スウェーデンの文化から学ぶ「ダイバーシティ」と「グローバル志向」
違う考え方を受け入れることが、ビジネス力UPの第一歩
(2017/06/14更新)
最近、ダイバーシティという言葉をよく聞くようになりました。
みなさんも職場・新聞・テレビなどで耳にしたことが有るのではないでしょうか?辞書でダイバーシティ(Diversity)と調べてみると、「多様性」とでてきます。なんだかわかったような、わからないような・・・
新聞やメディアを見ていると、日本では「ダイバーシティ」 = 「女性活躍」のように使われていることをしばしば見受けます。でも本当に、それだけなのでしょうか?
私が働いていたスウェーデンでは、もっと異なった意味で理解されていたように思います。
そしてスウェーデンでは、人口は日本の10分の1以下の国でありながら、いつもグローバルを視野に入れた取り組みに挑戦していました。
では、早速スウェーデンでの「ダイバーシティ」と「グローバル志向」について見ていきましょう。
この記事の目次
スウェーデンの人は英語を話せる人が9割以上
語学教育や研修旅行を手掛ける「EF Education First」が行った「2016年英語能力ランキング」調査結果によると、日本は72か国中35位。順位だけ見ると真ん中ぐらいですが、能力レベルは平均より低いそうです。特に30代~40代の英語力の低下が指摘されており、これによってビジネスチャンスを逃しているのではないかと言われています。
では、どんな国が英語能力ランキングの上位にはいっているのでしょう?
上位3か国は、1位オランダ、2位デンマーク、3位スウェーデン、いずれも北欧の国々がランクインしています。
これらの国の言語はアルファベットを使っていますし、日本語よりはずっと英語に近い言語と言えるでしょう。
ですが、これらの国が英語力に優れている理由はそれだけではありません。
大都市だけでなく、ほぼ全ての場所で英語が通じる
私がスウェーデンで働き始めた時、「すごい」と感じたことの一つは、スーパーや小さなお店、レストランなどほとんどすべての場所で英語が通じる、ということでした。
当時スウェーデン語に挑戦していた私ですが、ある日、パン屋さんでスウェーデン語を使ったときに相手から予期していない返答が返ってきたことがありました。
「困ったな~」という表情を私がすると、なんと店員さんはすぐに英語に切り替えてくれたのです!
とても助かるし、有難いのですが、「スウェーデン語を学ぶ」という意味では、なかなか上達しませんでした(笑)
しかも、これはストックホルムのような大都市だけではなく、他の街でも同じです。もちろん、高齢者や地方では、英語を話せる割合は少し減りますが、それでもわずかな変化だと思います。
幼少期から自然と英語に慣れ親しんでいる
スウェーデンをはじめとする、北欧の国々は、日本に比べると人口も少ない、小さな国です。それだけに、国際競争力をつけるには、英語が必須と考えたのでしょう。
もちろん教育のやり方もありますが、移民を多く受け入れているということもあり、英語が人々にとって自然と身近なものになっているのだと思います。
例えばテレビや映画などは、吹替ではなくオリジナルの言語で放映されています。小さい頃からそれを聞くことで、自然に英語を聞く耳が出来てきたのでしょう。
音楽も同じです。ラジオやテレビで流れている曲は、英語の歌がとても多いです。
スウェーデン人の歌手であっても、英語の歌を歌っていることはとても多いのです。
このように英語を身近なものとしてとらえ、そして世界で対等に渡り合うには、英語が不可欠であるということを、生活の中から自然と学んでいるのでしょうね。
2020年のオリンピックに向けて、多くの外国人が日本を訪れます。英語を頑張ってみる良い機会かも知れませんよ!
