確定申告はさかのぼって申告できる?ペナルティや申告・修正時のポイントを解説
確定申告はさかのぼって申告することも可能!
個人事業主やフリーランスとして活動している場合、毎年確定申告を行う必要があります。
しかし、場合によっては過去分の所得に関する確定申告をしていなかった、または過去に提出した確定申告について修正したい箇所があるという人もいるでしょう。
実は、確定申告はさかのぼって申告したり、過去に提出した内容も修正したりすることが可能です。
そこで今回は、確定申告をさかのぼって申告したほうが良いケースや発生するペナルティ、過去の確定申告の内容を確認する方法などを紹介します。
どれくらい前の確定申告ならさかのぼれるのか、申告する際にはどのような点に注意すべきかを知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
創業手帳では、確定申告の基本から解説した「確定申告ガイド」を無料でお配りしています。どのような時に確定申告が必要なのか、今年の変更についてなど、はじめて確定申告する方から毎年対応している方もご活用いただけます。ぜひご利用ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
確定申告は何年前までさかのぼって申告できる?
確定申告はさかのぼって申告することも可能ですが、さかのぼれるのは過去5年分です。
本来、確定申告では1年間の所得内容を翌年2月中旬頃から3月中旬頃までに申告する必要があります。
しかし、様々な事情から確定申告を行うのが難しかった場合もあるかもしれません。未申告の場合、5年前までさかのぼって申告できるようになっています。
また、すでに申告した内容を修正したい場合も、5年以内ならさかのぼって修正することが可能です。
ただし、いくら期間に余裕があるからといって放置してしまうと、その分ペナルティも多く発生してしまいます。
「まだ5年の猶予があるなら後で申告すればいいだろう」と考えるかもしれませんが、気付いた時点で過去分の申告・修正を行ったほうが良いでしょう。
6年以上前の確定申告は可能?
過去分の申告・修正は5年前までさかのぼれますが、6年以上前の確定申告は可能なのでしょうか。結論から言えば、6年以上前の確定申告や修正をすることはできません。
これは、国税通則法によって法定の納期限が5年に設定しており、国税の徴収権が時効によって失効するためです。
ただし、無申告でそれが不正行為や虚偽が見られる場合、徴収権の時効が5年から7年まで延長されるケースもあります。
さかのぼって確定申告をしたほうが良いケース
過去分を確定申告したほうが良いケースは、以下のとおりです。それぞれのケースについて詳しく解説していきます。
確定申告をし忘れていた場合(期限後申告)
1年に1回確定申告を行う必要があるにもかかわらず、し忘れていた場合は期限後申告を行ってください。
期限後申告は申告義務のある所得税の申告・納税を期限後に行うことを指します。
確定申告をし忘れていると、税務署から指摘されて納税分に加えてペナルティの支払いも発生する可能性があります。
しかし、税務署から指摘される前に自ら期限後申告を行うことで、追加納税の一部を減額してもらえるかもしれません。
逆に税務署から指摘されたにもかかわらず、一向に期限後申告を行わない場合は所得の隠ぺい・偽装などが疑われ、さらにペナルティが重くなる場合も考えられます。
申告した所得税を払い過ぎた、または適用できる控除を申告していなかった場合(還付申告)
申告した所得税を納め過ぎてしまった時や、適用できる控除を申告していなかった時、還付申告を行うことも可能です。例えば、以下のようなケースで還付申告が行えます。
-
- 年末調整の際に申告していなかった控除が発覚した
- 住宅ローンがまだ残っていた
- 自宅で特定の改修工事を行った
- 1年間で多額の医療費が発生した
- 特定支出控除の適用を受けたい など
還付申告では確定申告書の中に必要事項を記載し、税務署に提出することで完了します。
