旅行会社を設立するには?旅行業登録から会社設立の流れまで詳しく解説!

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旅行会社を設立するには「旅行業登録」が必須!


独立をして旅行会社を設立したいと考える方もいるかもしれません。旅行会社を設立するためには、様々な手続きが必要です。
あらかじめ手続きの内容を理解していれば、スムーズに申請できます。

そこで今回は、旅行会社を設立する際のステップを解説していきます。
手続きに必要な書類や旅行会社の種別について、旅行業登録の条件なども詳しく解説していくので、独立をして旅行会社の運営をはじめようと考えている方は参考にしてみてください。

旅行会社を設立するためのステップとは?


旅行会社を設立するためのステップは以下のとおりです。

1.会社の設立
2.旅行業協会への入会(任意)
3.旅行業登録手続き

最初に会社を設立して、手続きがある程度終わったら旅行業協会への入会申し込みを行います。入会は任意なので、加盟しなくても旅行会社の経営は可能です。
しかし、加入すればセミナーや研修への参加、旅行取引にかかる法務相談なども行えます。メリットやデメリットを踏まえて加入を検討してください。

そして、最後に旅行業登録を実施してすべての手続きが完了します。それぞれの内容は下記でご紹介していくので、スムーズな申請を行うために役立ててみてください。

旅行会社を設立する際の流れ


ここからは、旅行会社を設立する際の流れの詳しい解説です。

1.会社の概要を決め、定款を作成する

会社を設立するためには定款を作成する必要があります。

  • 会社名
  • 本店所在地
  • 事業年度
  • 事業目的
  • 資本金
  • 出資者
  • 役員の構成

上記の概要を決定してください。会社名に関しては自由に設定できますが、株式会社を作る際には必ず「株式会社」を含める必要があります。
また、会社名に使用できる文字は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」「アルファベット」「アラビア数字」と一部の記号のみです。

2.実印・銀行印を作成する

定義を作成し会社の概要が決定したら会社の実印や銀行印を作成します。実印に関しては、会社の設立登記申請の際に登録申請を行います。
地域にある印鑑・はんこ販売店で作成してもらうほか、インターネットショップで作ることも可能です。

3.定款を認証してもらう

定款の内容が決まったら認証してもらう必要があります。認証は、合同会社の場合は不要となるので次のステップへと進んでください。

また、認証は公証役場での紙での認証以外に電子認証があります。
電子認証は電子定款を公証役場に送付して電子認証をしてもらう必要があり、作成の際には電子署名が必要です。
紙での認証とは違って印紙がいらないためコストを抑えることに役立ちますが、手間がかかるので行政書士に作成を依頼するのもおすすめです。
紙の定款認証は本店所在地と同じ都道府県にある公証役場であれば認証ができます。

  • 定款
  • 発起人の印鑑証明書
  • 発起人の実印と認印
  • 公証人の手数料
  • 収入印紙

上記が必要になるので、あらかじめ用意してください。

4.資本金の払い込みを行う

定款の作成が終わったら資本金の払い込みを行います。まだ設立予定の旅行会社の銀行口座がないので、発起人の個人の口座を利用して払い込みをしてください。
金融機関の窓口で会社設立のための預け入れだと伝え、入出金手続きを行います。
払い込みを証明するためにも、通帳の入出金履歴のページ・口座情報がわかるページをコピーして払い込みを証明する書面を作成してください。

書面と通帳のコピーは製本テープで袋とじにして袋とじ部分に実印で契印をします。
ただし、複数人で出資する場合は、誰がいくら出資したのか判断できなくなってしまうため、振込みでの入金がおすすめです。
振込みが終わったら通帳をコピーして払込証明書を作成してください。

5.法務局で登記申請の手続きをする

次に本店所在地を管轄している法務局に出向いて登記申請の手続きを実施します。

  • 登記申請書
  • 登記すべき事項
  • 定款
  • 払込証明書
  • 就任承諾書
  • 発起人の印鑑証明書
  • 法人の印鑑届出書

上記の書類を用意し、届け出を行ってください。

登記申請では登録免許税がかかります。株式会社の場合は通常150,000円が必要ですが、資本金額によっては金額が異なるケースもあるので前もって確認してください。
また、オンラインでの申請も可能です。

6.税務署に届け出を提出する

登記申請が終了したら、税務署に各種書類の届け出を提出します。

  • 法人設立届出書(会社設立後2カ月以内)
  • 青色申告の承認申請書(会社設立後3カ月以内)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(給与支払事務所などを設けてから1カ月以内)
  • 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書

 
上記の4種類の届け出が必要です。それぞれ提出期限があるので注意してください。

7.法人名義の銀行口座を開設する

登記が完了したら銀行口座の開設も忘れてはいけません。
旅行業の登録申請時には、残高証明書の提出が求められるので、銀行口座を開設して個人の口座に払い込んだ資本金を法人名義の口座に移す手続きも必要です。

