月次決算の目的は?月次決算のやり方や流れを紹介します

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月次決算に取り組んでスピード感がある経営を目指そう


Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の段取りは、企業の管理や財政の基本的なフレームワークです。
月次決算で会計数値を確認することは、PDCAサイクルのCheck(評価)を行い、次のAction(改善)に移行するためにも重要です。

社会の変革スピードが時代とともに増す今、社会の変化に対応する企業には、迅速な意思決定が欠かせません。
月次決算を活用して、企業内の情報を小まめに把握し、対応しましょう。

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いまさら聞けない月次決算の基礎知識


企業では、決算月に企業活動の実績をまとめた決算を行います。財務諸表を作成して、冬季の財務状況や実績を利害関係者に公表するのが決算の目的です。
法律上、どの企業でも毎年1度は決算が実施されます。

ただし、決算は年に一度とは限りません。
月単位で行う決算業務のことを月次決算と呼び、法律上義務ではないものの多くの企業で導入されています。
月次決算の基礎知識や目的について紹介します。

月次決算とは

月次決算は、月次で行う決算をいいます。
株式会社では決算公告が義務付けられていますが、月次決算は企業の裁量次第です。
企業によっては、翌月の10営業日程度で月次決算される場合もあれば、月次決算をそもそも実施しない企業もあります。

月次決算をすることで業務負担が大きくなる、人件費などのコストがかかるといった意見もあるかもしれません。
しかし、企業が社会情勢の変化に対応するため、スピーディーに意思決定するために月次決算には大きな意味があります。

月次決算と年次決算の違い

年次決算は、法律で実施が義務付けられた決算です。年次決算では、一年間の経営実績を損益計算書と貸借対照表にまとめて公表します。

一方で、月次決算は、企業が任意でその月末を決算期末として決算書を作成するものです。
その月の会計を締めてから年次決算の業務と同じような会計処理を実施します。

月次決算は、利害関係者や株主への情報提供が目的ではありません。
経営者が戦略を考える上での資料や、企業の方針を決定する際の参考にするために、月次決算を作成します。
そのため、作成される資料も損益計算書や売上実績などの直近の経営を示す資料が中心になりやすい傾向があります。

月次決算の目的は?

月次決算は、作成するもしないも企業の判断にゆだねられます。月次決算により、リアルタイムで業績を管理して年度計画への進捗を把握しやすくなります。
また、経営状況が良くない時にも原因を究明して、早めに対策を打つことが可能です。

生産状況や先方の検収遅れ、債権の回収遅れなど問題の早期発見を目的に、月次決算が行われるケースもあります。

月次決算のスケジュール

月次決算は、年次決算に近い内容の書類を作成します。しかし、月次決算の業務で求められるのは、スピーディーさと正確さです。
年次決算は、一カ月程度の期間を使って作成しますが、月次決算を同じ時間で作成しては間に合いません。
収益や経営が悪化しているのに、状況を把握するのが翌月前では状況の立て直しが困難です。

企業により違いはありますが、月次決算は翌月10営業日までには作成してください。年次決算と同じフローではなく、期限を決めて段取り良く進める必要があります。

スピーディーかつ正確に月次決算するためには、あらかじめスケジュールを組んでおきましょう。
以下には、月次決算の段取りや作業をまとめました。

1.請求書などの締め日と精算

月次決算をスムーズに実施するためには、必ず請求書などの締め日を設定してください。
営業担当者による売上計上や、仕入れ部門による仕入れ、経理による交通費をはじめとした経費計上のようなお金は、締め日で締めきります。

締め日の管理は各部門の協力が必須です。毎月〇日までに提出などと決まりを作って、周知するようにします。
また、仕入れ先にも請求書の到着がいつになるのか確認しておきましょう。

2.決算整理

決算整理では、帳簿の残高や在庫金額を確定し、仮払金や仮受金がある場合には適切な科目に振り替えます。

前払費用や未払、前受収益などがある時には、あらかじめ決めておいたルールで計上してください。
さらに、減価償却費や引当金など年間で計上される費用も月割にして計上します。

3.決算書作成(7~8営業日程度)

決算整理をしてから、月次決算書を作成していきますが、年次決算のように必須の資料があるわけではありません。
多くの企業では、損益計算書と貸借対照表、資金繰り表、予算実績対比表などを作成しています。
その企業の経営陣が役に立ち、必要と感じた資料を作成してください。

4.月次ミーティングで報告(10営業日程度)

