会社名を英語表記で登記する方法を徹底解説

創業手帳

会社名の英語表記一覧や使える文字のルールと表記方法を解説

英語表記での会社名の登記が、増えています。日本でもグローバル化が進んだことにより、海外進出に向けて英語表記の必要性が高まっているようです。
その会社の事業内容にもよりますが、今後の事業拡大を目指すなら、海外展開も視野に入れ、会社名の英語表記を検討しても良いでしょう。

ただし、会社名をどこまで英語で登記できるかは会社法で定められており、英語にできる部分には限界もあります。
会社名を英語表記にしたい起業家のために、登記する際のルールを解説します。

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会社名に英語を使いたいなら早めの対策を


会社名は、会社の思いや目的、方向性を示し、会社の顔でもある重要なものです。そんな会社名に英語を使いたいと考える経営者、起業家が増えています。
英語を使うことで、日本国内だけでなく海外にも分かりやすく、使いやすい会社名になります。

日本語を話せない外国人に親しみやすいだけでなく、取引きをする際英文の契約書に英語の正式な会社名を書けることが英語表記の理由であり目的です。
英語の社名を付けることは事業のグローバル化の第一歩となります。

グローバル化に向けて

これから先の日本国内のシェアを考えた場合、海外進出は選択肢として非常に有益です。
また、販売先としてだけでなく、仕入れや工場の建設先としても海外を目指すことはあります。

こうした海外進出を検討する際にネックになるのが日本語の会社名です。
日本語のひらがなや漢字ばかりの会社名は、海外のビジネスマンから見ると分かりにくく、書きにくくなります。
会社名は会社の顔と前述しましたが、会社の顔があいまいでは信頼を築きにくかったり安心できなかったりするかもしれません。

また、英語表記の正式名称がないと、様々な契約書類の作成も法的効力に不安を感じます。
契約書での会社名の誤記は署名があれば問題ないこともありますが、余計な不安を相手に与えるのは好ましくありません。

そこで、海外との取引きには英語の会社名が必要となります。法的根拠のある英語の正式な会社名があれば海外の取引先も安心です。
正式な契約書類も日本語と英語の両方で作成しやすくなるでしょう。

ライバル会社に遅れを取らないように

英語表記を始めている会社は増えています。同業のライバル会社でも英語表記を検討し始めている会社があるかもしれません。
ライバルに先を越されないで海外でのビジネスチャンスをつかむためには、少なくとも自社でも英語表記の準備を早めに進めておくことが必要です。

会社名の英語表記を作るには、すぐには決められないこともありますし、手続きも必要となります。
そのため、いざ海外進出のチャンスが到来した時にタイミングよくそのチャンスをつかめるように、前もって手続きだけは踏んでおきましょう。

日本での会社形態は4種類

日本での会社形態は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類に分かれています。形態により、有限責任や無限責任を負う立場はさまざまです。
有限責任・無限責任とは、企業が倒産した場合に出資者が負う責任の範囲をさします。

設立された会社で一般的なものが株式会社です。株式会社は自由に資金調達できるメリットがありますが、設立に手間と費用のかかる点がデメリットです。
株式を発行し、株式を持つ人を株主と呼びます。
株主は保有する株式の数に応じて有限責任を負いますが、中小企業のオーナーなどの社長は出資額だけでなく会社の借金を負うため、無限責任にあたります。

合同会社は設立のために出資した人が経営権を握り、費用を抑えた会社設立が可能です。
出資者は有限責任を負いますが、合同会社の経営権は会社設立に出資した人が持ちます。

合資会社は、有限責任の社員と無限責任の社員をそれぞれ1名以上必要です。今のところ大きなメリットがないため、設立されることは少ないようです。

合名会社は無限責任だけで構成する会社です。費用を抑えた会社設立ができるだけでなく、経営の自由度の高さもメリットとして挙げられます。

会社名を英語で登記できるか?登記のルールについて


会社名を英語表記にしたい場合、考えておきたいのは会社名の登記のルールについてです。
会社名を英語表記で登記できるのか、できるとしたらどんな制約があるのか、会社名の登記方法の法的な決まりについて確認していきます。

