マルナゲカンリ 西澤 正文|日常の経理・給与計算から税務や労務も一気通貫!丸投げアウトソーシングで起業家を支援
明日笑える起業家になるために。経験の強みで歩んだ行き当たりばったりストーリー
経理や管理業務の専任者を雇う必要がない企業も多く、オンラインアシスタントサービスの注目度が高まっています。しかし、オンラインアシスタントに経理を頼んでも、最終的な税務申告は税理士の独占業務なので別途税理士への依頼が必要です。また、税理士事務所に労務は依頼できないため、別途社労士への依頼も必要になります。
このような課題を解決するために、経理・給与計算などに加えて士業業務もワンストップで、丸投げできる新しいアウトソーシングサービスを提供しているのがマルナゲカンリの西澤さんです。
今回は西澤さんがマルナゲカンリを起業するまでの経緯や、マルナゲカンリの今後の展開について、創業手帳の大久保が聞きました。
また今回の取材で、長い間一番近くに寄り添い、苦楽を共にしてきた「ヒゲ」へのお別れと、マルナゲカンリの繁栄を記念した「ヒゲの断髪式」を行いました。貴重な断髪式の様子もあわせてご覧ください!
マルナゲカンリ株式会社 代表取締役CEO/共同創設者
大学在学中に公認会計士試験に合格、監査法人で監査業務等に従事後、米国系投資銀行で産業・企業の調査、分析業務(株式調査部)に携わる。
その後、コンサルティング会社に転職、CFOサービス部に所属し、シェアードサービスセンター構築(300社超のグループ会社の管理業務標準化)、管理会計制度設計、原価管理・収益改善、組織設計、プロジェクトマネジメントに従事。
大手ベンチャー企業(レバレジーズ)へ籍を移し新規事業検討室の統括、中途採用責任者、社内リーダー育成プログラム設立・運営、HRマーケティング事業部長としてアルバイト求人媒体の運営を歴任。
2016年に創業した法人向けレンタルサービス(GOODGREEN)では、1,000件超の導入達成、2020年にM&Aで企業を売却した後は、ECのM&A/運営を行うベンチャー企業の共同創業(COO)を経て、家業の中小企業(印刷業・ホテル業など)の経営に関わってきた。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
西澤・小澤両代表の「ヒゲ断髪式」。苦楽を共にしてきたヒゲとお別れする理由とは
大久保:今回の取材において「ヒゲ断髪式」をさせていただきます。どのような経緯でヒゲとお別れをする決意をされたのでしょうか?
西澤:高校生の頃からヒゲを生やしていて、ほぼ剃らずに、二人三脚でここまで来ました。会計士っぽくないと言われたこともありましたが、誉め言葉と前向きにとらえてきたんです。
ですが、今回マルナゲカンリとして事業を進めていく中で、中小企業などの目上の方々とお仕事をする機会が多くなってきました。改めて、しっかりと事業を進めていきたいという思いで、創業者二人でヒゲとお別れをする決意をしました。
大久保:このような貴重な機会を創業手帳の取材でいただきありがとうございます。それでは、断髪式を行わせていただきます!続きは動画でご覧ください。
学生合格した公認会計士資格から全てが始まった
大久保:改めまして、西澤さんのこれまでのご経歴について教えていただきたいと思います。いつ頃から起業を志していましたか?
西澤:高校生の時に進学先をどこにしようかと考えている時に、選択肢の1つにあった「慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)」で起業家教育に力を入れていると知り、その頃から起業を意識するようになりました。
実際にSFCに入学して、起業を志す先輩方とお話ししたり起業関連イベントに参加したりする中で、自分が起業することをより具体的にイメージし始めました。
大久保:SFC在学中に何かビジネスを立ち上げましたか?
西澤:私の父がTシャツのプリント事業を行っていることをSFCの先輩に話したところ、4年生の先輩2名と1年生の私の3名でオリジナルTシャツのオンライン受注販売の事業を行うことになりました。
半年ほどかけて企画を進めていたのですが、ローンチ前に4年生の先輩が卒業してしまい、私1人だけが取り残されてしまいました。
これでは父親の事業の営業代行をしているだけで、こんなことは起業と呼べないと恥ずかしくなり、思い切って方向性を変えて、公認会計士を目指すことにしました。結果的に大学4年生の時に公認会計士の資格を取得できました。
大久保:資格を取得した後は公認会計士を目指したのですか?
西澤:公認会計士になるには、資格取得だけでなく実務経験や修了試験への合格が必要です。そのため、大学4年生の時に監査法人で働き始めたのですが、大学卒業後も数年はこの仕事をすることに違和感を感じました。
その監査法人では3年ほど勤務したのですが、あまりやりがいを感じられず、外資系の投資銀行に転職しました。
大久保:投資銀行ではどのような業務を担当されましたか?
