スタートアップとは?ベンチャーとの違いや特徴・課題を詳しく解説!

創業手帳

スタートアップ企業とベンチャー企業は似て非なるもの


スタートアップ企業やベンチャー企業は同じものだと思っている方も多いかもしれません。しかし、スタートアップとベンチャーには大きな違いがあります。

今回は、スタートアップ企業とベンチャー企業の違いや、国内のスタートアップが抱えている課題、支援策についてご紹介します。
スタートアップ企業の形態や、ベンチャー企業との違いを知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

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スタートアップとベンチャーは何が違う?


スタートアップ企業やベンチャー企業には、設立年数や事業規模は関係なく、別の意味があります。
まずは、スタートアップとベンチャーがそれぞれ持つ言葉の意味をご紹介します。

スタートアップとは?

スタートアップ企業とは、ゼロから市場に参入したり新たなビジネスモデルを創出したりすることで、急速に成長している企業を指します。
スタートというと、始めたばかりのイメージを抱く方も多いですが、実際は設立年月日とは無関係です。
もともとIT企業が集まるアメリカで使われ始めた言葉であり、成長スピードが速い企業として活用されてきました。

スタートアップ企業に分類されるのは、革新的なアイデアやテクノロジーを駆使してこれまでになかった社会価値を構築している企業です。
常識を覆すイノベーションの創造により、短期間で大きく成長することが特徴です。

ベンチャーとは?

ベンチャー企業とは、既存のビジネスモデルをベースとして、さらなるアイデアやテクノロジーで新たな価値を生み出す企業を指します。
これまでの事業を継続しながら規模を拡大することで、売上げアップを図ります。

英語でベンチャーは投資を行う企業という意味合いを持ちますが、国内ではベンチャービジネスから取った和製英語として使われており、投資に限らず幅広い意味で活用されるようになりました。
スタートアップはこれまでになかった社会価値の創造でインパクトを与えますが、一方でベンチャーはより着実に成長することを重視するため、成長スピードが異なります。

スタートアップの特徴


スタートアップ企業の特徴は、イノベーションの実現や短期的な成長戦略があること、そして成長スピードが速いといった点が挙げられます。
ここでは、3つの特徴を解説します。

イノベーションを実現している

新たなテクノロジーや考え方などを踏まえ、これまでになかった価値を創造することをイノベーションといいます。
スタートアップ企業では商品やサービスはもちろん、会社としての組織やビジネスモデルなど、あらゆる側面において多様性のある革新的なイノベーションを実現しています。

スタートアップ企業として分類されるのは、イノベーションを実現することで従来にはなかったビジネスモデルを生み出し、ほかにはなかった新たなニーズに着目して市場への参入や事業開拓をしている企業です。
イノベーションの実現には商品やサービスを通じて消費者の課題を解決しつつ、市場に受け入れられる必要があります。
また、利益につながるかどうかも成功を左右していきます。

短期的な経営戦略を持っている

スタートアップ企業は、中長期的な視点で事業を成長させようとするのではなく、短期的に急成長させるための経営戦略を取って事業を進めていきます。
具体的には、早期に株式を売却して利益を得るため、M&AやIPOといった方法を選択します。

M&Aは、企業の合併や買収を意味する言葉で、ほかの企業に会社の業務を売却して利益を上げていく方法です。
一方IPOは株式上場のことで、株式を上場した上で一部の株式を売却して利益を上げていく方法です。

創業直後は赤字になってしまうケースが多いですが、開発した商品やサービスの認知度が上がり、革新的なビジネスモデルが浸透することで大きく成長します。
また、短期間で事業を成長させるために、知識やスキル・ノウハウなどで即戦力となる人材を集め、組織作りを行います。

成長スピードが著しい

先にも紹介したように、スタートアップ企業は創業から数年は赤字が続くものの、その後短期間のうちに急成長することが特徴です。
創業当初に赤字となってしまう理由は、顧客の課題や解決策の検証を行いながら、革新的な商品・サービスを開発するために力を入れるためです。
調達した資金をうまく活用しながら、ほかにはない商品・サービスを生み出します。

