2022年下半期の資金調達ランキング!企業のまとめや市場動向を解説

資金調達手帳

2022年下半期資金調達ランキングを振り返って経済の動向を探ろう


2022年には、多くの企業が資金調達を実施しました。
その背景には、スタートアップへの支援も拡充されてきていることも関係しており、資金調達の環境やスキームは今後も変化が予想されています。

この記事では、2022年の下半期資金調達ランキングからいくつか企業を選んで紹介し、併せて現行のスタートアップ向け支援などについても解説しています。
今後の経済を担う企業や経済的な環境から動向を探りましょう。

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2022年下半期の資金調達ランキング上位企業を紹介


この数年で企業を取り巻くマクロ環境は、激しい変化を経験しました。
新型コロナウイルス感染症の流行を端に発した経済変化は、多くの国の経済を変貌させています。

2022年にはインフレ抑制を目的とする利上げが続き、一方で景気減速への警戒感も高まりつつあります。
そのような経済環境の影響を大きく受けたのが、スタートアップ企業です。
以下は、2022年下半期の資金調達ランキングの中からいつか企業をピックアップしてまとめました。

株式会社アンドパッド

「株式会社アンドパッド」は、2016年からクラウド型の建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供している会社です。
施工管理アプリとしてシェアトップとして、利用社数は14.5万社を超え、ユーザー数は38.6万人を誇ります。

同社は、海外機関投資家を中心とした第三者割当増資を実施、さらに「三菱UFJ銀行」と「商工組合中央金庫」から融資を受けて総額約122億円の資金調達を行いました。
調達した資金は、事業を支える人材基盤形成のための採用と育成費用、グローバル体制の確立に使われます。

五常・アンド・カンパニー株式会社

「五常・アンド・カンパニー株式会社」は、2014年に設立された会社で、途上国で零細事業向け小口金融サービス(マイクロファイナンス)を展開しています。
同社では、低価格かつ良質な金融サービスを、2030年までに50カ国1億人以上へ届けることを目指しています。

今回の資金調達では、「GMO VenturePartners株式会社」をはじめとする既存株主に加えて21社の国内外の機関投資家、複数の個人投資家から総額70億円の資金調達を実施しました。
調達した資金は、グループ会社の財務基盤の強化とDXの推進、さらにアジア・アフリカ地域での新規投資先を買収するために使われます。

ポケトーク株式会社

「ポケトーク株式会社」のミッションは、言葉の壁をなくすことです。
主力製品のAI通訳機「ポケトーク」は、観光用や語学学習ツール、労働現場でも企業や医療現場で使われています。
「ポケトーク」は2022年の12月に、累計出荷台数100万台を突破したことでも注目されました。

同社は、「みやこキャピタル株式会社」と「株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)」を引受先とした第三者割当増資で合計約7億円の資金調達を実施しています。
これにより累計調達金額は37億円となりました。
米国市場をはじめとするグローバル展開や、新製品開発に期待が持たれています。

エレファンテック株式会社

「エレファンテック株式会社」のミッションは、「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」。
既存の製法に比較してCO2排出を77%、水消費を95%削減できるインクジェット印刷の開発と普及を進めています。

同社は、21.5億円の資金調達を実施し、グローバル展開の本格化と研究開発による応用拡大を目指しています。

Sasuke Financial Lab株式会社

「Sasuke Financial Lab株式会社」は、オンライン保険サービス「コのほけん!」を運営する会社です。
デジタルを介することでよりわかりやすく快適にサービスを利用できる世界の発展を目指しています。

同社は、シリーズBの追加調達として2.5億円を調達し、シリーズBでは累計で13.7億円の調達となりました。
調達した資金は「コのほけん!」の開発やマーケティングに使われます。

株式会社JEPLAN(ジェプラン)

「株式会社JEPLAN」は、シリーズDとして総額約24.4億円の資金調達を実施しました。同社のビジョンは、「あらゆるものを循環させる」。
循環型社会の実現に向けたサプライチェーンの仕組みをメインに、事業者や生活者と連携した事業を行っています。

