PE-BANK 髙田 幹也|「Pe-BANKフリーランス」でフリーランスエンジニアの成長とIT社会の発展を目指す

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年09月に行われた取材時点のものです。

フリーランスのエンジニアにも働き方改革を!営業や事務代行のサポートで働く環境を整備


民間企業では働き方改革の推進が行われていますが、フリーランスの働く環境の整備はまだまだこれからの課題となっています。そんなフリーランスとして働くエンジニアが業務に集中できる環境を整えるために、営業や事務代行を始めとした様々なサポートを行っているのがPE-BANKの髙田さんです。

ITフリーランス業界の課題やフリーランスのエンジニアのためにサポート内容について、創業手帳の大久保が聞きました。

髙田 幹也(たかだ みきや)
株式会社PE-BANK 代表取締役
和歌山県出身。新卒でナイキ情報サービス株式会社(現グループの前身、その後、アスノシステム株式会社に社名変更)に新卒で入社。社名変更と同時期に東京と和歌山の責任者を兼務、2015年には同社常務取締役、18年に専務取締役を歴任。2019年11月より株式会社PE-BANKの代表取締役社長に就任。フリーランスエンジニア(個人事業主)のブランド化プラットフォーム事業を展開、フリーランスの地位向上を目指す。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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エンジニアを経てPE-BANKの社長に就任

大久保:起業までの経緯を教えてください。

髙田PE-BANKはフリーランスの社会的地位の向上を目指して平成元年にできた組織です。

元々はフリーランスの方々をサポートするための組合でした。

今は、フリーランスとして働くエンジニアの方々の営業や経理などの事務代行のサポートを通じて、フリーランスエンジニアが開発に専念できる環境を提供しています。

PE-BANKの創業当初には、日本にフリーランスを支援する組織がなかったので、アメリカで実践されているビジネスモデルを参考にして、日本に合う形にアレンジしたというのが最初の経緯です。

大久保:アメリカでのそのような動きをどうやって知ったのですか?

髙田:創業者がアメリカに行った時に、フリーランスの多さを目の当たりにしたんです。

大久保:創業時には髙田さんはまだ入社前だったと思いますが、社長になられた今、あらためてこのビジネスについてどのように感じますか?

髙田:世の中のあらゆる仕組みにITが欠かせなくなり、また多様な働き方が当たり前になるいまの時代を予見していたというか、先見の明があったのではないかと思います。

2019年11月にPE-BANKの社長に就任後、コロナ禍という壁に直面

大久保:髙田さんが社長になられて、どのようなことに注力されましたか?

髙田:私は2019年11月にPE-BANKの社長に就任しました。しかし、就任して業務の引き継ぎを行っている時期に新型コロナウイルスの感染が拡大して、事業を伸ばすというよりも現状を把握すること自体が大変でした。

2020年の春から夏にかけて経済不況が加速し、個人事業主の契約も減り、業績も落ちてしまいました。

このような課題に直面したのですが、コロナ禍で外の方々とも会えないので、まず最初に取り組んだのが、内部の構造改革でした。これが上手くいき、今では順調に業績が回復してきています。

大久保:コロナ禍の影響は大きかったですか?

髙田:コロナが流行し始めた当初は発注数が多少減少しましたが、弊社が提携しているフリーランスのエンジニアの方々は技術力が高く、お客様との関係も構築できていたので、想定よりも減少幅は少なかったですね。

提携するフリーランスエンジニアと「共同受注」という新しいビジネスモデル

大久保:PE-BANKのビジネスモデルとしては、どこから収益が発生していますか?

髙田:発注先の企業から料金を頂いている形です。

実際にはフリーランスのエンジニアとPE-BANKが共同受注という形を取っておりまして、仮に100万円受注した際に、PE-BANKは8%、10%、12%の3段階の手数料があり、事前に企業、エンジニアともに開示しております。受注金額から手数料を引いた金額がエンジニアの報酬という構造になっています。

このように、営業代行手数料が決まっているのが、PE-BANKの特徴です。

大久保:PE-BANKのニーズが高まっている背景には何があると思いますか?

髙田:IT業界でも人材不足の問題は顕著に出てきておりまして、そこを補っていく上で、フリーランスエンジニアが重宝されているんだと思います。

AIやDXなどに対応できる人材は限られているので、企業に所属する・しないに関わらず、最先端技術に強いエンジニアのニーズは高まっています。

大久保:どの企業でもアプリやシステムを開発する際に、エンジニアの採用に苦労していると思いますが、現在、ITエンジニアは日本にどれくらいいますか?

髙田ざっくり20万人くらいはいると言われておりまして、年々増えている傾向にあります。働き方も多様化していることもあり、年齢も若くなっている傾向にありますね。

大久保:ベトナム人や中国人などの外国人エンジニアが日本で働くことも増えていますか?

髙田:日本の法律の関係でまだまだ少ないですね。外国人が日本で働くためには、就労ビザが必要でどこかの企業に所属する必要があり、個人事業主にはなりにくいんです。

PE-BANKに所属している外国人エンジニアの方は、配偶者が日本人なのでビザの問題をクリアでき、日本で個人事業主として働けるという方が多いですね。

フリーランスになるエンジニアが求めていること

大久保:正社員、派遣社員、フリーランスと色々な働き方があると思いますが、それぞれどのような特徴がありますか?

