契約書の正しい書き方|印紙、署名、押印、袋とじ製本などのルール
契約書の署名・押印のルール、印紙の貼り方、袋とじ製本のメリットとは?
(2019/07/19更新)
ビジネスで欠かせない契約書について、100万人の起業家・経営者の使う創業手帳代表の大久保幸世と、田中弁護士が解説します。
ベンチャー企業の経営者でも、今まで、会社間の契約書にサインしたことがないという人も多いだろう。契約書の内容が大事なのはもちろんだが、形式的なところができていないと、会社としての格も疑われかねない。「人は見た目が9割」などと言われるが、契約書も見た目は重要だ。
そこで今回は、契約書の署名・押印のルール、印紙の貼り方、袋とじ製本のメリットなど、契約書の書式や体裁について、押さえておきたい基本的なポイントをまとめた。
また、契約書を取り交わしている場合でも、トラブルが起きる可能性はあります。創業期は忙しいので、そのようなトラブルで事業がストップしてしまうと、大きな痛手となってしまいます。冊子版の創業手帳(無料)では、顧問弁護士の上手な活用法について、IT・ベンチャー系に強い弁護士に伺っています。(創業手帳編集部)
この記事の目次
まずは契約書の基礎知識を学ぼう
創業期に多いのが、契約書のトラブル。
当事者にならないと分からないものだが、意外と契約書の内容をしっかり見ずに契約してしまい、不利益を被るケースも多い。
忙しい創業期は特に、インターネット上にある契約書のテンプレートを、何も考えずに使ってしまい、後々困ることもあるようだ。
下記をしっかりチェックして、トラブルを未然に防ごう。
ビジネスにおいて「口約束」は通用しない?
一般的に、契約を行う際には「口約束」であったとしても、契約は成立する。しかし、ビジネスの場では、それが通用しないケースが多い。
取引を行う時には、条件などの項目は全て「契約書」に明記する。ビジネスの場では、個人間よりも利害関係者が多く、多額のお金も絡んでくるケースもある。そのため、契約書により「客観的事実」を把握でき、トラブルが避けられるのだ。
契約内容は原則自由
法律上、「契約自由の原則」が約束されているため、原則として当事者間で、自由に契約内容を決められる。
もちろん、他の法律に触れるような内容があれば、この限りではない。
大事な契約書は専門家に見てもらう
契約書を確認するにも、知識がないと、判断が付かない。頑張って調べても、その情報元が間違っているケースも有る。
後々泣きを見ないためにも、必ず大事な契約書は、専門家に見てもらうおう。
また、ビジネスの現場において、自分の専門外の出来事や業務に出くわすことは多々あるでしょう。その場合も、契約書と同じように専門家に相談することが一番です。冊子版の創業手帳では、創業期から税理士や社労士などの専門家と契約することのメリットについて詳しく解説しています。(創業手帳編集部)
契約書のルール
契約書をかわす際の注意点を把握したところで、実際契約書を作成する際のルールを見ていこう。
契約書は何部必要か?
契約書の部数は、契約する企業分だけ用意するのが一般的である。すなわち、2社間の契約であれば2部、3社間の契約であれば3部用意し、それぞれ、署名・サインし、押印した同じ内容のものを各社が保管するといった具合だ。
ただし、印紙税を節約するなどの目的で部数を少なくする場合もある。
署名捺印と記名押印
契約書にサインする方法としては、以下の2つのパターンがある。
②記名押印 = 自分の名前の欄までプリンター等で印字されており印鑑だけを押す
ベンチャーの経営者ならば、契約の印を押すのは社長が行うのが一般的だ。その場合は、自署するのも手間であることから、印鑑だけを押す記名押印パターンの方が多く用いられており、基本的にはこちらのパターンで良いだろう。(会社規模が大きい場合は、社内のルールを専門家の意見をもとに設定しているので、それに合わせるのが常である)。
ただし、もし、相手企業が先にサインしている場合は、その形式に合わせる必要がある。例えば、相手企業が署名捺印をしていれば、あなたも同じ署名捺印しなければならないし、記名押印ならば、同様に記名押印する、といった具合である。
押印する印鑑の種類に制限はあるのか
結論から言うと、「登録印」「認印」のどちらでも問題は無い。しかし、トラブルを防ぐには、登録印にしておいたほうが無難だろう。
登録印以外で押印してしまうと、第三者が押印してしまったというトラブルが起きる場合があるからだ。
会社設立時には、実印(登録印)、銀行印、角印の3つの法人印鑑を準備します。冊子版の創業手帳では、これらの法人印鑑の基本について解説しています。(創業手帳編集部)
署名・記名は何を書くのか
契約書を書く当事者が個人の場合
一般的に、戸籍上の姓名を記載する。改名などでも良い場合もあるが、特に理由がなければ本名を記載するほうが望ましいだろう。
契約書を書く当事者が個人企業の場合
契約する当事者が分かるように、正式名称を明記するのが良いだろう。
当事者が分かるのであれば、「○○商店」などの商号を記入しても構わない。
契約書はどこに押印するか?
