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契約書のドラフト、草案、たたき台の意味とは?

契約書のドラフトとは、契約書の草案、原案、下書きを意味します。正式に署名や押印をする本書の前段階として作成する書類で、「下書き」や「草稿」などを意味する英単語のdraftがそのままカタカナ語化されたビジネス用語です。

ドラフトは、契約書だけでなく、他の書類や資料の作成時にもよく使われる用語です。
つまり「書類のドラフトを提出してほしい」と言われたら、「正式なものでなくて構わないので、ある程度ベースとして使える仮の書類を提出してほしい」と解釈できます。
同様に、「ドラフト版」として送られてきた資料は正式なものではなく、今後さらにブラッシュアップや内容の見直しが発生するものと考えられます。
たたき台たたきという言葉もほぼ同じ意味で使われるビジネス用語ですが、より“最初の原案”というニュアンスが強まる場合が多いようです。

契約書においては、たとえドラフト(草案)といえども、その重要性は他の書類と大きく異なります。
なぜなら、ドラフトの提案や確認をする過程で、そのまま契約の詳細を詰めていく場合が多いからです。当然、契約書の起案前には双方が大筋で内容に合意しているわけですが、細かい条件や法的な効力については未確認の部分も多いため、ドラフトをやりとりすることでお互いに合意を得ていきます。
すなわち、ドラフト(草案)のやりとり=契約交渉と言っても過言ではありません。「下書きだから」「細かくて読みきれないから」などと考えて確認を怠ると、相手に有利な条件のまま契約を結ぶ事態にもなり得るので注意しましょう。

ここからは、具体的な契約書実務の流れの中でドラフトの役割を見ていきます。

まずは、契約書の起案です。この作業をドラフトするドラフティングと呼ぶ人もいます。
また、ここで作成された最初の契約書草稿を指して、ファーストドラフトという用語が使われる場合もあります。
スタートアップでは、売買契約書、雇用契約書、NDA(秘密保持契約書)など各種契約書のフォーマットが揃っていない場合が多く、初回の契約では苦労も多いでしょう。無料のテンプレートを上手に活用すると効率的ですが、特に事業のコアな部分での取引など重要な契約の際は、ぜひ自社に合わせた内容に条項をカスタマイズしましょう。
行政書士や弁護士などの専門家の力を借りて、最初にしっかりと準備をしておくと後々の業務が楽になります。

特に企業間取引においては、「どちらがファーストドラフトを提示するか」という点が、その後の交渉に影響する重要なポイントになります。自社のフォーマットには、基本的にその会社にとって不利な条件は盛り込まないからです。また、契約数が増えていくと、管理のしやすさの面からも自社側のフォーマットの方が都合が良くなります。
しかし、スタートアップやベンチャー企業が大手企業と契約する場合は、相手方からドラフトを提示される可能性が高いでしょう。また、こちらからファーストドラフトを提案しても、「弊社の様式で」と相手方の契約書案を示されてしまうことも少なくありません(これをカウンタードラフトと呼んだりもします)。
このような場合、どの程度まで柔軟に応じてもらえるかは相手次第です。ただ一般的には、ライセンス契約であれば許諾を与える側、業務委託契約であれば委託する側など、立場が強いとされる側の草案を使うケースが多いため、この点も加味して進めましょう。特に海外企業との契約においては、この傾向がより強くなります。

次に、ファーストドラフトをたたき台として、契約の詳細に関するやりとりを進めていきます。
契約のメインとなる、金額、数量、契約期間、納期などの数字に間違いや齟齬がないか確認するのは当然ですが、契約更新に関する条項、免責事項、保証規定などチェックすべき事項は多岐に渡ります。
特に海外取引においては、準拠法(その契約をどの国の法律に基づいて解釈するか)や、管轄裁判所(合意管轄とも言い、万一裁判となった場合にどこの裁判所で争うかをあらかじめ決めておく条項)なども、可能な限り自社に有利に定めておきたいものです。
この段階でも、必要に応じて専門家と相談しながらチェックや交渉を進めていきましょう。

ちなみに、英文契約書のチェックには、海外に強い法律家か契約書専門の翻訳会社を利用するのをお勧めします。ネイティブなら誰でも契約書のレビューができるわけではないので要注意です。
一般的なWebの自動翻訳機能はおおまかな理解には役立ちますが、正式な法律文書として採用するのには向かないため、たとえドラフトであっても、コピー&ペーストして使うのは避けましょう。

このようにして、相手先と何度か契約書草案の調整を繰り返していくわけですが、それに伴って「どこに疑問があるのか?」「どこをどう変更したいのか?」といったやりとりが非常に煩雑になりがちです。
かといって、相手の信用を失うような形で勝手な修正を行えば、最悪の場合は契約そのものが頓挫します。
このような事態を避けつつ、なるべく業務負担を減らすには、Wordの変更履歴やコメント機能を上手く活用するとよいでしょう。変更履歴とコメントは、Word画面上部の「校閲」タブから使用できます。

ドラフトの精査が終わり、全ての条項についてお互いが合意できれば、ようやく製本して署名や押印をする段階に進みます。そして、署名や押印が完了すれば晴れて契約締結となるわけです。

ここまで述べてきたように、契約書のドラフトや草案は、様々な契約において非常に重要な役割を果たすものです。
数多くある契約条件について、何をどこまで譲歩するかの判断はケースバイケースですが、自社の事業を成功に導くにはドラフト段階での的確な判断が不可欠と言えます。

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カテゴリ 法律・労務
関連タグ スタートアップ ベンチャー 事業 交渉 取引 売買 契約 契約書 法律
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