経営力強化保証制度とは?メリット・デメリットと使い方
経営力強化保証制度による中小企業への資金調達と事業改善のサポートの活用方法とは
経営力強化保証制度は、中小企業が資金調達する際に使える制度です。中小企業でもこの制度を利用することで、融資が受けやすくなり、より資金調達のハードルが下がります。
ただし、利用するにあたっては条件を満たす必要もあり、限度額なども定められているため、内容を理解してから申し込みましょう。
経営力強化保証制度の具体的な内容や活用方法を紹介します。
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この記事の目次
経営力強化保証制度とは
経営力強化保証制度とは、資金調達の際に銀行と認定経営革新等支援機関とが連携し、中小企業の後ろ盾となってくれる制度です。
すでにスタートしており、利用対象企業のうち、制度が必要な企業は具体的に申し込みなどを行っている場合もあるかもしれません。
経営力強化保証制度を知らなかった中小企業の事業主や資金計画担当者などは、この機会にどのような制度なのか知っておきましょう。
中小企業のための制度
経営力強化保証制度とは、中小企業の資金調達をするにあたって利用できる保証制度です。
まさに、中小企業のための制度といえるものであり、中小企業の事業計画の策定や継続的な経営支援を行い、企業の経営力強化を目的としています。
中小企業はもともと、金融機関からの融資による資金調達が簡単ではありません。特に、経営問題を抱えた企業であればなおさらです。
経営状況が悪化している中小企業に対し、融資に前向きではない金融機関は多くなります。
しかし、経営問題を抱えた中小企業こそ、経営の問題解決を目指した資金調達が必要です。
そのような状況下で資金の悩みを抱えた中小企業のために、中小企業庁がこの制度を創設しました。
2012年10月1日スタート
経営力強化保証制度は、2012年10月1日からスタートしています。
スタートと同日には、中小企業信用保険法施行規則の一部を改正する省令が公布され、信用保証協会は日本政策金融公庫へ支払う保険料も減免としました。
信用保証協会が保証料を減免
経営力強化保証制度は、金融機関と認定支援機関の連携支援を受けることを条件として、信用保証協会が行う信用保証制度を保証料の減免を受けて利用できる制度です。
融資の際には、銀行と認定支援機関の支援によって経営改善に取り組む中小企業に対し、信用保証協会は保証料をおおむね0.2%減免して支援します。
経営状況が厳しい中小企業も、低い金額の保証料で信用保証制度を利用でき、資金調達のハードルが下がります。
信用保証協会とは
信用保証協会とは、信用保証協会法に基づき設立された公的機関です。中小企業などが金融機関から融資を受けやすくすることを目的としています。
具体的に行うのは、中小企業や小規模事業者が融資申し込みをする際に、信用保証協会が保証人となる保証業務です。
また、それ以外のサポート事業として、利用者と他社との取引きを仲介するビジネスマッチング、経営相談やアドバイス業務、財務診断用ツールの無料提供などがあります。
信用保証制度とは
信用保証制度とは、中小企業などと金融機関、信用保証協会が当事者となり進められる制度です。
中小企業や小規模事業者などが信用保証制度を利用して金融機関からの融資を受けます。
この制度での信用保証協会の役割は、融資先が返済できなくなった際に金融機関へ代位弁済をし、金融機関の代理で融資先へ返済請求することです。
金融機関は信用保証制度を利用してもらうことで、信用度の高くない融資先に対しても貸倒リスクを抑えて融資できるようになります。
この制度を利用する際は、法人代表者以外の連帯保証人は原則必要ありません。
このことから、経営の厳しい中小企業や小規模事業者なども金融機関の融資を受けやすくなり、積極的な経営努力が可能となるよう期待できます。
ただし、信用保証制度では信用保証協会へ支払う信用保証料が必要です。
また、信用保証料は保険ではないため、代位弁済が必要となった状況下でも中小企業の借入金自体がなくなることはありません。
金融機関へ代位弁済をされた借入金の残債は、一括もしくは分割弁済で請求されます。
経営力強化保証制度を利用するメリット・デメリット
