りむすび しばはし 聡子|「離婚後も二人で子供を育てていく」大切さを発信 一般社団法人りむすびが取り組む社会課題
りむすびのしばはし聡子代表に、事業の取り組みについて聞きました
(2019/09/27更新)
別居離婚後の子育てや共同養育をサポートする事業を展開している一般社団法人りむすび。「別居や離婚をしても、子供にとっての親同士としての関係は続く」という視点から、別れたあとの親同士としての関係づくりを支援しています。
代表のしばはし聡子氏は、自身の離婚経験から、社会問題を解決すべく40代で起業しました。事業を通じて、「離婚後も二人で子供を育てていく」という考え方を社会に浸透させるため尽力しています。しばはし代表に、社会問題を解決する事業を立ち上げる上で大切なポイントを聞きました。
一般社団法人りむすび代表 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験をきっかけに「一般社団法人りむすび」を設立。 離婚しても両親が子育てに関わる共同養育の実践に向けて、親同士の関係再構築を目的とした相談業務、面会交流支援、また共同養育普及に向けて講演・執筆活動等を行う。
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この記事の目次
自身の離婚経験で得た気づきがきっかけ
しばはし:別居や離婚後の子育てに伴う相談事業を行っています。離婚後も元夫婦が親同士として関われるような心の仲介、離婚して離れている親と子供が会う面会交流の現場に付き添う支援や、別居離婚経験者のパパママが集うコミュニティの運営などを行っています。また、離婚後も両親で子育てに関わる「共同養育」という考えを普及するための講演・執筆活動も行っています。
しばはし:1996年に電力業界に就職しまして、約20年広報・秘書業務に携わってきました。途中、産休と育休を経てワーキングマザーとして不自由なく過ごしていましたが、40歳に諸事情で離婚することになりました。
当時息子が小学校4年生で私が引き取ったのですが、裁判直前のこじれた末の離婚だったので、離婚後は夫と子供を会わせたくないという思考に陥りました。
父親と息子の面会に対しても非常に後ろ向きで、子供に対してお父さんの話を一切しないとか、お父さんとの写真を全部捨ててしまうといった行動を取ってしまった結果、子供を精神的に不安定にさせてしまいました。
そんな中、私と同じ状況で子供に辛い思いをさせてしまっている離婚家庭と関わる機会があり、「私の一存で父親と子供を引き話す権利はない」と考えるようになりました。
そこから、元夫に初めてこちらから子供との面会を持ちかけ、定期的に会うようになりました。結果として子供は気持ちがすごく安定し、夫も子供と会え、私もストレスを感じていた元夫とうまく関われるようになり、三者が上手く回り始めたのです。
「離婚すれば、相手と一切関わらなくて済む」と思い込んでいたことの間違いに気づき、離婚しても親子関係を途切れさせてはいけないということを離婚・別居前に知らなかったことを後悔しました。この経験から、子連れ離婚の相談事業をはじめました。これが最初のきっかけです。
株式会社ではなく、社団法人を選んだ理由
しばはし:「ひとり親支援」、「シングルマザー支援」といった、1人で育てるための支援はたくさんありますが、離婚後の両親での子育てを支援するサービスはありませんでした。世の中全体的に、「離婚後一人で子供を育てるにはどうすれば」という考えが一般的で、問題意識を持ちました。
実際に、「離婚しても両親で子供と関わることが大事」ということを発信し始めると、すごくニーズがありました。相談件数が増えていくにつれて、自分の後悔を元に、離婚で苦しむお父さん、お母さん、そして子供が良い形で関わる方法を発信していくことが社会的使命だと感じ、2017年に会社を退職し事業化しました。
しばはし: 20年間会社員、しかも電力業界というインフラ業界で、営業したこともない、人間関係もすごく恵まれている環境で会社員やっていたので、起業に関してはすべてゼロからのスタートでした。最初はブログの書き方から始め、雇われの立場から独立へマインドの切り替えを学ぶため数々のセミナーで学ぶ機会を作りました。あとはこの事業にまつわる方にたくさん会いに行きましたね。
会社を辞めてから3ヶ月は個人事業主でしたが、事業の内容的に行政や省庁と関わる必要があると考え、信頼度を高めるために法人化を決めました。
法人設立に向けた実務面や経理も素人でしたが、いきなり誰かに頼むのではなく、一通り自分で学ぼうと思い、定款作りから、商標登録など、すべて自力でやりました。人に頼むにしても、まず自分が知ってからお願いしようと思ったのと、なにごとも経験を積みたかったのです。法人化に3ヶ月ほどかかりましたが、手続きなどすべて自分でできましたね。
