個人事業主が水道光熱費を経費にするには?勘定科目や仕分けについて解説!
個人事業主が水道光熱費を経費計上する方法はあるのか?
個人事業主の経費にも様々な勘定科目があり、「水道光熱費」も経費に含まれます。
しかし、個人事業主であれば水道光熱費を計上する上で特別な計算や仕訳方法をしなくてはいけないケースもあります。
そこで今回は、個人事業主が水道光熱費を経費として計上する際に知っておきたい勘定科目や仕訳についてご紹介します。
水道光熱費の経費計上について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
水道光熱費は経費の勘定科目の1つ
水道光熱費は、会社を経営している中で発生する水道代・ガス代・電気代をまとめた経費です。
いずれも会社を経営する上で欠かせない項目であるため、経費として計上できます。
水道光熱費という項目でまとめて管理することもできますが、水道代・ガス代・電気代にそれぞれ分けて計上することも可能です。
水道代・ガス代・電気代以外にも水道光熱費として計上できる費用は以下のとおりです。
-
- プロパンガス料金
- 下水道料金
- 灯油代
- 冷暖房費(空調費)
- 電灯費
例えば灯油代はガスと異なるものの、エネルギーに活用する経費になるため水道光熱費に含まれます。
また、冷房・暖房に使った費用は実質電気代と同様であるため、水道光熱費に含めても問題ありません。
個人事業主が自宅兼事務所の水道光熱費を経費にする際は家事按分をする
個人事業主だとオフィスを借りず、自宅を事務所として活用する人もいます。この場合、水道光熱費を経費計上するには、家事按分を行う必要があります。
例えば事務所スペースで使用した分とプライベートのスペースで使用した分で料金を分けます。
ここでは、家事按分の考え方から経費の求め方について解説します。
経費計上できるのは事業で使った分のみ
自宅兼事務所で仕事をしている場合、水道光熱費を経費計上するには事業で使った分を算出しなくてはなりません。ここで用いられるのが「家事按分」です。
家事按分という考え方
家事按分とは、事業で使用した費用とプライベートの費用が混在してしまう場合に用いられる考え方です。
事業とプライベートの費用を分けるには、按分比率を使って算出する必要があります。
按分比率には明確な基準・ルールが設けられていません。そのため、同じ水道光熱費でも個人事業主によっては比率が異なります。
ただし、「なぜこの比率になるのか」という根拠を示さないと、経費として認められない可能性があるので注意が必要です。
電気代は、仕事の時間または床面積などを基準とします。
水道代は業種によっても異なりますが、仕事中の利用は少ないと考えられ、20%程度に設定されることが多いです。
ガス代は電気代と同じく、仕事中にガスを使用した時間の割合で求められます。
家事按分できる経費とは?
家事按分は水道光熱費だけに適用されるものではありません。以下の項目も家事按分の対象になります。-
- 家賃
- 通信費
- ガソリン代
家賃は仕事で使っているスペースと居住スペースとの割合から求める考え方と、仕事で使った時間の割合から求める考え方の2パターンがあります。
例えば自宅に書斎があり、居住スペースと完全に分けている場合は、前者の考え方で按分比率を求めるとわかりやすいでしょう。
一方、部屋数が限られておりダイニングやリビングで仕事をしている場合、面積で分けることが難しいため、時間を基準とした割合で求めたほうがわかりやすくなります。
通信費は家賃のように実態がないため、按分比率を求める際には利用時間や日数を用いるか、自宅にあるコンセントの総数から仕事で使っている分の割合を計算する方法に分かれます。
ガソリン代は走行距離から計算する方法と自動車を使用した日数で計算する方法の2種類があります。
家事按分が必要になるケースとは?
