創業補助金とは? 申請の手順や採択のポイントをプロの税理士が紹介!
創業手帳編集部税理士がアドバイスする補助金・助成金制度の探し方と採択される申請の方法とは?
創業期に一番気がかりなのが資金の問題だという起業家も多いでしょうう。事業の立ち上げや継続に必要な資金を調達する方法としては、一般的な銀行融資や投資会社からの出資などの方法もありますが、より身近で活用しやすい制度として補助金・助成金の申請も検討してみましょう。
国や地方公共団体、民間団体は、創業期の企業をサポートする様々な補助金や助成金制度を用意しています。しかし、これらの制度が十分に活用されているとは言い難いのも現状です。
そこで今回は、補助金や助成金の活用や申請について、多くのベンチャー企業や中小企業にアドバイスを行っている税理士・中小企業診断士の芳賀氏に、補助金・助成金制度の探し方から申請手順、申請のポイント等について、詳しくお話を伺いました。
創業手帳では、別冊版として補助金・助成金についての情報をまとめた補助金ガイド(無料)を作成しました。ぜひ手にとってご覧ください。
また、自分の条件にあった補助金・助成金情報をお届けするく補助金AI(無料)もご用意しています。こちらも併せてご活用ください。
税理士・中小企業診断士。1970年生まれ。東京大学大学院卒業後、東京ガスを経て、税理士法人Hagax所長。税理士・中小企業診断士、上級システムアドミニストレータ、パソコン財務会計主任技術者1級、弥生会計認定インストラクター。中小企業大学校にて経営改善計画策定支援研修の講師及び試験評価委員を務める。主な著書「現場で使える創業相談の手引き」。
この記事の目次
創業者が申請できる「創業補助金」とは?
起業の際には何かとお金が必要になるもの。創業補助金などを活用することができればとても便利ですが、補助金や助成金とはどういったものなのでしょうか。
そもそも補助金や助成金とは
芳賀:補助金や助成金制度というのは、会社を設立した法人が、国や地方公共団体、民間団体などからお金をもらうことができるという仕組みのことです。法人が事業を進めるためにお金をもらうには、他にも融資(銀行からの借り入れ)などの方法もありますが、補助金や助成金は融資とは異なり「返済不要」という点が特徴です(ただし以後一定の収益となる場合に返還義務が生じる場合があります)。
ただ、お金は公的な資金から出されるものですので、誰でももらえるわけではありません。申請や審査が必要です。しっかりと申請をすることで、返済不要のお金を受け取ることができる仕組みともいえます。
芳賀:助成金は、申請内容と要件が合えばほとんどの場合受給できます。一方で補助金は、申請内容と要件が合っても受給出来ない可能性があります。その理由は、補助金は採択件数や金額が予め決まっているからだといわれています。また、それぞれの制度を管轄する組織も違います。補助金は大きく「経済産業省系」の制度ですが、助成金は人事など人に関する「厚生労働省系」の制度といえるかもしれません。
創業補助金以外に申請できる補助金・助成金をまとめたので、そちらも併せて御覧ください。
芳賀:主な補助金はだいたい5〜10種類ほどあります。その種類は様々で、太陽電池を取り付けたら補助金が支給されるようなものや、耐震補強の補助金などもあります。自分が申請できる補助金があるかどうかはインターネットサイトなどで探すことができます。
創業補助金とは
創業補助金とは、その名の通り主に創業・起業する人などが申請できる補助金。国が主催する創業補助金は、平成29年度までは「創業補助金」という名称でしたが、平成30年度以降は「地域創造的起業補助金」という名称になっています。
また、創業者が申請できる補助金は地域ごとにも様々用意されており、たとえば東京都中小企業振興公社が運営する「創業助成金」は次のような要項となっています。
都内で創業を予定している方、または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件(※)を満たす方
※「TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援修了者」「東京都制度融資(創業)利用者」「都内の公的創業支援施設入居者」等
交付決定日から6カ月以上2年以下
300万円(下限額100万円)
助成対象と認められる経費の2/3以内
令和3年度第1回:令和3年4月15日(木)~令和3年4月23日(金)(期間中の消印有効)
郵送申請