登記に使用できない文字と語句

会社名は会社の顔として第一印象を左右することも多く、インパクトを与えて相手の記憶に残すために奇抜な名前を付ける人もいます。
しかし、会社名の付け方には制限があり、自分の好みを叶えられるとは限りません。

表記方法は、会社法で定められた範囲から選ぶことになっています。
会社法で定められている登記に使える文字は、日本語のひらがなやカタカナ、漢字、また、アルファベットやアラビア数字などです。「&(アンド)」や「’(アポストロフィー)」「,(カンマ)などの一部の記号も使えます。

ただし、使用できるのはそれだけで、それ以外の文字や記号を使うことはできません。また、特定の語句や名称を使用することも禁止されています。
使用NGなのは、わいせつな言葉や犯罪に関する言葉など、公序良俗に反するものです。
また、会社の一部門を示すような「支店」や「支社」「事業部」といった言葉も使えません。

会社の名称に英語を使うことは可能

会社の名称には、日本語のほかにアルファベットも使えることになっているため、会社名を英語で作れるということになります。
今後のグローバル進出を目指して海外でも通じる国際的な名称を付けたい場合にも、会社法は対応しているということです。

実際に街やニュース、株式市場などで見る会社の中にも、英語で書かれた会社名はあります。
有名な携帯電話キャリアの「KDDI」やスーパーマーケットチェーンの「Olympic」などは、アルファベットだけの会社名です。

日本語と英語を組み合わせることも可能

会社法では、日本語もアルファベットも使えると定められており、その両方を使うことも認められています。
そのため、グローバル化に備えて、英語表記したいけれど日本人への親しみやすさも出したいといった場合には、2つの文字のいいとこ取りが可能です。

一部にアルファベットを使用している会社としては、「GMOインターネット」や「NTTドコモ」などがあります。

会社の種類を英語で登記することはできない

会社名はアルファベットで表記することが可能ですが、会社の種類(株式会社、合同会社など)を英語表記で登記することはできません。
会社法で定められているため、登記上はどうしても社名全部を英語にはできず、一部は漢字になってしまいます。

前述の「KDDI」も正式な社名は「KDDI株式会社」、「Olympic」は「株式会社Olympic」です。
「株式会社」を英語表記できないので、好む好まないに関わらず、登記上はこうした表記にならざる得ません。

日本の場合、株式会社○○や□□株式会社のように前株と後株の表記がありますが、どちらも深い意味はなく設立者の好みで決まります。
企業によっては慣習に従って前株、または後株とするケースがあります。

しかし、社名を英語表記する場合は前株や後株の区別がありません。全て会社名の後方に「Co.,Ltd.」会社形態をつけます。
海外では、会社名のあとで会社形態をつける名称が一般的なためです。

商号の中に「会社の種類」を漢字で入れるのが必須

会社法では、商号の中には会社の種類を含めるルールになっています。
会社法第六条に、会社の種類に従い商号中に「株式会社、合名会社、合資会社または合同会社という文字を」用いなければならないとなっています。
その文言の通り、株式会社であれば「株式会社」という文字を会社名に入れることが必要です。そのため、○○会社の部分だけは英語で表現することはできません。

日本語と英語の両方を登記することはできない

会社名の英語表記は、会社の種類以外の部分だけであれば可能となっていますが、会社名を英語表記にする場合には日本語の社名を登記することはできません。
1つの会社で2つの会社名を登記することはできないため、どちらかを選んで登記する必要があります。

会社名を英語表記にするために確認するべきこと


会社名を英語表記にするためには、いくつかの決まりを守らなければいけません。ルールに基づいて正式に会社名の英語表記を目指すために使える具体的な方法を紹介します。

会社名を英語表記で登記できるのは、会社の種類を示す「○○会社」以外の部分です。
ただし、「○○会社」の部分も英語表記に変えた会社名を正式名称として自社内で定めることはできます。
海外の取引先と契約を交わす予定や計画がある場合には、会社の種類まで英語表記にする方法も確認しておきましょう。

