少額減価償却資産の特例とは?節税・利用方法や注意点を解説

創業手帳

少額減価償却資産の特例の活用で節税ができる!


少額減価償却資産の特例は、青色申告事業者が一定の条件をクリアした減価償却資産を購入した場合に利用できます。
節税に活用できるので、利用したいと考える方も少なくありません。しかし、具体的にどのように適用されるのか理解しにくい点もあります。

そこで、今回は特例の概要や利用方法、特例を活用した節税方法、利用する際の注意点について解説していきます。

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少額減価償却資産の特例とは?


制度を利用するためには、まずはその概要を把握しておくことが大切です。そこでまずは、この特例がどのようなものか、概要から解説していきます。

30万円未満の減価償却資産に対する税制措置

少額減価償却資産の特例は、30万円未満の減価償却資産に対する税制措置です。
中小企業であるなどの条件をクリアすれば、一定金額まで今期の資産として一括で計上できるという措置です。
まとめて計上できるので、取得した年の利益を圧縮でき、節税につながります。

ただし、1年につき300万円という上限があります。
つまり、30万円未満の減価償却資産を複数取得した合計金額が500万円に達した場合、全額を少額減価償却資産の特例の対象にすることはできません。

また、この特例は期間限定の制度であるという点も把握しておくべきポイントです。
見直しをしながら2年ごとに延長されていますが、現在利用できるのは2024年3月31日までに取得し、事業用目的で使用を開始した資産となっています。

特例の対象となる企業範囲

特例の対象になる企業は以下の条件をクリアしている企業です。

  • 青色申告法人の中小企業者など
  • 従業員数500人以下(2020年3月31日までの取得に関しては1,000人以下)
  • 資本金もしくは出資金の金額が1億円以下
  • 連結法人ではない
  • 適用除外事業者(事業年度開始日より前の3年以内に終了したそれぞれの事業年度の平均年間所得金額が15億円を超える法人など)ではない中小企業者もしくは農業協同組合など

この条件に当てはまっていたとしても、以下に該当する場合は適用とならないので注意してください。

  • 大規模法人(資本金の金額が1億円を超えている法人、大法人(資本金の金額が5億円以上である法人など)との間に完全支配関係がある普通法人)から2分の1以上の出資を受けている場合
  • 2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている場合

特例の対象となる資産

特例の対象になるのは、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。
取得価額が10万円以上かつ30万円未満なら、ソフトウェアや特許権など無形の減価償却資産、中古車や中古パソコンなどの中古品も対象となります。

しかし、2022年4月以降は主な事業に関する貸付に利用する目的で取得された減価償却資産は対象外となっているので注意しなければなりません。
例えば、ひとりでビジネスを行っている個人事業主が節税のためにカメラを購入して知人に貸し付けるなどのサービスを行った場合、カメラの購入代金が対象外になる可能性が高いです。
一方、レンタル事業を行っている事業者が同様のサービスを提供するのであれば、特例の対象になります。

一括償却資産との違いは?

一括償却資産は、少額減価償却資産と類似していると思われがちです。しかし実際は別の資産となるため、正しく理解しておく必要があります。

一括償却資産は、10~20万円未満の資産を個別管理せず、3年で一括償却することを指します。
年度ごとに減価償却資産を管理し、3年経過した時にまとめて減価償却するという仕組みです。

事務作業を簡略化させることが大きな目的です。少額な固定資産を月割りで計算する手間もかかるため、負担軽減を目指すために一括償却資産の特例が認められています。
詳しい内容は、国税庁の〔少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)〕で確認してみてください。

少額減価償却資産の特例の利用方法


特例を活用するなら、利用方法についても理解が必要です。続いては、どのような手順で利用するのか解説していきます。

1.青色申告承認申請をする

この特例を利用できるのは、青色申告事業者のみとなります。そのため、青色申告承認申請が必要です。

個人事業主であっても、白色申告事業者は利用できません。
白色申告をしていて特例を利用したい場合は、その年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を管轄の税務署長宛に提出して青色申告を行う必要があります。
「所得税の青色申告承認申請書」は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。

青色申告事業者となると帳簿付けなどの事務手続きが増加します。
しかし、青色申告控除を受けられる、赤字が出た場合は翌年以降3年にわたって黒字の所得から控除できるなどのメリットも享受できます。

2.対象の固定資産を全額経費に計上する

特例を利用するためには、対象となる固定資産を全額経費計上することになります。仕訳方法は直接法と間接法の2種類があります。
ここでは、それぞれの方法についてみていきましょう。

直接法の仕訳方法

直接法は、貸方の勘定科目に当てはまる資産を直接計上し、価値を減額する会計処理を指します。
借方には減価償却費、貸方には固定資産の勘定科目を使用するという点が大きな特徴です。

取得価額が220万円のフォークリフト(定額法で耐用年数4年)を使い始め、減価償却費70万円を直接法で仕分けると以下のようになります。

借方 貸方
減価償却費 700,000円 車両運搬具 700,000円

このような場合、車両運搬具の帳簿残高は取得価額から減価償却費を差し引くため、150万円です。貸借対照表の固定資産には以下のように記載します。

車両運搬具 1,500,000円

直接法で仕訳を行うと、資産の帳簿価額がどのくらい残っているのか把握しやすくなります。
しかし、貸借対照表には資産の取得価格が反映されないので、固定資産台帳などを別途確認しなければなりません。

間接法の仕訳方法

間接法は、固定資産から減価償却費を直接差し引くことなく、減価償却累計額という勘定科目を使って仕訳をする方法になります。
減価償却累計額を利用することによって、毎年計上する減価償却費を積み上げていくという仕組みです。

