経費と減価償却の違いとは?物品ごとの処理方法の違いを解説
経費は購入金額で処理方法が異なる
事業をはじめるにあたって、パソコンやスマートフォン、文房具など、事業で使用する様々なアイテムが必要になります。
これらは経費として計上できます。その際、「減価償却」という単語を目にする機会も多くなるでしょう。
しかし、経費や減価償却についてよく理解していない方も多く、専門的な知識が必要だと考える方もいます。
事業を継続させていくためにも、経費に関する知識は必要です。経費は、購入金額で処理方法が異なるため、前もって知識を身に付けておかないと損をする可能性もあります。
そこで今回は、経費と減価償却の違いを解説すると共に、金額による処理方法の違いや物品ごとの処理方法の違いなど、経費にまつわる様々な情報をお伝えしていきます。
経費に関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
経費と減価償却の違い
まずは、経費と減価償却の違いを知るためにも、それぞれの概要を解説していきます。
経費とは
経費は「経常費用」の略語で、事業を行う上で必要になる費用を指します。
そのため、スマートフォンの端末代や通信費用、飲食代や交通費など、業務で必要となる支出であれば、経費として認めることが可能です。
事業を営む上で、経費に「できる」「できない」の判断が難しいケースもあります。そのような時には、以下のような考え方で判断するよう覚えておいてください。
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- 事業活動で必要なもの
- 事業の売上げにつながる支出である
- 税務調査の際に倫理的に説明可能である
そのため、プライベートで使用するためのアイテムや飲食代などは、経費にすることができません。
減価償却とは
長期間にわたって使用できる資産を「時間の経過と共に価値が減るもの」と考えて取得価額を耐用年数に応じて分割計上することを減価償却といいます。
例えば、100万円するパソコンを購入したとします。その場合は、購入した際に100万円を一度で経費計上すると会社の利益が減少します。
そのため、減価償却を活用してパソコンの耐用年数(4年)に応じて毎年分割して計上することが可能です。
耐用年数に関しては、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められているため、それに従って計上していきます。
ただし、資産の種類によって耐用年数は細かい決まりがあります。
例えば、木造の建物でも宿泊所用と飲食店用では耐用年数が異なるため、判断できない場合は税務署に相談してみてください。
【経費or減価償却】金額による処理方法の違い
ここからは、金額別の処理方法の違いを解説していきます。
一括計上か減価償却かは、資産を取得した金額によって決まります。処理方法を理解するためにも、参考にしてください。
10万円未満は全額経費にできる
10万円未満で購入した資産に関しては、全額経費計上可能です。
トナーやインク、ボールペンといった文房具などの消耗品や展示会で使用する什器など、短期間で使用される資産などが当てはまります。
「税抜」「税込み」で悩む方もいますが、会社が税込経理をしている場合であれば消費税込みで10万円、税抜経理をしているなら消費税抜きで10万円未満を判断してください。
また、少額の資産でも大量に購入すれば10万円以上になるため、その場合の計上の仕方で悩む方もいるかもしれません。
例えば、8万円のパソコンを4台購入した場合、領収書の金額は32万円となります。1台が10万円未満となるため、購入年度の経費として計上が可能です。
ただし、机と椅子がセットになっている応接セットは一体で利用するため、それぞれ個体別の金額で判断するのではなく、全体の金額で判断するため注意が必要です。
10万円以上は原則、固定資産で減価償却する
取得価額が10万円以上の場合は、原則として固定資産として減価償却を行います。品目ごとに耐用年数があるため、それに従って分割し、1期ごとに計上する仕組みです。
固定資産は、企業が長期間にわたって保有する資産や1年を超えて現金化される資産を指します。
個人事業主であれば減価償却は必須となりますが、法人は任意です。しかし、減価償却には様々なメリットがあるため、多くの法人が減価償却を利用しているのが実情です。
10万円以上20万円未満は一括償却資産が使える
取得価額10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産と呼ばれます。
一括償却資産は、通常の減価償却とは異なり、取得価額を3年間で均等償却できる資産を指します。
具体的には、10万円以上20万円未満で購入した車両や機械設備、什器備品などが対象です。
一括償却制度を活用すれば、毎年均等に減価償却費を計上でき、簿記処理の手間を省くことが可能です。
取得価額を早期で経費にできるので、法人税や所得税といった税負担を抑えることにもつながります。資金繰りにも良い影響を与えるでしょう。
また、償却資産税が課税されない点もメリットとなります。
10万円以上30万円未満は少額減価償却資産の特例が適用できる
取得価額は30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例を利用できます。
少額減価償却資産の特例は、30万円未満の資産を取得年度に全額償却できる制度です。
ただし、条件に当てはまる場合のみしか利用できません。
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- 青色申告事業者である
- 常時使用する従業員の数が500人以下(特定法人は300人以下)
適用するための手続き方法は、個人事業主と法人によって異なります。
・個人事業主
青色申告決算書にある「減価償却費の計算」の適用欄に「借法 28の2」と記載する
・法人
法人税の確定申告書に、別表と適用額明細書を添付する
適用額明細書は、国税庁の公式サイトからダウンロード可能です。あらかじめ用意しておき、提出してください。
【経費or減価償却】物品ごとの処理方法の違い
ここからは、物品ごとの処理方法をご紹介していきます。スマートフォンとパソコンを例に挙げてご紹介していくので、経費計上の際に役立ててください。
スマートフォンの経費計上方法
スマートフォンにかかる費用は、通信費や端末代、その他の費用と3つに分けることが可能です。
それぞれの経費計上方法は以下の通りです。
【通信費】
通話料やデータ通信料が通信費に当てはまります。毎月発生する費用となり、勘定項目は「通信費」です。
法人と個人事業主とでは仕訳方法に違いがあるため注意が必要です。
・法人
スマートフォンを法人契約して社員に渡している場合は業務専用で利用しているため全額経費計上可能です。
例えば、25,000円の通信費を口座振替した場合は次のような仕訳となります。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
