ベンチャー企業が「SDGs(エスディージーズ)」に取り組むことで得られるメリットとは?

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SDGs(エスディージーズ)「17の目標」の事例とともにベンチャー企業が取り組むことで得られるメリットを解説

企業

(2020/07/19更新)

SDGs(エスディージーズ)」という言葉を聞いたことがあるものの、具体的な意味は知らないという方が多いのではないでしょうか。

SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2015年9月の国連サミットで採択された国際的な共通の目標を指します。

SDGsに強制的な義務はありません。企業が積極的に取り組むことで、将来的にビジネスや投資において恩恵を受けられる可能性を秘めています。

今回の記事では、ベンチャー企業や中小企業がSDGsで、どのようなメリットが得られるのかについて解説します。

国際的な社会貢献を含めて、自社を成長させていきたい方はぜひ参考にしてみてください。

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「SDGs(エスディージーズ)」が採択された目的とは?

会見場
SDGsとは、国連に加盟している全193の国と地域が2030年までに達成を目指す事柄をまとめたものです。

それぞれの国が共通の目標をもって取り組んでいくことで、よりよい社会を創り出すことを狙いとしています。

環境・社会問題への取組みが基礎

SDGsのルーツは、1970年代までさかのぼります。第二次世界大戦後、当時の世界は「環境問題の解決を優先する先進国」と「経済発展を優先する発展途上国」の間で、摩擦が起きていました。

そうした状況のなかで、1972年に国連人間環境会議がスウェーデンで開かれ、国際的に環境問題に取り組むことを目標とした「人間環境宣言」が採択されます。

そして、1980年には「世界自然資源保全戦略」のなかで、「SDGs」の「S」を意味する「Sustainable(持続可能性)」という言葉が初めて使われました。

その後も、リオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議などで「持続可能性」をテーマとした環境問題への取組みが発表されています。

MDGsから引き継がれた「SDGs」

2000年になると、1990年代の国際会議やサミットで採択された目標が「MDGs(Millennium Development Goals)」として統合されました。

2015年までの達成を目指し、「貧困問題」、「ジェンダーレス社会の推進」、「感染病の蔓延防止」、「環境の持続可能性の確保」など8つのゴールと21のターゲットを掲げた開発目標です。

しかし、MDGsは一定の結果を残したものの、環境問題や社会問題の解決には至りませんでした。そこで、新たに国際的な目標として掲げられたのが、MSGsの後継である「SDGs」です。

No one will be left behind(誰ひとり取り残さない)」を理念とし、2030年までに達成するべき「17の目標」が採択されました。

貧困や飢餓といった発展途上国で起きている問題だけでなく、「不平等の是正」、「インフラ整備」、「海洋資源の持続」といった先進国が解決すべき事柄も記載されており、全世界が連携して取り組むことを目的としています。

日本における「SDGs(エスディージーズ)」の取組み事例

ディスカッション
日本では安倍首相を代表に、2016年から政府主導で実行されています。

2019年には、「SDGsアクションプラン2019」を発表し、「経済やビジネスの促進」、「地方創生」、「女性の社会進出」、「働き方改革」などを含む、大まかな骨組みがつくられました。

一部の企業や自治体では、すでに具体的な取組みを始めており、今後も拡大していくことが期待されています。

地方の持続的な成長

日本社会が「人口減少」、「高齢化社会」、「経済衰退」といった問題に直面している中で、持続的な成長を目指している自治体が増えています。

2018年には北海道札幌市や福岡県北九州市など、29の自治体を「SDGs未来都市」に認定しました

さらに、2019年は新たに神奈川県小田原市、滋賀県など31の自治体が追加され、現在では全国60都市が地方創生に向けて取組み続けています。

新潟県見附市の例では、自動車依存からの脱却を目指し、「歩いて暮らせるまちづくり」を提言しました。

都市のコンパクト化を図りながら、公共交通機関の整備を進めることで、市民が出かけたくなるような場所の創出を目標としています。

また、森林に囲まれている岡山県西粟倉村は、林業を軸として、関連事業の拡大や起業家を募ることによって、地域活性化に取り組んでいることで有名です。このように、地域ごとの特色を生かした持続的な成長を目指した取組みが行われています。

持続的な環境を目標とした事業

SDGsのコンセプトの基礎にもなっている「環境問題」は、世界が一丸となって解決しなければならない課題です。

日本においては、温室効果ガスの排出量を2030年までに2013年比で26.0%を削減とする目標を打ち出しており、政府だけでなく民間企業でも独自の取組みが行われています。

例えば、自動車産業では、従来のガソリン車から電気自動車へ転換することで、二酸化炭素排出を抑えた「低炭素社会」の実現が進められています。

また、太陽光や風力をエネルギーとして利用したスマートシティの形成やビルの省エネ化によって、環境への配慮を可能としました。

将来世代への教育提供

持続的な経済発展を進めるためには、将来世代への充実した教育環境の整備が必須です。

SDGsにおいても、「質の高い教育をみんなに」という目標が掲示されており、学校に行けない児童の支援や学校以外での学習を補助する機会の創出が進められています。

また、スポーツや芸術などの分野で子供との交流イベントを行ったり、低金利の教育ローンサービスを提供したりするなど、民間企業が主体となった取組みも増え始めました。

しかし、幼児教育の無償化や給付金奨学金制度が行われていますが、児童待機問題などの解決されていない問題も多く残っています。

多様な人材の持続的な採用や育成

変化する社会において、多様な人材の採用や育成も課題となっています。

2019年に世界経済フォーラムが発表した男女平等ランキングによると、日本は対象国である全153ヶ国中121位に位置付けられました。

これは、G7のなかでも圧倒的に悪い評価であり、実際に男女間での賃金や政治家・管理職の人数などに格差があるように、女性の社会進出が課題とされています。

格差を是正するべく、政府では男女によって一定の人数や比率の設定や、女性が管理職に就くまでのプロセスの明示、さらに生活とのバランスを整えることで働きやすい環境をつくるという考え方を企業に普及させていきました。

