「キックプ譜」を実際に使ってみた!プロマネ研修レポート
創業手帳社員が「キックプ譜」のワークショップで得たものとは
2021年3月25日、「予定通り進まないプロジェクトの進め方」著者であり、プロジェクトマネージャーでもある、株式会社ゴトーラボの代表後藤 洋平さんに、創業手帳の社員向けにキックプ譜の研修を行っていただきました。
こちらはその研修内容を記事にしたものです。
後藤 洋平(ごとう ようへい)株式会社ゴトーラボ 代表取締役
1982年生まれ、大阪府出身。東京大学工学部 卒業後、(株)インクスでメーカー向け高速試作サービスの技術営業、(株)フューチャー・デザイン・ラボで新規事業開発責任者、ポーターズ(株)でカスタマーサクセス責任者などを務めた。リリース直後でクレームが頻発していたHRビジネス向けSaaSの導入コンサルティング機能を立ち上げ、国内シェアNo.1サービスにグロースさせる原動力となった。 2019年5月に株式会社ゴトーラボを設立。
著書に「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」など。
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この記事の目次
そもそもプロジェクトとは?
まず、「プロジェクトを達成する」とはどういうことか?
プロマネ研修はそこから始まりました。
最初に後藤さんが示したのは、
- 民衆を引き連れるジャンヌ・ダルク
- 大勢で音楽を演奏する
- 大きな山に登山に行く
- 将棋をしている
この4種類の絵です。
そして「プロジェクトを進める」ことに対し、どんなイメージを持っているか、この中から選ぶように言われました。
「プロジェクト」と一言で言っても、その意味や広さ・重さは個人によって大きく異なります。個人が感じている「無意識の当たり前」を可視化していくことが、プ譜の最大の強味であり、プロジェクトを滞りなく進める上での重要なポイントになります。
私は2を選びました。大勢で音楽を演奏している絵がプロジェクトを進めるという私のイメージに合致していました。弊社では2または3の図を選ぶ社員がほとんどでした。
言葉のイメージ一つでも、個人で理解が違うと、多くの人が関り様々な指標や言葉が使われるプロジェクト進行において、全員の理解が一致することはむずかしいでしょう。
「プロジェクトを始める前のすり合わせが一番重要である」ということに、この4つの画像の認識合わせで気づくことができました。
頭の中を視覚化する、それがプ譜
上記を受け、本日の2時間の研修のゴールは「プロジェクトを進めるにあたっての心構えができている」状態にすることだと後藤さんから伝えられました。
後藤さんによると「何をすればよいのかわかっていること」は「プロジェクトではなくルーティーンである」だそうです。
「みんなが普段からやっていることはルーティーン。ルーティーンはいつもやっていることだからほとんどの場合、うまくいくし、うまく行って当たり前ですが、プロジェクトはその当事者にとって、初めてやることです。プロジェクトが上手くいかないのはそれが理由。だからこそ認識のすり合わせがとても重要なのです」
最初の4つの図を選ぶことで実際に言葉の認識の違いを実感した側からすると、この言葉たちはとてもしっくりきました。プロジェクトが進まないとは?と最初にぼんやり疑問を感じていたのが不思議なくらいです。
さて、ここからは実際に、後藤さんが作った「キックプ譜」を使うワークショップに移っていきます。
キックプ譜とは?
