個人事業主は生命保険に加入すべき?リスクに備えるために検討したい保険について

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万が一のリスクに備えて必要な保障を準備しておこう


個人事業主は、一般的な会社員とは違い公的保障が異なります。
なんらかの理由で働けなくなった時、保険に加入していないと自分自身では対処し切れなくなってしまう可能性があります。

これまで会社員として働いていた方が個人事業主として働く場合は、社会保障制度の違いやリスクに備えた保険への加入が必要です。
今回は、個人事業主と会社員の社会保障制度の違いや、個人事業主におすすめの生命保険、保険の見直しをする際のポイントなどについてご紹介します。

個人事業主と会社員の社会保障制度の違い


個人事業主と会社員とでは、社会保障制度に違いがあります。社会保障制度の違いを理解しておけば、経済的なリスクを軽減することが可能です。
ここでは医療保険・公的年金・遺族保障の3つにおいてどのように違っているのか解説します。

医療保険の違い

医療保険は、国民健康保険・健康保険・共済組合の3つに分けられています。
国民健康保険は主に個人事業主が加入する医療保険であり、健康保険は会社員が加入、共済組合は公務員や学校の教職員が加入します。

大きな違いは、病気やケガなどで働くことが難しくなった場合に傷病手当金が受け取れないという点です。
傷病手当金は病気やケガで4日以上仕事ができず、給与が受け取れない場合に支給されます。しかし、国民健康保険では対象外になっているため、給付金を受け取れません。

その他、医療費の自己負担割合や高額療養費制度はいずれも保障されます。しかし、個人事業主の場合には、給付の対象項目が少ないといった違いが特徴です。

公的年金の違い

公的年金には国民年金と厚生年金がありますが、保障はいずれも老齢年金・遺族年金・障害年金が挙げられます。
老齢年金は、65歳以上になった時に受け取れるもので、遺族年金は死亡時に支給されるもの、障害年金は障害が残った際に支給されるものです。
中でも個人事業主やフリーランスは、第1号被保険者に該当し、国民年金にしか加入できません。
一方、会社員や公務員などは第2号被保険者となるため、国民年金にも厚生年金にも加入できます。

公的年金は、国民は必ず加入しなければならないものですが、個人事業主は会社員に比べると、受け取れる公的年金が少なくなります。
個人事業主は受け取れる額が少ないため、民間の保険に加入して、リスクを減らす対策が必要です。

遺族保障の違い

遺族保障には、遺族基礎年金・遺族厚生年金・中高齢寡婦加算の3つがあります。
遺族基礎年金は、被保険者の死亡時に18歳未満の子がいる妻もしくは夫、両親がいない18歳未満の子に支給される年金です。
遺族厚生年金は厚生年金に加入している遺族に支給される年金で、中高齢寡婦加算は被保険者の遺族が受け取れる年金のことをいいます。

この中で、個人事業主が受け取れるのは遺族基礎年金のみです。
遺族厚生年金や中高齢寡婦加算は、厚生年金に加入している者のみが該当するため、国民年金に加入している個人事業主は対象外になります。
死亡保障は個人事業主なのか会社員なのかで大きく違いがあるので、定期保険や終身保険など遺族保障で不足する分を補う必要があります。

個人事業主におすすめの生命保険


社会保障制度の違いで見ると、個人事業主は会社員と比較すると受けられない保障が多くあります。
そこで重要なのが、生命保険に加入して不足分を補うことです。ここでは、個人事業主におすすめの生命保険についてご紹介します。

生命保険の主な種類

生命保険には、すべてで4つの種類があります。ここでは、生命保険の種類について解説します。

死亡保険

死亡保険は、被保険者が死亡した時、もしくは高度障害が残ってしまった時に支給される保険です。死亡保険には定期保険と終身保険があり、保障される期間に違いがあります。

定期保険の場合、10年や20年、60歳までといったように、保障期間に定めがあります。
期間があるため終身保険よりも割安の保険料で済みますが、解約払戻金や満期保険金がないので掛け捨て保険として扱われているのが特徴です。

終身保険は、年数や年齢に関係なく、被保険者が死亡するまでの一生涯で契約を結ぶ保険です。
定期保険よりも保険料は高くなりますが、一部の積み立てができ、解約割戻金の受け取りもできます。