今後は海外展開を視野に入れて、使用済みPETにおけるリサイクル技術ライセンスの事業化に向け、実証と検証を進めていく計画です。

株式会社ソーシャルインテリア

「株式会社ソーシャルインテリア」は、家具のサブスクリプションサービスと、オフプライスマーケットを展開する会社です。
同社は、総額13.3億円の資金調達を実施。また、流動化スキームを共同開発し、5億円のコミットメントラインを獲得しています。
保証を活用することで資金拠出の幅が広がりやすく、機動的に利用できる資金調達であるとして流動性の高いスキームが選ばれました。

株式会社ソーシャルインテリアのインタビュー記事はこちら>>
ソーシャルインテリア 町野健|サブスクで家具業界に革命を起こす!家具のサブスクサービスで実現する循環型社会

株式会社タイミー

2022下半期の資金調達ランキングでも多くの注目を集めたのが、「株式会社タイミー」です。
同社は、隙間時間に単発・短期アルバイトを探せるサービス「タイミー」を提供しています。
「みずほ銀行」・「三菱UFJ銀行」・「りそな銀行」をはじめとする大手銀行から総額183億円を借入れで調達しました。

実績や将来性を評価され、無担保・無保証・希薄化なし、借入金利もAll-in costで年利1.0%未満とコストを抑えた条件で資金調達しています。

株式会社タイミーの記事はこちら>>
若手社長が在学中に起業したタイミーの強みとは

2022年資金調達動向まとめ


企業は、世界経済や社会の動向による打撃や変化を免れることはできません。
日本経済もマクロ環境の変化を受け、2022年の資金調達動向は大きく変わりました。

今までの資金調達は金融機関からの融資がメインでしたが、長期化したり交渉が難航したりと資金調達手段の多角化が求められています
2022年の資金調達の動向についてまとめました。

マクロ環境の変動には引き続き注意

2022年はアメリカでの利上げが影響を受け、上場株式の下落が目立ちました。
日本のスタートアップ企業もこの影響を大きく受けています。
市場環境の悪化を受けて日本のスタートアップに投資する海外機関投資家も、2022年には新規投資抑制に動き出しました。

金融緩和や引締めといったニュースを追いかけるような投資家に依存する資金調達は、好景気の時は良いものの、不況時に不利になってしまいます。
そのため、2022年の初めにはスタートアップにとって厳しい環境といわれていました。

しかし、実際には2021年と比較してスタートアップ環境が極端に悪化したわけではありません。
ベンチャー投資額の厚みが増えていることで、資金調達環境は安定した推移をしています。
マクロ環境への変化は注視が必要なものの、過度な悲観は不要と考えられます。

ベンチャーデットの活発化

資金調達環境の中でも、昨今注目を集めるようになったのが負債性の資金調達「ベンチャーデット」です。
2022年には、「あおぞら企業投資株式会社」がスタートアップに向けたデットファンドとして「あおぞらHYBRID2号投資事業有限責任組合」を設立しています。
これは、日本国内の成長が期待される企業に対して、エクイティキッカー付きデットを行う目的です。

投資家からの資金調達と銀行のようなデットプレイヤーの橋渡しとなるファンドで、成長ステージにある企業と経営陣の保有株式の希薄化防止を実現することが可能です。

また、2022年にはスタートアップ企業がベンチャーデットを含めた資金調達を実施した事例も多くありました。
具体的には、上記で紹介しているアプリ「タイミー」が11月に融資および融資枠追加によるデットファイナンスで183億円を調達しています。

さらに、法人カード「UPSIDER」およびビジネス後払いサービス「支払い.com」を提供している「UPSIDER」も融資枠追加によるデットファイナンスで467億円を調達しました。
調達資金はさらなるサービスの拡充のために使われます。
これからもベンチャーデットのニーズは高まりを見せると予想されます。

2022年はスタートアップ創出元年

2022年は、岸田総理による年頭記者会見で「スタートアップ創出元年」と位置づけられました。
実際に2022年は、スタートアップ活性化を目的とした政策も実施されています。

具体的には、2022年4月に「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」が発表されました。
これは、経済産業省がスタートアップ企業たちの成長をさらに後押しするために制定されたもので、経営者が長期的な成長イメージを持てるように、シード期からIPO以降までのファイナンス像をまとめたものです。

さらに経済産業省は、6月には「スタートアップ支援策一覧」を発表しました。
補助金や融資といったスタートアップ企業を直接サポートする制度のほか、スタートアップを支援する側の投資家や自治体への税制といった内容が盛り込まれています。

