働き方を見直そう!労働時間・勤務日数を短く効率的に。導入時のメリット・デメリット、注意点のまとめ

創業手帳

労働時間の短縮で生産性を上げる方法とハマってはいけない落とし穴

(2020/04/17更新)

日本は、これまで黙々と長時間働くことが当然とされていました。しかし昨今では、テクノロジーの進展により、AIやリモートワークの活用が広がり、さらには人手不足も相まって、効率的かつ新たな働き方が推進され始めています。

たとえば、一部のベンチャー企業では短時間労働の導入が進んだり、ホワイトカラーエグゼンプション(※)の動きが出始めたりしています。なお、時間の長さにとらわれない働き方が進むことで、主婦などの幅広い層が活躍できるようにもなりつつあります。

※ホワイトカラーエグゼンプション…ホワイトカラーと呼ばれるオフィスなどで働く人が労働時間の規制から外れ、労働時間で賃金を定めるのではなく、働いた成果により賃金を定める制度

この「新しい働き方」とは、単に時間を短くすれば良いのでしょうか。当たり前ですが、厳しい経済の競争環境下で企業は成果を出す必要があります。現実的に付加価値の高い仕事をするためには一定の時間が必要です。どうすれば、成果を上げながら、労働時間を短くすることができるのでしょうか。

創業手帳は、「新しい働き方(労働時間短縮)」について、サラリーマンとして会社に属しながら世界50カ国を旅しフリーランスのエンジニア・ライターとしても活動する「パラレルキャリア・複業起業」の筆者である南(みなみ)氏に自社の取り組みとメリット・デメリットや注意点などを聞きました。

労働時間とはなにか?通勤時間も労働時間?

南氏はパラレルキャリアの経験が評価され、自社での時短導入の際に労働時間を短縮せよ、というミッションが与えられました。その際にまず考えたのが、「そもそも労働者とはなんだろうか?」という基本的な問いだったそうです。

まずは、労働者の定義から。
労働基準法<第九条>によれば、
−この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいうとのこと。

続いて、労働時間の定義。
始業時刻から終業時刻までが勤務時間。そこから休憩時間を差し引いたのが労働時間。

労基法32条のいう労働時間(「労基法上の労働時間」)は、客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより決まります。

法律上の規定には通勤時間は、労働時間に含まれません。

南氏によれば、海外50カ国を旅した中でも東京の過酷さは世界有数だそう。

そんなストレスになりがちな通勤が「労働」にならないのは、通勤時間は使用者の指揮命令下にあるわけではないので労働時間とは言いがたいためだからだそうです。とはいえ、オフィスで仕事をする以上、移動は必須なので通勤時間は労働に付随するものです。労働時間削減には、通勤時間や負担のカットが有効なのかもしれません。

労働時間(通勤時間)の削減はどうやってする?

前述の通り、労働時間そのものを削減するには、まず「通勤時間」やその負担を減らすのが重要であることを忘れてはいけないと南氏は語ります。
通勤時間の負担を軽減するには次の2つの方法が代表的です。

・リモートワーク(在宅ワーク)の導入(通勤時間自体のカット)
・時差通勤ラッシュ時を避ける(通勤の苦痛の緩和)

奇しくも、 新型コロナウイルス感染拡大の影響もあってリモートワークが徐々に進んでいるのは喜ばしい状況です。

では、労働時間のそのものを短くするにはどうしたらよいでしょうか。南氏の会社は、多くの社員が20時~21時までオフィス内で仕事をしているの中、「1時間の労働時間の短縮、そして20時には会社を閉める」という取り組みを実施しました。このように、明確な数値目標をもって働く時間・残業時間を大幅に削減にするという挑戦を続けています。

労働時間を短くするメリット・デメリット

労働時間の削減は、生産性の万能薬ではありません。メリットもデメリットもあります。導入する時に会社の現場に合わせて進めることを励行します。

メリット デメリット
労働者 ・仕事以外のこと(スキルアップ、副業、レジャー、休息)に多く時間を割ける
・生産性の高い仕事が評価されやすくなる

・労働時間が減るので残業代が減る
・生産性の高い働き方が求められる
使用者 ・仕事の生産性が上がる
・優秀な社員が残る、優秀な人材を採用できる
・労働者が心身ともに健康になり、労災のリスクも減る
・時間が足りず仕事が終わらない
・優秀な社員のマルチな活躍(社外での)を認めざるを得ない

