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2022年5月11日株式会社Polyuse 大岡 航|建設用3Dプリンターの事業開発が注目の企業
建設用3Dプリンタの事業展開で注目されているのが、大岡航さんが2019年6月に創業した株式会社Polyuseです。
建設業界は熟練職人の高齢化と若手入職者の減少から、深刻な人手不足が進んでいます。建設業界の人手不足は国内のインフラ整備に関わる重要な課題であり、私たちが無関心ではいられない、改善が急務の課題です。
その解決策の一つとして、建設業界でのテクノロジー活用に注目が集まる中、2022年1月に高知県内の自動車道の建設現場で、国内の公共工事で初めて、3Dプリンタ(株式会社Polyuse製)によって造形されたコンクリート構造物(集水桝)が設置されました。
建設用3Dプリンタは、熟練職人でなければ作ることが難しかった多種多様な構造物の製作を若手人材にも担えるようにして、人手不足を解消し工期を短縮するほか、危険な仕事や単純肉体労働を代替し、人でなければできない生産性の高い仕事に職人を再配置できるという点で注目が集まっています。
株式会社Polyuseの大岡航さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトを開発しようと思ったきっかけや経緯について教えてください。
私たちが普段歩く道や利用する鉄道、車で通るトンネルや橋など、さまざまなインフラの構造物はコンクリートを活用しています。
こういったインフラでのコンクリート構造物の耐用年数は一般的に50年とされていますが、日本のコンクリート構造物の多くは高度成長期前後に作られたものが非常に多く、すでに40〜50年以上が経過しています。
実際に10年ほど前には、トンネル内の天井板が100m以上にわたって落下し、走行中の車が巻き込まれるという大事故が起こりました。
さまざまな場所でいつ崩落事故が起きてもおかしくない状況ですし、今後発生が危惧されている大地震によってそれらが一気に壊れる危険性をもはらんでいるのです。
建設業界の皆さんは、それに耐えうるようにと日々作業をしてくださっているのですが、熟練職人の高齢化と若い働き手の不足、最近ではロシアの軍事侵攻も関連して、資材の調達コストが上がり、工期も延びるなどの影響が出ています。
このインフラの老朽化と建設業界における人手不足の課題等を、テクノロジーの力で解決したいと考え、建設用3Dプリンタの開発に至りました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
簡単に言いますと、3Dプリンタに三次元デジタルデータを入力すると、建設用3Dプリンタに最適化されたコンクリートを吐出し、最適化した素材の圧送やノズル移動を通して、自動で立体造形ができるというものです。それを建設用に特化し、コスト的・技術的に今までなら実現が難しかった形状にも対応できるよう幅を広げています。
3Dプリンタには、『ソフトウェア』『ハードウェア』『マテリアル』という3つの要素がありますが、それぞれに専門性を持つ人材が在籍しており、時には建設会社や生コンクリート会社など各業界のプロたちとコンソーシアム型の協力体制を取り入れることで、スピード感を持って開発と改良を繰り返しているのが特徴です。
・このサービスが解決する社会課題はなんですか?
大きく3つあります。
1つ目は、老朽化によって人を事故に巻き込みかねないインフラに対して、迅速なメンテナンスを行い、3Dプリンタ活用により復旧または事前に構築することです。
2つ目は、災害時の住宅等の建築物の建設です。例えば、一時的に住居を失った方に迅速に仮設住宅を提供します。
3つ目は、建設業界における雇用や人手不足の課題解消です。
建設業界では、肉体の衰えにより50〜60代で生産性が下がるとされている状況があります。
我々は、年齢が高くなり従来の職人仕事ができなくなっても、我々の3Dプリンタを活用していただくことで仕事を続けて、今まで培ってきた知見をさらに発揮していただく環境を作りたいと考えています。
テクノロジーが進んでも、ロボティクスを操作したり施工管理する人間は絶対に必要です。
肉体労働以外の仕事でも職人さんが評価されて長くこの業界で働けて、また若手人材を早く戦力化できる環境作りに貢献したいと考えています。
それが、建設業界をスマートなイメージに変えていくことにもつながればと思いますし、人がやるには危険な仕事や単純肉体労働を3Dプリンタによって減らしていきたいと考えています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
今回が4回目の起業ですが、ずっとIT企業を経営してきて建設業界の知識はほぼゼロの状態でした。
IT領域ではある程度は知識がありお客様と対等にお話できていましたが、建設現場に入り70代の職人さんとお話する時はそうもいきません。
職人さんと、人と人との関係性を構築することが最も大切だと思い、その構築が大変なところでした。まず、職人さんたちが使う専門用語、例えば、「型枠工」「打設」「養生」などの言葉を勉強し、実際に現場に出てともに作業をしたり、関係性の構築から始めていきました。
・4回の起業を経験されているとのことですが、最終的になぜ今までのご経験とは全く違った建築業界で起業を決意されたのでしょうか?