少し難しい話をすると、契約を結ぶ内容を定めたものが契約書であり、その契約書の内容に両者が納得して押印することで契約が締結されたことになる。
では、その契約書のどこに押印すれば、「納得して印を押した」ことになるのか?
実は決まりはない。契約書の内容を確認していき、たどりついた末尾に押印箇所が設けられているのが一般的だ。たまに、契約書の最初に押印箇所がある場合もあるが、どちらであっても、法的に異なることはない。
契印で複数枚の契約書偽造を防ぐ
押印で少し手間になるのが、契約書面の枚数が複数枚になるときである。この場合、前述の署名欄のところに印を押すのに加えて、さらに別のところにも印を押さなければならない。
例えば、3枚の契約書で最後のページに署名捺印(あるいは記名押印)をしていたとする。ホッチキスなどでとめていたとしても1枚目、2枚目は、相手企業によって勝手にすり替えることができてしまう。それを防ぐための対応が必要となる。
基本的なやり方は、契約書を見開きになるように開いて、ページごとにまたがるように押印していく。これがいわゆる「契印」である。契印を全ページに契約を結ぶ双方の会社が行う。そうすれば、一方の会社が途中のページをすり替えたとしても、相手方の印を持っていないので、契印を偽造することはできなくなる。
袋とじ製本で契印の押印がラクになる
ただし、見開きごとに押印する方法では手間がかかる。そこで有効なのが、製本テープなどを使って契約書の片側(通常左側)を袋とじにして製本する方法だ。
この場合は、製本テープと契約書にまたがるように各社が契印をひとつ押せば済む。契約書の一部をすり替えようとすれば、一度、袋とじにしている製本テープをはがさなければならないから、一カ所の契印で済むのだ。
ホッチキス止めでも袋とじ製本であっても法的には差異はないが、枚数が多い場合、全ページに押印するのは手間であるので、製本テープ等を使った袋とじ製本の方が便利だ。
契約書への印紙の貼り方
契約書のうち、印紙税法で「印紙を貼らなければならないとされている契約書」については印紙を貼らなければならない。業務委託契約、請負契約書等、ベンチャー企業が使うほとんどの契約書が印紙を貼る必要があるものとなっている。
印紙を貼る場所については、特段、法律上の定めもない。一般的には、印紙は契約書一番初めのページ左上部分に貼ることが多い。
そして、貼り付けた印紙については、再使用出来ないようにするため、消印(印紙と契約書の書面にかかるように押印等をすること)をする必要がある。切手に消印があるのとイメージは同じだ(国税庁参考頁 印紙の消印の方法)。
なお、印紙は、通常、双方がそれぞれ自分で保管する契約書に貼る。契約書作成の場では、印紙を貼らずに、それぞれで持ち帰った契約書に印紙を貼るという扱いをすることが多い。
このように聞けば、印紙を貼らなくても誰にもばれないと思うだろう。しかし、それが税務調査で問題になるのだ。
相手企業が印紙を貼っていないために、あなたの企業に税務調査が入るなんてこともある。余計な手間をかけないためにも、印紙は契約の都度に貼っておいた方が良い。
まとめ
契約書の体裁については、一度意識しながらやってみればすぐ身に着くものだが、一度押さえておかないと、意外と分からなかったり間違ったりすることも多い。これを機会に押さえておこう。
また、契約書だけでなく、ビジネスの現場では、知っていればなんてことないでも、知らないと困るという事柄がいくつもあります。冊子版の創業手帳では、起業後に必要となるノウハウをわかりやすく解説しています。また、資料請求時に、Web版の無料会員登録も同時にできます。創業手帳では、会員向けに無料で専門家の紹介を行っています。専門外のことは専門家に任せ、自身のビジネスに集中できる環境を作るとトラブルは少なくなるでしょう。(創業手帳編集部)
初めての起業・会社経営に!基礎知識をまとめたガイドブックプレゼント中
【関連記事】本当にあった怖い「税務調査」の話!起業家のための税務調査入門
【関連記事】法人印鑑|会社設立時に準備すべき実印・銀行印・角印

創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。無料創業相談も受付中。
(監修:田中尚幸 弁護士)
(編集:創業手帳編集部,大久保幸世)