西澤:産業・企業の調査や分析業務を担当しました。監査法人にいた時には簡単に手に入っていたような大企業のデータを必死に集めて分析する業務だったので、監査法人での業務ももっと必死にやっておくべきだったと少し後悔しています。
営業にマーケティング、採用も。新規事業開発で培った起業力
大久保:投資銀行の次はコンサルティング会社でCFO関連の業務に携わっていたとのことですが、公認会計士の資格や知識が役に立ちましたか?
西澤:公認会計士とCFOの業務は大きく異なるので日々必死でした。
しかし、コンサルティング会社と監査法人・投資銀行の業務内容は大きく異なり、かなりアグレッシブな動きが増え、やはり自分には事業が向いているかもしれないと思うようになりました。
このコンサルティング会社でマルナゲカンリの共同創業者である小澤と出会い、休み時間の度にスタートアップや起業について話していたことを覚えています。
大久保:その後すぐに起業ではなく、大手ベンチャー企業に転職されてますね。
西澤:今までは転職する度に新しい業界に行っていたので、それまでの経験をうまく活かせていませんでした。加えて、「自分にはまだ足りないスキル・経験がある」と言い聞かせて起業から逃げていた部分もあるかもしれません。しかし、最後に転職した大手ベンチャー企業では、経営企画や新規事業開発を担当したため、過去の経験の全てを活かせたことで、自分に自信が付いたのだと思います。
大久保:新規事業開発からは起業に通じる学びが多かったですか?
西澤:はい。ここではかなり多くのことを学びました。今でも社長や仲間たちには感謝しています。
当時、私が統括する新規事業が3つあったのですが、その1つの責任者が辞めてしまって、仕方なく私が他の業務を担当しつつ1つの新規事業の事業部長を兼任することになりました。
新規事業の事業部長になったからには、営業もマーケティングも採用も全てを把握しなければいけなかったので必死に勉強しました。
知識を入れただけではわからないことも多かったため、実際にテレアポをしたりSEOの戦略会議に出たりして、少しでも実務経験を積もうと努力しました。
大久保:事業部長の立場でありながら、実務も経験したのはすごいですね。
西澤:当然少し経験しただけでは実務の全てを把握することはできませんが、0か1かの違いは大きいとわかりました。
この時に新規事業の立ち上げや運営、拡大に向けた動きに必要な色々なことの1を経験できたのは、その後の起業に大きく役立ちました。
1社目の起業として観葉植物レンタルサービス「GOODGREEN」を創業
大久保:色々な業界を経験した後に、いよいよ起業に踏み切ったきっかけがありましたか?
西澤:ずっと起業したいという思いは持ちながら、行き当たりばったりでもあったので、そろそろ起業しないとずっとできないのでは?と不安になっていました。
色々な企業で貴重な経験をし、30歳を過ぎた頃から起業アイディアを集めたり業界分析をしたりした結果、もう何でもいいから一度起業しようと思い、2016年に法人向けの観葉植物レンタルサービス「GOODGREEN」を創業しました。
大久保:観葉植物のレンタルサービスに行き着くまでには、どのような思考回路がありましたか?
西澤:起業当時が34歳とそれなりの年齢だったので、最初の事業は絶対に失敗しない、手堅い事業をしたいと考えていました。
どんなビジネスを立ち上げるべきかと考えた時に、判断軸として「BtoCかBtoB」と「サービス提供か製品販売」の2軸で考えました。
たとえば後者に関して、「ペットボトルの水」と「ウォーターサーバーの水」で考えるとわかりやすいですが、ペットボトルの水を消費者に売ろうと思っても相場やイメージが形成されているため、せいぜい100〜200円でしか売れず、到底500〜1,000円では売れません。
しかし、ウォーターサーバーの水の場合は、水だけでなくサーバーの設置費用や水の配送料など色々なサービスが関わるため、工夫する余白があると考えました。
この思考回路の結果「BtoBビジネスかつサービス提供」のジャンルに的を絞りました。
大久保:BtoBビジネスにも色々ありますが、よく観葉植物のレンタルサービスを思いつきましたね。
西澤:大手ベンチャー企業で社内を見渡した時に、複合機や玄関マットなどのレンタルサービスが目に入ったのですが、それらのジャンルはすでに大手企業が参入していて伸び代が少なかったり、初期投資が大きい。他には何かないかと考えたところ、観葉植物もレンタルしていることがわかりました。
総務部に観葉植物のレンタル費用を確認したところ、月額で数万円のレンタル費用がかかっているとわかり、可能性を感じました。
この時すでに色々なサービスがあり、お客さんのフリをして色々とヒアリングしたのですが、5社に資料請求をしても営業電話がかかってきたのは1社だけで、この業界は営業に強い会社は多くないとわかりました。
次にSEO対策やWeb広告などのWebマーケティングをテスト的にやってみるとすぐに結果が出て、この業界はWebマーケティングに強い会社も多くないとわかりました。
営業もマーケティングもまだ強い会社がないのであればやるしかないと思い、法人向けの観葉植物レンタルサービスに決めました。
初めて起業するなら「市場がある分野」を選ぶべき
大久保:GOODGREENは最初からうまくいきましたか?
