注目のスタートアップ

DOORCOM株式会社 松井伊織|スマートインターフォンの事業展開が注目の企業


スマートインターフォンの事業展開で注目されるのが、松井伊織さんが2010年7月に創業したDOORCOM株式会社です。

IoTの一般化に伴い、私たちの生活がより便利に、より快適な方向へと進化しています。スマートハウス、スマート家電、スマートカーなどの言葉を耳にする機会も多く、あらゆる分野でスマート化に注目が集まっています。

DOORCOM株式会社のスマートインターフォン事業の特徴は、一歩先のスマートライフを手に入れられるという点です。
住宅の入口に設置されたインターフォンから、顔認証、QRコード、カードキーなどの多様かつ、セキュリティが堅固な認証方法で入室ができ、スマートフォンのアプリを利用すれば、離れた場所にいてもオートロックの遠隔解錠ができてしまいます。
スマートインターフォンの利用にはもちろんインターネットへの接続が必要となりますが、導入のしやすさにおいて優れています。それは有線LAN・Wi-Fiの両方に対応しており、新築の建物だけでなく、リニューアルや後付けができ、コストパフォーマンスも良いという点です。

DOORCOM株式会社の松井伊織さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

事業の内容を教えていただけますか?

主に賃貸マンションの管理会社様・オーナー様向けに「スマートインターフォン」の販売・施工・サポートをしており、海外メジャーブランドのインターフォンの国内販売代理店をしています。

もともとシステム開発から始めたIT企業で、平成25(2013)年にIPインターフォン事業に参入し、IT企業としては珍しく一般建設業の許可を受けており、建築士や電気通信施工管理技士などを含む国家資格保有者が在籍して、施工まで行っています。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

マンションや住宅の入口に私たちのスマートインターフォン(集合玄関機)を設置されますと、入居者は高度な顔認証によってオートロック解錠ができます。顔認証の他にも、カードキーの利用が可能です。

一時的に出入りする不動産の内覧担当者、工事業者には、時限式のQRコードによる解錠もでき、クラウド上でオンタイムの使用状況を確認できるためセキュリティ上安心です。履歴も写真付きで確認でき便利です。

また、入居者がカードキーを紛失した際には、カードキーの暗証番号の登録変更が遠隔で行え、管理会社の担当者が現地に向かう必要はありません。

利用にはインターネットに接続する必要がありますが、有線LANだけでなく、LTE式にも対応しているため、ケーブルが引けない建物にも対応しています。また、室内モニターはLAN配線をしなくてもWi-Fiを使えるので、室内工事が最小限で済む手軽さがあります。携帯のアプリ(iOS、アンドロイドに提供)を使用すると、不在時にもインターフォンに応答でき、遠隔からオートロック解錠ができます。

さらには、集合住宅でお1人だけ固定電話やガラケーしか持っていないという場合でも、音声のみとはなりますがオートロック解錠ができます。

新築、リニューアル、後付けにも対応しており、建築とITの技術を使って世の中のスマート化に貢献する会社として、東京、横浜、札幌に拠点を置き、現在展開中です。

・今の会社は初めての起業だったのでしょうか?

経歴を申しますと、工業高専の電気科を卒業してから、3年半米国留学をしてITを学び、帰国後千葉大学の建築学科で学びました。初めての起業は大学の在学中で、現在の会社は2回目の起業です。

1回目の起業はBtoBの化粧品製造のベンチャーで、商売に徹し、しっかりと利益を出し、会社を成長させていきました。その方針は今の事業でも全く変わらず、赤字を出したのは東日本大震災が起きたときの一度きりです。

・長らく経営している中で、会社を成長させ黒字にしていくコツを教えていただけますか?

会社を成長させるためには、成長するポイントで資金を投入して市場をこじ開ける方法と、市場が育っているタイミングで商品を持ってきて広げる方法の2つがあると思いますが、私は後者の方法で会社を成長させました。

初めての起業では、ジェルネイルの市場が育ち始めている時期に参入し、自ら開発してマーケティングと販売を行い、輸入品で価格も高かったジェルネイルを初めて日本で製造し、市場にうまくマッチングさせました。

一方、IPインターフォン市場は、先ほど平成25(2013)から参入したと申しましたが、それ以前からも関わりがありました。ただ当時は、まだ市場が広がらないだろうという感覚がありました。

IPインターフォン市場は空港施設やオフィス向けから始まりました。2019年ごろには「住宅用にも使いたい」という声が増え、十分に参入できるとの感触を得たので、メーカーと共同で住宅用商品を作り上げ、住宅用IPインターフォン市場へ参入しました。

その後は通信会社と連携することでインターネットというインフラを味方につけて、管理会社、施工会社、建材メーカーと順々にコラボ先を増やしていきました。

このようにスムーズに市場に参入できたのも、一流企業のIoTデバイスの基本設計や要件定義をしてきた経験からスマート化のノウハウを持っており、建築業界でのノウハウも持っていたからだと思います。

また、市場が成熟してくるタイミングでは、新規算入されないように強く意識して参入障壁を設けることも重要です。

・スタートアップの方向けに教訓となるお話をいただけますか?

