【税理士監修】資本金とは?基準別の決め方や目安など基本をわかりやすく解説!

資本金の役割を知って自社に合う金額を選ぼう


会社の資本金は、経費や事業運営のための費用として使えるお金です。資本金が多いことで会社の信用力や体力があることを示します。

しかし、資本金が多いことによって税金面での負担が大きくなることもあるため、注意してください。特に「1,000万円」「1億円」という金額は、消費税や法人税の取扱いが変わる重要な分岐点です。

資本金を決める時の基準や資本金の相場をまとめました。

監修者:尾﨑 安貴(おざき やすたか) 尾﨑安貴税理士事務所 代表 税理士/株式会社リオ経営コンサルティング代表取締役CEO
専修大学法学部卒業。国税職員として33年勤務し2025年に開業。JA福岡中央会のアドバイザーとしても活躍。起業家の目線に立った実践的なアドバイスに定評があり、創業支援、人材育成のほか事業承継から相続に至るまで、業種・税目に関係なく「攻めの計画と守りの税務」の両面から多くの相談を受けている。

資本金とは


会社を設立するためには資本金が必要となります。資本金とは、会社の設立や増資によって出資者から払い込まれたお金のことです。株式会社であれば、株主が会社に出資した金額を指します。

銀行融資のような負債は後から返済する義務がありますが、資本金は返済の必要がない資金です。資本金が多ければ多いほど会社に財務上の余力があるといえます。

第三者から出資を受けることなく創業していれば、創業者の自己資金がそのまま資本金となるのが一般的です。

以前は最低資本金が設定されていて、株式会社の設立に1,000万円以上、有限会社は300万円以上必要でした。しかし2006年5月施行の会社法により最低資本金制度が撤廃され、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。

資本金は会社の経営に関わる重要な要素です。資本金にまつわる基礎知識を確認するようにしてください。

自己資本として比較的自由に使える

資本金は、知人からの借り入れなど個人的に返済しなければならない場合を除いて、返済義務がない資金です。

返済義務がない資金は貸借対照表の純資産に分類される「自己資本」であり、使い道は基本的に決められていません。

会社のお金として、新規事業や設備投資など自由に使い道を決められます

資本金が多ければ、それだけ会社の事業の円滑化や成長のために使うことが可能です。

与信調査に使われる

一般的に、初めての取引先と取引をする時には与信調査がおこなわれ、信用情報を見られます。信用情報のひとつとなるのが資本金です。

特に、設立したばかりの会社はまだ実績や成果が少ないため、資本金の額が会社の信用情報として評価されます。

資本金が多ければ財政の安定性や支払い能力が十分あり、信用に足るといえます。逆に少なすぎると先行きに不安があり、信用力に乏しい印象を与えてしまうでしょう。

信用できないと判断されれば取引を断られる可能性もあるなど、資本金は与信調査の結果を左右する要素です。

融資の審査に影響する

資本金額は、金融機関から融資を受ける時にも参照されます。融資の審査が通るかどうかのほか、融資額にも影響を与えるのです。

創業融資の実務では、自己資金(その多くは資本金の原資となります)の2〜3倍程度が融資額のひとつの目安といわれます。日本政策金融公庫の創業融資では自己資金要件は撤廃されましたが、審査では自己資金の蓄積過程が引き続き重視されています。

会社の規模や体力を示す

資本金は、会社の規模や体力を示す指標です。資本金が少ない会社は経営を続ける体力に乏しく、長期的な経営維持が困難になる恐れがあります。

例えば、スタートしたばかりの企業は売り上げが不安定になることも少なくありません。資本金が十分あればしばらくは手元の資金でまかなえますが、資本金の少ない状態ではすぐに財政悪化を招いてしまうでしょう。

会社の規模や体力となる資本金が大きければ、売り上げが安定するまでの資金にも余裕ができ、経営を維持しやすくなります。

中小企業の資本金の平均額とは?