生存保険

生存保険は、保険期間を満了した時に被保険者が生存していた場合、保険金が受け取れるもので、個人年金保険や学資保険と呼ばれることもあります。
個人年金保険は、退職後や老後の資金準備を目的にした保険で、学資保険は子どもにかかる将来の学費準備を目的に利用されます。

基本的には、生存保険は保険期間が満了するまで被保険者が生存していることが支給の条件です。
しかし、個人年金保険や学資保険の場合、万が一のことがあった時に払い込んだ保険料に相当する死亡保険金が支給されるケースが多くあります。

医療保険

医療保険は、被保険者が病気やケガをした際に給付金を受け取れるものです。
医療保険の商品はガンに特化したものや女性特有の疾病に特化したものなど、幅広いものがあります。
掛け捨てタイプや健康だった場合に払戻金があるタイプのほか、定期医療保険と終身医療保険があるため、種類によって保険料も変動します。

病気やケガをした際には、入院した日数に応じて、契約した際に定めた入院給付金日額が給付される仕組みです。
通院治療であっても保険金が給付されるものもあります。手術をした場合は、給付金がプラスされます。

介護保険

介護保険は、被保険者がなんらかの原因で介護が必要な状態になった際、給付金を受け取れるものです。
介護保険の被保険者の対象は40歳以上で、すべての方が保険料を支払う義務があります。

介護保険法では、介護が必要とされる度合いを要支援1・2と要介護1~5の7段階に定めています。
介護保険商品によっては、給付金が支給される条件として一定以上の段階に基準を設定しているところもあるため、事前に確認が必要です。
また、給付金を受け取る際は、一時金としてまとまった額を受け取るか、年金のように数年間に渡り支給されるかのどちらかが一般的です。

個人事業主の社会保障制度に不安を感じたら加入を検討しよう

個人事業主は、病気やケガなどで働けなくなってしまった場合、公的な社会保障制度では不十分な可能性があります。

個人事業主は傷病手当金が受け取れない

個人事業主は国民健康保険に加入することになります。
しかし、会社員とは違い傷病手当金がないため、病気やケガを理由に4日以上働けない状態になったとしても公的な医療保険制度から給付金を受け取れません。

傷病手当金の1日あたりの支給額は、過去12カ月以内の平均収入の最大3分の2で、最長1年半を受給期間としています。
会社員であれば傷病手当金でカバーできても、個人事業主は利用できないため貯蓄やその他の保険で補う必要があります。

個人事業主の働けない状態をカバーできる生命保険はある

病気やケガで働けなくなった場合に備えて、個人事業主は民間の保険に加入しておく必要があります。検討すべきなのは医療保険や就業不能保障保険、個人年金保険です。

特に医療保険は、病気やケガで入院または通院した場合に給付金が支給される保険であり、急な事故や万が一の際に備えられます。
入院した場合は入院日数×入院給付金日額の分だけ受け取れます。
就業不能保障保険は、病気やケガで自宅療養が必要になった場合に医師の診断によって給付金を受け取れる保険です。
傷病手当金の代わりのような保険で、入院の有無に関係なく保険金を受け取れるといった特徴があります。

また、個人事業主だと老後の年金は国民年金のみとなるため、個人年金保険に加入して年金を補填することも重要です。
給付金を受け取る前に死亡した場合でも、遺族に死亡給付金が支給されるため家族も安心できます。

個人事業主の生命保険は経費で落とせる?


保険に加入した場合、個人事業主の場合は経費で落とせる保険があります。
ここでは、生命保険は経費で落とせるのか、経費で落とせる保険にはどのようなものがあるのかご紹介します。

個人事業主の生命保険は経費に計上できない!