創業者向けの補助金はこの創業補助金以外にも都道府県や市区町村単位で独自の補助金を設けているものがあります。事務所の賃料の補助、専門家の派遣、ホームページ作成費の補助など目的に応じて様々な補助金が出ています。補助金の情報は、募集をしている中小企業庁や都道府県、各市区町村のホームページに掲示されていますが、中小企業庁がすすめる「ミラサポ」というサイトにおいては一覧で検索できるようになっていますので活用してみてください。
また、「創業補助金」や「第二創業補助金」以外にも、創業期に申請できる補助金・助成金があります。創業手帳の別冊、補助金ガイド(無料)では、創業期に申請できる5つの補助金・助成金について詳しく解説しています。(創業手帳編集部)
創業補助金・助成金申請のメリットとデメリット
創業補助金・助成金を申請するメリットとしては、
- 交付されたお金を事業運営に充てることができる
- 補助金や助成金によっては、もらえる金額が大きいものも多い
- (助成金の場合)申請すれば高確率で受給ができる
ということが挙げられます。
一方で、申請のデメリットや注意点としては、
- (補助金の場合)申請に時間や手間がかかるが、受給できない可能性もある
- 申請が通ってもすぐにお金をもらえるわけではないので、即効性はない
- 事務局に途中で進捗報告を出さなければならないこともある
といったことがあります。こうした点はあらかじめ留意しておきましょう。
創業補助金や助成金の受給までの手順
芳賀: 大変というのはそれぞれの感覚ですので一概には言えません。ただ専門家としては、これらの申請時に記入すべき内容というのは、ぜひ創業にあたって考えておくべきだと思っています。むしろ、この内容を記入できないで実際に創業すると、事業をまわしはじめても無駄なお金を先に使ってしまい財政破綻に陥ります。専門家などとも相談しながら実現可能性のある計画を立てるとよいと思います。
創業補助金や助成金を申請し受給するまでの一般的な流れは、次のようなイメージです。
Step1:事業に合った創業補助金・助成金を探す
まずは自身の行っている事業に合った創業補助金や助成金を探します。
創業補助金や助成金の探し方としては、自動マッチングツールを活用するのもおすすめです。自動マッチングツールとは、全国各地あるいは各自治体で受けられる補助金や助成金の情報を自社の条件に合わせて検索できるツール。会社情報を入力し、その条件に合わせて自動的に適した補助金や助成金を検索することができるのでとても便利です。
あなたの会社に合った補助金・助成金がすぐわかる!自動マッチングツールを導入しよう
補助金や助成金は、それ以外に中小企業庁の「補助金等公募案内」ページなどから探せるほか、創業手帳の別冊、補助金ガイド(無料)でも創業期に申請できる5つの補助金・助成金について詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。
Step2:創業補助金・助成金を申請する
事業に合う創業補助金・助成金が見つかったら、募集要項・申請書をダウンロードしましょう。
必要な内容を記入して事務局に提出することで申請を行います。
Step3:交付申請書を提出する
選定の結果、申請した創業補助金・助成金を受け取れることになったら、交付申請書を事務局に提出します。
Step4:交付決定通知を受け取る
交付申請書が受理され、交付決定通知を受け取ります。
Step5:事業を開始する
交付が決定された内容で事業をスタートします。
途中、事業の実施状況について事務局からチェックを受けることもあります。
Step6:補助金・助成金が交付される
実施した事業の内容やかかった経費を報告します。きちんと実施されたと確認されると補助を受けられる金額が確定し、補助金や助成金を受け取ることができます。
終了後5年間にやるべきこと
補助金や助成金の対象となる領収書や証拠書類は、補助事業の終了後も5年間は保管しておく必要があります。
この間に一定以上の収益が認められた場合は、補助金の額を上限として国に納付する必要があることもあります。
創業補助金の申請書類作成の方法とは?
創業補助金の申請にあたり、記入するのは大きく以下4点になります。
- 創業形態(個人事業、法人)
- 事業計画
- 3年間のスケジュール
- 収支・資金計画
事業計画の作成のポイント
- SWOT分析(強みや機会)
- ターゲット顧客の設定、販路設定、価格設定
- 4Pの考え方(商品・サービス、価格、プロモーション、販路・場所)
- 収支計画と資金計画(設備資金・運転資金)
事業計画書の作成方法についてもっと詳しく知りたい方は、資金調達手帳(無料)を参考にしてみてください。事業計画書の書き方について、8つのポイントから解説しています。また、冊子版の創業手帳(無料)の巻末には、事業計画書のテンプレートを掲載していますので、そちらもご活用ください。(創業手帳編集部)
創業補助金の申請が採択されるには?