当初は赤字であっても、新たなビジネスモデルにおける商品やサービスの開発に成功すれば、市場にライバルがいないため急成長が可能です。
消費者のニーズに合致するものの創出ができれば、スタートアップ企業は市場を独占できます。

ベンチャー企業の特徴


ベンチャー企業は成長段階が4つに分類されており、これまでのビジネスモデルをベースに新規事業を開拓していく特徴があります。
ここでは、ベンチャー企業の特徴を解説します。

4つの成長段階に分類される

ベンチャー企業はシードステージ・アーリーステージ・エクスパンションステージ・レイターステージと呼ばれる4つの成長段階に分けられます。
シードステージは起業する前の段階を示し、事業計画の準備や計画を立て、資金調達を行う段階のことです。
アーリーステージはスタートアップ期とも呼ばれ、起業して市場に合う商品やサービスの開発のために設備投資を行う段階です。

エクスパンションステージは、開発した商品やサービスが顧客に認知されるようになり、利益が出始めてきたタイミングをいいます。
レイターステージは、売上げが増えて経営が安定している状況で、新たな事業に着手したり融資を受けたりする段階です。

新規事業の展開が大きな目的

従来の事業やビジネスモデルをベースに新規事業を開拓していく点は、ベンチャー企業ならではの特徴です。
ベンチャー企業は、長期的な経営戦略を組み入れ、顕在ニーズにアプローチします。

既存のビジネスモデルをベースにしつつオリジナルのアイデアや独自のテクノロジーによって生み出した商品・サービスが、市場で需要があると判断して初めて新規事業を展開していきます。
そのため、堅実に時間をかけて行う必要があります。

ベンチャー企業では安定した経営を前提としているため、スタートアップ企業と比較すると成長スピードは緩やかです。
組織全体もバランスの良い人材で構成し、無理のない社内プロセスによって成長を目指していきます。

このほか、ベンチャー企業についてさらに理解を深めたいという方は、下記も参考にしてみてください。
ベンチャー企業→https://sogyotecho.jp/venture-company/ の記事を挿入してください。

国内のスタートアップが抱えている課題


国内にも様々なスタートアップ企業がありますが、爆発的な急成長の傍らにはリスクも存在することを忘れてはなりません。
ここでは、国内のスタートアップ企業が抱える課題を解説します。

リスク恐れ、起業したいと考える人材が少ない

スタートアップ企業はこれまでにない価値を創造し、顧客に認知され受け入れられれば爆発的な成長につながります。
しかし、必ずしも商品やサービスの開発がうまくいくとは限りません。
創業当初は資金繰りや商品開発にかかる消耗が激しく、リスクを負いながらもスタートさせる必要があります。

現在、若者は安定した収入を得るため、大手企業を目指す傾向があります。
起業して失敗した時のリスクが大きいことを恐れ、スタートアップを図る人材が少ないのが現状です。

起業してやり抜く覚悟がなければ、成功するのは難しいかもしれません。
ビジネスは利益を生まなければ成り立たないからこそ、毎月の収入が保証されたサラリーマンを目指す人が増えるのは避けられないでしょう。

ベンチャーキャピタル(VC)の規模が小さい

起業して事業を安定させるためには、ベンチャーキャピタル(VC)の規模も重要になります。
ベンチャーキャピタルとは、将来性が高く、成長が見込まれる企業に投資を行う会社やファンドのことです。

スタートアップ企業として事業を立ち上げる段階では、資金調達が十分にできないケースがあります。
国内のベンチャーキャピタルの規模は海外と比べて小さく、アメリカの100分の1といわれています。

実際に、経済産業省の「ベンチャーキャピタル投資の国際比較」によれば、アメリカのベンチャーキャピタル投資額(対GDP比)は0.40%、日本だと0.03%です。
G7諸国で比較すると最も低いイタリアに次いで日本が低い状況となっています。提供される資金の規模が小さければ、参入する人材も少なくなります。

スタートアップが利用できる支援策も把握しておこう


現在、新規開業資金や新創業融資制度、創業支援貸付利率特例制度、特別試験研究費税額控除制度など、スタートアップ企業が利用できる支援策があります。
ここでは、それぞれの支援策がどのようなものなのかご紹介します。

