新札対応の設備投資時に利用できる補助金・助成金とは?対応が遅れるリスクも解説

資金調達手帳

新札への対応で利用できる補助金・助成金は多い


2024年7月3日より、新札が発行されます。新札が発行されることに伴って、事業者はレジや自動券売機を新札に対応できるように備えなければなりません。

政府は事業者がスムーズに新札対応を行えるように、補助金や助成金制度を用意しています。補助金や助成金制度を活用すれば、経済的な助成を得つつ業務の効率化や賃上げを実現できるでしょう。

こちらの記事では、新札対応にあたって活用できる補助金や助成金制度を解説します。新札対応の準備を進めている事業者の方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

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新札に対応する際に利用できる補助金・助成金


実際に新札が発行されたら、使用しているレジや自動券売機を新札に対応できるようにする必要があります。

しかし、システムのアップデートや最新機器を導入する際には、コストが発生します。経済的負担を抑えるためにも、利用できる補助金や助成金について知っておくことは有意義です。

以下で、新札に対応する際に利用できる補助金・助成金を解説します。

中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金とは、省力化機器の導入費用に対する補助事業です。飲食サービス業や小売業の事業主が自動券売機(食券販売機等)や自動精算機を導入したときに利用できる可能性があります。ただし、既に所有する製品の置き換えは補助対象外となります。

中小企業省力化投資補助金は、あらかじめ決められた「製品カタログ」の中から対象製品を選択する必要があります。製品カタログは、中小企業省力化投資補助金のホームページから確認可能です。

なお、中小企業省力化投資補助金の補助額と補助率は以下のとおりです。

従業員数 補助上限額 補助率
5人以下 200万円(300万円)※ 1/2
6~20人 500万円(750万円)※
21人以上 1000万円(1500万円)※

※大幅な賃上げを行う場合

設備の導入だけでなく賃上げを行うと補助上限額が引き上げられることから、賃上げを検討している事業主は活用を検討しましょう。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、自社の課題にあったITツールを導入する経費の一部を補助する事業です。補助対象となるのは、IT導入支援事業者として登録されている事業者が製造している製品です。

例えば、NECプラットフォームズや藤田電機製作所の「POSレジ」などが該当します。決済ツールを充実化させたいときに、活用を検討すべき補助金といえます。

補助率 補助額
1/2以内 1プロセス以上:5万円以上150万円未満
4プロセス以上:150万円以上450万円以下

レジの他にも、さまざまなITツールがIT導入補助金の対象となっています。IT機器の導入を検討している事業主の方は、活用を検討しましょう。

なお、IT導入補助金を申請するためには、補助対象の製品とソフトウェアと併せて導入する必要があります。POSレジ単体だけでは補助の対象とはならない点に注意しましょう。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が販路開拓に取り組む費用の一部を補助する制度です。

さまざまな制度変更(新札の発行・被用者保険の適用拡大・インボイス導入など)に対応するための経営計画を作成することで、販路開拓の取り組みにかかわる経費の一部に関して補助を受けられます。

小規模事業者持続化補助金には、以下のように5つの枠組みと1つの特例があり、最大で250万円の補助を受けられます。

通常枠(補助上限50万円) 特別枠(補助上限200万円)
賃金引上枠 卒業枠 後継者支援枠 創業枠
常時使用する従業員数が「商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)」の場合5人以下、それ以外の業種の場合20人以下である事業者 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+50円以上とした事業者 小規模事業者として定義する従業員数を超えて規模を拡大する事業者 アトツギ甲子園のファイナリスト等となった事業者 過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受け創業した事業者
インボイス特例(補助上限50万円)
免税事業者のうち適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者

POSレジをはじめ、キャッシュレスに対応したレジや券売機を導入したとき補助対象となります。さまざまな決済手段を導入する際に活用できる補助金として、知っておくとよいでしょう。

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が制度変更(新札の発行・被用者保険の適用拡大・インボイス導入など)に対応するため革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資を支援する補助事業です。

省力化(オーダーメイド)枠やデジタル枠、グローバル枠などの枠がありますが、新札に対応するための設備投資で対象となるのは「省力化(オーダーメイド)枠」です。補助上限額と補助率は以下のようになっています。

補助上限額※2 補助率※3
5人以下:750万円(1,000万円)
6~20人:1,500万円(2,000万円)
21~50人:3,000万円(4,000万円)
51~99人:5,000万円(6,500万円)
100人以上:8,000万円(1億円)
中小企業:1/2
小規模・再生事業者:2/3

※2()は大幅賃上げを行う場合
※3 補助金額が1,500万円までの場合

なお、ものづくり補助金の申請にあたっては「給与支給総額の増加」「最低賃金の引き上げ」「付加価値額の増加」に関する3~5年の事業計画を策定する必要があります。具体的に求められている内容は、以下のとおりです。

  • 給与支給総額:年+1.5%以上の増加
  • 付加価値額:年+3%以上の増加
  • 事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円の水準に引き上げる

