シニア人材活用に向けたポイントとは。シニア人材の特性と活用するための取組みを紹介

創業手帳

シニア人材の活用次第で企業の未来は大きく変わる


日本では長寿化が進むとともに、個々人のキャリアも長期化しています。
キャリアの長期化にともない、多くの企業がシニア人材を活用するための組織変更や制度導入を行っています。

しかし、企業が期待するような専門性や能力を発揮するためには、シニア自身の意識変革も必要です。
知識や経験を持つシニア人材をどのように活用するかによって、企業の将来は大きく変わるでしょう。
シニア人材を活用するために、必要な取組みや注意点を紹介します。

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シニア人材を取り巻く環境


日本の企業は、近年において大幅に人員構成が変化しました。
総務省統計局のデータによると、2020年で65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は28.7%と約3割です。
多くの企業で社員の高齢化が進む中で、組織のあり方も変わろうとしています。

若手人材の採用が難しくなる中、これからどのようにシニア人材を活用していくかが、各企業の課題です。
まずは、シニア人材を取り巻く環境について紹介します。

高年齢者雇用安定法とは

日本は少子高齢化が進み、労働人口の確保がこれからの課題となっています。
そのような中で、2021年4月に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」、いわゆる高年齢者雇用安定法が改正となりました。
高年齢者雇用安定法では、いくつかの義務が制定されています。

高年齢者雇用安定法は、高年齢者の職業安定と経済および社会への寄与を目的とした制度です。
はじまりは1971年に制定された「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」で、そののちに改正が重ねられ、2021年に再度改正となりました。
2021年の改正内容は、以下のとおりです。

1.70歳までの定年引き上げ
2.定年制の廃止
3.70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入すること
(特殊関係事業主に加えて、ほかの事業主によるものを含む)
4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入すること
5.70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度を導入すること
 a.事業主が自ら実施する社会貢献事など
 b.事業主が委託・出資(資金提供)などをする団体が行う社会貢献事業

65歳までの雇用確保(義務)に加えて、70歳までの就業の確保(努力義務)が定められています。
企業がどのような措置を講じるかについては、労使間で十分に協議して高齢者のニーズに応じた措置が必要です。

シニア人材活用が必要な理由とは

高年齢者雇用安定法が改正され、シニア人材活用に向けた取組みは社会全体で進んでいます。
シニア人材活用が叫ばれる理由のひとつが、少子化にともなう労働人口の減少です。

これから労働市場における若手人材は減少し、若手の採用が難しくなると予測されます。
そのため、できるだけミドルシニア層を確保して、少ない人数でも生産性を上げることが企業の命題です。

今後、少子高齢化が進めば、年金支給の財源確保も問題となります。
年金制度を支える若者が少なくなれば、国は年金支給開始年齢の引き上げや支給額の減少などの対策を取らざるを得ません。
シニアも、年金だけでなく雇用によって収入を維持できないと、生活が困窮してしまう場合もあるかもしれません。

人生100年時代といわれるようになり、キャリアは長期化する傾向にあります。
しかし、定年延長や再雇用によって就業を継続する人が増える一方で、ミドル、シニア層はキャリアの停滞に陥る時期でもあります。

組織内の昇進や昇格に行き詰まりを感じて、モチベーションが下がってしまう人も珍しくありません。
モチベーションの下がりやすい年代だからこそ、企業からの働きかけによる新しいキャリアの創造が求められます。

シニア採用で受け取れる助成金もある

日本では、労働力の確保、より多くの人が活躍できる社会を目指してシニア人材活用を推奨しています。
その一環に、シニア活用に取り組んだ企業を対象とした助成金があります。

専門性を発揮できる人材は少ない

まず、高年齢者のほか、就職困難者をハローワークなどの紹介で継続雇用として雇い入れる事業者に助成されるのが、特定求職者雇用開発助成金です。
これは、これから雇い入れる場合に利用できます。

65歳超雇用推進助成金は、シニア活用に向けた取組みをする企業に向けた助成金です。
65歳以上への定年引上げのほか、高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換などが該当します。
65歳超雇用推進助成金は、超継続雇用促進コースと、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースの3種類です。

それぞれ助成を受けるための要件や助成額などの条件に違いがあります。
自社の取組みに合うコースを選ぶようにしてください。

「70歳までの就労機会確保の努力義務」への企業の対応状況

シニア人材の活用は多くの企業が取り組んでいます。
しかし、選択できる取組みは、企業によって千差万別です。

株式会社パーソル総合研究所による「企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査(2020)」では、日本企業の経営・経営企画や総務・人事部門の担当者800人に対してアンケートを実施しました。
これは、シニア人材の活用の状況や方針などの実態を明らかにするとともに、シニア人材の活躍を促す制度や施策、企業や組織の特徴を探索する内容です。