会社の英語表記方法を選ぶ

会社名をすべて英語表記にしたい場合には、会社の種類を示す英語表記の正式名称を理解しておきましょう。
よく見かける英語表記の中には、日本では親しみはあるものの海外ではあまり一般的ではないものもあります。
グローバル化を目指すならば、国外での理解しやすさも含めて表記を選びたいものです。

英語の略称 正式名称・意味
Co.,Ltd. Company Limited(有限責任の会社)
Ltd. Limited(有限責任)
Corp. Corpration(法人組織)
Inc. Incorprated(法人組織)
KK. Kabushiki Kaisha(株式会社のローマ字表記)
LLC. Limited Liability Companyの略(合同会社)
略称なし limited partnership company(Companyは省略可、合資会社)
略称なし General Partnership Company、Unlimited Partnership Company(どちらもCompanyは省略可、合名会社)

Co.,Ltd.

「Co.,Ltd.」は、「カンパニーリミテッド」と読みます。
カンパニー(会社)とリミテッド(有限責任の)という2つの言葉を組み合わせた表現で、有限責任の会社(有限会社と株式会社)として使える英語表記です。

日本で使われている英語表記の中でも「Co.,Ltd.」は多く、有限会社から株式会社まで幅広く使われてきました。
日本を含むアジアの国では「Co.,Ltd.」と「Co.」と「Ltd.」の間に「,(カンマ)」が入ることが多くなりますが、一般的には「Co.Ltd.」とカンマなしで使われます。

日本の会社で「Co.,Ltd.」を使っているのは、「イオン株式会社(AEON CO., LTD.)」
や「東京ガス株式会社(TOKYO GAS CO., LTD.)」「全日本空輸株式会社(ALL NIPPON AIRWAYS CO., LTD.)」などです。
全日本空輸株式会社(全日空)は、英語表記の頭文字「ANA」でも認知されています。

日本語の会社名に含まれる固有名詞以外のワードも「空輸」=「AIRWAYS」のように英語に変換されていることが多いのが特徴です。

Ltd.

「Ltd.」は「リミテッド」と読みます。上記「Co.,Ltd.」の「Ltd.」のみの表記で、同様の「有限責任の会社」という意味になります。

「Ltd.」はどちらかというと銀行の会社名で使われる表記です。
「○○BANK,Ltd.」「Bank of ○○,Ltd.」といった表記が多くなります。日本の会社では、「株式会社みずほ銀行(MIZUHO BANK, Ltd.)」や「富士通株式会社(FUJITSU Limited)」などがあります。

Corp.

「Corp.」はCorporation(コーポレーション)の略語で、正式な手続きを踏んで設立された法人組織を意味する言葉です。
有限責任か無限責任かの区別はありません。比較的大きな会社で使われていることが多く、アメリカでは最もよく使われる表記です。

日本では「三菱商事株式会社(Mitsubishi Corporation )」や「トヨタ自動車株式会社(TOYOTA MOTOR Corporation)」「株式会社ブルボン(Bourbon Corporation Japan.)」などがあります。

Inc.

「Incorporated(インコーポレイテッド)」の略で、「Corp.」と同じく法人組織を意味します。
「Corp.」と「Inc.」は比較的大きな会社で使われることが多く、アメリカではよく見かける表記方法です。

日本では「キャノン株式会社(CANON Inc.)」や「楽天株式会社(Rakuten, Inc.)」などがあります。

KK.

「KK.」は「株式会社(Kabushiki Kaisha)」をローマ字にして頭文字を取った表記です。
あまり使わなくなった表記で、日本語の「株式会社(Kabushiki Kaisha)」の意味が分からない人には通じないため、海外進出には向きません。

しかし、中には海外に本社がある会社の日本法人として「KK.」を使っている会社もあります。
例えば、ジーンズの「リーバイス」は、アメリカ本社の正式名称は「Levi Strauss & Co.」ですが、日本法人は「リーバイ・ストラウスジャパン株式会社(LEVI STRAUSS JAPAN K.K.)」です。

この他にも「昭和シェル石油株式会社(SHOWA SHELL SEKIYU K.K.)」「日本郵船株式会社(NIPPON YUSEN KABUSHIKI KAISHA)」などが使っています。
KK.表記の会社は、「石油」を「SEKIYU」、「郵船」を「YUSEN」というように日本語のローマ字をそのまま使う傾向があります。

LLC.

