スウェーデンの事例に学ぶ、「働き方改革」3つのヒント

創業手帳

働き方改革の出発点は「柔軟な思考」。ワークライフバランスの向上に向けて

(2017/04/17更新)

近年、「働き方改革」が大きな社会問題として議論され、新聞・TVなどでも大きく取り上げられています。
2017年3月末には「働き方改革実行計画」が政府より発表され、「賃金引上げ」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方」など9分野での改革の方向性が明示されました。
そこで今回は、日本の働き方改革実現に向けたヒントとなる、ライフワークバランスを重視した柔軟な働き方を実践するスウェーデンの事例をご紹介します。
スウェーデンの「柔軟な働き方」のための3本の柱とは?それでは、早速見ていきましょう。

働き方改革へのヒント1. フレックスタイム

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私がスウェーデンで働いていた時、いつも14時に退社していたプロジェクトメンバーがいました。そのメンバーのマネージャーは最初に私にこう言いました。

「彼は大学に通っているから14時に会社を出ないといけない。朝はとても早く来ているから、それで対応してもらえないか?もし緊急に対応しなければいけない事や不都合があれば、いつでも僕に話してほしい」と。

人はその時間しか使えないと思うと、「どうしたら出来るか!」を頭を働かせて考えます。
正直に言うと、彼のマネージャーから14時帰宅の話を聞いたとき、初めは「えー、それは困る!」と心の中で叫びました。何故なら、プロジェクトとは予定通りに進まないということを、経験からよく知っていたからです。しかもその時抱えていたプロジェクトは、世界的なイベントに関わるもので、遅れは許されなかったのです。

ところが、終わってみると何とかなったではありませんか!
もちろん、他のプロジェクトメンバーやマネージャー、そして彼自身からの強力なサポートがあってのことです。特に、プロジェクトメンバーのサポートはとても強力で有難いものでした。

何事も、「出来るはずが無い」ではなく「どうしたら出来るだろう」に発想を切り替えると解決策が見つかりやすくなります。また、自分1人でアイデアが浮かばなければ、周りの人の知恵を借りてみてください。

朝7時に出社、15時に退社する人は珍しくない

スウェーデンでは、フレックスタイム制度はホワイトカラーの間ではごく一般的な制度として定着しているので、逆に「フレックス」という言葉を聞くことはほとんど有りません。

ですから、「あなたの会社の就業時間は何時から何時?」と聞くと、知らない人が結構いるのです。
なぜなら重要なのは就業時間ではなく、「何時間働かなければいけないか」だからです。

実際、私も14時退社の彼と話す時間を多く取りたいがため毎朝7時半前には出社していました。朝は頭が冴えています。それに電話や会議などで邪魔される度合いも少なく仕事が捗ります。その結果17時には仕事を終えて退社するという、日本では考えられない習慣を身に着けることが出来ました。

働き方改革へのヒント2. 電話会議

スウェーデンで働き始めて間もない頃、なかなか慣れないことが一つありました。それは電話会議が大変多かったことです。日本で勤務していた頃からスウェーデンや他の国と電話またはビデオで会議を持っていたので、電話会議が特に新しいことではありません。ただ、スウェーデンでここまで電話会議が多用化されているとは思いませんでした。

誤解のないように少し付け加えると、通常は会議室での対面の会議がメインです。ですが、何らかの理由(外出・出張や、家庭の事情など)で、会議場所に出席できない場合は、電話でも参加できるようになっているのです。

また、スカイプなどのシステムを使うと、プレゼンテーションの資料なども同じタイミングで共有出来るので、あたかもその場所にいるようにメンバー全員が会議に参加できます。

日本のように、会議に召集されたからその場に行くのではなく、「何が一番効率的で生産性が高いか」を最優先に考えて行動していますから、その会議に出席するために外出先からオフィスに戻るぐらいなら、その時間を別の行動にあてたほうが効率的などと判断をするわけです。

顔が見えない会議が多くなるのは、相手がどのように感じたか表情を読み取ることが出来ないため、当初は少しストレスにも感じましたが、次第にその環境に慣れていきました。

家庭から電話会議に参加している場合など、発言の後ろの方から子供の騒ぐ声が聞こえたり、ドタバタと走り回る音がしたりすることは良く有ります。そんな時は「パパはお仕事中だから、向こうに行っていて」と子供にやさしく話しかける声も一緒に聞こえてきます。