調査では、シニア人材に対して何らかの施策を講じている企業は全体で62.9%で、社員数1万人を超える企業では78%に及びました。
業種別では、金融・サービスが72.6%でトップです。

定年後再雇用は「実施している」と「検討している」を合わせると86.1%でした。
しかし、再雇用後の収入は全体平均で32.5%の減少が見られています。

企業が実施するシニア人材活用の具体的な施策として最も多い回答が、一定の年齢で責任がある立場から外す「ポストオフ・役職定年制度」が38.1%でした。
次に健康支援、スキルアップ研修、キャリアプランニング研修と続きます。

シニアの年齢別にみると、スキルアップ研修を受講する人の割合は45歳以降に下がっていくのが現状です。
シニア人材の能力開発、キャリア開発はまだ拡充の余地があると考えられます。

シニア人材活用を推進する企業が抱える課題

シニア人材の活用は社会からの要請ですが、シニア人材活用が順調に行っていない企業もあります。
シニア人材の活用にどのような問題があるのか、まとめました。

半数近くの企業が課題を抱えるシニア人材活用

株式会社パーソル総合研究所による調査では、シニア人材について課題感を持っている企業の割合は49.9%でした。
加えて、5年以内に課題となると回答した企業の割合は75.8%です。
課題感が特に強かったのは、 「製造・建設」と「金融・サービス」業界でした。

どのような課題感があるのか内容を見ると、上位にはシニア本人のモチベーションの低さやパフォーマンスの低さ、さらにマネジメントの困難さが挙げられています。
企業もシニア人材活用の必要性は感じつつも、その難しさや課題への対応に困っていることがわかります。

モチベーションやパフォーマンスの低下

シニア人材特有の問題が、モチベーションの低下です。
これは、シニア本人が自分の能力開発やスキルアップを諦めていると考えているのかもしれません。
「決められた業務だけすればいい」、「とりあえず会社に残っていれば安心」と考えて働いているようなケースです。

働けることが当たり前と考えているシニア人材には、雇用の安定は当然のものではないと周知する必要があります。
シニア人材に対しては、能動的に自身のキャリアの形成を考えること、自分のスキルを活用するように求めなければいけません。

シニア人材のモチベーションやパフォーマンスは、会社からのメッセージの発信も有効です。
しかし、経営層は事業や社会変化への対応などの仕事も多いため、なかなかシニア人材まで目を向けられない場合もあるかもしれません。

シニア人材の不活性化は社内のパフォーマンス低下にもつながる問題です。
シニア人材の活用やキャリア形成は、現場に任せっきりにするのではなく、会社の施策として取り組む必要があります。

シニア人材の活用は大きく分けて3種類です。
専門性を発揮する人材と現業を継続する人材、最後に単純労働をする人材に分けられます。

シニア人材の活用の成功例としてよく紹介されるのは、専門性を発揮する人材です。
ほかの人では代わりができない専門的な知識や豊富な経験を活用した働き方で、後継者に仕事を伝承する役割も持ちます。
しかし、このような働き方ができるシニア人材はごくわずかで、多くはありません。

一方で、現業を継続しているだけの人材は、もともと担当していた仕事をそのまま継続して行います。
しかし、ずっと同じ仕事を同じ人材が担当し続けることによって、職場の新陳代謝が進まなくなる場合もあるでしょう。

また、シニア人材に単純労働を担当してもらう方法もあります。
この方法は、業務のレベルがあまり高くないため、シニア人材のスキルや支払う給与とのミスマッチが大きくなる点が課題です。

シニア人材の活用は、単純に仕事を担当してもらうだけで終わりではありません。
シニア人材の特性を活かして価値を向上させるためには、シニアがその価値を発揮できる領域や分野の開拓も求められます。

シニア人材を持て余すことが若年社員の離職を生むことも

シニア人材活用に抱える課題が、シニア社員だけに関わるものと考えるのは大きな間違いです。
株式会社パーソル総合研究所の調査では、シニア社員の不活性化は若年の社員に影響することもわかっています。

シニア社員が何をしているのかわからないなど、組織で孤立している企業では、若手社員が転職の意向を示す割合も高いことが調査で明らかになりました。
シニア社員の仕事の不透明さや疎外感は、シニア社員だけでなく、周囲で働く人にも影響しています。

その一方で、シニア社員の活躍は、若手社員の転職意向を抑制することもわかりました。
シニア社員は、活用次第で企業全体のモチベーションやパフォーマンスにもプラスの影響を与えられる可能性があります。

