個人事業主の引越しってどうすればいいの?手続きや経費についてまとめました

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個人事業主の引越しは事前に準備しておこう


個人事業主は、事務所と住居を同一にしている場合も多いです。しかし、何らかの理由で住居兼事務所を引越すこともあるでしょう。
この場合、引越しにかかる各種手続きや、かかった費用の経費計上について、しっかり覚えておく必要があります。

個人事業主で引越す予定のある人は、各種手続きや会計処理を前もって覚えておけば、準備もスムーズです。
今回は、個人事業主が引越しをする際、どういった手続きが必要なのかを解説します。

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この記事の目次

個人事業主が引越しをした時の確定申告の場所はどうなる?


個人事業主が事務所の引越しを行う時、確定申告をどの税務署に行うのでしょう。この場合、引越先の事務所の自治体や住所地によって異なります。
こちらでは、確定申告を行うべき場所についてあげていきます。

引越先の管轄税務署が以前と同じ場合

事務所を引越しした先の管轄税務署が前住所と同じ場合、確定申告を行う税務署は変わりません。
ただし、納税地(開業の際に指定した、納税を行う住所)の変更手続きと、廃開業にかかる内容変更の手続きは必要です。
開業の際に管轄税務署に提出した書類となりますが、また再提出する必要があります。

納税地とは

納税地とは、広くは住所地と同様とするケースが多いですが、3つのパターンから選択することが可能です。

  • 住民票を置いている場所=居住地
  • 住民票がある場所以外で、実質メインで生活している場所(居所)
  • 住居と事務所が別にある場合、その事務所

2つめと3つめに関しては、管轄税務署との位置関係により、より納税に利便性が高い場合を選択しても良いとされています。

引越先の管轄税務署が変わる場合

引越しした事務所が前住所と異なる管轄の場合、基本的には、確定申告を行う時点で納税地がある住所の管轄税務署で行うこととされています。
手続きは、上記の管轄事務所が同じ場合と変わりません。ただし、手続きを行う場所は、前住所の管轄税務署です。

確定申告の時期に引越しした時

確定申告を行う税務署は、確定申告の提出時期に関係します。
これは、確定申告を行う税務署=申告をした時点の納税地となるためです。

例えば、2月28日に引越しするとして、確定申告を2月16日に済ます場合は、申告する場所は旧住所の管轄税務署です。
一方、3月15日に確定申告を行うなら、申告は新住所の管轄税務署となります。

住所地と実際に住んでいる住所が違う場合

開業の際に申請した住所地と、実際に住んでいる住所が異なっている(居所)場合、納税地について住所地から居所に変更することが可能です。
上記のケースでは、確定申告を行う税務署は居所の管轄に変更されます。

納税地を居所に変更する時は、住所地の管轄税務署と居所の管轄税務署の両方に、しかるべき手続きを取る必要があります。

個人事業主の引越しで必要な手続きは?


個人事業主が事務所の引越しを行った場合、必要な書類は以下のとおりです。

必要な届出書 提出の必要があるケース 提出場所・期限
【所得税】
個人事業の開業・廃業など
届出書
・事務所の移転があった時 ・納税地の所轄税務署
(納税地移転の場合は
前納税地の所轄税務署)
・事務所などを移転した日から1カ月以内
【所得税・消費税】
所得税(消費税)の納税地の異動または変更に関する届出書
・納税地を変更した場合
・住所地から居所に納税地を移す場合
・住所とは別に事務所を構えてそこを納税地とする場合
・居所もしくは事務所から住所地に納税地を移す場合
・変更前の所轄税務署へ書類を提出
・納税地を移したらなるべく早めに
【振替納税】
預貯金口座振替依頼書兼
納付書送付依頼書
・振替納税を利用している場合 ・納税地の管轄税務署
もしくは書類に記載した金融機関
・振替納税の期限まで
【健康保険・厚生年金】
適用事業所名称/所在地変更(訂正)届
健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届出書
・事務所が所在地を移す場合 ・移転後の所在地を管轄する年金事務所に提出
・所在地変更から5日以内
【労働保険】
労働保険名称、所在地等変更届
・事務所が所在地を移す場合 ・移転後の所在地を管轄する年金事務所に提出
・所在地変更から10日以内
【個人事業税】
事業開始(廃止)等申告書
・移転先で事業を始める時 ・所轄の都道府県税事務所に提出
・事業を始めて1ヵ月以内

【参考】
個人事業者の納税地等に異動があった場合や事業を廃止した場合の届出書とその提出期限の表
納付手続(事前準備)
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き
適用事業所に関するQ&A
個人事業税(よくあるご質問)

以下では、それぞれの書類について説明します。

税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出

引越前の住所における管轄税務署に、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
この書類は開業時にも提出したものですが、引越先の住所を記載することで、書類の内容変更が可能です。
提出期限は、変更があってから1ヵ月以内と定められています。