還付申告の場合は期限後申告と異なりペナルティは発生しません。しかし、一度納めた税金は戻ってこないため注意してください。
提出した確定申告の内容を修正したい場合(修正申告)
過去に提出した確定申告の内容に誤りがあり、本来納めなくてはいけなかった税額よりも少なかった場合は修正申告が必要です。
修正申告では修正前の申告書に加え、正しい納税額を赤字で記載した確定申告書を提出する必要があります。
修正申告は本来確定申告を行わないといけない期限を過ぎてしまっているため、新たに税金を納める際には延滞税も追加で納めることになります。
ただし、税務調査によって過少申告があるとわかった場合、過少申告加算税が追加でかかってくるので注意が必要です。
所得税を多く申告した場合や還付される税額を過少申告していた場合(更正の請求)
本来納めるべき所得税よりも多く申告して納めた場合、または還付される税額を過少申告していた場合は「更正の請求」を行います。
更正の請求を行い、その内容が認められれば納め過ぎていた税金も還付されます。
内容を認めてもらうために、請求の根拠になる書類も一緒に提出してください。
例えば、医療費控除の金額を過少申告していた場合、根拠となる病院からの請求書などを用意することで、本当に過少申告だったのかを判断します。
さかのぼって申告した場合のペナルティ
過去にさかのぼって申告した場合、ペナルティが課せられることもあります。ここでは、どのようなペナルティが課されてしまうのか、解説していきます。
延滞税
延滞税は納税期限を過ぎているにもかかわらず、納税されなかった時に発生する税です。延滞した日数に応じて税率も変動し、長くなればなるほど税率も上がっていきます。
例えば、納税期限を過ぎてから2カ月後に納税する場合、本来納める税額に対して年率7.6%分の延滞税も併せて納めることになります。
また、期限から2カ月以上経過してしまうと年率14.6%まで引き上がるので、納税期限を過ぎていることがわかったら速やかに納めることが大切です。
無申告加算税
無申告加算税とは、確定申告の申請期間内に申告していなかった場合に発生する税金です。
新たな納税額の50万円以下に対して15%、50万円を超えている部分には20%の税率が適用され、追加で納める必要があります。
ただし、税務署から指摘される前に期限後申告を行うと、税率は5%まで軽減されます。
なお、以下の事例に該当している場合、無申告加算税は発生しません。
-
- 期限日を過ぎてから1カ月以内に自ら期限後申告を行っている
- 法定申告期限内に申告しようとしたことが認められる
重加算税
重加算税とは、無申告加算税・過少申告加算税に対して追加で発生する税金です。
申告者がわざと所得や控除額の隠ぺいを図ろうとした場合、税務署からの指摘を受けて重加算税がプラスされます。
また、隠ぺいを図ろうとしていなかったとしても、わざと申告していなかったのであれば重加算税の対象です。
重加算税の場合、本来の税額に35%または40%の税が上乗せされてしまいます。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、確定申告の税額を過少申告していた場合にかかる税金です。すぐに間違いに気付いて修正申告を行っていれば過少申告税が課されることはありません。
しかし、税務署の調査によって指摘された場合は課税の対象となります。
自分では間違っていないと判断した結果、過少申告につながっていた場合でも課税対象となるので注意してください。
なお、過少申告加算税は本来の税額との差額に対して、その金額の10%分がプラスされる形になります。
青色申告の承認取り消し
確定申告を期限内に申告していない状況が2期連続で発生した場合、青色申告の承認を取り消されてしまいます。
青色申告の承認が取り消されることで、青色申告特別控除が受けられなくなったり、赤字の繰り越しが行えなくなったりします。
青色申告の承認を再度得るためには、2年かかってしまうといわれていることから、青色申告の優遇措置を継続して受けるためにも、期限内に申告するようにしてください。
過去の確定申告の内容を確認するには?