経営力強化保証制度は、信用保証制度を利用するハードルを下げるための制度です。
そのため、中小企業や小規模事業者など、融資を受けたい企業などにはメリットばかりのようにも思えるかもしれません。
しかし、実際に利用するにあたり、使いにくいと感じられるデメリットもあります。
経営力強化保証制度の利用を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも理解してください。
経営力強化保証制度を利用するメリット
経営力強化保証制度を利用するメリットは当然、信用保証協会による信用保証制度を利用しやすくなる点です。
経営課題が多く、融資を必要としていながらも融資を受けられる信用度が不足していることも多い中小企業や小規模事業者には大きなメリットといえます。
保証制度が利用しやすくなる
経営力強化保証制度があれば、当然のことながら信用保証制度がより使いやすくなります。
通常の信用保証料率区分よりも1区分低い料率が適用されるため、少しでもコストを抑えて融資を受けたい中小企業や小規模事業者なども安心です。
金融機関からの融資が受けやすくなる信用保証制度をコストダウンで利用でき、資金調達のハードルが下がります。
金融機関・認定支援機関からの継続的な経営支援が受けられる
経営力強化保証制度を利用することで、金融機関や認定支援機関の経営支援を継続的に受けられるようになります。
経営力強化保証制度は、中小企業や小規模事業者などの融資希望者が資金の融資を受けやすくするだけの制度ではありません。
融資を受ける前には事業計画の策定をし、そのあとは事業計画の修正などをしながら経営改善を目指すことになります。
その事業計画の策定や修正を通した経営改善において、中小企業や小規模事業者などの融資先は、金融機関や認定支援機関からアドバイスを受けられます。
認定支援機関は、中小企業診断士や税理士などの国が認定した専門家揃いです。法律にも経営にも豊富な知識を持っています。
こうした支援は、自己流の経営やどんぶり勘定での経営を見直し、成長できる経営基盤を築くきっかけとなるかもしれません。
経営力強化保証制度を利用するデメリット
経営力強化保証制度を利用する際には、デメリットも把握しておく必要があります。
経営力強化保証制度は中小企業や小規模事業者などのために作られた制度であるため、それら事業者に役立つことは事実です。
しかし、利用する際には制約や条件などがあり、使いにくい、厳しいと感じる場合もあるかもしれません。
進捗状況の報告が必要
経営力強化保証制度を利用する際には、事前には第三者が納得できる事業計画を作成し、さらにそのあとも進捗状況の報告義務が発生します。
融資が実行されたあとも、立案した事業計画に基づいて事業が進められているか、報告が必要です。
中小企業や小規模事業者などが経営改善を実施する際には、元手となる融資を受けることも必要ですが、具体的な行動として従業員への説明や実行管理なども必要です。
事業主や責任者のやるべきことは多く、計画の実施中は多忙を極めると予想されます。
その中での進捗状況の報告義務は企業にとって大きな負担です。中小企業や小規模事業者などの融資先が行う報告は、4半期に1回の頻度となっています。
また、報告書の作成はもちろん、必要に応じて事業計画の修正なども発生することもあります。
ただし、これらの過程は、事業計画の実行を確実に進めるためのものです。
専門家のアドバイスも得ながら事業計画を策定できるせっかくの機会は、デメリットではなくメリットと捉えることもできます。
金融機関の審査に100%通る保証はない
経営力強化保証制度を利用することで、金融機関の融資は受けやすくなりますが、それでも審査に100%通るという保証はありません。
確かに、経営力強化保証制度は中小企業や小規模事業者などが信用保証制度を使いやすくします。しかし、保証はその企業の信用力を高めるものではありません。
そのため、融資のために準備した事業計画書や各種必要書類も、審査に落ちて無駄になる場合もあります。
経営力強化保証制度を利用するには
経営力強化保証制度を利用したい中小企業や小規模事業者などは、利用できる条件や必要書類、手続き方法などを知っておきましょう。
経営力強化保証制度は、金融機関や信用保証制度とは別に、条件や限度額などを定めています。