若手人材や中堅社員が、シニア社員から学び、自分のキャリアパスの参考にできるような関係性が望ましいといえます。

シニア人材を活用する時の注意点


シニア人材は活用方法次第で、会社の経営に様々な恩恵をもたらします。
しかし、シニア人材特有の問題もあるため、シニア人材を活用する時に、どのような点に注意すれば良いのかを紹介します。

健康状態への配慮が必要

シニア人材を雇用する場合、健康状態への配慮を考えておく必要があります。
シニア社員も自分で健康状態の変化に気が付かず、企業側も見過ごしてしまう場合もあります。

健康状態の変化に気付けるように、健康診断の受診をするほか、毎日の習慣として体調チェックを導入するよう検討すると良いでしょう。
状況によって、仕事内容を変えたり、負担を減らすように雇用条件を見直したりと柔軟に対応してください。

体力に応じた仕事配分

加齢とともに起こる体力の低下などは、誰にでも起こりえる変化です。
健康診断の結果が悪化している、体調に不安がある場合には体力の負担が少ない仕事を割り振るなどの配慮が求められます。

例えば、夜勤勤務を減らしたり、時短勤務に変更したりする取組みがあります。
本人の希望と擦り合わせて、体力に見合う仕事を配分するようにしてください。

所得の調整が必要な場合も

シニアの再雇用は、一般的に給与額は下がりますが、これは勤務時間や労働条件が変わったことの影響も大きいと考えられます。
しかし、シニア社員にとってはいきなり給与が下がったことを目の当たりにして、モチベーションが一気に低下してしまう恐れもあります。

また、急に所得が減ることで、生活に困窮してしまうかもしれません。
給与は、事前に丁寧に説明して同意を得ておくようにしてください。
給与をあまりに急激に下げるのではなく、段階的に条件を見直すなどの措置も必要です。

企業のシニア人材活用施策導入例


企業では、シニア人材を活用するために、様々な制度を導入しています。
どのような制度があるのかを紹介します。

ポストオフ

シニア人材への対応として、多くの企業がポストオフを導入しています。
ポストオフとは、一定の年齢に達した時に、課長や部長などの役職(ポスト)を退く人事制度です。

ポストオフには、若手社員が活躍しやすくなる、役職を離れることで個人能力を適正に評価しやすくなるなどのメリットがあります。
しかし、ポストオフされたシニア人材は、モチベーションが低下したり、キャリアダウンだと感じたりする場合もあります。

ただし、ポストオフによって賃金が低下したり、組織への影響力が下がったと感じたりする人が多い一方で、自由に働きやすくなったとの意見もありました。

発言やチャレンジがしやすくなる、新しい学びをスタートできることはポストオフの大きなメリットのひとつです。

ポストオフの前には、事前に面談して待遇の変化や企業がシニア社員に求める成果や働き方を説明してください。
シニア人材が心機一転してやりがいを、見い出せるようなポストオフを目指しましょう。

健康支援

シニア人材を活用するためには、健康面での支援も欠かせません。
健康診断の実施や日々の体調チェックのほか、健康に関係するセミナーや運動習慣を定着させるなど、健康意識を高める取組みも健康支援の良い方法のひとつです。

健康支援は、社内で行うのではなく外部委託する方法もあります。
社員の健康をサポートするためのアプリやサービスも登場しているので、チェックしてみてください。

スキルアップ研修やリカレント教育を促進する

シニア人材は、自分の可能性を閉ざしてしまっていたり、新しいことを覚えたくなかったりする問題を抱えているかもしれません。
また、役職から遠ざかったことで自分は組織に求められていないと思い込んでしまう場合もあります。

シニアの意識を高めるためには、スキルアップ研修やリカレント教育が有効な手段です。
リカレント教育とは、教育と就労を繰りかえす学び直しの制度で、大学や専門のスクールに通いながら働きます。
シニア人材が新しい視点を養うことは、企業にとってもプラスに働きます。

期限を設けて出向してもらう

シニア人材には、今までと同じ職場を離れて外部で活躍してもらう方法もあります。
シニア人材は、会社の様々な業務を経験して中だるみしてしまい、新しいことを覚える楽しさを失ってしまっているケースもあります。

出向して新しい知識やノウハウを学べば、新しい環境で新鮮さを取り戻すかもしれません。
また、副業や兼業を認めることも同様の効果が得られます。
社外で得られたネットワークやスキルは、もとの職場でも役立つはずです。

まとめ

シニア人材の活用は、企業だけが躍起になってもうまくいきません。
シニア自身にキャリアの振返りや希望するキャリアパスを整理してもらい、企業はキャリアデザインやスキルアップ研修を用意するなどの対策が必要です。

シニア人材と企業の話し合いや合意がとても重要です。
シニアは自分の強みや特性を知り職場で活かし、企業はシニア人材の能力を活用するために面談や制度によるサポートを提供するなど、双方向から関係を築きましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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