髙田:派遣社員として長期間雇用した場合は、正社員にしなければならないという法律があります。一方で、個人事業主として働き続けたいという方は、技術力が高く、報酬も雇われるよりも高いんです。

自分の技術力を常に高め続けられて、その分収入も上げたいという方が個人事業主として働き続けている傾向にあります。

大久保:エンジニアのタイプによって、どの働き方が合うかが変わるんですね。

髙田:節税したいという理由で、個人事業主になっている人もいます。派遣社員になると、企業に雇用されることになり、サラリーマンと変わらない状態なんです。

ただし、機密性の高い業務に関しては、派遣社員にしか任せられないというクライアントも多いですね。

大久保:提携するフリーランスの方々に向けた教育制度はありますか?

髙田所属している会員向け限定で受けられる教育プログラムを福利厚生のような形式で提供しています。

また、近年は情報管理の徹底が求められているため、セキュリティ教育にも力を入れていまして、PE-BANK独自の7つの基準でイーラーニングを中心とした教育を行っています。

フリーランス集団ではありますが、PE-BANKに所属しているエンジニアは一定以上のの品質を担保できるように色々な工夫をしています。

大久保:企業がフリーランスのエンジニアを活用する際に、能力を最大限に発揮してもらうために、注意すべきことがあれば教えてください。

髙田:フリーのエンジニアの方々は、責任感を持って働く方が多いので、ある程度任せながらコントロールする方が、実力を発揮してくれると思います。

正社員のように全てを把握しながら、逐一指示を与えるやり方は、合わない方が多いと思いますね。

大久保:フリーのエンジニアを採用する際に、自社に合うエンジニアを採用するコツなどあれば教えてください。

髙田:エージェントにしっかり要望を伝えることは大切ですね。

あとは、正社員として雇うわけではないですが、そのエンジニアの方と中長期的にどのようなことを一緒に成し遂げたいかというプランを提示したり、そのエンジニアの成長を一緒に考えたりすると、エンジニア側としても前のめりに頑張ってくれると思います。

ITエンジニア業界が抱える課題とは?

大久保:エンジニア業界のトレンドや今後について教えてください。

髙田:世の中全体で人手不足と言われている中で、少し前に比べてフリーランスになるエンジニアが少なくなっています。PE-BANKとしても営業活動を強化しているので、提携できるフリーのエンジニアの数を増やしたいのですが、そもそも独立する方が減っているように感じます。

一方で、新しくフリーランスになるエンジニアの年齢層が若くなっている傾向があります。

今までは、プロジェクトマネジメントやプロジェクトリーダー、予算管理など、会社に所属して責任のある立場も任された経験豊富なエンジニアが独立していたんですが、今は技術力だけを追い求めた若者が増えているように感じます。

これは決して悪いことではないんですが、そのような若いエンジニアたちが1人の技術者としてだけではなく、プロジェクト管理や複数のエンジニアのマネジメントもできる人材として育てていく必要があると感じています。

大久保:いわゆる上流工程の設計や要件定義などができず、下流の作業者になっているということですね。若手の頃は良いと思いますが、年齢が上がってくると上流工程も求められてきますもんね。

髙田:そうなんです。

マネジメントもできるエンジニアになりたいのか、業種業態に特化したエンジニアになりたいのか、などエンジニアとしてのあり方を早い段階で決める必要があると思いますね。

大久保:フリーランスエンジニアと仕事をする上で、トラブルの対処法などあれば教えていただけますか?

髙田:PE-BANKは契約条件を公開しているのでほぼありませんが、一般的なエンジニア紹介会社を通してエンジニアを採用すると、紹介会社への発注金額と実際に作業をするエンジニアの報酬に大きなギャップが生まれてしまう問題が発生します。

発注者側としては、これくらいの金額で発注してるからこれくらいの品質の作業をしてもらえるだろうと期待するんですが、紹介会社がマージンを取りすぎているケースではエンジニアの報酬が少なくなるので、エンジニアのモチベーションが下がることがあるんです。

このような問題が発生すると、クライアントにもエンジニアにも良いことがないので、発注者とエンジニアの間に複数の会社が入りすぎていないかを、事前に確認する必要があると思います。

ITフリーランスが業務に集中できる環境づくりに取り組みたい

大久保:今後の展望を教えてください。

髙田:PE-BANKは約35年間、フリーのエンジニアのエージェントをやってきたんですけど、働き方の多様化というところで派遣事業も立ち上げました。

対象とするのは、エンジニアの上流工程や機密性の高い案件などのハイクラス業務に対応できる人材の派遣をやろうと思っています。

特に、エンドユーザー系の情報システム部門は人手不足でニーズが高いので、開発現場にエンジニアを入れるのではなく、情報システム部門の社員に替わる人材の派遣を行う予定です。

また、一昨年には業界の永続的な発展と健全化を求める業界団体として、弊社だけでなく同業他社の企業の方々と共同で、「一般社団法人ITフリーランス支援機構」を立ち上げてまして、その活動成果として、昨年からITフリーランスの特別労災保険の認可が下りました。

これで、 ITフリーランスの方々でも労災保険に入れるようになりました。

このように、自社だけでなく、ITフリーランスの全体の働き方の認知も含めて、フリーランスの方々が業務に集中できる環境作りに取り組んでいきたいと思います。

大久保:最後に読者の方へメッセージをお願いします。

髙田:PE-BANKは、起業してフリーランスになった方々の創業支援や生活水準をサポートしていく会社ですので、困ったことがあればいつでも相談していただければ、お力になれる部分もあると思います。

PE-BANKが運営している「サポートプラス」というサイトでも、起業されたばかりの方々でも使えるサービスがありますので、ご活用いただきながら一緒に成長できたらと思います。

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(取材協力: 株式会社PE-BANK 代表取締役  髙田 幹也
(編集: 創業手帳編集部)



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