取得価額が220万円のフォークリフト(定額法で耐用年数4年)を使い始め、減価償却費70万円を直接法で仕分けると以下のようになります。

借方 貸方
減価償却費 700,000円 車両運搬具 700,000円

このような場合、車両運搬具の取得価額が220万円、減価償却累計額が70万円です。貸借対照表の固定資産には以下のように記載します。

車両運搬具 2,000,000円
減価償却費累計額 △700,000円

固定資産から差し引くことがないので、取得価額と減価償却累計額の2つを記載する点が大きなポイントです。

3.確定申告を行う

少額減価償却資産の特例を受けるためには、確定申告が必要不可欠です。確定申告書に明細を添付しなければならないためです。

個人事業主の場合

個人事業主が青色申告をする際、青色決算書の添付が必要になります。青色決算書の中には「減価償却費の計算」という明細書があり、以下の項目を記載します。

  • 減価償却資産の名称等:「少額減価償却資産」と記載
  • 取得年度:申告する年度だけ記載
  • 取得価額:その年度に取得した少額減価償却資産の取得価額合計を記載
  • 償却方法:「少額」と記載
  • 本年分の必要経費算入額:事業専用割合が100%の場合は取得価額の合計額を記載(100%とならない場合は、取得価額欄に記載した金額に事業専有割合を掛けた金額)
  • 摘要:「措法28の2(明細は別途保管)」と記載

法人の場合

法人の場合は、特例を適用するために「別表16(7)」という書類が必要になります。これは、法人税の別表の中でも作成が簡単な書類です。
記載する内容は、以下のとおりです。

  • 資産区分(種類・構造・細目)
  • 事業の用に供した年月日
  • 取得価額または製作価格
  • 法人税法上の圧縮記帳による積立金計上額
  • 差引改定取得価格
  • 当期の少額減価償却資産の取得価額の合計額

別表16(7)を作成する際、購入した資産を固定資産台帳で整理した上で、特例を適用できる資産を転記するといった追加の作業が必要になります。
ミスが不安な時は、便利なソフトを使うことも検討してみてください。

少額減価償却資産の特例を使った節税方法


特例を使うことで、節税効果も期待できます。次は、いったいどのような方法で節税できるのかについて解説していきます。

事業年度ごとに分散して特例を適用させる

特例を利用するには、30万円未満の資産(限度額は300万円)が要件となっています。
まとめてしまうと特例が適用にならない可能性があるので、事業年ごとに分散させるのがおすすめです。

300万円の限度額を超えてしまう場合は、まず300万円分を購入し、残りを翌年に購入するといったように取得のタイミングを分散させる方法になります。
購入時期を調整することで、いずれの年度も限度額を効果的に活用できるためです。利益の圧縮につながることが大きな理由です。
ただし、その資産がどうしても必要な場合は、資金繰りや事業運営の観点でしっかりと考える必要があります。

税抜経理にする

30万円未満に消費税が含まれるかどうかは、経理処理の方法によって異なります。税抜処理をしている場合は、税抜30万円未満の減価償却資産が特例の対象になります。
しかし、税込処理をしている場合だと、税込30万円未満でなければ対象外です。税抜価格が29万円だった場合を例に詳しく解説していきます。

・税抜処理
税抜処理だと、30万円未満という条件をクリアするので問題なく一括計上できます。
しかし、消費税の課税事業者だけが利用でき、免税事業者は利用できないので注意が必要です。

・税込処理
29万円に消費税をプラスすると319,000円になります。そのため、30万円以上で一括計上は不可です。

少額減価償却資産の特例を利用する際の注意点


特例の利用を考えているのであれば、注意点も把握しておく必要があります。最後に、把握しておくべき注意点をピックアップしてご紹介します。

資産によっては300万円の上限で利用できない

資産によりますが、300万円の上限で利用できないケースがあります。
例えば、27万円の減価償却資産を12個購入した場合、27万円×12個で合計は324万円になります。このような場合、特例を利用できるのは11個分です。
残りの1個は、特例の対象となる部分とならない部分で分けられないことが理由です。

また、300万円に達するまでの金額に関して、事業年度が1年未満だと月割する必要があります。
事業年度が6カ月の場合は上限が150万円(300万円×6/12)に達するまでとなることも覚えておいてください。

一般的な減価償却や一括償却とは重複適用できない

少額減価償却資産は、減価償却や一括償却とは重複適用できない点にも注意してください。
通常の減価償却にするのか、特例を利用するのかをあらかじめ決めなければなりません。
取得価額が10万円未満の減価償却資産を取得したのであれば、少額の減価償却資産の損金算入を適用するのが一般的です。

青色申告法人の中小企業者などで取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した時は、通常の減価償却・一括償却(取得価額が20万円未満の場合)・特例のどれかを選択できます。

租税特別措置法上の特別償却などと重複適用できない

租税特別措置法上の特別償却などと重複した適用ができないことも、把握しておかなければなりません。
特別償却は通常の減価償却費だけではなく、取得価額のうち一定金額を特別償却費として減価償却できるという制度です。
中小企業者などが一定額以上の機械などを取得した場合、基準取得価額のうち30%が特別償却として認められます。

その他にも、法人税額から控除できる税額控除制度や固定資産の価格を下げることによって取得年度の税負担を軽くする圧縮記帳といった制度も適用できません。
なぜなら、これらの制度はどれも減価償却資産に関する特別措置だからです。

まとめ・少額減価償却資産の特例は上限金額や重複利用に注意して活用しよう!

少額減価償却資産の特例を利用するためには、条件をクリアしなければなりません。
また、重複利用できない制度もあり、詳細まで確実に把握しておかなければ適切な手続きもできなくなります。
せっかくの節税効果も得られなくなってしまうので、正しい知識を身に付けた上で活用するようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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