自分と違う考えを受け入れる柔軟性からイノベーションが起こる
スウェーデンでは街を歩いていると、移民が多いということもあり、いろいろな人種の方に遭遇します。
街中だけではなく、私が働いていた会社にも様々な国籍の方がいらっしゃいました。もしかしたら、部署によっては、スウェーデン人の割合の方が少ないぐらいのところもあったかもしれません。
部のアシスタントが他国の方で、スウェーデン語を話せないというケースもありました。英語を社内公用語としているこの会社では、国籍や言語にこだわらず、その部にとって最適であり、貢献できればOKなのです。
日本では考えられないような、度量の大きさですよね。
職場には、国籍・性別を問わず年代も、若い人から、ベテランまで、いろいろな方が在籍しています。
ベテランの方と一緒のチームだからと言って、若者が遠慮することもありません。先輩や上司に対しても、礼儀をわきまえつつ意見・提案を進んで行います。
そして、先輩や上司は、この人達の話をきちんと聞く耳を持っています。
「経験がないのに、何を言っているのだ」
「何も知らないくせに、分かった風にいうな」
「今忙しんだから、余計な仕事を増やさないでくれ」
と、頭ごなしに否定する姿はありません。まずは聞いて、そしてそこから意見交換が始まります。
自分が思いもしなかったアイデアも、良いと思えば褒めて受け入れます。
そこから、イノベーションの文化が発達するように思います。
技術革新度を毎年発表するランキング「グローバル・イノベーション・インデックス2016」で、スウェーデンは2位、日本は16位でした。イノベーションを大切にする文化も、かなり育っていると言えるでしょう。
あなたの常識は他人の非常識?
日本には「常識」と言われているものがあります。
国が違えばもちろんですが、同じ日本人であっても、生まれた環境や育った背景が違えば、ものの見方・考え方・感じ方が違うこともあるでしょう。
ですが、つい新しく入ってきたスタッフや外国から来た人に「郷に入れば郷に従え」ということで、自分のルールを相手にも押し付けてしまったり、自分の周りに自分と同じような考え方を持った人ばかり集めてはいませんか?
これでは、ダイバーシティ(多様性を受け入れ、偏見を持たず、フレキシブルに成長していく組織)になっているとは言えません。
初めは、自分と違うタイプの人と接するのに少し苦手意識が働くかもしれません。ですが、自分の持っていないものを持っている人と仕事をしたり話をしたりすると、間違いなく自分もチームも成長できます。
これで井の中の蛙から抜け出て、あなたも、グローバルビジネスパーソンの仲間入りです!
起業家は、グローバルを視野に入れた展開で勝負
さらにもう一つ、グローバル志向についてお話ししたいと思います。
スウェーデンは人口も少なく小さな国なので、自国の中だけでは大きな利益が期待できません。そのため、ビジネスの視線は必然的に世界に向けられているのです。
スウェーデンの代表的な会社といえば、イケア、H&M、ボルボ、スカイプなどで、いずれも国際的な企業ばかりです。
どの企業も地球への配慮、社会貢献を実施しており、それがグローバル企業の役割と捉えているようです。起業家・経営者はとても広い視点で考えていることが分かりますよね。
世界で戦える競争力をつけるには、古い慣習や、やり方にこだわるのではなく、移民を受け入れたり、男女が平等に活躍できる土台を作ったりと、新しいことにチャレンジすることが必要です。
様々な人々を受け入れることで、イノベーションが巻き起こり、組織はさらにステップアップしていくことが出来ます。そして、相手の文化や考え方を尊重することで、チーム内の結束が強くなります。
自分が経験していない事や、考えもしなかったことを受け入れることは、大変難しいことです。
ですが、ここは自分の常識を少し破って、相手の常識を受け入れてみませんか?
本物のダイバーシティ経営とは何かを考える
「ダイバーシティ」という言葉をインターネットで検索してみると、最初に目についたのは「お台場ダイバーシティ」でした。建設当時(2011年)、施設名を公募、投票にてこれに決まったようです。
とういことは、日本においては今から6年前に「ダイバーシティ」という言葉が出始めていたということですね。
本質的なダイバーシティの取り組みを、一人でも多くの経営者の方に考えていただくことが、日本を変える一歩になるのではないのでしょうか?
そして日本においては、女性の活躍に大きな期待が寄せられています。それだけに私たち女性も、「できない理由」を並べるだけではなく、前向きにしっかりと発言していかなくてはなりませんね。
(監修:ソルローズ株式会社 正木 美奈子 )
(編集:創業手帳編集部)