー役員を経て、2011年にオンライン英会話スクールを創業。2016年に同スクールをSAPIX YOZEMI GROUPへ売却後、エンジェル投資家として活動する傍ら、2018年2月に株式会社ティーンスピリット創業。
https://twitter.com/toshimiyachi
初めての起業と売却
宮地:初めての起業は2011年。
当時はまだスタートアップ起業家が少なかったのですが、徐々に投資家が増えてきて、借り入れではなくエクイティによる資金調達ができそうだと感じたのと、「これならいける」というビジネスアイディアを思い付いたため、30歳の節目に起業しました。
立ち上げたのは、学生時代から好きだった英語と、時代の流れがきていたテクノロジーを融合したオンライン英会話スクール。
開校してから数年は苦しい時もありましたが、4技能(スピーキング・ライティング・リーディング・リスニング)を学ぶという時代の流れにバシっとはまり、生徒数も急増し、多くの教育系大手企業とも提携しました。
宮地:このオンライン英会話スクールは社会人をメインターゲットにしていたのですが、中高生向けサービスにも挑戦したいという思いが強くなったからです。
業務提携の話をさせていただくうちに、大手予備校との出会いがあり、2016年に全株を売却し、2017年末に代表を退任しました。
2回目の起業。大好きなエンタメを生活の中心に
宮地:そうです。前の会社とは全くの別業界ですが、音楽業界でイノベーションを起こそうとしています。
実は学生時代から音楽活動などを行っていたのですが、「絶対にプロになる!」という強い気持ちがなく、中途半端に一度辞めてしまったんです。
「もう一度、音楽を生活の中心にしよう」と決心し、株式会社ティーンスピリットを創業しました。
宮地:始めた時は音楽業界や芸能界にほとんどツテがなく、初めのうちはビジネスの進め方が分かりませんでした。
でも、それは最初の会社を起業したときも同じ。立ち上げ時に教育業界・英語業界に知り合いはいませんでした。
誰もが共感できるビジョンを掲げ、オリジナリティのあるサービスを提供することで少しずつ業界のキーマンと知り合い、紹介しあったり、イベントの登壇などでご一緒したりするうちに、徐々に輪が広がっていきました。
それと同じことを今回もやるだけだと思っていますので、大変とは思いません。
また、実際に会社を始めて、実務をやればやるほど、エンタメに関するアイデアが湧くようになりました。結論、起業する業界が未経験でも、何も弊害はないと考えています。
宮地:自社アーティストの女性ダンスボーカルグループ「SPECIAL NIGHT」が来年デビューする予定です。
コンセプトや方向性はしっかりと見えてきたので、「SPECIAL NIGHTが生み出す世界観・エンターテインメントを、より多くの方に届けたい」とメンバー一同ワクワクしています。
会社としての目下の目標は、「SPECIAL NIGHT」を成長させることですね。
また、自社アーティスト以外に、他社IP・アーティストの音楽活動の協業やプロデュースも行っています。
プロデュースと作詞を手掛けたバーチャルYouTuber「天神 子兎音(てんじん・ことね)」のオリジナル曲『フーアーユーなんて言わないで』は、現在YouTubeでの再生回数が50万回を突破しています。
これはバーチャルYouTuberのオリジナル曲としてはトップクラスで、数字として結果が出せたのは一つの自信になりました。
エンジェル投資家・宮地俊充として
宮地:端的に言えば、「相手がどう思うか?」をどのくらい意識しているかを見ています。
それを常に考える癖がついている人は、コミュニケーションが丁寧です。
また、今までの生き方に自信があり、自分のビジネスに真剣に取り組んでいる人は、一目見て印象・オーラが全然違います。だから、良い起業家は、打ち合わせに現れた瞬間に分かります。
反対に、良くない起業家もすぐに分かります。
先ほどの話の通り、相手がどう思うか?を普段から意識していない人は、コミュニケーションが雑です。打ち合わせに遅刻したり、メールの返信が遅かったり、やると言ったことをやらなかったり…。
あと分かりやすい例としては、ちょっとネガティヴなフィードバックをすると、メッセンジャーの返信で句読点がない雑な文章を送ってきたり、対面で話している時にスマホをいじりだしたりします。投資家と雑に接する人は、社員にも、顧客にも、パートナー企業にもそうなんだろうな…と容易に想像がつきます。
宮地:投資先と自社で相乗効果が生まれたことでしょうか。
まだリリース前なので詳しくは言えませんが、投資先企業と連携することで、ティーンスピリットだけではできない新しいことに挑戦できるのは大きなメリットだと思います。
起業って、楽しい!失敗を恐れずにチャレンジを
宮地:2度の起業を振り返ってみて思うのは、失敗しても諦めなければ何とかなるということです。
私は起業において、「あの時、もっとこうしておけば良かった…」と後悔したことはありません。もし間違えたら、修正すれば良いだけのことかなと。
また、私は「英語が好きだから」「音楽が好きだから」という、とてもシンプルな気持ちで起業しました。
自分が考えたアイデアを実現できたり、仲間が増えたりと、起業したことで得られたものはたくさんあります。「好き」を仕事にして働き、社会に価値を還元する。一番幸せな働き方ではないでしょうか。
私からのメッセージは一つ、「起業、めちゃくちゃ楽しいですよ!」。
(取材協力:株式会社ティーンスピリット 代表 宮地 俊充(みやち としみつ) )
(編集:創業手帳編集部)