注目のスタートアップ

特定非営利活動法人そるな 岩瀬陽子|家事代行サービス・家庭支援事業が注目の企業

家事代行サービス・家庭支援事業で注目なのが、岩瀬陽子さんが2022年11月に創業した特定非営利活動法人そるなです。

何かと忙しい現代人、特に夫婦共働き家庭やひとり親家庭においては、家事労働に避ける時間がかなり限られ、手を付けたくてもつけられずに放置してしまっていることもあるのではないでしょうか。
そんな時に助けてくれるのが「家事代行サービス」です。今やその認知度は約90%で、家事代行サービスへの関心の高さをうかがわせます。
ところが、実際に活用したことがあるという人は非常に少なく、全体の3%程度にとどまっています。(2021年LINEリサーチ調べ)
関心はあるが利用には至らない背景に、現実問題としての利用料金の問題や、そもそも他人を自宅に入れたくない、プライベート空間を他人に見られたくない(触られたくない)といった心理的な壁もあるようです。

単に「お金を払って家事作業を他人に任せる」という感覚が先立つと、上記のような壁が立ちはだかると思います。
もし「家事代行サービス」の価値が「家庭支援」であるとしたら、家事代行に対する意識はずいぶん変わるのではないでしょうか。
つまり介護や保育と同じように、家庭内の様々な課題やトラブルやストレス等を取り払うサービスの一つとしての家事代行というわけです。
それによって、例えばかぎっ子の健康支援や心のケアや学習支援、一人住まいの高齢者の見守り、家庭内のミスコミュニケーションの緩和など、単なる家事作業のみならず包括的な家庭支援が行われ、結果、誰もが生きやすい社会・世界の実現に向けた一歩にも繋がる可能性さえ考えられます。

家事代行サービスを家庭支援と捉え、良心的な費用で各家庭に寄り添い、子育て支援やストレス過多の軽減など、様々な側面から家庭事情に応じた支援サービスを柔軟に展開しているある起業家の取り組みに、今注目が集まっています。

特定非営利活動法人そるなの岩瀬陽子さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

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・このプロダクトの特徴は何ですか?

家事代行を「家庭支援」と考え、法人の利益優先ではなく市民の生活環境を向上させることに重きを置いている点にあると感じています。中でも、今まさに子育てをされているご家庭や、これから自分の家族をつくっていく段階にある若者へ向けた家事の指導や教育も行っており、現代に適応する「これからの家族のカタチ」の研究・提唱が我々のミッションでもあります。

・どういう方にこの事業を知ってもらい、活用してもらいたいですか?

家事代行自体に興味はあるけれど、金銭的なハードルや漠然とした不安をお持ちの方、また養育者の代わりにお子さんが家事を担っているご家庭(ヤングケアラーと言います)へ、私たちのことを身近に感じていただきたいです。どうしても「家庭」は閉鎖的空間になりやすい環境です。自分達だけで抱え込まず、もっと社会の手を借りても良いのだということをお伝えしたいです。

また、家事代行を導入する予定はないけれど、家族同士で協力して、家事を分担して行けるようになりたい方にも、私たちの活動を知っていただきたいです。家庭は日常の小さなストレスやミスコミュニケーションからすれ違いが大きくなってしまいます。ご自身の日頃の小さなストレスがまだ概念化されていない場合は、私たちも一緒に考え、カタチにします。家庭を通じて誰かが“犠牲”になる感覚を持つのではなく、互いに納得して家庭の時間を楽しめるように、私たちもサポートしていきたいと考えています。

・この事業の解決する社会課題はなんですか?

「社会に対し、生きづらさを感じる」
「自分に自信が持てない」
「人を信頼することができない」

こうした、私たち個人を苦しめ続ける背景には、時代と社会の変化に適応できていない家庭環境の歪みが関係しています。発達心理的にも、人の根幹の形成には、幼少期の頃から過ごす生活環境や、近くに相談できる大人の存在が大きく影響すると分かっているのです。

平成9年(1997年)以降、共働き世帯の割合が専業主婦世帯の割合を超え、その後30年近い年月を経て、今や男女共働きは私たちにとっての当たり前と化しました。しかし一方で、家庭内の家事・育児分業制度に関する一人ひとりの意識の変革はそこまで進んでいません。仕事に子育て、そして家事。どう考えても私たち大人は、タスク過多な毎日を過ごしています。保護者、養育者の精神的な余裕がなくなっては、共に生活する子どもたちにとって、精神衛生の良い環境とは言い切れません。
そこで私たちは、家事代行サービスを「家庭支援」と考え、子育て世帯を中心に親しみやすい価格で家事代行サービスを展開することによって、まずは養育者を支援し、ご家族全体の生活環境を支えることによって、子どもたちがより伸びやかに、健やかに育つことができる社会環境づくりを目指しています。そして、子どもたちが将来大人になった後も社会と共存し、新たな社会問題へと向き合うようになるための、一つのきっかけでありたいと考えています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

