予算1兆円・補助額最大1億円「事業再構築補助金」とは|第4次公募が開始。今までとの違いなども解説

創業手帳

予算は1兆円規模!「事業再構築補助金」の公募要領を解説

新しい補助金である「事業再構築補助金」は、中小企業向けコロナ対策のなかで1兆円という桁違いの予算が与えられました。コロナという逆境に立ち向かう中小企業を手厚く支援する内容が盛り込まれています。

この補助金は「事業再構築」という名前のとおり、業態転換や新分野への進出、新規事業開発などの取り組みを支援するのが主な目的です。

補助額の上限は1億円とされており、大変注目されています。事業再構築補助金の目的や公募内容を解説します。

【最新情報】第4次公募が開始!
第4次公募が開始されました。申請受付は11月中旬開始予定で12月21日18:00までとなっています。

今回より、新しい類型が新設されています。

最新版の『補助金ガイド』では、起業家にとって利用しやすい補助金・助成金が分かりやすくご確認いただけるようになっています。あわせてご活用ください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

事業再構築補助金はどんな補助金か?

コロナ禍によるダメージを受けた中小企業に対する補助金でありながら、事業再構築というキーワードで新規事業分野への進出や業種・業態展開といった挑戦的な取り組みを行う事業者を支援する補助金です。

第3次補正予算案で示された事業の予算規模は1兆円で、補助金額の設定も大きなものとなっています。中小企業の成長という観点も制度設計に盛り込まれていることも注目すべき点です。

【最新】第3回公募要領の変更点

事業再構築補助金の公募の3回目が始まりました。第2回の公募要領からいくつか変更されています。代表的な変更点をご紹介します。

【変更点】最低賃金枠の創設

最低賃金の引き上げを受け、業状が厳しい中で一定人数以上の従業員を雇っている事業者に対して「最低賃金枠」が創設されました。
また、補助率は中小企業者等が3/4・中堅企業者等は2/3となり、他の枠に比べて優遇された採択率が適用されます。

【最低賃金枠の補助金額】 中小企業者等、中堅企業等ともに
  • 従業員数5人以下:100万円~500万円
  • 従業員数6~20人:100万円~1,000万円
  • 従業員数21人以上:100万円~1,500万円

【変更点】通常枠の補助上限額の見直し

従業員が多い企業の通常枠の補助上限が8,000万円に引き上げられました。それと同時に従業員数が20人以下の企業の補助上限は4,000万円に引き下げられています。

【通常枠の補助金額】 中小企業者等、中堅企業等ともに
  • 従業員数20名以下:100万円~4,000万円
  • 従業員数21~50名:100万円~6,000万円
  • 従業員数51名以上:100万円~8,000万円
  • 従業員数101名以上:8,000万円超~1億万円(※大規模賃金引上枠)

※大規模賃金引上枠は今回より新設された枠です。

【変更点】その他の運用の見直し

売上高に対する要件が変更されています。

【売上高10%減少要件の対象期間】
  • 変更前:2020年10月以降から
  • 変更後:2020年4月以降

また、今回の変更により「売上高」だけでなく「付加価値額」の減少でも売上高10%減少の要件を満たせるよう変更されました。
これにより売上高は増えていても実質的に利益が減少している企業も対象となります。

【変更点】緊急事態宣言特別枠について

第2回の公募で終了予定であった緊急事態宣言特別枠について、継続されることになりました。
以下の発出において、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けた事業者に対する措置として、緊急事態宣言特別枠が設置されています。
要件に合致すれば、地域や業種は問いません。

    ①令和3年1月から3月にかけて、栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県に対して発出されたもの
    ②令和3年4月から6月にかけて、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県、沖縄県に発出されたもの(沖縄県については8月まで延長)
    ③令和3年7月から8月にかけて、東京都に発出されたもの
    ④令和3年8月に埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府に発出されたもの

第2回公募要領の変更点

事業再構築補助金の公募の2回目が始まりました。第1回の公募要領からいくつか変更されています。代表的な変更点をご紹介します。

【変更点】売上高減少要件の見直し

第1回公募では売上高減少の期間を「申請前の直近6か月間のうち任意の3か月」としていましたが、第2回では「2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月」に変更されています。

【変更点】緊急事態宣言特別枠について

緊急事態宣言再々発令に伴う特別枠の要件見直しとして、「令和3年4月から5月にかけて、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、 兵庫県、岡山県、広島県及び福岡県に発出されたもの」が追加されました。

また、「緊急事態 宣言特別枠については、今回の公募で終了を予定しておりますので、申請を検討されている方 はご注意ください。」と書かれており、第2回公募で緊急事態宣言特別枠は終了予定です。