口座を開設するには以下の書類が必要です。

  • 口座開設依頼書
  • 履歴事項全部証明書
  • 認証済みの定款
  • 会社実印の印鑑証明書
  • 会社実印
  • 銀行印
  • 身分証明書

口座開設には銀行の審査が行われるので、開設できるまでには1~2週間程度の期間がかかります。余裕をもって手続きを行ってください。

旅行会社の設立に向けて必要な書類


旅行業登録申請時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 新規登録申請書
  • 定款または寄附行為の写し
  • 履歴事項全部証明書
  • 役員の宣誓書
  • 旅行業務にかかる事業の計画
  • 旅行業務にかかる組織の概要
  • 直近の法人税の確定申告書および添付書類の写し
  • 旅行業務取扱管理者選任一覧表
  • 旅行業務取扱管理者の合格証または認定証の写し
  • 定期研修修了証の写し
  • 履歴書
  • 宣誓書(役員が管理者の場合は重複提出は不要)
  • 営業所の使用権を証する書類
  • 事故処理体制の説明書
  • 標準旅行業約款
  • 入会確認書または入会承認書
  • 旅行業登録手数料

上記は、東京都で旅行会社を設立する際に必要となる書類です。東京都産業労働局のホームページに詳しい内容が掲載されているので、事前に確認しておいてください。

旅行業協会は2種類


旅行業協会は任意団体となり、加盟せずとも旅行業の経営は可能です。しかし、旅行業営業中の営業保証金を節約できるメリットがあります。
旅行業協会は2種類あるので、それぞれについて解説していきます。

ANTA(全国旅行業協会)

ANTA(アンタ)は、全国47都道府県に支部が設置されている事業者団体で第2種旅行業、第3種旅行業などの比較的規模の小さい旅行会社が多く会員になっています。
入会するためには、各都道府県にある支部で手続きを行ってください。
入会金、年会費は以下のとおりです。

入会金 年会費
ANTA東京都支部 550,000円 61,000円
東京都旅行業協会 100,000円 20,000円

ただし、入会するためにはすでにANTAに入会している2名の事業者からの推薦が必要です。
また、入会するためには審査が実施されているのですが、審査は常に行われているわけではありません。
約2カ月に1回実施されているため、時期を見ながら申し込みを行う必要があります。

JATA(日本旅行業協会)

JATA(ジャタ)に加盟する場合は、東京都にある事務局に書類を提出して申請を行います。ANTAと異なり入会審査は随時実施されています。
書類を提出してから審査が完了するまでは1~2週間となっているので、スピード重視であればJATAがおすすめです。
ただし、書類審査で不明な点があればヒアリングによる調査が行われます。また、推薦人も必要ありません。
入会金は以下のとおりです。

入会金 800,000円
年会費 350,000円
特別会費 ひとりあたり600円

設立する旅行会社がどの種別になるか確認しよう


旅行業の登録では、取り扱う旅行業によって取得すべき種別が異なります。それぞれの種別について解説していきます。

第一種旅行業

  • 海外、国内の募集型企画旅行
  • 海外、国内の受注型企画旅行
  • 海外、国内の手配旅行
  • 海外、国内の他社募集型企画旅行の代理販売

上記すべての旅行業務を取り扱っている種別です。登録先は国土交通省となっています。
取り扱っている業務が多いことから、基準資産額や営業保証金などの財産要件が一番高額です。

第二種旅行業

  • 国内の募集型企画旅行
  • 海外、国内の受注型企画旅行
  • 海外、国内の手配旅行
  • 海外、国内の他社募集型企画旅行の代理販売

上記業務を取り扱っており、登録先は都道府県庁です。

第三種旅行業

  • 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行
  • 海外、国内の受注型企画旅行
  • 海外、国内の手配旅行
  • 海外、国内の他社募集型企画旅行の代理販売

上記の業務を取り扱っており、都道府県庁が登録先となります。

地域限定旅行業

  • 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の募集型企画旅行
  • 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の受注型企画旅行
  • 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の手配旅行
  • 営業所の所在地とそれに隣接する市区町村内の他社募集型企画旅行の代理販売

取り扱える業務範囲は、ほかの種別と比較すると最も狭いです。営業保証金に関しても最も低い額となります。登録先は都道府県庁です。

旅行業者代理店

旅行業者から委託された業務を行える種別です。ただし、1社のみとの代理契約となっており、そのほかの旅行業者の商品を代理販売することはできません。
企画旅行を実施することも不可能です。登録先は都道府県庁で、そのほかの種別のように営業保証金や基準資産額などの財産要件はありません。
旅行業務取扱管理者の選任も必要ありませんが、取り扱う商品に応じて、総合・国内または地域限定旅行業務取扱管理者試験に合格した人材を選任する必要があります。