個人事業主の全員が家事按分を行う必要はありません。
個人事業主で家事按分が必要になるのは、自宅に事業用のスペースがある場合や自家用車を仕事やプライベートでも利用している場合などです。
なお、1台のスマートフォンを仕事用・プライベート用として分けずに使用していても家事按分が必要になります。
職種でいえば、わざわざオフィスを借りなくても仕事ができるプログラマーやエンジニア、ライター、デザイナーなどのフリーランスが当てはまります。
他にも自宅を事務所にしている税理士や司法書士などの士業、自家用車を使う機会が多いフリーのカメラマンなどが該当するでしょう。
1階で飲食店を開き、2階を居住スペースにしている場合も家事按分を行います。
按分した経費の求め方
・電気代
電気代の求め方でわかりやすいのは、使用時間の割合です。業務時間が週5日×1日8時間の場合、40時間分の電気代を使っていることになります。
1日24時間電気を使っているとして、週7日を時間に換算すると168時間です。
この総時間から40時間分の割合を求める(40÷168×100)と、約23%が按分比率になることがわかります。
1カ月の電気代が15,000円だった場合、23%が事業用になるため15,000円×0.23で3,450円が経費になります。
・水道代
自宅兼事務所の場合、事業で使ったと言える水道代は来客時のお茶・お手洗い程度になるため、按分比率は20~25%程度に設定される場合が多いです。
20~25%に設定される理由は、水道を使用する場面(キッチン・お風呂・洗濯・トイレ)の中でトイレの分だけを経費にするためです。
ただし、飲食店であれば大量の水を使っていても不自然ではないため、50%以上に設定されることもあります。
水道代の按分比率を20%に設定した場合、1カ月の水道代が5,000円だと1,000円分が経費になります。
・ガス代
ガス代は水道以上に仕事で使う機会がありません。そのため、按分比率は0%となります。
しかし、冬にストーブや床暖房などを使用する場合、ガス代を家事按分することも可能です。
按分比率の考え方は電気代と同様で、仕事の時間から算出するとわかりやすくなります。
個人事業主の水道光熱費の仕訳方法について
実際に経費計上する場合、仕訳はどのように行えば良いのでしょうか。ここからは、個人事業主が水道光熱費を仕訳する際、勘定科目はどうなるのかを解説します。
まず複式簿記・単式簿記によって仕訳の書き方が異なります。個人事業主が青色申告の特別控除を受ける場合、複式簿記で仕訳を行わなくてはなりません。
例えば、水道代が口座から引き落とされた場合の仕訳方法は以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
2024年1月10日 | 水道光熱費 3,500 | 普通預金 3,500 | 水道代 |
一方、白色申告や青色申告でも10万円控除の場合は単式簿記で仕訳を行っても問題ありません。
日付 | 水道光熱費 | 摘要 |
2024年1月10日 | 3,500 | 水道代 |
住居兼事務所の水道光熱費を支払う場合、家事按分によって事務所で使用した分のみが経費となります。
この場合、自宅で使用した分は経費とはならないため、仕訳では「事業主貸」という勘定科目で処理します。
借方 | 貸方 | ||
水道光熱費 | 20,000 | 普通預金 | 50,000 |
事業主貸 | 30,000 |
上記は仕事用の口座から引き落とした場合になります。プライベート用の口座から引き落とされた場合の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
水道光熱費 | 20,000 | 事業主借 | 20,000 |
プライベート用の場合、普通預金の残高まで記載しなくても良いため、経費になる部分だけを仕訳します。貸方の勘定科目も普通預金ではなく「事業主借」となります。
帳簿を付ける際の日付について
個人事業主が水道光熱費を帳簿に付ける場合、どの時点で経費を処理すればいいか迷ってしまう方もいるでしょう。
主に「支払日に記帳する方法」と「検針日と支払日に記帳する方法」の2種類に分かれますが、記帳方法が統一されていればどちらの方法を採用しても問題ありません。
2つのうち、実務的におすすめなのは「支払日に記帳する方法」です。
ただし、毎月水道光熱費が大きく変動する場合は、検針日と支払日に記帳する方法を選ぶことをおすすめします。検針日と支払日に記帳する場合、以下のような仕訳になります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
2024年1月10日 | 水道光熱費 3,000 | 未払金 3,000 | 水道代(請求) |
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
2024年2月15日 | 水道光熱費 3,000 | 未払金 3,000 | 水道代(引き落とし) |
個人事業主がその他に経費にできるもの、できないもの
ここまで個人事業主が経費として落とせる水道光熱費についてご紹介してきましたが、その他にも様々な費用を経費にできます。
一方、経費にできないものもあるので注意が必要です。
そこで、水道光熱費以外で個人事業主が経費にできるもの・できないものをご紹介します。
個人事業主の経費にできるものについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
経費にできる費用とは?