【変更点】創業間もない事業者への特例措置

第2回公募要領には次の内容も加わりました。
「コロナ以前(2020年3月31日以前)から創業を計画等しており、2020年4月1日から 2020年12月31日までに創業した場合は、特例的に支援の対象となります。」
つまり、創業から間もない事業者も申請できるようになったということです。

事業再構築補助金の主な申請要件

事業再構築補助金の対象企業は、新しい分野への事業展開、業態転換、業種転換、事業再編などで規模の拡大や事業再構築へ意欲を持つ中小企業とされています。

さらに次の3つが対象要件として定められています。すべて満たす必要があります。

主な申請要件
  • ①売上げが減っている
  • ②新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等に取組む
  • ③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

①売上げが減っている
2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、
2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していること。
※上記を満たさない場合には、次の項目を満たすことでも申請可能。
(1)2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること。
(2)2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して7.5%以上減少していること。

②新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編等に取組む
事業再構築指針に沿った、新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う。
詳しくは、中小企業庁の事業再構築指針の手引きを参考にしてください。

③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
事業再構築に係る事業計画を、認定経営革新等支援機関や金融機関と策定する。補助金額が3000万円を越える案件は金融機関も参加して策定。金融機関が認定経営革新等支援機関を変える場合は金融機関のみで良い。

補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。

なお、売上減少要件の「任意の3カ月」については、連続でなくてよいことが決まっています。

補助金額と補助率

中小企業(通常枠・卒業枠)、中堅企業(通常枠・グローバルV字回復枠)という4つの枠が設けられそれぞれに補助金額の範囲と補助率が定められています。

補助の金額・補助率

補助金額と補助率は以下のとおりです。

        

 

補助金額 補助率
中小企業 通常枠 100万円~8,000万円 2/3(6,000万円を超える部分は1/2)
卒業枠
(400社限定)
6,000万円超~1億円 2/3
計画期間内に①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向け。
【新設】大規模賃金引上枠 8,000万円超~1億円 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
【新設】最低賃金枠 100 万円 ~1,500万円 3/4
【継続】緊急事態宣言特別枠 100 万円 ~1,500万円 3/4
中堅企業 通常枠 100万円~8,000万円 1/2
(4,000万円を超える部分は1/3)
グローバル
V字回復枠
(100社限定)
8,000万円超~1億円 1/2
    次の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。

  • ①直前6カ月間のうち任意の3カ月の合計売上高ががコロナ以前の同3カ月間の合計売上高と比較して、15%以上減少している
  • ②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成を見込む事業計画を策定すること
  • ③グローバル展開を果たす事業であること
【新設】大規模賃金引上枠 8,000万円超~1億円 1/2(4,000万円を超える部分は1/3)
【新設】最低賃金枠 100 万円 ~1,500万円 2/3
【継続】緊急事態宣言特別枠 100 万円 ~1,500万円 2/3

中小企業、中堅企業それぞれ通常枠に加えて、特に成長性や海外進出を伴う事業計画に対しては特別枠が設定されています。採択数を限定した上で補助金額も大きくなります。

対象企業となる中小企業、中堅企業の定義については細かく定められていますので、中小企業庁の資料を確認してください。https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo003.pdf

緊急事態宣言特別枠

緊急事態宣言特別枠
通常枠の申請要件を満たし、さらに緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1月~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること。

補助額は次の通りです。
■補助額

従業員数5人以下 100万円~500万円
従業員数6~20人 100万円~1000万円
従業員数21人以上 100万円~1500万円

■補助率

中小企業 3/4
中堅企業 2/3

補助の対象になる経費

申請する際は事業計画のなかで、何にどれだけの費用を見込むのかを明らかにしなければなりません。
補助の対象となる費用の例は以下の通りです。

補助の対象になる経費の例

建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費(加工、設計等)、研修費(教育訓練費等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)等

建物費、建物改修費や研修費(教育訓練費)などが盛り込まれ、業態転換など大掛かりな事業再構築を行うことを想定したものです。

第3回公募期間

第3回の公募期間は下記の通りです。

公募開始:令和3年7月30日(金)18:00
申請受付:令和3年8月下旬予定
応募締切:令和3年9月21日(火)18:00

また、令和4年3月までに合計5回の公募の実施が予定されています。
おおよその今後の予定は以下の通りと言われています。
第4次:10月頃、第5次:11月頃

採択結果発表

申請後、採択されたかどうかの発表は下記日程で行われる予定です。

第1回の採択発表予定:6月上旬~中旬
第2回の採択発表予定:8月下旬~9月上旬
第3回の採択発表予定:11月中旬~下旬

また、令和3年度内にさらに2回程度の公募予定があります。

創業手帳では補助金ガイドを発行しています。コロナ対策のための補助金なども紹介。お取り寄せ無料です。

申請の方法

申請は、電子申請システムのみのため、GビズIDプライムアカウント(gBizID)の取得が必須です。

GビズIDプライムアカウント(gBizID)が必須

電子申請による行政手続きを行う際に必要なアカウントがgBizID。補助金申請システムがjGrantsです。
事業再構築補助金は電子申請に限定されています。gBizIDを取得した後にjGrantsから事業再構築補助金に申請します。
gBizIDのアカウントは3種類あり、補助金の申請にはgBizIDプライムが必要です。