NPO法人として今のビジネスモデルへ到達するまでに、たくさんの葛藤と闘ってきました。
個人事業主として創業した当初から現在と理念は変わらず、事業の最大の目的は「家庭支援」を行うことにありましたが、家事代行の一般的なイメージによって、出会う人々からは「お客さんはお金持ちの人が多いのか」「うちにはそんな経済的な余裕がなくて…」と、金銭的な理由から謙遜されてしまうことが多かったのです。これは家事代行サービス業界自体の課題でもあると思います。また我々の生活のことを考えると、そうした金銭的に余裕のあるお客様に絞ってサービスを提供した方が良いことも分かっていました。またスタッフの人件費を確保することや、今もなおご自身の時間を捻出して家事をし続けている方々への敬意を払うためにも、「家事」というこの仕事を安売りしてはいけないとも感じていました。

サービスの単価をもっと上げ、お客様を選定してしまえば話は簡単かもしれません。しかしそれでは、この仕事を始めた「家庭支援」という理念に矛盾してしまいます。そこで、NPO法人というモデルにたどり着いたのです。現在は、法人としての経営基盤を確保するために、管理会社と提携して単身者用シェアハウスの定期清掃も受注しています。その上で、今後はいただいたご寄付を元に、一般家庭へより親しみやすい価格でサービスを展開していく予定です。そうすることで、経営基盤の安定だけでなく、「家事」という労働の価値を担保した上で、支えたい方々へのサービス展開が可能となります。

また、提携先のシェアハウスに住んでいる若者たちの中には、将来的にシェアハウスを卒業し、新たに家族をつくる人もいるでしょう。中長期的な将来を考えて、「家事代行」が私たちにとってもっと親しみやすい存在になり、当たり前の選択肢として受け入れてもらえるように、今後も一件一件のお客様との出会いを大切にしていきたいと考えています。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

家事代行をもっと世の中にとっての当たり前にしていきたいです。もっと社会の助けを借りても良いということを知っていただき、社会と家庭が共生できる文化を広げていきたいと考えています。

職場や友人関係とは異なり、どうしても「家族」を組織として考える機会は多くありません。時代が変革していく中で、家族という存在の概念もアップデートし続ける必要があるということを発信して参ります。家族同士が気づかぬうちにもつれ絡まり合い依存してしまうのはなく、尊重しあい、共存できる家族のカタチを支援していきたいと考えています。

・今の課題はなんですか?

スタッフの育成とマネタイズが課題です。

ご家庭にお邪魔するという、信用ありき且つセンシティブなサービス内容となっているため、スキル面のみでなく、スタッフのリテラシー教育やホスピタリティをいかに上げてくか、教育制度の重要性を感じています。
またそうした教育体制を整えるためにも、運営費の確保が今後の課題になってきます。税制優遇が受けられる「認定NPO」を目指し活動しているため、黒字事業の活動内容にも、幾つかの縛りがあります。活動の認知を広げること、またご寄付を募ることで、法人経営の基盤をひとつひとつ固めて参ります。

・読者にメッセージをお願いします。

「家事代行が我が家にやってきたら、どうなるかな」をイメージすることから始めていただき、そして是非お試しいただきたいです。正直、実際にご家庭へ訪問するスタッフと、ご家庭との相性もあります。初回から理想の家事代行と出会えるとは限りません。初回の方がもし相性が良くなかったとしても、諦めずに2度、3度とお試しいただきたいです。ご自宅の中に他人を入れるのは怖いかもしれませんが、私たちもこの仕事に誇りを持ち、誠意を持って伺います。どうか謙遜されず、試してみていただきたいです。

会社名 特定非営利活動法人そるな
代表者名 岩瀬陽子(いわせ ようこ)
創業年 2022年11月
社員数 4名
事業内容 家庭支援事業、家事分担推進事業、家事教育・サポート事業
サービス名 家事代行サービス
所在地 150-0002 東京都渋谷区渋谷1-23-21 渋谷キャスト1314
代表者プロフィール 1994年生まれ。サザエさんのフネさんのように「家族の食卓を豊かにする母」を志し、栄養士を取得。就職活動中に女性としてキャリアの両立の難しさに疑問を抱き、子育て支援の重要性を知る。大学卒業後は保育園運営会社へ就職。全国300ヶ所以上の保育施設運営、及び新規事業開拓に携わったのち、家事代行サービスを開業、独立。現役子育て世帯のリアルな声を聞くため、個人事業主として3年半家事代行サービスを展開したのち、2022年11月にNPO法人そるなを設立。
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