自分にしかできないことを仕事にしたいと、大学生で初めての起業をしました。
でも気づけばここ10年、お客様先行型で、利益が出しやすいビジネスしか構築できていませんでした。それは僕でなくてもできることで、次にもし改めて起業家として起業するなら自分しかやらないようなことを選択しようと考えていました。
Polyuseの事業は研究開発と地道な泥臭い作業が必要で、私自身もコンクリートに触わることは日常茶飯事です。少なくとも自分が知っているIT起業家たちは、こんな泥臭いことはあまりしたがらないと思います。
研究開発の過程では沢山の資金も必要で、法律やルール策定面については行政と対話を重ね、現場では様々なレガシーな産業のプロから叱咤激励頂きながらも話さなければいけません。
採用面では、ソフトウェア、ハードウェア、マテリアルにわたり詳しい人材が必要なため、非常にコストや広い知見が必要で、大学の先生方とも話さないといけません。
とても手間がかかるし、お金がかかるし、社会実装もハードルが多く難しいのでやらないという判断になるはず、と思った時に、これは自分しかやらないことだとやりがいを感じ、Polyuseの創業を決意しました。
・今の課題はなんですか?
スピード感です。海外では、国が投資をして技術を伸ばすことが経済発展につながるとして、アメリカ、中国、オランダ、フランスなどの各国でどんどん投資をして、日本に比べ何十倍も速いスピードで事業が進んでいます。
日本では、国がスタートアップに対して実証実験のフィールドを用意し、積極的に産官学が連携する事例はまだまだ多くはありませんし、ましてや建設用3Dプリンタにおけるルールは国際的にも策定されておりません。
そういった中で日本のディープテックベンチャーがダイリューションを起こさずにうまく育っていくための一事例作りを、現在国土交通省やVC、大学の先生方と一緒に一から構築している感じです。
様々な方々との事業推進やルール作りは、面白い反面大変ですし、課題が多すぎて正直追い切れていないと感じています。
・読者へのメッセージをお願いします。
10年前と比べても、起業はそれほどハードルが高くない世の中によりなって、今はすごく恵まれていると思います。
後輩の起業家に相談されて思うのは、結局、やるかやらないかです。事前の戦略や仮説は確かに大事なポイントではありますが、経過とともに変わっていくこともあります。
よく議論にもあがりますPMF(プロダクトマーケットフィット)も最初はいったん置いて、まず最初に注力が必要なのは、MVP(実用最小限のプロダクト)だと思います。そのプロダクトで何の課題を解決できるのかというプロダクト磨きの第一歩の確信を掴むことやより解像度の高い顧客ヒアリングは経営者自身が現場に出てやらないといけない、とアドバイスしています。
何の課題を解決できるプロダクトなのかを非常に深く掘り下げて、市場とのマッチング具合を高めるのがいわゆるPMF達成の第一段階だと思います。
我々の場合は、コンクリート構造物を手軽に作れる、それが工期短縮や人件費圧縮につながるという分かりやすいソリューションとしてMVPを開発しています。
現在、MVPをグロースできるように横展開したり事例数を増やして本格的にPMFに向け動いている段階です。まずはMVPに執着する、起業家自身が最も熱狂することが大事だと思います。
会社名 | 株式会社Polyuse |
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代表者名 | 大岡 航 / 岩本 卓也(共同代表) |
創業年 | 2019年6月27日 |
資本金 | 6,087,785円 |
事業内容 | 建設用3Dプリンタを中心とした建設業界特化型の技術開発及びサービス提供 |
サービス名 | 建設用3Dプリンタによるコンクリート構造物/建築物の製造 |
所在地 | 東京都港区浜松町2-2-15 2F |
回答者プロフィール | 高知県出身、1994年生まれ。 同志社大学在学中にインフラ/DB設計・システム開発・監視運用まで一気通貫を得意としたIT開発事業を中心とするIT会社を創業。現在まで、複数の上場企業の新規事業及び事業開発を支援。同時に複数のベンチャー企業の役員も兼任。 2019年には株式会社Polyuseを創業し、建設業界において自社開発の建設用3Dプリンタや特殊センサー技術等を活用した業界DXに従事。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | 3Dプリンター Polyuse 大岡航 |
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