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2023年7月24日株式会社フレンドマイクローブ 蟹江純一|油脂分解微生物を利用した油関連環境事業が注目の企業
油脂分解微生物を利用した油関連環境事業で注目なのが、蟹江純一さんが代表を務める株式会社フレンドマイクローブ(2017年6月創業)です。
私たちの身の回りにある多くの製品には油脂が使われます。食品、化粧品、洗剤といった日用品にも非常に多くの油脂が使われています。
それらの製品を製造する過程で発生する排水に含まれる分離精製が難しく再利用性が乏しい油の処理が今大きな問題になっています。
油は自然分解が難しい物質の為、そのまま排水と共に垂れ流してしまうと、水質汚染や空気汚染、排水処理機器の故障等を引き起こしてしまいます。
現在は、排水中の油を事前に単独処理してから廃棄処分するという方法が主流になっていますが、この方法だとそもそも廃棄処理にかかるコストや労力負荷が大きく、環境汚染問題も残ったままの状態です。
そこで今、その根本的な解決のため、新しい油脂分解システムの開発が行われており、大きな注目を集めています。
この新しいシステムでは、油脂分解微生物が油脂を分解して消滅させるので、産廃物そのものの減少、自然環境保全につながるだけでなく、労力削減にも大きく貢献します。
株式会社フレンドマイクローブの蟹江純一さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・この事業の特徴は何ですか?
排⽔中の油脂分解システム「MiBiocon-FW」は、⾷品加⼯など⾷品を取り扱っている⼯場から排出される廃⽔に含まれている油脂をターゲットとしている技術です。従来は物理的に分離して産業廃棄物として処理されていた再利⽤性の乏しい排⽔中の油脂を、名古屋⼤学で開発された⾼性能油脂分解微⽣物群により分解することで、産業廃棄物である油性汚泥の発⽣を抑えることができる技術です。現在、⼤⼿⾷品会社で活⽤していただいており、油性廃棄物の削減・悪臭の解消・廃棄物処理コストの削減等、効果を実感していただいております。
・どういう方にこの事業を知ってもらい、活用してもらいたいですか?
私たちは、特に「産業廃棄物の削減に関心がある」「廃棄物処理コストを低減したい」「廃棄物に起因する悪臭などで労働環境が悪化するのを防ぎたい」といった課題を抱える食品関連企業にこのサービスを利用していただきたいと考えています。近年の食文化の変化とともに、油脂の排水問題が深刻化し、それが生産活動全体に影響を及ぼす可能性があるため、早急に適切な解決策を見つけることが重要となっています。また、環境問題に対する意識の高まりから産業廃棄物の削減が求められており、これらの問題は今後、さらに多くの食品加工業者が直面するであろう課題となっています。
・この事業の解決する社会課題はなんですか?
このサービスが解決を目指している社会課題は主に二つです。まず一つ目は、微生物分解技術の利用を通じて、油性由来の産業廃棄物を削減し、食品生産プロセスの下流工程で石油燃料による焼却を行う際に発生する温室効果ガスの排出量を減少させることです。これにより地球温暖化の抑制に貢献します。
二つ目は、廃棄物の再利用性の向上です。通常、油脂を含むと再利用性が低下する廃棄物ですが、この技術により汚泥や生ゴミの再利用性が向上し、肥料や飼料として活用できます。これにより、資源循環の強化に寄与します。
さらに、これらの解決策は油脂分解のモデルケースに留まらず、他の廃棄物(例えば機械油など)に対しても応用が可能で、廃棄物の削減と温室効果ガスの排出量削減への一層の貢献を目指しています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
創業期に最も大変だったことは、排水処理業界における油分解微生物に対する信用の低さでした。微生物は目に見えない存在であり、その効果が明確にわかりにくい性質があります。このため、過去に効果があるとされた製品を試したものの、期待通りの結果を得られなかったエンドユーザーからは、微生物に対する猜疑心を感じることが多くありました。
この課題を乗り越えるためには、微生物の効果を明確に示し、その信頼性を確立することが必要でした。そこで私たちは、大学発ベンチャーとして科学的な手法を用いて微生物の効果を一つずつ数値化しました。そして、そのデータを基に実際の現場での排水処理に対する試験を行い、その結果をエンドユーザーに提供することで信用を獲得しました。
目に見えない微生物の効果を具体的に示すことは容易なことではありませんでしたが、科学的なアプローチと実地試験により、エンドユーザーの信頼を得ることができました。この経験は、我々が現在の事業を展開するための基盤となりました。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
私たちのビジョンは、微生物の無限の可能性を活かした、商業的に有用で環境に優しい技術を開発し、広めることです。微生物は人間の体内から極限環境(砂漠、火山、深海など)まで、様々な場所で生息しており、多様な化合物を分解・合成できます。この能力を利用すれば、石油から新たに生み出されたプラスチックまで、さまざまな物質を分解・合成できる可能性があります。
人類が長年にわたり生産・廃棄してきた物質による環境問題は深刻であり、その解決に向けた自然環境に配慮した技術が求められています。私たちは、この社会的なニーズに応えるべく、微生物の力を最大限に活用した新しい技術を展開していきたいと考えています。
現在の事業は、微生物技術の広範な活用への第一歩であり、基盤となるモデルケースです。一度導入されると5~10年間は安定して稼働することが期待され、その収益の一部は新たな研究開発への投資となります。これにより、さらに多種多様な微生物技術の開発とその普及を推進していくことを目指しています。
・今の課題はなんですか?
