個人事業主の保険は経費になる?節税のための必須知識を紹介

創業手帳

個人事業主が経費にできる保険は種類による!


個人事業主は、いざという時の補償も自分で考えなければいけません。トラブルや休業に備えて保険を利用している個人事業主も多くいるでしょう。

個人事業主は一部の保険料を経費計上可能ですが。、すべての保険で個人事業主が経費として計上できるわけではありません。

ここでは、個人事業主が経費として計上できる保険と、経費計上できない保険を紹介します。節税のためのポイントも紹介しているので確認してください。

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個人事業主で経費計上が可能な保険料


個人事業主の事業所得は、事業で得た収入から経費を差し引いて計算します。
経費をどの程度計上するかにより所得の額は大きく変わるため、個人事業主が節税するに経費の計上は非常に重要です。

私たちは自動車保険や生命保険、地震保険など多種多様な保険料を支払っています。事業に関連する保険に加入している個人事業主もいるでしょう。
事業に関係する保険は、経費として計上可能です。
ただし、支払っているすべての保険料が経費にできるわけではないので、経費計上できるものかどうかを銀にすることになります。
例えば、プライベートの自家用車を事業でも使用しているといった場合、自動車保険の費用は経費となるのか判断が難しくなってしまいます。

個人事業主は、プライベートとビジネスの切り分けが曖昧になりがちです。
保険料を経費にできるかどうかの判断は、事業の運営に関係するかどうかで判断します。
上記のように仕事とプライベートで使用している車の費用は、全額ではなく事業に関係している部分だけを計上します。

以下では、経費計上できる個人事業主の保険料についてそれぞれまとめました。

火災保険料

火災保険は、火災のほか自然災害などで建物や家財に損害が生じた時に保険金が支払われる保険です。
事業に使っている店舗やオフィスにかかる火災保険料は経費として計上できます。

問題となるのは、自宅兼オフィスの場合です。
事業地と自宅が同じ場合には、家事按分して事業に関連する部分の保険料のみを経費に計上します。

家事按分の方法にはいろいろありますが、ビジネスで占有している面積による按分がよく使われています。
事業で使用する面積を割り出して、火災保険料のうちで事業分だけを計上する方法です。
また、使用時間に応じて按分する方法もあります。事業の性質なども勘案して適した方法を選択してください。

地震保険料

地震保険は、地震や噴火、またこれらによる津波で建物や家財に損害が生じた時に保険金が支払われる保険です。
地震保険料は、火災保険料と同じように事業で使用している部分だけを経費として計上できます

地震保険料は、平成19年の税制改正で控除の対象になりました。
一定額控除を受けられるので経費計上できない場合でも、控除の利用を忘れないようにしてください。

自動車保険料

運送業や配達のように自動車を使う仕事は多くあります。事業で使っている自動車の自動車保険料は経費として計上できます。バイクや自転車でも同様です。
ただし、ビジネスとプライベートの両方で使用している場合は、家事按分して事業に使っている割合だけを経費として計上します。

自動車などの家事按分は、走行距離や使用回数で算出する方法がよく使われています。
自動車保険には自賠責保険と任意保険がありますが、経費計上が違うので注意してください。

自賠責保険は全自動車に加入義務がある保険で、経費計上する時には損害保険料で計上するか車両費に含めます。
1年以上分の自賠責保険料を一括で支払った時には、支払った年に全額計上可能です。

任意保険は、契約者の任意でかける保険です。
任意保険は契約期間によって扱いが異なり、1年以内の契約期間であれば損害保険料もしくは車両費を使います。
1年以上の契約期間の場合には、長期前払費用となるため事業年度に分けて配分します。長期前払費用の計上は期間の都度必要なので忘れないようにしてください。

以下では個人事業主向けの車の経費についてまとめているので、参考にしてください。

個人事業主向け車の経費について、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主の車購入は経費にして節税できる?仕訳や節税ポイントなどもおさえよう