実際に起業した会社はどの程度の資本金が一般的なのでしょうか。

総務省・経済産業省が発表した「令和3年経済センサス‐活動調査(5年ごとに実施)」によると、調査総数170万社を超える企業のうち、最も多い資本金の設定額は「300万~500万円未満」と、約3割を占めています。次に「1,000万~3,000万円未満」、「500万~1,000万円未満」と続きました。

初期投資で店舗や設備機器に費用がかかる業種は資本金が高いともいわれ、業種や業態によって違いがあります。

資本金を決める時には、これから開業する業種の資本金がどの程度なのか調べておいてください。

出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計
e-Stat 政府統計の総合窓口「企業産業(小分類)、資本金階級(10区分)別会社企業数、事業所数、男女別従業者数及び常用雇用者数-全国、都道府県、大都市

資本金を1円にしても問題ない?

株式会社設立には1,000万円の資本金が必要でしたが、2006年の会社法施行によって1円の資本金でも起業できるようになりました。

手持ち資金が少ない人や、初期費用を抑えたい人にとっては朗報です。しかし、1円で会社を設立することにはデメリットもあります。

まず、社会的な信用の問題です。資本金が1円であることにより信用度が低下し、銀行口座を開設しにくくなったり、新規採用での人材確保が難しくなったりするリスクがあります。

加えて、資本金が少ないことで債務超過になりやすく、資金繰りで行き詰ってしまう可能性があるかもしれません。

また、設立直後は登記事項証明書で資本金が誰でも確認できるため、資本金1円は取引先・金融機関に対して「事業への本気度」を疑わせる材料にもなりかねません。事業に支障が出ないようにある程度の資金を確保することをおすすめします。

基準別に考える資本金の決め方


資本金を決める時に、深く考えずに最低金額である1円にしたり、逆に余剰のお金をすべて資本金にしたりすることはおすすめできません。

どのようにして資本金を決めればいいのか基準を説明します。

必要な運転資金から決める

必要な運転資金を見積もっておき、そこから資本金をいくらにするか決める方法があります。固定費のほかに、万が一に備えた費用も含めるのがポイントです。

起業して事業が軌道に乗るまでは利益がなく、赤字になるケースも想定できます。必要な投資ができなかったり、新しい仕入れができなかったりし、事業に悪影響となりかねません。

資本金を決める時には、事業が円滑に進まず、売り上げが安定しないことも踏まえて、3か月から半年程度の運転資金をベースとして考えてみてください。

売り上げが安定するまでの期間をまかなうための運転資金として資本金を設定します。

税金から考える

税金は資本金の金額によって変わることがあるため、節税対策から資本金を考えるのも一手です。以下では資本金で扱いが変わる税金を紹介しています。

消費税

新設法人は、設立1期目・2期目には基準期間(前々事業年度)がないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。

ただし、設立時の資本金が1,000万円以上の法人は、この特例の対象外となり、設立1期目から課税事業者となります。そのため、消費税負担を抑えたい場合は、資本金を1,000万円未満で設立することが一つの目安です。

一方、資本金が1,000万円未満でも、特定期間(前事業年度開始から6か月間)の課税売上高と給与等支払額の両方が1,000万円を超えた場合は、2期目から課税事業者になります。

また、2023年10月に始まったインボイス制度により、免税事業者のままでは取引先が仕入税額控除を受けられない場合があります。そのため、資本金にかかわらず、設立当初からインボイス発行事業者として登録し、課税事業者を選択するケースも増えています。 インボイス登録が必要かどうかは、取引先が事業者中心か、消費者中心かを踏まえて判断しましょう。

インボイス制度の2割特例・3割特例については、以下の記事で詳しく解説しています。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金ついて、詳しくはこちらの記事を>>
インボイス制度の「3割特例」とは?経過措置の内容や要件、ポイントなどを詳しく解説

法人税

資本金が1億円以下であれば法人税法上の中小法人となり、年800万円以下の所得について法人税率が15%(本則23.2%)に軽減されます。この軽減税率は令和7年度税制改正で延長され、2027年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。

ただし、同改正により所得が10億円を超える事業年度は税率が17%となるほか、直前3事業年度の平均所得が15億円を超える「適用除外事業者」は軽減の対象外(19%)です。創業期の会社が該当するケースはまれですが、制度が時限措置である点は押さえておきましょう。

なお、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税が創設されますが、基準法人税額から年500万円が控除されるため、多くの中小企業には当面影響がありません。

地方税

法人住民税などの地方税も、資本金額によって税率が変わる仕組みになっています。

赤字でも納付が必要な法人住民税の均等割は、資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下であれば最低区分(東京都の場合、年7万円)で済みます。1,000万円を超えると均等割が上がるため、ここでも1,000万円が分岐点です。