芳賀: 創業補助金の申請の採択のポイントは5つあります。これは各都道府県の創業補助金事務局が配布している創業補助金募集要項にも書いてあるのですが、
- 事業の独創性:独創的な新たな商品やサービス・工夫があること
- 事業の実現可能性:コンセプトが明確で、人員の確保に目途がたっていること
- 事業の収益性:ターゲットが明確で、売上見通しに妥当性と信頼性があること
- 事業の継続性:実施スケジュールが明確で、リスク等に適切に対応できること
- 資金調達の見込み:金融機関からの資金調達が見込めること
です。個人的には、独創性よりも実現可能性の方が大切ではないかと思っています。熱意があり、本当に成功しそうなものには補助金が受給されると思います。
逆に、「補助金のため」に申請するような書類は採択されるのは難しいかもしれません。実現不可能だと思われてしまうプランや売上の見通しに根拠がない数字の積み上げを書いていたり、今までの経歴と創業してやりたい事業内容の一貫性がみられないようなことは避けた方がよいでしょう。申請の採択のポイントを一言でいえば、これから行う事業が『絵に描いた餅』ではないということが大切だと思います。そのためにはしっかりと計画を考えて記入する必要があると思います。
またこの創業計画書の作成作業を通して、事業のターゲットやコンセプトがより明確になり、やらなければならない課題が見えてきます。もし補助金の申請をしない場合でも、創業計画書の作成はぜひチャレンジしてみてください。
芳賀:一概にはいえません。というのも、たとえば中小企業庁の令和元年度創業支援等事業者補助金は、申請数175件に対し採択数83件(採択率約47.4%)。東京都の創業助成事業は、令和元年度は申請数1,037件に対し採択数156件(採択率約15.0%)ですが、その前年度は申請数808件で採択数が152件(採択率約18.8%)です。このように、創業補助金・助成金によっても違いがあり、また同じ補助金や助成金でも毎年採択率が異なり、採択確率を予測するのは難しいです。また採択の数なども提示されていません。ただ、先ほども申しました通り、申請書類を書いて出すこと自体がこれからの事業に役に立ちますから、積極的に出していただきたいと思います。
制度に詳しい専門家のサポートを
芳賀:実は私も独立した経験があります。ですので、創業者がゼロから独立するハードルの高さがとてもよくわかります。私は元々東京ガスで30歳くらいまで技術職をしていました。税理士になったのはその後で、「第二創業」という形で一個人事務所として開業しました。その間、実際に区の融資制度を使ったり、事業計画も自分なりに作ったり、創業塾などにも通いながら経営をしてきました。現在はスタッフを抱えていますのでローンの人事の問題や採用、資金繰りなどもそうですし、日々様々な問題を乗り越えながら進めています。
だからこそ、このようにお話しをすると営業トークのようになってしまうのですが、やはり私ども専門家にご相談いただけたらと思います。ご自身で経理経験がある方ならばよいのですが、たった一つの制度や仕組みを知らないだけで何百万と損をしてしまうこともあるからです。できれば事業家の方は、事業に集中していただき、私どもはそのサポートができればと思っています。
またもう一つのアドバイスとして、あまり認知されていない様々な制度を活用していただきたいです。社会にはあまり知られていない様々な有益な制度があります。例えば専門家派遣の制度では、2、3回なら無料で専門家への相談ができます。このような時に派遣される専門家は、意外と人気がある弁護士さんだったりします。ですが事業者のみなさんは、敷居が高く感じられるのか、なかなかその情報をキャッチしていないことが見受けられます。私たち専門家はいつでもアドバイス差し上げたいと思っているので、中小企業庁のホームページなどをはじめ、商工会議所などの情報でも結構ですので、まずは検索をしてみてください。
創業補助金以外に申請できる補助金・助成金をまとめたので、そちらも併せて御覧ください。
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- ココ重要!
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- 創業者を資金的に支援する制度として、複数の創業補助金や助成金制度があり、これらの制度は融資とは異なり返済が不要だ。
- 創業補助金や助成金の申請には実現可能性の高い事業計画を提出する必要があるが、これは創業にあたって考えておくべきことなのであり、申請を行うこと自体がより実現可能性の高い事業計画の作成に役立つ。
- 創業補助金や助成金の制度を活用するために専門家の協力を仰ぐことも有効だ。
補助金・助成金の申請には押さえておくべきポイントがいくつもあり、起業家が独学ですべてを成し遂げるのはすこし困難かもしれません。地方銀行や、信用金庫など、地方金融機関は、事業計画書の策定支援などの創業支援を無料で行っているところがあります。冊子版の創業手帳では、地方金融機関の創業支援について詳しく解説しています。また、資料請求時にWeb版の創業手帳の無料会員登録が行えます。創業手帳では、会員向けに無料で専門家を紹介しています。こちらもご活用ください。
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(創業手帳編集部)
(インタビュー・編集:田中 嘉、創業手帳編集部)
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