利用対象企業
利用できる企業の条件は、金融機関及び認定経営革新等支援機関から支援を受けながら、事業計画の策定と実行、計画の進捗状況の報告ができることです。
事業計画の策定や実行、さらに進捗状況の報告まで行うことは、企業には大きな負担となりますが、こうした条件下で経営改善に取り組めば、より成果を上げやすくなるかもしれません。
資金使途
経営力強化保証制度を利用できる融資の資金使途は、運転資金と設備資金に限られます。また、策定した事業計画の実施に必要な資金にしか使えません。
保証付の既往借入金を借り換えることも可能です。
保証内容
保証限度額経営力強化保証制度で可能となる保証限度額は、2億8,000万円です。内訳は、普通保証2億円、無担保保証8,000万円となっています。
保証割合
経営力強化保証制度は責任共有制度の対象となる保証のひとつとして、制度の2つの方式にのっとって金融機関が保証割合を選択することになります。
責任共有制度の保証の方式は「部分保証方式」と「負担金方式」です。
部分保証方式では、個別貸付金の80%を信用保証協会が保証し、残り20%を金融機関の負担とします。
一方、負担金方式の場合には、保証時点では100%を保証しますが、代位弁済の時点で金融機関が協会へ20%の負担金を支払います。
これによって、金融機関も部分保証方式と同等の負担を負うこととなる仕組みです。
信用保証料率
信用保証料率とは、基本となる信用保証料率は責任共有制度の対象保証に適用される責任共有保証料率です。
経営力強化保証制度で利用する際の信用保証料率は、以下のようになっています。
-
- 責任共有対象の場合、年0.45%~1.75%(弾力化対象)
- 責任共有対象外の場合、年0.50%~2.00%(弾力化対象)
信用保証料率は信用力に応じて区分が分かれ、原則的にはその企業が申し込んだ時の信用力に応じた区分よりも、一区分低い信用保証料率が適用される仕組みです。
ただし、もっとも低い信用保証料率であるカテゴリ9になった場合には、通常の信用保証料率が適用されます。
また、貸借対照表が未作成である、決算期が未到達であるなどの理由で信用保証料率の判定ができない時も同様の区分となります。
保証期間
経営力強化保証制度の保証期間は、資金の使途によって以下のように定められています。
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- 運転資金5年以内
- 設備資金7年以内
また、一括返済の場合は1年以内、この制度によって保証付の既往借入金を借り換える場合には10年以内となります。
添付書類
経営力強化保証制度を利用する際には、通常の信用保証協会所定の申し込み書類だけでなく、以下の書類の添付が必要となります。
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- 「経営力強化保証」申込人資格要件等届出書
- 事業計画書(申込人が策定したもの)
- 認定支援機関による支援内容を記載した書面
認定支援機関による支援内容については、事業計画書に記載されている場合は必要ありません。
定期的な報告
デメリットでも述べたとおり、経営力強化保証制度を利用するにあたっては、定期的な実施状況の報告が必要です。
中小企業や小規模事業者など融資先からの報告も必要ですが、金融機関から信用保証協会への報告も必要です。
報告は、中小企業者から金融機関へ実施状況、金融機関から信用保証協会へ中小企業者の取組状況と経営支援の実施状況の報告をする流れで行われます。
中小企業者からの実施状況の報告は、4半期に1回、金融機関から信用保証協会へは年1回行う決まりです。
まとめ
経営力強化保証制度は、中小企業や小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に有効な制度です。
コストを抑えて信用保証制度を利用でき、一般的には金融機関からの融資を受けにくい中小企業などの助けとして生まれました。
経営力強化保証制度はデメリットもあるものの、本気で経営改善に取り組むには良い影響が大きい制度です。
事業計画の策定や進捗状況の報告なども経営改善の一環に取り組めば、より良い成果を生むでしょう。
(編集:創業手帳編集部)