新規開業資金

新規開業資金は、日本政策金融公庫・国民生活事業が提供している支援策です。
新たに事業をスタートさせる方が事業開始後の運転資金や設備資金などにするために活用できるもので、事業開始後おおむね7年以内の方が対象となっています。

融資限度額は7,200万円(運転資金4,800万円)で、返済期間は設備資金で20年以内、運転資金で7年以内です。
また、設備資金、運転資金どちらも据置期間が2年以内となっています。

利率は基準利率ですが、女性や若年層、シニアが創業する場合や、廃業歴がある方が創業の再スタートを切りたい場合、中小会計を適用して創業する場合は、特別利率の適用が可能です。

新規開業資金について、さらに詳しく知りたい方は下記も参考にしてみてください。
新規開業資金→https://sogyotecho.jp/startup-capital/ の記事を挿入してください。

ディープテックベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度

ディープテックとは、大規模研究開発型を指します。
ディープテックベンチャー企業を対象にした債務保証制度は、経済産業省によるディープテックベンチャー企業の量産体制整備を目的にした融資で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が債務保証を行います。
スタートアップ企業のように事業化・収益化までに時間かかり、必要資金が大規模な企業への資金政策のひとつです。

要件は以下となります。

  • 新たな事業開拓を行う事業者
  • VCなどのファンドから出資を受けている
  • 大規模法人グループに属していない
  • 株式会社である
  • 非上場非登録企業
  • 風俗営業でない
  • 暴力団などの支配がない など

 
指定金融機関からの借入れで、金額は3億円以上、期間は3年以上が原則です。

新創業融資制度

新創業融資制度も新規開業資金同様、日本政策金融公庫・国民生活事業が提供する制度で、新たに事業を開始する方や事業開始後の運転資金や設備資金としての融資が受けられます。
対象は、新たに事業を始める方もしくは事業開始後の税務申告を2期分終えていない方です。
このうち、新たに事業を始める方や事業開始後の税務申告の1期を終えていない方は、創業時に創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意しておく必要があります。

新創業融資制度の特徴は無担保・無保証人で利用できることです。
融資限度額は3,000万円(運転資金:1,500万円)で、返済期間は各融資制度の定める返済期間内となっています。

創業支援貸付利率特例制度

創業支援貸付利率特例制度は、新たに事業を開始する方や事業開始後の税務申告2期分を終えていない方を対象とする制度で、日本政策金融公庫・国民生活事業が提供しています。
この制度を利用すると、貸付利率を一律で0.65%引き下げることが可能です。ただし、雇用の拡大が見込まれる場合には一律で0.9%引き下げとなります。

起業を目指し、資金調達をしたい方にとっては、返済のしやすさも非常に重要です。
融資限度額、返済期間は各融資制度が定めているものに沿う形となりますが、中には利用できない融資制度もあります。
返済期間だけでなく、使い道や担保の有無などにより利率が異なる場合もあるので、事前に確認が必要です。

特別試験研究費税額控除制度

特別試験研究費税額控除制度は、スタートアップ企業が大学や国の研究機関、ほかの企業との共同研究のために使われる費用の一定割合を、法人税額より控除できる制度です。
スタートアップはもちろん、事業会社や投資家、研究機関などでも利用できます。
共同研究であることを第三者の視点を交えて証明する必要があり、税理士による第三者から共同研究・委託研究の相手先による確認手続きを行ったうえで申告が可能です。

控除率は、特別研究機関もしくは大学との共同研究またはこれらに対する委託研究の場合で30%、新事業開拓事業者もしくは成長活用促進事業者が共同研究・委託研究する場合は25%となっています。
そのほかに該当する場合は20%の控除率です。上限額は法人税額の10%相当額です。

まとめ

スタートアップ企業は、何もないところから新たなビジネスモデルを創出して急速に成長していく企業のことをいいます。
国内にもスタートアップ企業はありますが、海外に比べるとまだまだ少なく、リスクやベンチャーキャピタルの規模が小ささなど課題もあります。
ただし、スタートアップ企業の支援策も講じられているため、スタートアップを目指す際はぜひ活用してください。

創業手帳(冊子版)」では、スタートアップ企業が利用できる支援策についても詳しくご紹介しています。起業を検討している方や資金調達に悩んでいる方は、ぜひご活用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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