このような状況は、会議のたびに起こりますが、誰もそれに腹を立てたりしません。なぜなら、誰もが同じような環境下で仕事をしていますので、それを問題とはとらえないのです。

電話会議でできないこともある

何かの理由で必ずその時間は会社に居てほしい場合や、この会議は電話でなく会議室で参加してほしいなどという時は、その旨をスタッフに伝えておくことが大切です。

例えば、「ブレーンストーミング」。 
これはホワイトボードなどを使ってアイデアをその場で出し合うワークショップ型の会議ですが、このようなケースが電話会議に向いていないのは明らかです。ですから出来る限り指定の会議室に集まるように前もって伝えておきます。

このように議題・議論の内容を踏まえたうえで、電話・ビデオ会議をうまく使っていくと、もっとフレキシブルな働き方ができると思います。

ただし、これに慣れるには少し時間がかかるので、1~2回やって「やっぱりやりにくいから・・・」と諦めるのではなく、何度か試してみてください。
きっとどうすればスムーズに目的を果たすことが出来るかが見えてきますよ。

働き方改革へのヒント3. 集中できるワークスペースを持つ

ではここで、別の「柔軟な働き方」の例をあげてみます。
前項では、様々な場所から電話またはビデオで会議に参加するケースを示しましたが、会議だけではなく、通常の仕事はどうでしょうか?

私自身も経験がありますが、集中して資料を作りたい時などは、会社よりも家や会社の会議室等、周りから邪魔されない環境に身を置くと、とても捗ります。会社では、「今日はこの資料を作成」と予定していても、実際には他の仕事を頼まれたり、急な会議が入ったりで思うように資料作成が進まなかった、ということが多々ありました。皆さんも同様の経験をされた事があると思います。

また、細々とした仕事をリストアップして一気に終わらせるような場合も、集中できる環境で行うとかなり効果的です。最近は、「ちょっとパソコンを持って外出しカフェで仕事をする」というような方も増えているかもしれませんね。カフェなど自分だけの空間で「1~2時間でこれをやる」と時間を決めて行うと、意外と捗るものです。

驚きの「ワーク・フロム・ボート」

そこで、スウェーデンで体験した、更に先を行っている例をお話しします。

それは、スウェーデン本社に勤務して最初の夏のことでした。
オフィスのホワイトボードに、部署のメンバーの名前と居場所を書く欄があるのですが、ある金曜日、そこに「ボート(ヨット)のマーク」を発見したのです。

私はそのマークを見て、きっと休暇を船(クルーズ)で楽しんでいるのだろうと思っていました。

ところがです!
それは休暇のマークではなく、”ボートから働いている”という居場所を表すマークでした。

そのボートには無線LANなどの通信ネットワークの設備が完備され、問題なく働けるのです。
実際、彼女(ボートの持ち主は女性)は、ボートから自分が招集した会議を主催していました。また、メールでのやり取りも通常と変わらないため、特に言及しなければ彼女がボート上で働いていることに誰も気付きもしなかったでしょう。

スウェーデンは冬の暗い時期が長いため夏になると、ともかくアウトドアライフを楽しみます。ですから、週末ごとに自分のボートで小旅行に出かける人も多く、その為何処にいてもコミュニケーションが出来る様に設備が整っているのです。

これにはさすがの私も「それってあり?」と驚きましたが、「状況が許せば働く場所もかなり自由に選べる」という良い例でしょう。ただし、これをするには普段からマネージャーやチームのメンバーとのコミュニケーションを密に取り、信頼を得ておくことがとても重要です。そしてもちろん、報告・連絡は欠かさずに!

日本でもボートに対抗して、そのうち「ワーク フロム キャンピングカー」なんていうのが、出てくるかもしれませんね!

柔軟な思考と大きなハートを持って働き方改革に取り組もう

いかがでしたか?日本とはずいぶん違う働き方ですよね。
今回ご紹介したように、スウェーデンでは、与えられた仕事に支障が出ない限りは、いつ、どこで、どのように働いても良いのです。

そしてまた、柔軟な働き方を実現させるには、誰もがメンバーを理解しサポートする大きな心を持つことも非常に重要です。

あなたも是非、「柔軟な思考」「大きなハート」で、働き方改革の課題に前向きにチャレンジしてみてくださいね。

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(監修:ソルローズ株式会社 正木 美奈子
(編集:創業手帳編集部)

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