なお、労働時間の削減は、「労働者」「使用者」だけでなく、広く日本社会にとってもよい影響を与える可能性があります。個人がショッピング、映画、美術館、レジャーなどに費やす時間が増え、消費が増えることで、経済全体の押し上げにつながることが期待できます。

成果と労働時間の関係とは

職場などでよく使われる「成果」の意味を調べると、総じて「ある行為をして得られた良い結果」や「自分が成し遂げたことの結果」というもので、抽象度の高い言葉です。

部署や仕事内容によって、数字で測れるものもあれば、目に見えないものもある。
たとえば、
「企画・販売」・・・売上、受注
「仕入れ・手配」・・・高品質、低コスト
「製造」・・・速く、多く、正確に
「総務」・・・働く環境の整備
「経理」・・・数字の正確性
など成果は様々。

仕事の内容に応じて、長く時間をかけることが、「成果」に結びつくとは言えません。

ここで、成果を考えるために仕事を「クリエイティブ(付加価値の創造)」「ルーティーン(作業)」の2軸に分けてみましょう。
クリエイティブな仕事は、人が頭を使う仕事。たとえば、新商品の企画、新しい販促のアイディア、社内ワークフローの合理化、社内決済システムの効率化などがあります。これは、時間をかけることよりもアウトプットの「質」が求められます。時間をかけても質が低ければ成果にはならないですが、逆に短時間で高品質であれば仕事の価値(効率)が高くなります。

一方、ルーティーンの仕事は、繰り返しが多い仕事でミスなく、正確に速く、一定の時間を使って「時間内」に終わることが成果になるでしょう。これも、だらだらと長くしたからよい「成果」というわけではありません。むしろ想定の時間よりも早く終わればそれだけ他の仕事ができるので効率性は重要です。

こうしてみても、仕事の成果は労働時間の長さではかることはできないのです。

実務者が教える時短を導入する際の注意点

1. 時短は業務の効率化とセットで考える
無理矢理に時間だけを短くすることには危険性があります。たとえば、ある時間になったら消灯する、社内PCの電源が自動的にOFFになる、など。
仕事量が減るわけでもなく、システム改善などがされるわけでもなく、単に時間だけを短くしろ、という難題を押し付けられると、現場から不満が出たり、管理職や責任者に溜まった仕事が集中したり、終えるべき業務が終えられない、業務がどんどん持ちこされていく、などの恐れがあります。
制度を整備して一方的に行うのではなく、少しでも作業効率をあげるためにコンピューターシステムの改善などの効率化を並行することが必要です。また、今ある業務をいつまでにどのくらい終わらせるのかなど、明確なタスクの指示を出しつつ、合わせて「やらなくてもいい」業務を見極めるとよいでしょう。

2. 社員のマインドも変える必要がある
中には、長時間労働や休日出勤が会社へのロイヤリティだと思っている人もいます。早く会社を出て、外で学んだことを会社に還元する方が、貢献度が高いことも十分にあり得えます。こうした意識を社内にどれだけ広められるかが大切です。

時短に向けた作業効率・生産性アップで役立つツール、ノウハウ

先ほども触れた通り、まずはどれだけの仕事があり、どれだけ時間をかけているかを「見える化」するところからスタートするのが大切です。こうした際に役立つITツールがあります。こうしたツールの活用も生産性アップでは重要になります。

仕事の進捗管理やタスク管理アプリ(SlackとかTrelloなど)のツールは、複数人でチームで仕事をする時にあるとよいでしょう。特に、Trelloであれば、チーム内やらなければいけない仕事を細分化して書き出せるので、担当者や進捗状況が一目で確認することができます。

Trello
Trelloはカンバン方式のタスク・プロジェクト管理ツール

また、Slackでは細かいメッセージやデータのやりとりを残しておけるので、さらに細かく進捗を把握することができます。
今後、Zoomなど遠隔会議系のツールも普及していくきますので、乗り遅れないように今のうちから使い方に慣れておくことが大事です。