税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」を提出

納税地を変更したら、所得税および消費税の納税を行うべき住所が変わります。
そのため、前納税地の管轄税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」を提出します。
これにより、納税すべき場所を変更することができます。

提出期限の規定はありませんが、変更後は直ちに提出することをおすすめします。

青色申告を行っている時は

確定申告における青色申告のためにも、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」は必須です。
納税地の変更をする場合は、この手続きを行わなければ正しい納税を行うことができません。

ただし、税制上では上記の手続きが必要ですが、開業時に提出した「青色申告承認申請書」の再提出は行わずとも良いとされています。

「納付書送付依頼書・預貯金口座振替依頼書」を税務署に提出

所得税および消費税を納付する際、振替納税を行っている人で、振替納税の納付書の送付先や口座振替先を変更する時は、「納付書送付依頼書・預貯金口座振替依頼書」を提出します。
この手続きを行わなければ、銀行口座からの税金の引落しができなくなります。

変更した納税地もしくは開設した口座の銀行に、この書類を提出することを忘れないようにしましょう。

振替納税とは

振替納税について説明すると、所得税および消費税について、銀行口座からの振替えで行うものを指します。
振替納税の適用を受けるには、あらかじめ「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出することが必要です。

そして、納税地を移転した際には、同様の書類の内容を変更し再提出することで、振替納税の引落先を変更できます。

労働保険・社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している場合も届け出る

労働保険や健康保険・厚生年金などの社会保険に加入している場合、その適用先を事務所移転先にしなければなりません。

この時、日本年金機構に「労働保険 名称、所在地等変更届」(労働保険用)、「健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届出書」(健康保険・厚生年金用)をそれぞれ提出します。
それぞれの提出期間は、前者は変更から10日以内、後者は変更から5日以内です。

都道府県税事務所に「事業開始(廃止)等申告書」を提出

上記の各書類に加え、事務所移転の際には都道府県税事務所にも手続きが必要です。この時提出する書類は、「事業開始(廃止)等申告書」です。
これにより、管轄する自治体に個人事業税(地方税)を正しく納付することができます。

住居のみの引越しなら届け出不要

ここまで説明した諸手続きは、事務所を移転する場合です。住居兼事務所をそのまま移転する際には、説明した手続きが必要です。
ただし、納税地とする事務所はそのままで、住居のみ引越しをする場合は、諸手続きは必要ありません。
納税地さえ変わらなければ、サラリーマンと同じで手続きを行う必要はないとされています。

住居は変わらず事務所のみ引越しする場合は、上記の諸手続きが必要である代わりに、住民票の移転をする必要はありません。

住所以外の場所で納税する納税地の特例

前述のように、生活の拠点となる住居とは別に、実質継続的に居住している場所(居所)がある場合や事務所が別にある場合、この居所を納税地とすることが認められています。
これは、「納税地の特例」であり、基本的な納税地は住所地であるものの、何らかの事情で居所もしくは事業所に納税地を置くことが可能になるものです。

この「納税地の特例」を受けるためには、もともとの納税地=住所地を管轄する税務署に「所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する届出書」を提出します。

納税地の変更を行うかどうか

上記のように、納税地を変更するか否かで、行うべき手続きには違いが出ます。その違いとは、以下のようなものです。

・居所を納税地とする時
この場合、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出手続」を、住所地(納税地の変更前)の管轄税務署に提出します。

・事務所を新設して納税地とする時
新しく事業所を構えてそこを納税地とする場合、「事業所等の新設・廃止申告書」を提出し、さらに「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」を提出します。

それぞれの提出場所は、前者は都道府県、後者は納税地変更前の管轄税務署です。

・移転した事務所を納税地とする時
この場合は、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出手続」のみを、納税地変更前の管轄税務署に提出します。

納税地の異動と変更について

税制上では納税地を変える手続きは異動か変更に分かれています。
これらの違いは、住所地および事務所を引越しして納税地を変える(異動)か、住所地から居所・もしくは既存の事業所に納税地を変えるか(変更)です。
自身の引越しのケースに合わせて、手続きの違いを覚えておきましょう。

書類の提出方法について

個人事業主の引越しにかかる書類を、それぞれの税務署・日本年金機構・都道府県税事務所へ提出する場合には、下記のような方法があります。

・窓口に直接持参する
この場合、多少手間がかかる分、不備や疑問点があればすぐに担当者に聞くことができます。
もし、窓口の営業時間外しか行けない場合は、時間外にも受付けしている収受箱を設けている場合もあります。

・郵送する
郵送する場合、規定により各書類は「信書」として扱われ、信書便として特殊な送付方法を選択します。

海外に引っ越す場合はどう手続きするの?