月次決算書をまとめたら、ミーティングや月次会議で報告しましょう。
全社資料だけでなく、各部門別、支社別に作成しておくと業績が把握しやすくなります。

月次決算をするメリット


年次決算は、日本の全企業が行っているものの、月次決算はそうではありません。
中には、なんとなく月次決算をしている企業もあるかもしれませんが、その目的を理解していないと無駄な作業やコストが発生しているだけになってしまいます。
月次決算の目的やメリットを理解しておきましょう。

経営状態を早期に把握できる

月次決算の第一の目的は経営状況のスピーディーな把握です。
一年ごと、四半期ごとの財務状況の経営実績では、現状把握に時間がかかってしまいます。

月次決算では、一カ月ごとに財務や事業の環境を確認できるので、想定以上に経費が膨らんでいる、売上げが目標値に追いつかないなどの事態にも早めに対策を打てます。

事業の進捗管理ができる

企業が設定した年間の売上げや収益目標の達成のためにも、月次決算が役に立ちます。
年次決算が業績や事業の結果がわかるものだとするなら、月次決算は年間の事業目標を達成するために進捗が適切かどうかを明確にするものです。

早い段階で目標に対する進捗が遅れているとわかれば、目標達成のために何をすべきなのか、改善策や軌道修正策を立案できます。
残された期間で、目標達成するための方策を効率的に練られるでしょう。

年度決算の利益予測が早期に可能

年次決算では、年度末になって初めて利益額がはっきりとわかりますが、利益額を早いうちに予測できる点も月次決算をするメリットです。

四半期ごとの決算を導入している企業もありますが、より早く正確に年次決算の利益を予測するのであれば月次決算のほうが適しています。
月次決算によって今年度に目標達成できるかどうか、利益予測を下方修正するか上方修正するか早くに意思決定を下せます

年度末、四半期決算の手間を分散できる

月次決算のメリットは、コストや労力の分散の点にもあります。作業や処理をため込むと大変なのは、企業のすべてにいえることです。
一年間帳簿を合わせたり収益の計算をせずに、まとめて行えば会計処理は多く煩雑になります。
一度に行う会計処理が多くなれば、ミスが発生しやすくなるのは当然です。

月次決算では、毎月帳簿を合わせたり経費処理を確認したりできるため、年次決算の作業を分散可能で、ミスにも気付きやすくなります。

ミスに気が付かないまま会計処理を継続しておくと、連鎖してミスが増えてしまいかねません。売上げや支出を正確に把握するためにも、月次決算を活用してください。

資金調達しやすくなる

月次決算は、企業の財政状態の健全化やミスの防止、スピーディーな意思決定に貢献するだけでなく、資金調達を行う際にも有効です。

資金調達と聞いて多くの人が銀行などの金融機関からの融資をイメージするかもしれませんが、金融機関から融資を受ける際には、企業の財務状況、返済能力を調査した上で融資の可否を判断します。
月次決算で直近の業績がわかっていたほうが、直近の業績報告がない場合よりも、銀行が融資の判断をしやすくなります。

また、月次決算をしていること自体も、金融機関にとってはプラス評価の材料です。
その年の利益を早めに予測して、精度が高い帳簿や会計書類を提示できることで、金融機関が融資する時のリスクも減少します。

金融機関からの融資以外に投資家からの出資を受ける際にも直近の業績がわかる月次決算が役立つ可能性があります。
将来的に事業拡大しようとしている、設備投資資金を調達したいなどの場合には、早い段階で月次決算を導入したり、財政状態のチェックをしたりして準備をしましょう。

月次決算で作成される資料


月次決算は法的に定められた決算ではないため、実施可否や作成する書類も自由です。
月次決算でどのような資料が作成されているのかを、以下にまとめました。

月次決算書

月次決算書として作成されることの多い決算書類が、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書です。
月次決算書は、事業や経営に関わる意思決定や判断に使われることが多いため、特に損益計算書が重視されます。
部門別で損益計算書を作成しておくと、より分析しやすくなります。

前期比較表

損益計算書は、前年同月との比較も有効です。業種によっては、季節的な要因に利益が影響を受けるケースもあります。
前年の同時期の売上情報や気象データが、その年の売れ筋商品や収益の指標になるかもしれません。

また、前年と比較して以上に高くなっている経費のデータに気付くこともあります。
前期比較表は、売上予測や現状分析のために役立つ書類なので、多くの企業で作成されています。

予算実績対比表

予算実績対比表は、予算の進捗率や達成度を把握するための資料です。
予算に対する達成度が把握できれば、達成のための方針転換するか、現状を維持するかの意思決定の指標にできます。

予算実績対比表は、売上高だけでなく、売上原価・人件費・販管費なども項目として比較します。
項目ごとに差異を明らかにしておけば、想定以上に膨らんでいる費用項目もわかりやすくなるでしょう。
差異や達成率の欄だけでなく、差異の理由を記入する欄も用意しておくと、会議で使いやすい資料になります。