また、資本金1億円超の法人には法人事業税の外形標準課税が適用され、赤字でも付加価値割・資本割の負担が生じます。令和6年度税制改正により、2025年4月以後開始事業年度からは、減資して資本金を1億円以下にしても資本金と資本剰余金の合計が10億円を超える場合は対象が継続するなど、減資による適用回避が制限されています。

登録免許税

会社を設立する時の登録免許税は、会社の形態や資本金の額によって金額が違います。
合同会社と株式会社の場合で以下のように金額が異なるため、資本金を決める際の参考にしてください。

会社形態 登録免許税
合同会社 いずれか高い方(資本金857万円以下で①となる)

①6万円

②資本金額×0.7%

株式会社 いずれか高い方(資本金2,143万円以下で①となる)

①15万円

②資本金額×0.7%

許認可の要件から決定する

事業の許認可の中には、最低限必要な資本金の金額が定められているものもあります。

例えば労働者派遣事業の場合、資産の総額から負債の総額を控除した基準資産額が、事業所ごとに2,000万円以上なければ許可されません。ほかにも、建設業許可(一般)では自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力、有料職業紹介事業では基準資産額500万円以上などの要件があります。

これから始めようとしている事業にどのような許認可が必要なのか、資本金の規定があるかどうかもあらかじめチェックしてください。

融資や補助金・助成金の要件を考慮する

銀行で融資を受ける時に、売上高や財務諸表、資本金がチェックされます。融資要件として一定額の資本金が求められる場合があるため、あまりに少ないと融資の申し込みができない可能性が高まるでしょう。

また、行政による補助金や助成金の条件に資本金額が定められていることもあり、規定に満たなければ申請できません。中小企業向け支援策の多くは中小企業基本法等の資本金基準(例:サービス業5,000万円以下など業種別)で対象を区分しており、資本金が大きすぎると「中小企業」の枠から外れることもあります。高すぎても少なすぎても、制度の枠から外れる可能性があります。

資本金がいくらかによって希望している額の融資が受けられなかったり、補助金や助成金が使えなかったりするケースもあるので注意してください。

競合他社とのバランスが取れるように設定する

資本金を決めにくい場合には、競合他社の資本金を調べてみる方法があります。

金融機関や取引先が自社を調べた時に、競合他社と比較してあまりに少ない資本金では取引に不安を感じさせてしまうかもしれません。

他社の資本金を調べる方法は、登記簿の取得や情報提供サービスの利用、企業ホームページの確認などが一般的です。

【早見表】資本金額で変わる主な税務上の分岐点

資本金を決める際に意識したい代表的な「壁」をまとめました。

資本金の分岐点 主な影響
1,000万円未満 ・設立1期目・2期目は原則として消費税が免税(特定期間・インボイス登録による例外あり)
・法人住民税の均等割が最低区分
1,000万円以上 ・設立1期目から消費税の課税事業者
・法人住民税の均等割が増加
1億円以下 ・法人税の軽減税率(年800万円以下の所得に15%)の対象
・交際費の定額控除(年800万円)など中小法人向け特例の対象
1億円超 ・外形標準課税の対象
・中小法人向け特例の対象外

資本金を調達する方法とは?


主な方法は、自分で資金を貯める、出資を受ける、現物出資を利用する、設立後の利益で増資するの4つです。

資本金は現物出資も可能です。現物出資は現金以外の不動産や有価証券、設備といったものを資本金にします。現物の価額は原則として裁判所が選任した検査役の調査で決まりますが、総額が500万円以下であれば調査は不要です。

銀行から融資を受けようと考えている人もいるかもしれませんが、融資を受けたお金は借入金となり、資本金にはできません。いわゆる「見せ金」(借入金を一時的に払い込んで資本金を装う行為)は会社法上問題となるため、絶対に避けてください。

資本金は増減可能!資本金を増やす・減らすとどうなる?