通信費:25,000円 | 普通預金:25,000円 | △月分 スマートフォン利用料 |
・個人事業主
プライベート用と業務用でひとつのスマートフォンを併用している場合は家事按分が必要です。
例えば、事業用30%の割合で10,000円の通信費を事業用の口座から支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
通信費:3,000円 事業主貸:7,000円 |
普通預金:10,000円 | △月分 スマートフォン利用料 (事業用30%) |
【端末代】
スマートフォン本体を事業用で入手した際には経費計上ができますが、本体価格によって仕訳処理のやり方が異なるため注意してください。
・10万円未満
スマートフォン本体の価格が10万円未満であれば、「消耗品費」で経費計上できます。
70,000円のスマートフォンを一括で現金購入した際の仕分方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
消耗品費:70,000円 | 現金:70,000円 | スマートフォン代(一括払い) |
・10万円以上
スマートフォン本体価格が10万円以上であれば「工具器具備品」として減価償却していきます。耐用年数は4年です。
例えば、150,000円のスマートフォンを一括で支払った際には、以下のように仕訳を行います。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
工具器具備品:150,000円 | 現金:150,000円 | スマートフォン代(一括払い) |
決算時には、耐用年数で割った金額を減価償却費として計上する仕組みです。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
減価償却費:37,500円 | 工具器具備品:37,500円 | スマートフォン代減価償却 △/4回目 |
【その他費用】
通信費と端末代以外にも発生する費用があります。
例えば、ケースやフィルムなどの費用です。業務上必要なアイテムであれば経費として扱われ、「消耗品費」に分類されます。
例えば、4,500円のケースを購入した時の仕訳方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
消耗品費:4,500円 | 現金:4,500円 | スマートフォンケース |
また、スマートフォンを使い続けていると修理が必要になる時もあります。その際には、「修繕費」として計上ができるので覚えておいてください。
修理費が15,000円で、現金で一括払いした際には、以下のような仕訳となります。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
修繕費:15,000円 | 現金:15,000円 | スマートフォン修理代 |
その他費用に関しても、個人事業主がプライベートと併用している際には、家事按分が必要になるため注意してください。
パソコンの経費計上方法
次に事業で使用することを目的にパソコンを入手した際の経費計上のやり方を解説していきます。
パソコンも金額でやり方が異なるので、ご紹介する内容を参考にして業務に役立ててみてください。
【10万円未満】
パソコン代金が10万円未満であれば、減価償却は必要ありません。
勘定科目は「消耗品費」に分類されます。
80,000円のパソコンを買った際の仕訳は以下の通りとなります。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
消耗品費:80,000円 | 現金:80,000円 | パソコン代(一括払い) |
また、キーボードやUSBメモリといった周辺機器を買った際もパソコン用品となります。使用頻度も高く消耗も早いので、パソコンと同様に消耗品費として計上してください。
【10万円以上20万円未満】
10万円以上20万円未満のパソコンを入手した際には、一括計上は原則できないため「工具器具備品」で仕訳を行います。
やり方は以下の3種類です。
・耐用年数で減価償却
パソコンの耐用年数は5年、それ以外は4年と定められています。
耐用年数4年の資産償却率は0.25となり、計算式「パソコン価格×0.25×償却率×その年の使用月数/12」で計算して減価償却を行っていきます。
4月に160,000円のパソコンを買った際には、下記のように減価償却される仕組みです。
1年目:160,000×0.25×(9カ月/12)=30,000円
2年目~4年目:160,000×0.25×(12カ月/12)=40,000円
1年目の仕訳方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
減価償却費:30,000円 | 工具器具備品:30,000円 | パソコン代減価償却 1/4回目 |
・一括償却資産
一括償却資産に該当すれば、通常4年で処理するパソコンも3年で償却処理が可能となります。
通常よりも1年早く経費計上でき、月割計算をする必要もないため手間が省けます。
・少額減価償却資産の特例
青色申告をしている中小企業や個人事業主であれば、特例を活用できます。
本来であれば、パソコンは5年もしくは4年かけて減価償却できますが、少額減価償却資産の特例を活用すれば、年度内に一括での経費計上が可能です。
【30万円以上】
パソコンが30万円以上であれば、一括償却資産や少額減価償却資産の特例の対象とはならないため減価償却を行います。
税法上で定められている耐用年数(5年もしくは4年)に合わせて減価償却処理を行ってください。
付随費用を含めることが可能
パソコンの取得価額には、パソコンの本体価格だけではなく付随費用も含まれます。パソコンの動作に必要となるものが当てはまり、以下のようなアイテムが付随費用です。
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- ディスプレイ
- メモリ増設
- 購入手数料
- 配送料
- OSソフト
パソコン本体と一緒に入手した際には、付随費用も含めて処理をするよう注意してください。
ただし、パソコンが25万円、ディスプレイが10万円であれば、合計で35万円となります。
その際には、前述したように一括償却資産や少額減価償却資産の特例ではなく、減価償却となるため注意が必要です。
まとめ・処理方法を理解して事業に活かそう
事業で使用する資産は、経費として計上できます。しかし、取得価額が10万円以上の資産は原則として減価償却が必要です。
その際、20万円未満であれば一括償却資産を活用でき、30万円未満であれば少額減価償却資産の特例を利用できます。
それぞれを理解してから活用を検討し、節税につなげましょう。
また、物品によっても処理方法は異なります。事業に活かすためには理解すべき内容なので、今回の記事を参考に知識を深めてみてください。
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(編集:創業手帳編集部)