旅行サービス手配業

旅行会社からの依頼を受けて、宿泊施設や交通機関などの手配や予約を専門に実施する業者が旅行サービス手配業です。

  • 国内の運送、宿泊
  • 国内の全国通訳案内し、地域通訳案内士以外の有償ガイド
  • 国内の免税店に物品販売

上記のような手配を実施しています。都道府県庁が登録先となっており、旅行業者代理店と同じように営業保証金や基準資産額は不要です。
ただし、旅行サービス手配業務取扱管理者の選任が必要となり、試験に合格して所定の研修を修了した人材の中から選任します。

旅行業登録を行うための条件


旅行業の登録を行うためには条件もあります。スムーズに登録するためにも、それぞれの条件を理解しておくと安心です。

旅行業務取扱管理者を選任する

旅行業法によって、最低ひとり以上の旅行業務取扱管理者を営業所ごとに選任する必要があります。

海外の旅行業務を取り扱う会社 総合旅行業務取扱管理者
国内旅行業務のみを取り扱う会社 国内旅行業務取扱管理者
地域限定旅行業務のみ取り扱う会社 地域限定旅行業務取扱管理者
旅行サービス手配業務のみ取り扱う会社 旅行サービス手配業務取扱管理者

総合・国内旅行業務取扱管理者であれば、地域限定旅行や旅行サービス手配業務の管理者に選任することも可能です。また、常勤雇用も必須となっています。
総合・国内・地域限定の旅行業務取扱管理者に関しては、5年ごとの旅行業務取扱管理者定期研修の参加も必須です。
資格を有しているだけではなく、研修に参加することも大切なので忘れないようにしてください。

登録拒否事由に該当していない

申請者や旅行業務取扱管理者が旅行業法で定められている登録拒否事由に当てはまっている場合は、登録が拒否されます。

  • 申請前5年以内に旅行業務に関して不正な行為をしたことがある
  • 暴力団員が事業活動を支配している
  • 旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない場合 など

上記該当していれば登録できません。詳しくは、旅行業法第6条(登録の拒否)をチェックしておいてください。

営業所として使用できる物件がある

営業所に関しては、広さや設備などの要件は定められていません。しかし、旅行会社の実在性が担保できる営業所が必要です。
法令では営業所の有無については定められていません。
登録行政庁によっては、営業所の使用権限を証明する書類の提出が義務付けられています。
自己所有物件を営業所として活用する場合は建物登記簿謄本を用意し、賃貸物件であれば賃貸借契約書の写しを用意して提出してください。

基準資産額をクリアしている

旅行者を保護することを目的に法律では基準以上の資産を確保することを定めています。登録種別ごとに基準資産額には違いがあります。

  • 第一種旅行業:3,000万円
  • 第二種旅行業:700万円
  • 第三種旅行業:300万円
  • 地域限定旅行業:100万円
  • 旅行業者代理店:不要
  • 旅行サービス手配業:不要

基準資産が足りない場合、融資を検討する方もいるかもしれませんが、融資が借入れとなるので負債が増えてしまうでしょう。
そのため、増資や贈与、債務免除や所有不動産の再評価など、融資とは違った形で対処する必要があります。

営業保証金の供託・弁済業務保証金分担金が納付できる

倒産で旅行が実行できずに預かったお金も返還できないような事態になった場合に備えて、旅行業者に費用をプールしておく制度が営業保証金制度と弁済業務保証金制度です。
営業保証金制度は、供託所に一定のお金を供託しておき、万が一の際に供託金の範囲内で損害を補填する制度です。
弁済業務保証金制度は、供託所ではなく旅行業協会にお金を納付し、万が一の際には旅行業協会が旅行者へ弁済していきます。それぞれの金額は下記のとおりです。

営業保証金 弁済業務保証金分担金
第一種旅行業 7,000万円 1,400万円
第二種旅行業 1,100万円 220万円
第三種旅行業 300万円 60万円
地域限定旅行業 15万円 3万円
旅行業者代理店 不要 不要
旅行サービス手配業 不要 不要

上記の金額は、最低額です。1年間の取引き額によって金額に違いがあるので注意してください。

まとめ・旅行会社設立には旅行業の登録が必要!条件を把握して準備を進めよう

旅行会社を設立する場合、定款の作成や実印・銀行印の作成以外にも旅行業の登録が必要です。提供する内容によって第一種旅行業や第二種旅行業など、種別が異なります。
それぞれをしっかりと理解し、条件を把握しておけば登録を円滑に進められるでしょう。

創業手帳(冊子版)では、会社設立に関する情報を多数掲載しています。旅行会社を設立する際にも役立つ情報が満載なので、不明な点がある場合にぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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