経費にできるものは基本的に事業と関連のある出費になります。しかし、中には経費にできるのか判断に迷うものもあるでしょう。
以下は判断に迷いやすいものの、場合によっては経費として計上できる項目になります。
飲食代
事業に無関係な飲食代は経費にできないものの、取引先との会食や従業員との忘年会などは飲食代として経費で落とせます。
また、飲食店を紹介するブログ・SNSで収益を得ていれば、その時の飲食代も経費になる場合があります。
なお、個人事業主が接待交際費として飲食代を経費計上する場合、経費割合は100%で上限もありません。
つまり、会食にどれだけお金がかかったとしても全額経費として認められます。
慶弔費
慶弔費は基本的に経費ではなく給与に該当しますが、以下の条件を満たすと福利厚生費として処理できます。
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- 事業を行う上で必要なお祝い金または香典
- 従業員へのお祝い金または香典
- 高額ではない(社会通念上相当の金額)
ただし、従業員が親族だった場合、従業員であっても個人として渡すものになるため、給与に該当します。
出張した時の朝食代
出張でホテルに宿泊した際、翌日の朝食はプライベートの食事になるため経費にはできません。
ただし、朝食込みの宿泊プランを選択したり、取引先の人とホテルで朝食を食べたりした場合は経費にできる場合があります。
朝食込みの宿泊プランを利用した場合は飲食代とホテル代を別にする必要はなく、全額「旅費交通費」で仕訳をしても問題ありません。
また、取引先とホテルで一緒に朝食をとった場合、接待交際費として仕訳をします。この場合、宿泊代とは別会計の朝食であっても、接待交際費で計上することが可能です。
租税公課
租税公課とは、国税や地方税などが当てはまる「租税」と、国・地方公共団体などに納める罰金や会費などが該当する「公課」を仕訳するための勘定科目です。
事業に関連する租税公課でなければ経費計上はできません。主に租税公課の対象になる税金は以下のとおりです。
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- 印紙税
- 登録免許税
- 固定資産税
- 法人事業税
- 事業所税
- 不動産取得税
- 自動車税、軽自動車税
- 公共サービスの利用手数料
- 税込方式で仕訳した際の消費税
経費にできない費用とは?
一見事業と関わるものに見える費用でも、経費計上できないものがあります。
特に個人事業主だと経費にできないものが意外と多いです。どのような費用が経費にできないのか確認しておくことが大切です。
福利厚生
福利厚生は従業員の慰安を目的に、給与・賞与以外で支出した経費を指します。
この目的からわかるように、従業員を雇用していない個人事業主だと経費を「福利厚生費」として計上することはできません。
また、従業員がいても家族の場合は福利厚生費として認められないことも多くなっています。
10万円以上のもの
個人事業主は法人と異なり、上限がないため発生した経費を全額計上することが可能です。ただし、10万円以上の機器や備品を購入する場合は注意が必要となります。
10万円以上の機器や備品を購入した場合、まとめて経費には計上できません。耐用年数を参照して費用を分割し、毎年「減価償却費」として計上することになります。
健康診断費
法人の場合、従業員の健康診断は義務付けられているため「法定外福利厚生」に分類され、福利厚生費として計上できます。
一方、個人事業主の場合は健康診断が義務付けられていないため、経費にはなりません。
まとめ・個人事業主が光熱費を経費計上するなら家事按分を忘れずに!
家事按分は、自宅兼事務所などで仕事をしている場合に、支出した費用を事業用とプライベート用に分けることです。
水道光熱費を経費にする際も、家事按分を行わなければなりません。
上記でご紹介した家事按分の求め方や仕訳方法などを参考に、水道光熱費を賢く経費計上してください。
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(編集:創業手帳編集部)