現在私たちが直面している最大の課題は人手不足です。私たちのサービスに対する注目度が高まり、これに伴って取引の引き合いも増えてきました。これは非常に喜ばしい事態であり、事業拡大の明確な証とも言えます。しかし同時に、それらの引き合いに対応するための足りない人手という問題も浮き彫りになってきています。
その解決のため、最近ではエクイティファイナンスを通じた資金調達を行い、新たな人材を雇用するための元手を確保しました。私たちは現在、社員を積極的に募集しています。特に、引き合いに対応し、さらなるビジネスチャンスをつかむための営業力強化と、私たちの技術とビジョンを広く世の中に伝えるための広報力強化が求められています。
人手不足は即座に解消することは難しい課題ですが、私たちは新たな人材の募集と育成に全力を尽くし、この問題を乗り越えていく所存です。その上で、私たちのサービスをより多くの人々に提供し、環境問題の解決に貢献していきたいと考えています。
・読者にメッセージをお願いします。
私たちは、微生物と酵素の可能性を追求し、その力を活用してSDGs達成に向けた具体的な取り組みを支援する技術を研究・開発している名古屋大学発のベンチャー企業です。自然界に存在する微生物の力を最大限に引き出し、それを用いて社会課題の解決に取り組んでいます。
私たちの願いは、一人ひとりの方が微生物についての理解と興味を深め、その活用を通じて持続可能な社会の実現に一歩一歩近づいていくことです。それは、我々が直面する環境問題の解決に向けた大きな一歩となると確信しています。
昨年には、その努力が評価されて複数の賞を受賞することができました。これは皆さまからの大きな期待の証であり、私たちの成長の源泉ともなっています。これからも、その期待に応え、更なる成長を遂げるために全力で取り組んでまいります。
そして、その挑戦を一緒に支えてくれる新たな仲間を募集しています。当社のビジョンに共感し、一緒に事業を成長させてくださる方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。微生物の未来を一緒に創り上げていきましょう。
会社名 | 株式会社フレンドマイクローブ |
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代表者名 | 蟹江純一(かにえ じゅんいち) |
創業年 | 2017年6月 |
資本金 | 125百万円 |
社員数 | 1名 |
事業内容 | 油脂分解微生物を利用した油関連環境事業 |
サービス名 | MiBiocon-FW |
所在地 | 464-0858 愛知県名古屋市千種区千種2-22-8 名古屋医工連携インキュベータ 104 |
代表者プロフィール | 1991年に名古屋市で誕生。以来32年間、名古屋市内に居住。 高校でバレーボールを始めて以来15年間現在もプレイし続けている。 2019年に入社し、2021年に代表取締役社長に就任するまでの間、営業・研究開発業務を務めながら、先代代表であり、バイオベンチャーの草分け的存在の医学生物学研究所の創業者、西田克彦氏の元で経営者のマインドを学んだ。 代表に就任後、様々なアクセラレーションプログラムに採択していただき、たくさんの方のご支援を受けながら、ビジネスや経営について学んでいる。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | SDGs フレンドマイクローブ 微生物 水処理 環境 蟹江純一 酵素 |
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