生命保険については、経費として計上することはできません。基本として、個人事業主やその家族の生命保険料は、事業のものではなく個人のものと判断されるためです。
ただし、従業員が被保険者や受取人の場合に限り、経費計上できます。

個人事業主の生命保険は経費として落とせませんが、確定申告の際に生命保険料控除の所得控除できます。
生命保険料控除は払い込みをした保険料により、一定金額が所得から控除される仕組みです。
生命保険料控除を利用できれば、所得税の負担の軽減が可能です。
ほかにも国民健康保険や国民年金のような社会保険料、医療保険を含む傷害保険、健康診断、人間ドック費用も経費として計上できません。

経費で落とせる保険の種類

個人事業主が経費として落とせる保険には、以下のものがあります。

1.従業員の生命保険・医療保険・社会保険

まずは、従業員の生命保険や医療保険、社会保険です。個人事業主が従業員を被保険者として生命保険に加入する場合は、支払う保険料を福利厚生として経費計上できます。
医療保険や社会保険料も同様で、従業員のために支払ったものは経費計上できます。
特に社会保険料は健康保険・介護保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険などがありますが、いずれも法定福利費で経費として計上が可能です。

2.従業員の健康診断・人間ドック費用

従業員を雇用している場合は、法人や個人事業主に関係なく、定期的に健康診断を受けさせる必要があります。
雇用している従業員のために健康診断や人間ドックを実施している場合は会社負担となり、経費として計上できます。

ただし、健康診断や人間ドック費用を経費として計上する場合、以下の条件があることも覚えておいてください。

  • すべての従業員に受診する機会を与えていること
  • 全員の受診費用を直接医療機関や診療機関に支払っていること
  • 常識の範囲内といえる費用額であること

3.商品・店舗などを対象とする損害保険

商品・貨物・店舗などを対象とした損害保険は、事業を進めるために必要不可欠な費用となるため、経費として計上できます。
ただし、すべてではなく事業用部分のみであることが条件となっています。

事業用とプライベート用の両方を兼ね備えているような店舗については、家事按分によって事業用のみを計上しなければなりません。
また、個人事業主やその家族が被保険者である損害保険については、経費として計上できないため注意が必要です。

4.事業で使用する車の自動車保険

自動車保険も損害保険のひとつです。事業で自動車を使用する場合、経費として計上できます。ただし、自動車保険についても事業用部分のみ経費計上できます。

事業用に使用している車をプライベートでも活用している場合は、家事按分によって事業で使用している割合だけを計上しなければなりません。
このほか、通勤中の事故や仕事中に起こった災害などによる傷害保険についても、福利厚生費として経費計上が可能です。

5.事業に関連する建物の火災保険・地震保険

万が一に備えて、火災保険や地震保険に加入している個人事業主もいるかもしれません。
火災保険や地震保険に加入している場合も、事業に関連する建物であれば保険料を経費として計上できます。
自宅兼事務所としている場合は、事業で使用している部分のみが該当するため、保険料の一部を経費にすることが可能です。

また、火災保険料は自宅として利用している部分の保険料控除対象になりませんが、地震保険は控除の対象となるため、自宅部分であっても一定額の控除を受けられます。

生命保険の見直しを図る際のポイント


生命保険の見直しを図る際には、いくつか注意すべきことがあります。保険を見直す際のポイントをご紹介します。

元本割れリスクについて理解する

生命保険には定期保険と終身保険があります。終身保険は貯蓄性が高いですが、途中で解約する場合には元本割れするかもしれません。
終身保険の場合、途中解約すると解約返戻金が受け取れます。
しかし、解約返戻金は、保険会社が保険金を支給するために積み立てた準備金から解約控除を差し引かれることになります。
解約返戻金が受け取れるといっても、契約してから早期での解約となると元本割れを引き起こす可能性が高いです。

健康状態によっては加入できない場合もある

健康状態によっては、生命保険を見直したくても新たに加入できない場合があります。生命保険への加入は、健康であることが前提です。
保険加入後に見直しをする場合、医師の審査や告知が必要になることがあるため、健康状態に問題があると見直しそのものができなくなる可能性があります。

また、一度保険を解約すると当然元に戻すことはできません。別の生命保険に乗り換える場合は、新たな保険の契約が成立してから解約するようにしてください。

まとめ

個人事業主は、会社員とは違い公的な保障で受けられないものが多くあります。
公的保障とは別に民間の保険に加入していないと、思わぬ事故や病気、ケガで働くことが困難になった場合の補填が難しくなります。
社会保障制度の違いとリスクに備えるためにも、医療保険や職業不能保険、個人年金保険への加入を検討してみてください。

創業手帳(冊子版)」では、個人事業主の社会保障制度に関する情報も提供しています。生命保険の見直しや加入すべき保険などで悩んでいる方は、ぜひご利用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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