従業員の保険料

個人事業主の中には従業員を雇って、その保険料を支払うケースもあります。従業員の保険料について以下でまとめました。

傷害保険料

従業員を被保険者、または受取人とした傷害保険は経費計上できます。仕事中に起こる業務災害や、通勤時の事故に損害保険で備えることが可能です。
一度事業主が受け取った保険金を見舞金として従業員に支払った場合にも福利厚生費として経費計上できます。

社会保険料

社会保険は、会社が保険料の一部を負担することが法で定められています。会社は休職中の従業員の分も支払わなければいけません。
従業員のために支払う社会保険料は経費として計上できます。健康保険や介護保険厚生年金保険のほか、労災保険や雇用保険も法定福利費として処理します。

生命保険料

従業員の生命保険料を会社が支払う場合、経費として計上できます。従業員のために支払う保険料は福利厚生費として扱われます。
福利厚生費とは、従業員が働きやすい環境を作るために雇用者が支払う費用です。従業員が受ける人間ドックなども、福利厚生費として計上します。

法人が支払う生命保険料(保険の内容による)

上記では個人事業主が経費として計上できるかどうかを紹介しました。しかし、法人化した場合には扱いが変わることがあります。
経営者や役員を被保険者にして、法人が契約者と保険金受取人となる生命保険に加入する場合は、支払った保険料の一部またはすべてを経費算入できるケースがあります。

例えば、保険期間が決まっている定期保険も経費算入できる保険です。
個人事業主から法人となった時には、生命保険をみなおして経費にできるかどうかをチェックしてください。

個人事業主で経費計上ができない保険料


個人事業主が経費として計上できる経費は、事業に関係するものに限定されています。
それぞれの経費に応じて、使い方や状況に応じて判断しなければならず難しく感じるかもしれません。

ただし、本来経費して計上できない出費も経費扱いにしてしまうと税務調査で指摘されることがあります。
脱税や所得隠しを目的にして経費計上したと判断されてしまうと、悪質だとしてペナルティが課せられるリスクもあります。
個人事業主が経費として計上できない保険料を確認しておいてください。

事業主や専従者の保険料

経費を計上できない保険料のひとつが、個人事業主地自身と専従者の保険料です。
以下でそれぞれ説明します。

生命保険料

個人事業主や専従者にかける生命保険は、個人にかける保険であり、プライベートでかけている保険とみなされます。
事業に必要な経費とは認められないので経費も計上できません。ただし、経費にできなくても法人化することで生命保険料を経費計上できることがあります
法人化する時には、保険の種類や契約内容をよく確認してください。

国民健康保険料・国民年金保険料

個人事業主と専従者が自分のために支払った国民健康保険料や国民年金保険料はプライベートの支出です。
事業に関係する出費ではないので経費計上できません。

これは、40歳から支払いが始まる介護保険料も同じです。ただし、個人事業主の国民健康保険料や介護保険料、国民年金は社会保険料控除が適用されます。
また、扶養者がいれば扶養控除を受けられます。

傷害保険料

個人事業主や専従者は、原則労災保険に加入できません。そのため、ケガや事故に備えて傷害保険に加入する人もいます。

しかし、残念ながら事業者や専従者の傷害保険料は経費に計上できません。
傷害保険はプライベートでのトラブルにも対応できるため、事業に関係する経費と認められないこととなっています。
生命保険料控除の対象にもならない点に注意してください。

地震保険料・火災保険料

地震保険料や火災保険料は経費として計上できることを説明しました。注意が必要なのは、経費で計上できるのは、事業に関連する地震保険料と火災保険料のみという点です。

個人事業主がプライベートで地震保険や火災保険とかけている時には支払った保険料は経費算入できません。
ただし、事業に関係していない地震保険料であっても地震保険料控除として所得控除を受けられます。