一度提出した確定申告書は控えなども返ってこないため、過去の申告内容を見返したい場合は提出前にコピーやデータを保管しておかなくてはなりません。
しかし、控えを作っておかなかったり、データが紛失したりする場合もあります。
もし過去の確定申告の内容を確認したい場合は、どのような方法を取れば良いのか解説します。
e-Tax(申請書等情報取得サービス)で手軽に確認ができる
e-Taxを活用すれば、過去分の申告書などをPDF形式で取得することが可能です。確定申告を紙で提出していた場合もe-Taxから取得できます。
e-Taxを利用する場合にはマイナンバーカードやe-Taxソフト(Web版・SP版)が必要となってくるため、事前に準備しておいてください。
ただし、e-Taxで過去分の情報を取得するサービスは2020年以降直近3年分の所得税の確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書のみが対象となります。
例えば、2025年に6年前(2019年)の情報を確認したくてもできないので注意してください。
「閲覧申請」で確定申告書類の原本を確認
閲覧申請は、納税者本人または代理人が税務署の窓口で直接申告書を閲覧するための申請手続きです。e-Taxで提出している場合も閲覧申請によって確認できます。
閲覧申請を行う際には税務署に設置されている、または国税庁のホームページからダウンロードして取得できる「申告書等閲覧申請書」を記入して窓口に提出します。
この時、本人確認も行われるので、運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証なども持参してください。
なお、閲覧申請の場合は申告書の内容を写真に収めたり、手で書き写したりすることは可能になるものの、コピーをとることは禁止されています。
「開示請求」で確定申告書類を再発行
過去に提出した確定申告の写しが欲しい場合は、開示請求を行います。開示請求は税務署の窓口または郵送で行うことが可能です。
確定申告書を開示請求する場合は、「保有個人情報開示請求書」を国税庁のホームページからダウンロードし、記入しておきます。
次に、収入印紙(300円)を購入して請求書に貼り付けてください。
あとは、窓口で提出する際に運転免許証などの本人確認書類も提示すれば、開示請求が行えます。
郵送の場合は本人確認書類のコピーや住民票の写し、返信用切手も同封して税務署に送りましょう。
ただし、開示請求を窓口で行った場合でも、その場で写しを受け取れるわけではありません。
確定申告書の写しは後日税務署まで取りに行くか、郵送してもらうことになります。
郵送してもらうには住民票と返信用切手の提出が必要なので、郵送を希望する場合は事前に用意してください。
確定申告をさかのぼって申告・修正する際のポイント
確定申告をさかのぼって申告・修正する場合、以下のポイントも押さえておくことが大切です。
申告方法や必要書類は確定申告と同じ
過去分をさかのぼって確定申告を行う場合、申告方法や必要書類などは通常の確定申告と同じものを提出することになります。
期限後申告だからといって提出書類や記載しなければいけない項目が増えることはありません。
また、申告方法に関しても税務署の窓口に直接提出する方法か郵送、e-Taxの3種類から選べます。
自分が申告しやすい方法を選んで、確定申告を行ってください。
できるだけ早めに申告・修正を行う
確定申告の期限が過ぎていた場合や過去に申告し忘れていたことが発覚した場合は、できるだけ早めに申告・修正を行うことが大切です。
税務署から指摘を受ける前に申告・修正を行っていれば、ペナルティは発生するものの税率が低くなり、負担も軽減されます。
特に課税される金額が大きくなりやすい重加算税の追加も避けられることから、早めに申告・修正を行ってください。
無申告の状態が長く続いている時は税理士に相談する
無申告の状態が何年も続いていて、自分ひとりではどうすればいいかわからない場合は税理士に相談するのもひとつの方法です。
税務調査が行われる期間は過去5年間とされているものの、無申告が続いている場合は7年間まで延長されるケースもあります。
ペナルティが増えることで事業にも影響をおよぼす可能性が高いことから、すぐ申告・修正ができるように税理士に相談してみてください。
なお、税理士に相談すれば申告・修正のサポートに加え、税務調査への対応から資金繰りに関する部分までアドバイスをもらうこともできます。
まとめ・税務署から指摘される前に速やかに確定申告を行おう
確定申告はさかのぼって申告・修正することが可能ですが、ペナルティも発生してきます。
少しでもペナルティの影響を抑えるためには、税務署から指摘される前に、速やかに申告・修正を行うことが大切です。
自分ひとりで対応するのが難しい場合や不安なことがある場合は、税理士に相談してみましょう。
創業手帳では無料で「確定申告ガイド」をお配りしています。ぜひご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)