内閣府は、「経済財政運営と改革の基本方針2022」と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」で、「スタートアップ育成5か年計画」を盛り込んでいます。
12月には、その「スタートアップ育成5か年計画」の基本方針が発表されました。
新制度が増加するとともに、スタートアップ企業が継続成長するための土壌が整いつつあります。

特定投資家向け非上場企業投資に関する新制度

2022年4月は、特定投資家に移行できる範囲の拡大についても制度の整備が進められました。
特定投資家とは、金融商品取引法で規定されている投資に関しての知識を持つプロ投資家の類型です。
情報の収集・分析・リスク管理能力が高いと認められ、一般の投資家で投資できない有価証券に投資できる投資家を特定投資家と呼びます。

適格機関投資家や国、上場会社といった特定投資家の類型もありますが、証券会社に申し出ることによって特定投資家に移行できる個人の範囲拡大について、制度の整備が進んでいます。
取引経験や純資産額などの条件を満たした場合に特定投資家への移行が認められますが、改正によって適用の範囲が広がりました。

加えて、特定投資家に対して非上場企業の株式、新株予約権などの勧誘を行うことも認められるようになっています。
非上場のスタートアップ企業にとって、特定投資家向けに新株予約権付社債を発行するといった資金調達の可能性も広がりました。

特定投資家の裾野が広がり、より多くの投資家が参画できるとともにスタートアップ企業への投資機会が増えることになります。

現行のスタートアップ向け支援


スタートアップ向けの支援は政策として広く提供されています。
以下では、どのようなスタートアップ向けの支援があるのかを簡単に紹介しています。

省庁・公的機関によるスタートアップ向け支援プログラム

省庁や公的機関によるスタートアップ向けの支援は、会社設立後で事業化前を対象としたものが多く提供されています。
会社設立前の支援プログラムとしては、事業計画のブラッシュアップや講演を通じた専門知識を得る目的のものが行われています。

会社設立後のサポートとしては、研究開発補助金による支援プログラムが豊富です。
支援者とスタートアップでチームを組成して事業化に向けた研究開発を行ったり、知的財産に関する支援として、専門家を配置したプログラムを提供したりしています。

自治体によるスタートアップ支援プログラム

自治体による支援プログラムは、会社設立での起業塾のような研修や講座を開催するほか、起業に向けた相談窓口などが提供されています。
加えて、アクセラレーションプログラムと呼ばれる、短期間で事業を成長させるためのプログラムを提供している自治体も少なくありません。

アクセラレーションプログラムは、ハンズオン支援と呼ばれる伴走型の支援で、アクセラレーターと呼ばれる支援者とのメンタリングを通じて、新規事業の検証や精査を行います。
自治体でアイデアや事業プロジェクトを募集して、採択された後にハンズオン支援を受けながらビジネスプランのブラッシュアップを図ります。

民間スタートアップ支援プログラム

民間のスタートアッププログラムは、金融機関やベンチャーキャピタルが実施しているものが多く、分野を一切限定しない支援から、AIや医療などの特化型のプログラムがあります。
その多くは、アクセラレーションプログラムと課題解決を見据えたマッチングオープンイノベーションを目指すものに分けられます。

すでにサービスや事業を開始している事業者を対象として、自社領域の事業課題の解決、新事業展開を目的とした支援が豊富です。

大学のスタートアップ支援プログラム

大学からは教育プログラムをメインに提供が行われているほか、「GAPファンド」などの資金サポートもあります。
「GAPファンド」とは、大学が自律的かつ機動的に大学研究室へ比較的少額の試作開発・試作テスト資金を供与して、大学の基礎研究と事業化の間に存在するギャップを埋めることにより、大学先端技術の技術移転や大学発ベンチャー創出を促進する基金です。

大学によって差はあるものの、様々な大学を中心として産業と自治体との連携強化を目指した取組みが盛んに行われています。

まとめ

2022年は、スタートアップ活性化に向けた法整備が進むとともに、多くの資金調達が実施されています。
政府・自治体・民間企業・大学の支援プログラムも豊富に提供されているため、起業する前には資金調達事例を知るとともに、どのようなサポートを利用できるのかを調べておきましょう。

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