南氏の会社でも、ITツール導入を進めて効率化を図っていますが、会社全体の生産性を一気に上げることが、個人の労働時間の短縮への近道になるでしょう。

なお、時短のために、不要な作業、仕事自体を見直してばっさり切ってしまうのも非常に有効です。ただし、職場の合意なく仕事をばっさり切りすぎて、人員配置の偏りが出ないよう、チーム全体で協力しながら業務見直しは進めましょう。

労働時間を短縮し効率を高める取り組み例、導入実例

労働時間の短縮というと単純に残業時間をカットするなどのわかりやすい取り組みになりがちです。時間短縮には、仕事の「効率性アップ」が伴っていなければ意味がありません。ここでは、南氏が実際に取り入れた効率性のアップの実例について紹介します。

自身の仕事に集中する「がんばるタイム」

「がんばるタイム」とは、コピー、電話、立ち歩き、上司や部下との打ち合わせ、相談など自分の作業時に他者からの割り込みを禁止すること。労働時間を短縮し、効率アップが期待できる取り組みです。

このポイントは「他の人から割り込まれることがないので、目の前の仕事に集中でき、効率よく仕事をこなせる」という点です。また、周囲にも、集中する時間の「がんばるタイム」をわかりやすくアピールすることもできます。

さらに、「がんばるタイム」の間は他の人に話しかけることも立ち歩くこともできないので、予め準備が必要。「がんばるタイム」の間に何の仕事をするかを決め、それに必要な書類を手元に用意したり、誰かの指示や判断が必要な場合は予め聞いておかなければいけません。これにより、個々の段取力を高めるためのトレーニングにもなり、「がんばるタイム」以外の時間でも効率よく仕事する足がかりとなります。

「がんばるタイム」導入の実務担当者の感想

管理職を除く全社員に「働くモチベーション」「仕事にかける時間」を聞き取りました。プロジェクトチームのメンバーを手分けをして、一人の社員につき約15分かけてインタビューを行いました。
社員からのインタビューで浮き彫りになったことには、帰り際の仕事の依頼や就業時間後の気が緩んだ会話が社内全体の帰宅時間を遅くしているという点でした。

そこで、「がんばるタイム」を自社風にアレンジし、他の社員に関わる内線電話、打ち合わせ、相談、仕事の依頼は18時以降禁止としました。これによって、まず18時以降に緩みがちだった社内の雰囲気ががらっと変わりました。また、周りの目を気にして帰りづらさを感じていた比較的若い社員が、早く帰れるようになったというのも予想外の成果でした。

その他の労働時間短縮に向けた取り組み

全社員向けのインタビューから、すぐに手をつけられそうな小さな課題から、解決に時間のかかりそうな大きな課題まで色々と見えてきました。

そのひとつにお客様に送っている書類に関する業務に改善の余地が見られました。発送前の読み合わせ時間が効率を妨げていることがわかり、さらには発送後のミスも多かったことがわかりました。最終的には読み合わせをする部分が最小になるように書類の形式を変更することになりました。これは効率化と同時にミスも減らせたという事例です。

さらに、早く帰ることを促すために「外部の講座やセミナー」に参加することを積極的に奨励しました。遅くまで残って仕事をするだけが会社への貢献ではなく、外での学びを会社へ還元することもまた大きな貢献であると認知してもらうためです。積極的に学びに出ていきたいというポジティブな意識をもつ社員に堂々と早く帰れる環境を与えられたらと思いました。

まとめ

現時点でも、南氏は、時短推進のプロジェクチームの責任者として、様々な取り組みを試行錯誤しているそうです。そして、一つ見えてきたのは、成果を上げられる会社は、クリエイティブな仕事にどれだけ時間を割けるかにかかっているということ。ルーティーンの仕事は、コンピューターを使ってシステム化するなど、今後効率化が進みますが、クリエイティブな仕事はまだ人の力が必要です。

クリエイティビティが高い仕事をするには、社員が心身ともにゆとりをもって生活でき、新しいスキルを学び、他者との交流から新しい発想が生まれる機会があることが必要です。また、社員はこうした労働環境に対して、満足度が高まり仕事へのやりがいを感じるでしょう。優秀な社員は辞めることなく、また優秀な人財も採用できるでしょう。適切な労働時間の管理を実施し続けられる会社は、今後長く生き残ることができると思います。中長期的な視点に立って、労働時間を短くすることのメリットに注目し、社員とのwin-winの関係を築くよう努めることが重要なのです。

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(編集:創業手帳編集部)

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