また、日本人の働き手が不足している現状の対策として、外国人の人材を積極的に確保する企業も増えています。

「SDGs(エスディージーズ)」を通して得られるメリット

並んだメモ
大企業を中心として、徐々に日本でもSDGsの事例が増えています。

また、最近では経営目標にSDGsを取り入れ、企業価値を高めることでビジネス面において評価をする見方も高まってきました。

ベンチャー企業や中小企業がSDGsに取り組むことで、どのようなメリットを得られるのかについて考えていきます。

企業の信頼性

ビジネスを優位に進めるにあたって、「企業の信頼性」が必要です。

企業の良し悪しを判断する材料として、「IR(※)」や「CSR(※)」が挙げられますが、新たに「SDGs」への取組みが会社の価値を判断する材料として認知されてきました。

SDGsは、企業や自治体だけではなく、教育機関や研究機関など世界中のさまざまな組織が参加しています。

つまり、自社の経営方針にSDGsの目標を組み込むことで、外部との連携をより深められる機会をつくりだし、必然的にビジネスチャンスも拡大できるということです。

また、諸外国ではSDGsの目標を達成するために、関連する法令についての見直しを進める動きが出ています。

このように、日々流動する社会状況に対応していくことで、ベンチャー企業や中小企業でも競争力の向上につなげることが可能です

※IR・・・企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動のこと
※CSR・・・企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的に社会に貢献する責任のこと

投資の流動化

SDGsへの取組みが、世界中の企業で行われているのは、「ESG」が関係しているためです。

ESGとは、「Environment Social Governance(環境・社会・ガバナンス)」の略で、企業の長期的な成長に必要な要素とされています。

もともとは、2006年に国連が投資家に対して、企業へ投資を行う判断の材料にESGの観点を組み込むことを提唱しました。

日本でも60以上の金融機関がESG投資の原則に署名をしており、資金調達を目指す企業にとって重視しなければならないポイントとされています。

しかし、ESGには明確な基準がないため、どのように判断をするかが決められていません。

そこで、各企業のESGを評価する上で、共通の目標を有するSDGsを指標の1つとする見方が広がっています。

つまり、ベンチャー企業や中小企業でも、SDGsを経営方針に盛り込むことによって、資金調達を得やすいということです。

内部組織の強化

SDGsを意識した経営を行うことで、自社の内部強化にもつながります。

「ジェンダー平等の実現」、「人や国の不平等をなくす」、「働きがいも経済成長も」という3つの目標が直接的に企業組織に関連しているため、女性管理職を増やしたり、雇用制度を見直したりすることで、必然的にSDGsの課題に取り組むことが可能です。

また、これまで会社の規定によって隠れていた人材に新たな価値を生み出し、自社への貢献を期待できます。

SDGsに取り組むことで、社員それぞれのモラルの向上にも役立ちます。

日ごろから、社会問題への意識やコンプライアンスを徹底することは、企業側にとっても大きなメリットです。とくに、ベンチャー企業や中小企業は、少数精鋭で事業を行っていく必要があるため、会社全体の一体感をつくり直すきっかけにもなります。

SDGsを小さなところから取り入れる

パソコンとビジネスマン
企業の規模を問わず、ベンチャー企業や中小企業もSDGsに取り組むことでメリットを享受できます。

大企業のように、事業をそのままSDGsに照らし合わせるのは難しいかもしれませんが、小さなことから取り組むことが可能です。

例えば、「女性社員の管理職の増加」、「安定した雇用の確保」、「子育てや介護への支援や働き続けられる環境づくり」、「再利用を促し、ゴミを減らす」など、SDGsの課題は企業体制にも大きく関連しています。

社内でSDGsの取組みを浸透させるには、経営層の積極的な関与が必須です。

社員や担当者に任せっきりにせず、企業のトップもSDGsに取り組むことで、社内全体のモチベーション向上にもつながります。

また、できないことを目標とするのではなく、コツコツと積み上げられることを課題にすることや、一定期間ごとに達成度を確認し、会社全体で継続しやすい環境づくりをすることも、ベンチャー企業や中小企業が参加する上でのポイントです。

まとめ

メガネとノート
SDGsは世界が解決するべき目標をまとめたものであり、国単位で取り組まなければなりません。

大企業や自治体を中心としてSDGsに関連した事例が多く発表されており、徐々に日本社会でも認識が広まりつつあります。

また、SDGsへ積極的に参画することで、企業の信頼性を外部に示すことが可能です。投資家による資金調達を受けやすくなるほか、社内組織の向上にもつながるため、中小企業やベンチャー企業にも大きなメリットが存在します。

たとえ小さなことでも、SDGsで掲げられている課題の解決に貢献できるため、社員だけでなく経営層も一体となってコツコツと継続してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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