IVSの進化・IVS京都2024現地レポート&島川敏明代表インタビュー

今年のIVSは何が違うのか


スタートアップの代表的なイベントである「IVS(アイブイエス)」が、7月4日から6日まで京都市で開催されました。IVSの中で実施されるローンチパッドは、数多くの上場企業を輩出してきました。

IVSは元々、招待制で規模や参加者を限定したイベントでした。しかし近年、若者などの参加をよりオープンにし、裾野を広げて参加者1万5000人を見込む巨大イベントに変貌しています。今年のIVSは会期を土曜日まで広げ、学生向けのチケットを提供し、新興企業に就職や転職を考える若者層も取り込もうとしています。近年のIVSの進化について、取り上げてみます。

創業手帳が感じたIVSの変化

1.参加者の変化 若者と女性の増加
従来、こうしたスタートアップの招待制のイベントは「よく見る人」が参加していました。
しかし、近年のIVSは、こうしたスタートアップ界の大物だけでなく若者など若手のスタートアップが多数参加しているのが大きな変化です。スタートアップに一旦就職する目的で参加している若者も受け入れています。起業を将来的に目指す学生にとって、ダイレクトに学生起業を目指すのも良いですが、「いったんスタートアップで働く」という選択肢は起業に至るステップとして現実的な選択肢の一つと言えます。
人材不足に悩むスタートアップにとっても採用機会につながる面があります。こうした層にも参加者を拡大したことで将来の起業家が増える可能性もあります。今年は平日に加え、土曜日も開催することで、社会人や学生が参加しやすいように工夫されています。「HR GALLERY」では、転職支援の企業が展示ブースを設けており採用活動を行っています。

従来、こうしたIT・テクノロジー系のイベントといえば「男性が圧倒的に多い」というのが現実でした。しかし近年、女性も増えてきている印象です。女性がメインの「EmpowerHER LOUNGE」や、セッションも男性に偏らない配慮がされています。

こうした参加者層の拡大は、スタートアップ予備軍を広げることにつながるでしょう。

2.出会いの創出
こうしたイベントでは自然発生的な出会いも魅力ですが、出会いの創出も主催として仕組みが用意されています。
その象徴的なものがサイドイベントです。夜に行われる打ち上げパーティ・テーマ別の交流会です。人数が限定されることでより緊密な関係が生まれやすいです。
今回150ものサイドイベントが開催され、参加者は好きなイベントに参加する形式です。一晩でいくつものイベントをハシゴする猛者もいます。筆者もいくつかサイドイベントに参加しましたが、夜の方がやはり仲良くなれる可能性は高いです。

3.字幕や表記が英語。海外の参加者を受け入れ

面白かったのは字幕や資料の表記が基本英語であることです。セッションの言語は日本語がほとんどですが、スクリーンに自動翻訳の英語の字幕が表記されます。
実際に、海外からの参加者も多く、海外からの参加者を意識した対応になっています。

4.スタートアップがより一般に注目されるようになってきた

一昔前に起業・スタートアップといえば、今ほど注目されず、大企業の影に隠れた存在でしたが、現在では行政・政府の支援も目立っており、特に今回のIVSではスタートアップが市民権を得てきた事を実感しました。今回、岸田首相の応援のビデオメッセージの他、京都府知事から優勝賞金1000万円が贈呈されるなど公的な応援が増えているように感じました。

5・ピッチの変化 AIは当たり前・具体的にどう社会課題を解決するかにテーマがシフト

ローンチパッドのようなビジネスのプレゼン(ピッチ)は、AI・テクノロジー・ソーシャル・環境・衛星といった今の時流に合ったテーマが取り上げられていました。
ピッチを通じて投資家から資金が集まるきっかけになることも多く、こうした社会課題にVCなどの資金が集まるのは、社会の問題の解決につながっていく原動力になります。
また、従来に比べると、AIなどテクノロジーを活用し、現場の課題解決につながる現実的なアプローチが増えてきたように感じました。

IVS代表 島川敏明さん コメント

私自身、ボランティアスタッフとしてIVSに関わり始めたのが学生時代です。その後、ライブ配信アプリ「17LIVE」の日本法人を立ち上げ、投資業界に転身し、今では、IVSの代表として運営に携わっています。自分自身も学生としてIVSに参加して、最終的に起業に至ったわけですが、より多くの方に門戸を開く試みを始めています。従来の完全招待制から、昨年から一部オープンにする試みを始めました。

これは行政も掲げていますがスタートアップの増加を支援するためです。良い人に出会い、良い情報を得ることが重要です。
ユニコーンを増やすためには、海外市場にも目を向ける必要があります。また海外からの参加者も増えていました。

また、ローンチパッドなどピッチにも最近のトレンドが見られます。ITだけでなく、物作りやディープテックを取り入れたサービスが増えてきました。今回の優勝者は倉庫の自動化のレナトスロボティクス安藤さんですが、これが、ロボットとAIを組み合わせたサービスです。技術的なトレンドも多岐にわたっており、衛星データの活用もその一つです。行政もこの分野に注力しており、今後もこの領域のスタートアップが増えていくでしょう。

AI技術も進化していますが、単にAIを強調するのではなく、サービスの一部として自然に組み込まれる時代になりました。相性の良いサービスとAI技術を組み合わせることで、新しいサービスの指針を示すことが重要です。AIの汎用化が進む中で、他の分野との組み合わせが鍵となっていくと思います。

IVSは多くの人々にとって、スタートアップ業界への入口となってきています。IVSはネット上でやりとりしていた人たちがリアルで集まり、情報交換する場と考えています。
その中でもサイドイベントは鍵になる役割を果たしてます。昼間は1万人もの参加者がいるので、サイドイベントを通じて目的に合った人と繋がることができます。

AIやコミュニケーション手段が進化する中で、やはりオフラインでの繋がりが重要だと思っています。
ビジネスを進める上で、オフラインでの出会いと信頼関係が不可欠です。これからもIVSはオフラインの場を大切にしていきたいと思っています。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。

解説者紹介

大久保幸世 創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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