そうですね、とりあえず何でもいいからやってみることだと思います。

私の場合は、いろいろなことをやった上で、40歳過ぎてから自身を振り返り、工業高専、米国留学、大学での学びと経験を活かせる事業は何だろうかと考え、バラバラだったピースをはめていき、今のスマートインターフォン事業に辿り着きました。

私たちがインターフォンの施工ができるようになったのも、頼んでもやってもらえず、自分たちでやることにしたからなので、若いうちは手を汚して何でもやってみたらいいと思います。

ただ、私たちは大企業ではないので、やはり、やれること、やれないことがあります。例えば私たちの事業では、機器を海外から輸入してローカライズしていますが、できるだけ日本人限定仕様の機器は作らないようにしています。お客様のオーダーに従って無理をしてしまうと、採算面がうまくいかなくなります。

また、1回目の起業時は、いろいろな本を読みました。その中にはピーター・ドラッカーの本があって、後で振り返ったとき、自分の成功、失敗のすべてがドラッカーの本に書いてあることに気づき、それ以来他の経営の本は読まなくなりました。起業するとかなり迷いが多いので、これはと思う本で振り返りをするのも良いことだと思います。

・経営する上でのモットーはありますか?

「有言実行」と「約束を守ること」、あとは、儲からないとか、忙しいとか、いろいろ事情はあっても「なるべく断らない」ことです。

以前、ある人から「砂漠の砂は、水だろうがオイルだろうがコーラだろうが全部吸い取る。砂漠の砂のようにまずは全て吸収してみて、その後で“これはオイルだった”と吐き出せばいいじゃないか」と言われたことがあります。最初から選り好みしていたら仕事は来ないぞという忠告でしたが、この“砂漠の砂精神”を今でも大事にしています。

・読者にメッセージをお願いします。

事業をやると決めたら、この分野に関しては誰にも負けないという“狂った情熱”を持つことが大事です。

私自身、自分の事業はインターフォンだと決めたら、インターフォンに関しては日本一、さらには世界一詳しい人間になりたいと思いますし、さらには「スマートシティと言ったらミスターマツイだ」と口をそろえて言われるまでになりたいと思っています。そのためには、“狂った情熱”を持たなければいけません。

会社名 DOORCOM株式会社
代表者名 松井伊織
創業年 2010年
事業内容 IPインターフォン販売業 ITシステム開発業(WEBシステム、アプリ) ITインフラ開発業(ネットワーク、サーバ、クラウドサーバ) 住宅設備機器販売業 建築設計・施工業 住宅設備メンテナンス業
サービス名 DOORCOM
所在地 東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15F
代表者プロフィール 福島工業高等専門学校の電気工学科を卒業後、プログラミング技術を学ぶためシアトルに留学。
ITバブルの崩壊、シアトルで経験した大地震、アートの授業で建物の絵を学んだことなどがきっかけでハワイ大学の建築学科に編入。
帰国後は千葉大学の建築学科に編入。専門はプロパティマネジメントで、建物の維持管理・価値向上などを研究。

留学時に、アメリカで日本の化粧品を購入することができなかった経験から、海外に化粧品のネット販売会社を立ち上げる。
また、当時日本ではジェルネイルの種類がほとんどなかったことから、日本で初めてジェルネイルを製造販売、全国展開し海外へも輸出。

東日本大震災をきっかけに建築知識を生かして被災家屋の解体などの災害ボランティアを行ったり、建築会社で復興の仕事に携わった。
IT開発の会社(DOORCOM株式会社の前身)を設立し、外資系製薬会社や金融、保険会社などのIT開発を行う。
8年前にIPインターフォンと出会う。日本で集合住宅用のIPインターフォンを販売する会社がなかったこと、IPインターフォンの未来の可能性を感じたことから、日本での販売のため海外メーカーとともに開発を重ね、3年前から事業転換。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
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