gBizIDの種類

エントリー 即日発行 一般向け
プライム 個人事業主 法人事業者向け
メンバー プライムアカウントが従業員向けに発行するアカウント

gBizID取得手続きは申請書と印鑑証明を郵送します。通常は取得までに数週間かかるとされており、コロナ向けの給付金や助成金の利用者が増えていることもあるためアカウント取得までに時間がかかることを想定し早めにgBizIDプライムを取得しておくほうが良いでしょう。

※追記情報
GビズIDプライムアカウントの取得に時間がかかるため、本事業に限り暫定GビズIDプライムアカウントでの申請が可能となりました。申請書や印鑑証明書などの郵送を省略し、発行されるまで最大48時間程度(土日祝日除く)に短縮したものです。
ただし、採択公表後の交付申請には正式なGビズIDプライムアカウントが必要となるため、準備を進めておきましょう。

認定支援機関との共同による事業計画作成

認定支援機関とは、税理士や行政書士、中小企業診断士などの士業、または、信用金庫や銀行などの金融機関で中小企業庁により認定をうけた、いわゆる中小企業向けの経営コンサルティングを行う人たちです。

申請の要である事業計画は認定支援機関と共同で作成するというのが事業再構築補助金の補助要件のひとつに含められています。

成果目標が与えられた実現可能性の高い事業計画を作ることが求められるという点で、計画する事業の革新性や優位性、組織体制を含めた実現性など、多様な評価や専門的な知識が必要です。

コロナによる売上減少を回復するために、従来とは異なる事業への取り組みを支援するのが事業再構築補助金の趣旨です。異業種の知識や知見にもとづくアドバイスも欠かせないものとなります。

また、認定支援機関はこれまでに公募された補助金や助成金の申請を数多く手掛けているところも多く、手続きの面でもスムーズに進めることができます。

中小企業庁のホームページで認定経営革新等支援機関(認定支援機関の正式名称)を検索できるほか、ブログやユーチューブで情報発信する認定支援機関も多いため、実績のある認定機関を見つけることをおすすめします。

事業再構築補助金の活用事例

補助金活用のイメージとしてさまざまな事例が示されています。いくつか紹介します。

補助金活用の例

小売業 衣服販売業 店舗での営業規模縮小、ネット販売、サブスクサービスに業態転換。
飲食業 レストラン 店舗での営業を廃止。宅配、持ち帰りに業態転換。
製造業 自動車部品製造 サプライチェーン毀損に備え、EVや燃料電池向け特殊部品の製造に着手、必要設備を導入。
製造業 航空部品製造 ロボット関連部品、医療機器部品製造の事業を新規立ち上げ。

いずれもコロナの影響による売上減少を契機とし、それを打開するための新規事業の立ち上げ、業種・業態転換、新分野への進出等、従来の事業領域から一歩踏み出す取り組みであることが採択につながる要素となりそうです。

上の例では店舗縮小にかかる店舗改修の費用や縮小事業に関わる設備撤去の費用、新規事業で働く従業員の研修費用といった項目も補助対象であることがわかります。

編集部のコメント

編集者
この補助金は税理士や中小企業診断士など、経営支援の業界でも注目されています。ポイントは「経営計画」です。専門家や金融機関などと一緒に計画をしっかり策定することが重要になってきます。

「事業再構築」とあるように、これを機会に経営計画を見直す必要があります。
容易ではないことですが、成長上とても有効な策なので、この機会に経営計画の策定を進めましょう。

また、今回の補助金で採択されるためには、経営の根幹を変えるようなインパクトのある計画が必要です。
予算総額1兆円・補助額最大1億円規模の補助金はなかなかありません。応募要項の発表から締切まであまり時間がありませんが、積極的に申請を検討すべきです。

起業だけでなく、年数がたった会社が事業を大胆に転換するためにも使えるでしょう。
コロナを機会に新しい活路を見出す会社にとって魅力的な補助金です。補助金の相談や専門家紹介なども創業手帳で受け付けています。

まとめ

事業再構築補助金は、ものづくり補助金や持続化補助金、IT導入補助金など2020年度中の中小企業向けの補助金に比べて予算規模が大きく、コロナ禍をきっかけにチャレンジする中小企業への積極的な支援を打ち出しています。

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(編集:創業手帳編集部)

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