日本国内で事業を行っていた個人事業主が海外に引越して非居住者になる場合、これまでとは異なる手続きが必要です。
こちらでは、海外に引っ越す際の手続きについて紹介します。

海外に引越して非居住者になる場合は廃業の手続きをする

海外への引越しで、現地での滞在が1年を超えて海外に生活の拠点を移す時は、非居住者とみなされ、国内における廃業の手続きを行わなければなりません。

ただし、日本国内に不動産を持ち、その収入を得ている場合は、その所得にかかる所得税が課せられます。

非居住者となる時に必要な書類

海外に引越しをする時、必要となる書類には以下のようなものがあります。いずれも、提出場所は直前に居住していた住所地の管轄税務署です。

・「個人事業の開業・廃業等届出書」
上記のように、日本での事業を廃業する手続きです。この時の提出期限も、変更があってから1カ月以内です。

・「所得税の青色申告の取りやめ届出書」
青色申告を行っていた場合、終了する手続きを取らなければなりません。提出期限については、青色申告を終了する年の翌年3月15日までです。

・「所得税・消費税の納税管理人の届け出」
海外への引越しにおいて、国内の納税にかかる処理を納税管理人に依頼する場合に必要な手続きです。
この書類は、納税管理人を決めた時か、実際に日本を発つ時に提出します。

居住者の場合は納税が必要

海外に居住するとしても、日本に住所を残し、かつ海外での滞在が1年未満である時、国内の居住者とみなされます。
このケースでは、日本での納税義務が発生し、海外で得た所得についても課税対象となります。
そのため、日本にある納税地の管轄税務署に、その都度納税しなければなりません。

個人事業主の引越しは経費にできる?


個人事業主が事務所の引越しをする際、これにかかった費用は経費計上できるのでしょうか。以下では、引越費用と事業用の経費の関係性について見ていきます。

事務所を引越す場合は経費にできる

基本的に、事務所が住居から独立している場合には、その引越費用は経費にすることができます。
これは、事務所だけの引越しはすべて事業に関するものとみなされるためで、引越しで使用した費用全額が経費計上の対象となります。

住居兼事務所から、事務所だけ別の場所に引越す場合も経費になる

現時点で住居兼事務所の状態から、新たに事務所だけを切り離して引越しする際にも、引越費用のすべてが経費計上できます。
このケースでも、引越しは事業に関するものであり、生活用とは分けて考えられます。

事務所引越費用をすべて経費にする際の仕訳

事務所の引越費用を経費計上する時の仕訳について、勘定科目は以下のようなものが考えられます。
いずれの場合も、勘定科目は借方に記載し、相手方勘定科目を現金とします。

・引越業者に支払った金額
この場合、勘定科目を雑費とし、ダンボールなどの資材は荷造運賃とします。

・礼金は金額によって異なる
礼金を経費計上する時は、20万円未満の場合は地代家賃、20万円以上では「長期前払費用」とし、後者のケースでは賃借期間に合わせて償却処理を行います。

・敷金は経費計上できない
敷金は、賃借契約が終了する際に戻ってくることが想定される金額です。そのため、資産(敷金・保証金)で計上します。
退出の際に事務所内の修復が必要であった場合、その費用(原状回復費用)は敷金から差引かれますが、差引かれた金額は修繕費として 敷金・保証金と相殺できます。

・仲介手数料
不動産会社に支払った仲介手数料は、支払手数料として経費計上が可能です。

住居兼事務所の場合は事務所の割合で経費を算出する

住居兼事務所として引越しをする場合は、住居と事務所の割合を分けて考えなければなりません。
つまり、住居兼事務所の中で、事業用となる割合を家事按分することが必要です。

家事按分した結果、事業用となる部分だけが経費として認められます。

引越費用の家事按分の考え方

住居兼事務所の引越しにおける家事按分の考え方は、基本的に地代家賃や光熱費などと同様です。
事業用と目される割合が合理的かつ常識的であれば、その分の費用が経費計上できます。

例えば、住居兼事務所において、事務所スペースが40%であった場合は、引越しにかかった費用の40%を按分して経費を算出します。
この場合の仕訳は、借方では引越しにかかった費用のうち、按分した40%を任意の勘定科目とし、残りの住居用の費用は生活に供するものとして事業主貸とします。

まとめ

個人事業主が引越しをする際には、税金や社会保険料を引越先で正しく納めるための様々な手続きが必要です。
届出先は、税務署や日本年金機構、都道府県税事務所など多岐にわたるため、あらかじめ必要な手続きを押さえておきましょう。

また、引越費用の経費計上についてもケースごとに変わります。正しく会計処理をするために、覚えておいてください。

創業手帳冊子版では、個人事業主のための引越しに関する手続きや経費計上について詳しく説明しています。これから移転を考えている人は、ぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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