資本金は、取引先や金融機関、税金への影響を考えて増やしたり減らしたりできます。

資本金が増減することでそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか紹介します。

資本金を増やすメリット・デメリット

資本金を増やすメリットとデメリットを比較して、自社に有利な増資を検討しましょう。

資本金を増やすメリット 資本金を増やすデメリット
・信用度が向上する

・対外的な評価が上がりやすくなる

・財政が安定する

・一株当たりの利益が減る恐れがある

・株主の権利に影響がある

・税務上の中小企業向け特例(軽減税率等)の枠から外れる恐れがある

資本金が多いほうが取引先や金融機関からの信用が高まり、財政も安定します。

しかし、株式会社で第三者割当増資などにより発行済み株式総数が増えると、一株当たりの利益が減少し、既存株主の持株比率が下がる(希薄化する)点には注意が必要です。例えば、発行済み株式総数の3%以上を保有した株主は会計帳簿の閲覧・謄写請求権帳簿閲覧請求権を行使できるようになります。

資本金を減らすメリット・デメリット

資本金を減らすケースもあります。減資による主なメリットとデメリットは以下のとおりです。

資本金を減らすメリット 資本金を減らすデメリット
・株主への配当を増やせる

・軽減税率が適用されやすくなる

・会社の立て直しが図れる

・信用度が低下する

・対外的な評価が下がりやすい

・財政状況の悪化を招く恐れがある

資本金を減らす2つの方法が、有償減資無償減資です。

有償減資は株主への払い戻し等に、無償減資は欠損の補填や税務上の中小企業区分への移行に使われます。

減資には原則として株主総会の特別決議と、1か月以上の期間を要する債権者保護手続(官報公告・個別催告)が必要で、効力発生後は変更登記も行います。思い立ってすぐにできる手続きではない点に注意してください。

また、大企業が減資により外形標準課税を回避する動きに対応して、前述のとおり令和6年度税制改正で追加基準(資本金+資本剰余金10億円超は対象継続、2026年4月以後は大企業の100%子会社等にも拡大)が設けられています。減資による節税を検討する場合は、最新の制度を必ず確認しましょう。

資本金と資本準備金の違いについて

資本金と名前が似たお金に「資本準備金」があります。資本準備金とは出資額のうち資本金として計上しないお金であり、支払金額の2分の1までの額を資本金とせず資本準備金にできます(会社法445条2項・3項)。

登記の必要性

資本金はその額が登記事項ですが、資本準備金は登記の必要がありません。
資本準備金の取り崩し(減少)にも株主総会決議は必要ですが、登記が不要なうえ、欠損填補が目的の場合は債権者保護手続も不要なため、資本金に比べて機動的に活用することができます。

資本金額への影響

資本準備金として計上しておけば、資本金額に直接影響を与えることもありません。上記の消費税(1,000万円)や法人税(1億円)の分岐点判定は「資本金の額」で行われるため、例えば1,800万円を出資して資本金900万円・資本準備金900万円とすれば、財務基盤を厚くしつつ消費税・均等割上のメリットを確保できます。

このようにちょとしたことを知っていると軽減税率の枠から外れる心配をせず、資金を残しておくことができます。

尾﨑安貴税理士事務所 代表 税理士 尾﨑安貴のポイント

資本金を決める際は、「税務上の分岐点」と「事業に必要な資金」を分けて考えることが大切です。節税を優先して資本金を少なくしすぎると、開業後すぐに運転資金が不足し、資金繰りに苦労するケースも少なくありません。

実務では、次の3つのステップで検討すると失敗が少なくなります。

1.開業後に必要となる運転資金(業種や売上回収のタイミングなどを踏まえ、何か月分必要か)を確認する。
2.出資額のうち、資本金は1,000万円未満に抑え、残りは資本準備金に振り分けることを検討する。
3.取引先との関係を踏まえ、インボイス登録が必要かどうかを設立前に判断する。

特に2割特例が終了する2026年10月以降は、課税事業者となった場合の消費税負担も考慮した資金計画が欠かせません。資本金の金額は税金だけでなく、事業計画とあわせて専門家と相談しながら決めることをおすすめします。

まとめ・資本金は多すぎず少なすぎない金額を見極めよう

会社の資本金の最低額は1円です。しかし、資本金はただ計上するだけのものではなく、実務では、企業が成長するために使える資金でもあり、会社の信用を表すものでもありますので、少なければ良いものではありません。
運転資金の確保という「実需」と、1,000万円・1億円という「税務の分岐点」、そしてインボイス制度への対応方針を踏まえて、資本金の金額を決めてください。

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(編集:創業手帳編集部)