ひとり親方の労災保険

個人事業主であるひとり親方は、通常労災保険の対象になりません。しかし、特別加入団体を通じて特別加入が可能です。

しかし、労災保険に加入はできるものの、経費としては計上できません。個人の財布から保険料を支払った場合の会計処理は不要です。
会社の普通預金などから支払っている場合には事業主貸で処理してください。

個人事業主が保険料を経費計上する場合の会計処理


個人事業主が保険料を経費計上するためには、会計処理の方法についても知っておく必要があります。
ここでは、保険料を毎年支払うケースと複数年分をまとめて支払うケースに分けて処理方法を紹介します。

1.保険料を毎年支払うケース

保険料を毎年支払うケースでは、いつからいつまでの保険料を支払っているのかが重要です。
1年分をまとめているため、必ずしもその年の保険料だけを支払っているとは限りません。

例えば4月に保険に加入して1年分支払った場合でも、その年の保険料として経費にできるのは4月から12月までの9カ月分です。
残りの1月から3月までの保険料は、来年分の保険料に当たるため、経費計上も来年です。
保険料を支払った時にその年の保険料は支払保険料として計上し、来年分は前払費用に計上します。
翌年の会計年度で前払費用を支払い、保険料に振り替える処理をおこなってください。

また、保険料のように1年以内にサービスが提供される契約のものは短期前払費用の特例が利用できます。
短期前払費用の特例を使えば、支払った時にその保険料を全額経費計上可能です。翌会計年度での振替の処理も不要になります。

2.保険料を複数年分まとめて支払うケース

複数年分の保険料をまとめて支払う場合、期間ごとに経費計上の処理が必要です。

例えば、期首に5年分の保険料として20万円を支払った場合を考えます。20万円のうちその年の分である4万円を保険料、残りの16万円を前払費用として計上します。
2~5年目の会計年度では計上した16万円の前払費用を4万円ずつ保険料に振り返る処理が必要です。

経費計上できない保険は控除の適用を受けよう


保険料の中には、経費に計上できないものも多くあります。そのような場合には所得控除の適用を受けて節税してください。
ここでは、控除を受ける時の基礎知識をまとめています。

所得控除

所得控除とは、所得から納税者の状況に応じた金額を差し引く制度です。注意しなければならないのは、所得税から直接引くのではなく所得金額から差し引く点です。
所得税が直接減るのではなく、所得控除の合計金額に所得税率をかけた金額が減額されます。

例えば、200万円の所得控除があって、所得税率が20%であれば40万円が減額される金額です。

所得控除は、以下の15種類があります。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

控除の種類や額は変わることもあるので、必ずその年の控除を確認してください。

生命保険料控除

個人の生命保険は、経費計上できないものの生命保険料控除を受けられます。生命保険は旧契約と新契約があり、それぞれ処理方法が異なります。
契約を結んだのが平成23年12月31日より以前であれば旧契約、それ以降であれば新契約です。
それぞれ控除される額が違うため、加入している保険をよく確かめるようにしてください。

社会保険料控除

国民健康保険料や国民年金保険は経費計上できないものの、全額が社会保険料控除の対象です。
1年間で支払った社会保険が全額控除されるため一定の節税効果が期待できます。
家族の社会保険料も控除の対象ですが、家族自身の社会保険料控除に含めている場合は二重に申告できません。

地震保険料控除

プライベートで利用している地震保険の保険料は経費にならなくても、要件を満たせば控除の対象になります。
地震保険料控除の額は、年間支払い保険料の合計が50,000円以下であれば支払い金額の全額、50,000円超であれば一律50,000円です。

まとめ・経費になる保険と経費にならない保険を理解しよう

正しく節税するためには、支出に対してどのように扱えば節税になるのか正しく理解しなければいけません。
経費計上できる保険料について理解して、漏れなく計上してください。

また、経費計上できない保険料も控除に該当することがあります。自分が受けられる控除を確認して節税してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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