目標が未達の場合は受給した補助金の返還を求められることがあるため、注意しましょう。

業務改善助成金

業務改善助成金とは生産性向上に資する設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資にかかった費用の一部を助成する制度です。

レジや自動券売機などの設備投資と、事業場内の賃金引き上げをセットで行う必要があります。事前に設備投資と賃上げの計画を立案・申請し、事業の結果を報告することで最大600万円の助成を受けられます。

なお、業務改善助成金の助成額と助成率は以下のとおりです。

コース 事業場内最低賃金の引き上げ額 引き上げる労働者数 右記以外の事業者 事業場規模30人未満の事業者
30円コース 30円以上 1人 30万円 60万円
2〜3人 50万円 90万円
4〜6人 70万円 100万円
7人以上 100万円 120万円
10人以上※3 120万円 130万円
45円コース 45円以上 1人 45万円 80万円
2~3人 70万円 110万円
4~6人 100万円 140万円
7人以上 150万円 160万円
10人以上※3 180万円 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円 110万円
2~3人 90万円 160万円
4~6人 150万円 190万円
7人以上 230万円 230万円
10人以上※3 300万円 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円 170万円
2~3人 150万円 240万円
4~6人 270万円 290万円
7人以上 450万円 450万円
10人以上※ 600万円 600万円

※3 10人以上の上限額区分は、特例事業者のみ対象

【助成率】

900円未満 9/10
900円以上950円未満 4/5(9/10)※4
950円以上 3/4(4/5)※4

※4 ()は生産性要件をクリアした事業場

事業完了予定期日は令和7年2月28日までの間となるため、機器を導入するスケジュールに合わせて申請しましょう。交付決定前に設備導入をすると助成対象外となりますのでご注意ください。

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは、労働時間の短縮のための設備・機器導入や、時間外労働を抑えるための環境整備・コンサルティング依頼費用の一部を助成する制度です。

以下のいずれか1つ以上を実施したうえで成果目標を達成する必要があります。

  • 労務管理担当者に対する研修
  • 労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置など)

【成果目標】

  • 36協定で時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出ること
  • 年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
  • 時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定を1つ以上を新たに導入すること

なお、支給額は以下のうちいずれか低いほうが適用されます。

  • 成果目標の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4(常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取り組みで6から9を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合は4/5)

成果目標の上限額は以下のとおりです。

  • 成果目標1:100万円~200万円
  • 成果目標2:25万円
  • 成果目標3:25万円

働き方改革推進支援助成金の主な目的は、労働時間の抑制と従業員の賃上げです。そのため、単にPOSレジをはじめとした機器の導入だけでは足らず、成果目標をクリアする必要がある点は押さえておきましょう。

新札対応が遅れることによるリスク


新札への対応が遅れると、事業主としてさまざまなリスクに直面します。場合によっては事業に大きな悪影響をもたらす恐れがあるため、気を付けましょう。

以下で、新札対応が遅れることによる具体的なリスクを解説します。

売上の機会損失

新札対応が遅れることで、売上の機会損失が発生する恐れがあります。例えば、食券制の飲食店に設置されている券売機が新札に対応していないと、利用客が支払えないケースが考えられるでしょう。

新札の発行が始まった直後は新札が十分に流通していないため、当面は困らないかもしれません。しかし、徐々に新札が流通する中で新札への対応が遅れると、顧客が困ってしまう事態が想定されます。

売上が減少すると、事業の存続に悪影響を与えかねません。そのため、「すぐに対応しなくても大丈夫だろう」と考えるのではなく、可能な限り早い段階から新札への対応を進めるべきでしょう。

顧客離れ

新札対応が遅れることで、顧客離れが起こるリスクがあります。買い物をしようとしたときに「店側の都合で払えなかった」という事態が起こると、顧客からの印象は悪くなるためです。

他にも、新札の発行に伴って完全にキャッシュレス決済へ移行する店舗が増えると想定されます。完全にキャッシュレス決済に移行すると、クレジットカードやQRコード決済の手段を持たない顧客が離れてしまうでしょう。

近年はキャッシュレス決済を行う人が増えているとはいえ、現金決済を行う人も高齢者を中心に一定数います。そのため、店舗における現金決済率の割合を調査し、もし現金決済の割合が高い場合は早急に新札への対応準備を進めるべきでしょう。

補助金・助成金を活用して新札対応をスムーズに進めよう

新札対応が遅れると、売上の機会損失や顧客離れにつながる恐れがあります。顧客からの信頼を失うと事業に悪影響が出てしまうため、早い段階で新札対応を進めましょう。

補助金・助成金を活用すれば、経済的な助成を得ながら新札対応を進められます。また、業務生産性の向上や職場内の賃上げなどのメリットにつなげることも可能です。

創業手帳別冊版「補助金ガイド」では、毎月最新の補助金や助成金の情報をお届けしています。補助金や助成金を活用するメリットや注意点などを説明しているので、ぜひ有効活用してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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