オフィスの移転は何から始めればいい?相場は? 専門家がポイントをわかりやすく解説

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オージェント合同会社の矢吹代表にオフィス移転の基礎を聞きました

(2020/07/09更新)

新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークなど多様な働き方の導入が進むと同時に、オフィスの解約や移転を検討する企業が増えています。

解約や移転を滞りなく行うためには、綿密な計画と専門的な知識が必要です。オフィスの原状回復をはじめ、移転のサポート事業を展開しているオージェント合同会社矢吹泰正代表に、解約・移転・原状回復までの基本的な流れや、経営者が注意すべきポイントを聞きました。

矢吹泰正(やぶき やすまさ)オージェント合同会社 代表
IT企業退社後に不動産・建築業界の世界に飛び込み、2016年フリーランスとして原状回復査定や原状回復の適正化をスタート。中小企業から原状回復の相談を受け、原状回復の適正化によってオフィス移転のコスト削減を成功させてきた。2017年11月オージェント合同会社を設立。IT、ベンチャーを中心に原状回復査定及び適正化で多くの企業のオフィス移転コスト削減に貢献。年間200件以上の相談数を維持し、移転コスト削減額30%以上の実績を誇る。オフィス移転を軸としたアライアンス企業も20社を超える。

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解約・原状回復までの流れとかかる時間

ーオフィスの解約・原状回復までの大まかな工程・手順を教えてください

矢吹:次のオフィスを探すことが最初のイベントになります。次のオフィスの入居日が決まることで、現在のオフィスをいつ解約すればいいのか見えてきます

解約の前に、賃貸借契約書を確認して、何カ月前までに物件の解約通知を賃貸人に出せば良いのか把握しておくことが重要です。6か月前となっていることが圧倒的に多いですね。解約通知期限になったら、賃貸人もしくは管理会社に解約通知書を提出します。

解約通知書を出してから数日後に、原状回復の見積書をつくるための現地調査が入ります。調査から1か月後ぐらいに、正式な原状回復見積書が提示されます。見積書を確認して、内容に問題がないようでしたら発注書を作成して、原状回復工事を発注します。

原状回復工事がスタートする日までに引越し、オフィスで使った家具家電などの搬出を完了する必要があります。引っ越しが完了した次の週から工事が入り、解約通知書に記載した解約日までに工事を終えるのが通常の流れです。

ー中小企業の場合、オフィスの原状回復工事にどれくらいの時間がかかるのでしょうか

矢吹:工事の内容によってかかる時間は変わってきますが、50坪ぐらいまでなら2~3週間100坪までなら4~5週間くらいがだいたいの目安でしょうか。

ほとんどのオフィス賃貸借契約書では賃貸人の指定する業者が施工し、その費用を賃借人が負担するという内容になっています。よって工事の工程表が指定業者から提示されれば詳細な工事期間がわかると思います。しかし、すぐに工程表が出てくるわけではないので、原状回復にかかる時間を大まかに把握した上で引越しの手配や次のオフィスの入居タイミングを決める必要があります。

コストの相場と経営者が注意すべきポイント

ー原状回復で発生するコストの相場を教えてください

矢吹:原状回復工事は、オフィスにどんな工事を施したかで相場が変わってきます。だいたいの相場の目安は、以下のとおりです。

  • 全く造作をしてなく大きな入居工事をしていない場合→2~3万/坪
  • 会議室やエントランスに造作物を工事した場合→5~6万/坪
  • 照明器具や空調を増設・移設した場合→8万以上/坪

かならずこの通りとは限りませんが、参考にしてみてください。

また、原状回復工事以外だと、次の入居先の敷金・保証金や名刺変更、コーポレイトサイトの変更費、登記簿変更などの細かいコストもかかってきます。

ーオフィスを解約する際に、経営者が注意すべきポイントを教えてください

矢吹:第一に、必ず次の物件を探してから解約予告を出すことだと思います。退去までに次のオフィスが整っていないと、しばらく倉庫でオフィスの家具家電などを預かってもらう必要などが出てきます。こうした状況に陥っている会社を、年間数社はみます。

また、解約前までに賃貸借契約書を見て現行の契約内容をしっかり熟知しておくことが重要です。敷金はいくら預け入れているのか、償却はあるのか、解約は何カ月前までに出せば良いのか、原状回復の内容はどうなっているのかなど、事前に把握した上で解約を進めましょう。

ー原状回復する際に、経営者が注意すべきポイントを教えてください

矢吹:賃貸人から原状回復工事の見積書が出たからといって、すぐに工事を発注しないことです。必ず内容を疑いましょう。わからない場合は専門家に相談することをお勧めします。

トラブルを回避するために、経営者がやっておくべきこと

ー将来的にオフィスを解約する時に備えて、常日頃から意識しておくと良いポイントなどあれば教えてください

矢吹一番大事なのは、オフィス移転計画だと思います。移転の規模にもよりますが、移転時期の1年前ぐらいから計画を立てはじめることが必要です。オフィス移転する目的や、移転先での計画などがまとまっていないと、次のオフィスをどの観点で探していいのかがわからず、移転してもまた同じ問題にぶつかってしまうこともあります。

また、オフィス移転に備えて入居時の書類などの保管・整理をしていくことが大事だと思います。入居契約時にもらう賃貸借契約書・重要事項説明書や館内細則、入居工事発注時に貰うレイアウト図面、建築図面、入居工事見積書など必要になってから探しても、その時は移転で忙しい時期になっていたりします。誤って破棄してしまうこともあるので、あらかじめ意識して保管と整理をしておく必要があります。

ー原状回復でトラブルが発生した時、どう対応すればよいでしょうか

矢吹:トラブルが発生した時は、原状回復の専門家に相談することが一番だと思います。相談先を決めるにあたっては、相談を無料で受けてもらえる会社を探すと良いでしょう。相談だけで費用がかかってしまうと、その分移転コストが大きくなってしまいます。

また相談先を決めるポイントとしては、どこまで一緒にトラブルに立ち向かってくれるかが重要です。相談やアドバイスのみ、もしくは資料作成や紹介のみ、といった一歩下がった立ち位置のサポートだと、最終的に動くのは自分だけになってしまいます。一緒にトラブルに立ち向かってくれるパートナーなのかどうかをよくみて選定しましょう。

わからないことがあれば、まず専門家に相談を!

ーこれからオフィス解約を考えている経営者に向けて、一言メッセージをお願いします

矢吹:オフィス移転は、専門知識が必要になるので、社内の従業員だけでやるのは限界があります。オフィス移転のアウトソーシングサービスを提供している会社もあるので、専門的な知識が必要なところは、プロフェッショナルに相談してみるとよいでしょう。無駄な社内リソースのカットにつながると思います。

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(監修: オージェント合同会社/矢吹泰正代表
(編集: 創業手帳編集部)

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