しばはし:営利目的ではなく、ソーシャルビジネスとして、社会に貢献したい、世の中を変えたいという思いが強かったからです。そうなるとNPOか社団法人かという選択になりますが、複数名いないと立ち上げられないNPOよりも、まずは自分のやりたい理念や思い描いているビジョンをまっしぐらに貫いて取り組める社団法人を選びました。その後、私の理念に賛同してくれる人が集まってくれるようになりましたし、結果として良かったと思っています。
相談者への「リスペクトと共感」が何より大事
しばはし:立ち上げからこれまで 1人でサービスを展開してきましたが、2019年から、相談業務や面会交流支援をできる人を育成して、自分が現場を離れるという体制をつくりました。
現在3名やっているのですが、特に共通して大事にしていこうと伝えているポイントは、「相談者に対するリスペクト、共感を忘れず、絶対に否定をしない」ということです。特にリスペクトは大事です。相談者とアドバイザーとなると、上下の関係ができてしまいがちですが、離婚の相談に来ている人も、社会に出たら尊敬すべき一社会人であり、何より子供のことを思って相談に来ている姿勢をまずリスペクトします。
すごく争われていて、ともすると私達にも異議を唱える方もいらっしゃいます。私たちは、頭から「争っていたらダメですよ」「子どもを会わせなきゃダメですよ」と否定するのではなく、「それくらい辛い想いをされているのだ」と共感することで、信頼関係を築いて、やっとアドバイスできる立場になります。
もう1つ大切なのが「手遅れはない」という考えで接することです。離婚前・離婚調停中・離婚後など様々な状況の方が利用されますが、「どんな状況で相談に来られても、出来ることを探す」ということは必ずやるように共有しています。
りむすびに相談に来られるのは、「争っても意味がない、司法に限界を感じる」ということにご本人が気づき始めているからだと思うのです。一つ一つできることから全身全霊でサポートするように心がけています。
しばはし:ご相談者から、「りむすびのおかげで、離婚はしたけど相手との関わり方が、同居している時よりも良くなって、子供との関われるようになった」「面会交流に前向きになって自分自身も楽になった」というようなコメントをいただける時、やっていて良かったなと思います。
離婚で少しでも揉めると、弁護士に相談して調停・裁判という流れになりやすいですが、こちらは「争うよりも歩み寄りを」をモットーに、たとえ離婚した元配偶者との間にわだかまりがあっても、親同士であることを忘れず、相手を責めず、子供のため、そしてご自身のためにも折り合い付けてやっていきましょうということを常にお伝えしています。
こうすることで、最初争いモードだった相談者が鎮静化していき、結果として元配偶者と悪くない関係を築けたという成功経験を重ねていくことで、自分がやっていることは間違っていないのだ、と思える時は良かったなと思います。
人生100年時代、起業に「今さら」はない
しばはし:何をやりたいかなと探すのではなく、やりたいことややるべきことが自ずと出てきたときが、起業のタイミングなんだと思います。
一番思いが強く始められるのは「実体験」がキーです。人は思いに動かされます。単に知識を持っているだけでなく、事業に対して原体験を以て伝える人の言葉は響きやすい。私の場合は離婚がきっかけでしたが、「社会に何が足りていないのか、何が必要か」というアイデアは、自分の体験から自ずと出てくるものです。それが社会のためにどんな小さなことであったとしても、始めることが大切だと思います。
また、周りの顔色を見てブレないことも大事です。社会問題に関わる事業をやっていると、時に意見の違う人から叩かれることもありますが、それでもやっぱりこれが必要なんだという強い思いに人は動かされ、応援してくれるようになっていく。それって本気じゃないと難しいと思うんです。自分が必要だと信じることから始めて、結果として事業を回すためにお金が必要だ、という考え方で進めることが大切だなと思います。
私は40代で転機が来て起業しましたが、これから人生100年時代なので、50代や60代であっても「今さら」はないと思います。年齢で臆することなく始めることが大切だと思います。
また、自分より若い世代の人から学ぶことも多いです。プレゼン資料やSNSなど発信ツールの使い方などはるかに秀でているなと感じます。私は、出会ったどんな方からも学びを得られるという感謝の気持ちで、謙虚に、1人ずつをリスペクトしていくことが、信頼にも繋がっていくと考えています。
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(取材協力:
一般社団法人りむすび/代表 しばはし聡子)
(編集: 創業手帳編集部)