・自分の行うプロジェクトを段階的に分解していく作業
私は、社内で始まった新規プロジェクトについてのプ譜を作成することにしましたが、テーマを決めてからしばらくは固まってしまいました。自分の頭の中が驚くほどごちゃごちゃになっていて、まとまっていないことに気づいたからです。
プ譜を作成するためには、自分の頭の中にあるプロジェクトに対する考えを明文化する必要がありました。
キックプ譜には記入の段階があり、最初のページではプロジェクトをまずどんな環境のなかで実行しようとしているかの俯瞰から考えます。
次に、現状の課題を念頭に置きながら、実行すべきアクションを洗い出していきます。
そして、その洗い出したアクションたちが最終的にすべて最初に設定した「目標」に紐づけられている、といった構成になっています。
キックプ譜では思考を細分化するために、いくつかのカテゴリに分けて記入していくことが求められます。
カテゴリはすべて、プロジェクトを進めるにあたり基本的なことなのですが、いざ自分の思考を細分化して書き出す、となると途端に難しくなります。
私が一番つまづいたのは、そのプロジェクトに関わる「外敵」の部分でした。
外敵とは、そのプロジェクトを進めていくにあたり横やりを入れてくる可能性のある物事のことですが、普段から不測の事態や横やりがあったら?といったことを無意識に考えないようにしている自分に気づきました。
人はどうしても面倒なことを後回しにしてしまいがちですが、キックプ譜の作成では、その後回しにしがちなモノを必ず見て考えなくてはいけません。
お互いの頭の中を視覚的に共有するということ
各々のプ譜ができると、4名ごとのグループに分かれてディスカッションを行いました。
私が参加したチームは、営業部3名・編集部1名という構成でしたが、全員が見事に全く違うテーマでキックプ譜を作っていました。
キックプ譜は、作成した人の頭の中を垣間見れるようで面白いです。
作成していたプ譜は、1名は会社全体の売上を上げるための広い意味でのプロジェクト、1名は営業活動をいかに円滑に進めるかという観点からのプロジェクトなど、それぞれが何に課題を感じているのか、また、自分にとって解決しなければならない課題は何だと認識しているのか、ということがプ譜を共有するだけでも明らかになりました。
私はそれまで、誰が何に対し課題を感じているのか、そのために何をやっているのか、ゴールはどこなのか、そういうところを気にしたことがありませんでした。
しかし、よくよく考えてみれば、グループで進行するプロジェクトにおいて、メンバーが何を課題と感じているのか知らないということでは、プロジェクトが進まないのも無理はありません。
特に近年リモートワークが広がる中で、社員間のコミュニケーションをいかにとるか、というところは喫緊の課題とされています。
この「社員間のコミュニケーションをいかにとるか」という課題だけのために、コロナの流行が過ぎ去ったあとはリモートワークを廃止しよう、と考える企業も多数存在するくらいです。それくらいオフラインでのコミュニケーションが無くなったことはデメリットでした。
キックプ譜は、そうした社員間のコミュニケーションにも使えると感じました。
実際にキックプ譜を使ってみて
多くの企業で同様だと思いますが、弊社では様々な新規社内プロジェクトが同時に動いています。複数人で行うプロジェクトは、最初の意識合わせをあいまいなままスタートしてしまっているプロジェクトも多くあります。
だからこそ「プロジェクトは進まない」のです。
プロジェクトメンバーで最終的な目標とその中間目標を定め、自分たちがどこに向かっているのかといった最初の意識合わせを、プ譜を使うことで明確化できます。プ譜自体は、紙と鉛筆さえあれば書けるものですが、実際に書こうとすると、ちょっとむずかしいです。
キックプ譜は、初めての人でもプ譜がスムーズに書けるようにシステム化されているので、利便性が高いと感じました。
実際に研修を受けた創業手帳社員の感想
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- なにか物事を整理したいとき、自分のメモ帳に書き出すことは多いですが、今回紹介していただいたように、ツールを使うことで自分で想定していない項目や質問に答える形となり、結果的に思っていなかった内容が引き出せたり、より俯瞰的な頭の整理になって良いと思いました。
- シートを書き進めていくことで頭が整理されていくのに加え、目に見える「獲得目標」に対する裏目標ともいえる「勝利条件」が見えてきた点がとても良かったです! 同じプロジェクトでも、それに「どんな立場で関わっていくのか」によって出来上がるプ譜は違うと思うので、それを各々が持ち寄って状況を確認し合うのも有効だと思いました。
- プロジェクトを企画に落とし込むとき、何からはじめてどのような手順で企画をすればいいのかがわからず、なかなか行動に移せずにいましたが、プ譜がガイドラインになってくれることでさくさくとアイディアを文字に起こすことができ、思考が整理されました。今後も活用していきたいと思います。
最後に、後藤さんから「今日作ったプ譜は、このままの通りには進みません。必ず変更などが必要になってきます。その時に振り返って修正したり改めて考えることで、プロジェクトを成功に導くことができます」というお言葉を頂きました。
キックプ譜を使用することで、人によって「面倒だな」と思うことや「やらなければならない」と考えていることが違う、ということに気づくきっかけになりました。
そして、プロジェクトを進めていくにあたり、まずキックプ譜を用いてプロジェクトメンバー全員の頭の中を視覚的に共有することは、今後のプロジェクトの進み具合に多大な影響を及ぼすことがわかりました。
今後も新しいプロジェクトを立ち上げるときは、このツールを使っていくことがとても有益になると感じました。
キックプ譜、プ譜についてより詳しく知りたい方は
株式会社ゴトーラボでは、以下のような著作を発刊しています。
「予定通り進まないプロジェクトの進め方」
「紙1枚に書くだけでうまくいくプロジェクト進行の技術が身につく本」
「見通し不安なプロジェクトの切り拓き方」
今回の研修について興味を持たれた方は、本も一緒にお読みいただくとより理解が深まるかと思います。
(編集:創業手帳編集部)