「Limited Liability Company」の略称で、合同会社をさします。
リミテッドライアビリティカンパニー、またはエルエルシーと読み、「Google LLC」などがあります。

ローマ字表記か英単語に変換するか決める

英語表記を取り入れる場合には、会社名に含まれる単語を英語に変換するのか、ローマ字表記にするのか考えることも必要です。
会社名はその会社の目的や方向性を含めて付けられることも多く、英語表記でどう表示するか迷うところでしょう。
ANAでは「空輸」=「AIRWAYS」と英語に変換していますが、昭和シェル石油のように「石油」を「SEKIYU」とローマ字表記する場合もあります。

定款内で会社名の英語表記について定める

定款にその内容を記載することで、日本語の会社名とは別に、正式に英語表記も定めることができます。登記は日本語のままで、英語表記も合わせて使いたい場合にはこの方法が有効です。日本語の会社名は登記し、英語表記は定款で定めます。

記載の仕方は、「本会社は日本XYZ株式会社と称し、英文ではJapan XYZ Co.,Ltd.とする」といった文言を入れるだけです。
この方法であれば、「株式会社」などの会社の種類まで英語表記できます。

既存の商号をローマ字に変える場合

すでに会社設立をしていて既存の商号(会社名)をローマ字表記に変えたい場合には、変更のため手続きをする必要があります。
状況に応じて適切な申請を行い、新しい会社名を登記しましょう。

定款でローマ字表記を定めていた場合

すでに定款でローマ字の表記を定めている会社では、商号の更正の登記を行います。

日本文字のみの商号を新しくローマ字表記したい場合

日本文字だけで登記し、定款でも日本文字だけの会社名を使っている場合、まずは定款の変更が必要です。
定款変更の手続きを終えたら、その後に商号変更登記を申請します。定款変更には定款変更の決議があった事の証明として「株主総会議事録」の作成・添付が必要です。

英語表記を検討したい業種と使用するシーン

会社名の英語表記は、会社設立時に考えます。
登記に必ずしも英語表記が必要ではありませんが、業種によっては英語表記を検討した方が良いものもあります。

たとえば、製造業・貿易業・輸出入にかかわるビジネス・旅行関係のビジネス・コンテンツ制作や配信・国際的なプロジェクトを扱うビジネス・外国人対象のビジネスなどです。

主に国内での取引きが中心で顧客も日本人がメインの場合は、特に英語表記を登記しなくても問題はありません。
しかし、現在は必要なくても、今後ビジネスが拡大し海外との関わりが生じたときに英語表記を使う場合があります。
将来的に次の内容があてはまる可能性があれば、設立時に英語表記の登記をしておくことをおすすめします。

  • 国内だけでなく国際的な範囲の取引きで、契約を結ぶとき
  • 海外の企業と業務提携する機会が生じたとき
  • 外国人向けの商品やサービスを提供し、プレリリースや広報活動を行う場合
  • 日本語表記だけでなく、英語表記の自社サイトも制作するとき
  • 海外に需要が見込め、海外向けの商品パッケージをつくる場合
  • 外国人が対象の商品説明書をつくるとき
  • 海外で開催するイベントへ参加する場合

もし会社設立時には英語表記が必要になるシーンを予想できず登記しなかった場合でも、ビジネスの拡大とともに必要になれば追加することが可能です。
会社定款に、英語表記を追加した履歴を残しましょう。
商号の項目の第1条にある社名についての条文を「英文では○○と表記する」とつけ加え、更新年月日を記してください。

まとめ・英語の会社名を上手に活用してみよう

会社名の英語表記は海外進出を目指す際に役立ちます。
会社名の英語表記での登記は可能ですが、会社の種類は漢字のみと定められており、登記上すべて英語にすることはできません。

会社名をすべて英語にして外国企業との取引きを円滑にしたい場合には、定款を使って正式に定めることをおすすめします。
定款上であれば、「Co.,Ltd.」など会社の種類まで完全に英語表記できますし、それを正式名称として英文の契約書に記載できます。

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(編集:創業手帳編集部)

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