西澤:SEO対策もWeb広告もうまく刺さって、最初からうまくいきました。毎月問い合わせも増え続けて、この事業の成功はすぐに見えたので、既存事業とシナジーのある新しい事業を考えました。
その中の1つに有名な置き菓子サービスのような形で、マスクやのど飴、ストッキングなどの「置きドラッグストア」を始めようと考えました。
導入する企業としては、売れた分だけ支払うのでリスクはないし、観葉植物のついでにドラッグストア用品も配送できれば配送コストもかからない。これはいいビジネスだと思ったのですが、全く導入が進みませんでした。
大久保:うまくいかなかった理由は何だと思いますか?
西澤:観葉植物のレンタルサービスにはすでに市場があったのですが、置きドラッグストアには顕在化された市場がなかったことが大きな違いですね。
起業家の方々は色々な志をお持ちだとは思いますが、最初に事業を立ち上げるならすでに市場がある分野を選ぶことをおすすめします。
大久保:GOODGREENはどのような経緯で売却に至りましたか?
西澤:VCに勤めている先輩と話している時に、「GOODGREENはそんなに利益が出ているのなら売却もありなんじゃない?」と言われて、その時に初めて売却のことを考え始めました。
試しに何社か話を持ちかけてみたところすぐに買収先の候補が決まり、2020年にM&AでGOODGREENを売却しました。
士業もオンラインアシスタントも丸投げできる「マルナゲカンリ」
大久保:2回目の起業に「マルナゲカンリ」を選んだ理由を教えてください。
西澤:最近、オンラインアシスタントのサービスが増えていて、経理業務などを外注する企業も増えていますが、最終的な税務申告は士業法の関係で税理士に頼む必要があります。
企業は税理士と顧問契約をして毎月費用を払いつつ、決算時には別途費用が発生する契約形態が主流です。しかし、オンラインアシスタントに頼むような経理業務やデータ入力の作業を税理士に頼んでも敬遠されることが多いです。
いずれにしても、今あるサービスでは1つで、経理や税務や労務といったバックオフィス業務を完結できないことがわかりました。さらに、毎月相談をしているわけではないのに、顧問料は毎月発生することにも違和感がありました。
そこで毎月の経理業務も、決算・税務業務も、労務なども全部まとめて丸投げできる外注サービスがあれば便利だと考え、マルナゲカンリを創業しました。
大久保:毎月の経理業務や決算のための業務は、1人を雇用するほど仕事量がない企業も多いので便利ですね。
西澤:1人を雇用すると色々合わせて月に25〜30万円ほどの人件費が固定でかかりますが、まだ規模の小さい企業にはきついですよね。弊社だと一番安いプランの場合、経理記帳は毎月1万円もかかりません。
マルナゲカンリでは経理担当者とも士業の先生とも提携しているので、必要なサービスを必要な分だけ丸投げしていただければと考えています。
経理・決算業務から将来的にはM&A事業に展開させたい
大久保:マルナゲカンリとしてはどのような展望を考えていますか?
西澤:経理や決算の業務を丸投げしていただくオペレーションを整えつつ、規模も拡大させることは前提ですが、将来的には、お客様の事業承継ニーズにも対応できるように企業のM&Aにも関わる事業などの展開も考えています。
私自身M&Aで企業を買う側の経験もあるのですが、決算書の数字を心から信用できない時が多々ありました。よく知らない会社の決算書だけ見ても、書かれている利益が本当に出ているのか?と不安になるんですね。
しかし、マルナゲカンリとして色々な企業のバックオフィスに入り、我々がしっかりと経理や決算の業務を担当しておけば、信頼できる企業の情報を元に買い手は判断ができますし、売り手もトラブルを避けられるため、win-winなM&Aが可能となります。
自分自身が会社を売ったときも、買い手企業との信頼関係があったから上手くいったのだと思います。
将来的にはここまでの大きな流れを作りたいと考えています。
大久保:先ほど「行き当たりばったり」とおっしゃっていましたが、見事に今までの全ての経験を活かす事業が出来上がりましたね。公認会計士という最初にできた強みがここに来て活きるとはストーリーとしても最高ですね。
西澤:そうですね。ありがとうございます。
大久保:最後に読者へメッセージをお願いします。
西澤:起業家には昨日泣いていたのに今日笑っているということが多々あります。その逆も然りです。
私は色々な経営者や起業家にお会いしてきました。もちろん試行錯誤は必要ですが、結局は「辞めない人が成功している」と考えています。
実際問題、起業して経営がスタートすると、辞めたくなるような面倒な作業も沢山出てきますし、その1つが売り上げに直接つながらないバックオフィス業務です。そこで、起業家自身がやるべきことに集中できるように、マルナゲカンリのサービスを使っていただけると幸いです。
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(取材協力:
マルナゲカンリ株式会社 代表取締役CEO/共同創設者 西澤 正文)
(編集: 創業手帳編集部)