月次決算のやり方を紹介


月次決算は、作業が多いから実施していない、具体的にどのような流れになるのかわからないという人も多いかもしれません。
実際にどのようなフローで月次決算を実施すればいいのか、ひとつずつ紹介します。

1.残高の確認

月次決算で初めに実施するのが、現金預金残高の確認とチェックです。
帳簿上にある現金・預金勘定の残高と銀行残高を照らし合わせて、差がないか調べてください。金庫に現金がある場合には、数えておきます。

帳簿と実際の金額に差がある場合には、帳簿つけの間違いがないか確認してください。原因が特定できたら、修正の処理を行います。

2.月次棚卸高の確定

月末時点での在庫金額も月次決算で確定します。棚卸資産の管理が適正に行われていれば、実地棚卸は必ずしも毎月必要ありません。
可能であれば、帳簿と棚卸資産が一致するかどうか確認します。

決算期にまとめてチェックしようとすれば工数も多くなるため、棚卸資産はできるだけ小まめにチェックしておきます。

3.仮勘定の整理

仮勘定とは、正確な金額がわからない支出や収入を一時的に記録するために使用する勘定科目です。
仮払金、仮受金は、金額が確定するまでの仮の情報なので、正確な金額がわかり次第処理します。
例えば、経費を概算で前渡しする仮払金は、金額が確定した時点で仮払金から正しい勘定科目に振り替えます。

4.経過勘定の計上

費用によって支払いのタイミングは違います。
経費が発生したタイミングが当月であっても支払いが来月になる場合や、反対に前もって経費を支払う場合もあります。
日本の会計基準では、費用は発生したタイミングで把握する発生主義が原則です。

支払いのタイミングと経費発生のタイミングが違う時には、前払費用や未払費用の勘定科目を使用してください。
経過勘定を使用することで、費用を損益計算書に反映させられます。

5.減価償却費・退職給付費用の計上

減価償却費や退職給付費用などの費用は、年間の費用として期末に計上します。月次決算を正確に実施するために、減価償却費や退職給付費用を計上します。
賞与や固定資産税、保険料なども年間費用を12分の1の金額で月割にして計上してください。

6.月次試算表の作成

必要な会計処理や仕訳が終わったら、月締めにした月次決算書のベースとなる試算表を作成します。
勘定科目の残高のみを記載する残高試算表と、貸借それぞれを記載する合計試算表、さらに両方を記載した合計残高試算表があります。

会計ソフトであれば、入力後に好きな形式を選んで出力できるものもあり、見やすさや必要な情報を踏まえて、どれを導入するのか決めておきましょう。

7.月次業績報告

月次試算表を作成したら、月次業績報告で使用します。焦点となるのは、前年同月との数字の違いや年間計画です。
月別の予算や比較資料などを作成します。この業績報告をもとにして、当月以降の事業の方向性や意思決定を行います。

月次決算のポイント


月次決算をしたいものの実務で忙しくて難しい、正確な数字が出ないという企業も決して少なくありません。
適正な月次決算を行うためのポイントをまとめました。

経費精算の締め日を徹底する

遅延することなく月次決算を実施するためには、締め日は厳守するようにしてください。
請求書・納品書・精算伝票の書類は必ず期限までに提出できるように、締め切り日を通知しておきます。

月次決算スケジュールを社内で共有する

締め切りが守られないのは、月次決算のスケジュールが全社に周知されていないことも原因のひとつです。
月次決算を自分の仕事と直結しているものと理解できるように、月次決算のスケジュールを社内で共有します。
会社のための重要な仕事であることを周知して、月次決算のための報告や書類提出のタイミングを意識して取り組んでもらえるようにしてください。

クラウド型システムを活用する

月次決算は、他部門の情報を素早く取りまとめることがポイントです。報告業務がどうしても遅延する場合には、社内のシステムから見直してみましょう。
例えば、経費や会計のシステムをクラウド化して入出金データを活用できれば、リアルタイムでのお金の動きが把握できます。

また、クラウドにすることで他部門への報告業務も一斉に行えるため、短時間で情報共有して月次決算に反映させられます。

まとめ

安定的かつ継続的に企業を成長させるためにも、月次決算は大きな意味を持っています。
月次決算が正確にできていない、迅速さに欠ける場合には、経営判断のミスや遅れの原因にもなります。

月次決算は、段取りとポイントを押さえておけば、スムーズに遂行できる業務です。
今までうまくいかなかった、または、導入してこなかった人も、どうすれば月次決算を適切に遂行できるのか、スケジュールや段取りを考えてみましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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