事業計画書の見直しはなぜ必要?実施するタイミングや見直す際のポイントを解説
事業計画書は「策定したら終わり」ではない!定期的に見直しを図ろう
企業において事業計画書は、今後事業をどのように展開していくかを示すための重要な指針となる文書です。
事業計画書は一度策定するとそれで終わりにしてしまうケースもありますが、市場の変化や企業の成長に合わせて定期的に見直していかなくてはなりません。
そこで今回は、事業計画書の見直しで得られる効果や見直しに適したタイミング、見直すためのステップについてご紹介します。
さらに、事業計画の進捗管理に役立つ手法なども解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
事業計画書の見直しで得られる効果
事業計画書は定期的な見直しが必要となりますが、具体的にどのような効果が得られるのか。ここでは見直しによって得られる効果をご紹介します。
市場・トレンドの変化に対応できる
市場やトレンドは常に変化しています。1年前と比べても、市場やトレンドが大きく変化している場合もあるほどです。
もし事業計画書の見直しを行わなかった場合、何年も前の市場分析やトレンドが反映された戦略を取ることになるため、市場のニーズとマッチせず失敗に終わってしまう可能性もあります。
事業計画書を定期的に見直せば、現在の市場状況やトレンドにも対応できるようになり、現状に最適な戦略を打ち出すことも可能です。
また、競合他社の動きなども反映させられることから、競合と比較した際の優位性を構築することもできます。
軌道修正によって目標を達成しやすくなる
経営者は事業を開始した時と現在の状況を比較して、考慮すべきことは変わっていないか把握しておく必要があります。
事業計画書の見直しを図り、定期的に更新することで市場状況やトレンドだけでなく、社内環境なども含めて事業計画の軌道修正が行えるようになるでしょう。
現在の環境に応じた軌道修正を行うことで、事業目標も達成しやすくなるはずです。
中小企業庁が発表した「2020年版 小規模企業白書」によると、中小企業で経営計画または事業計画の策定状況は、小規模事業者の47.5%は策定しているものの、残りの52.5%は策定していないと回答しています。
実際に計画している企業に業績等の傾向を評価してもらうと、計画運用が十分と評価している企業の57.4%は売上高が大幅増加または増加していると回答しており、経常利益も51.4%の企業が大幅増加または増加したと回答していました。
このように、事業計画がきちんと運用できている企業の半数以上が成果を上げていることがわかっています。
リスク・課題の発見と解決につながる
事業を展開していく中でリスクは付き物です。どれほど万全な計画を立てたとしても、感染症の拡大や自然災害などの事態に巻き込まれてしまう可能性もゼロではありません。
しかし、だからといって目をそらさず、できる限りリスクや課題を抽出して備えておくことは重要です。
まずは計画どおりに事業が遂行されているか、どれくらい成果が出ているかなどを確認し、うまく遂行できていない・成果が出ていない場合にはどのようなリスクや課題があるのか原因を探ります。
そこからどのように改善していけば良いのかを事業計画書に示すことで、問題の改善につながるのです。
金融機関からの信用度が高まる
事業計画書の定期的な見直しと更新によって、融資を受けている金融機関からの信用度にも影響してきます。
事業計画書の見直しを図るということは、企業側が現状を分析し、目標達成に向けて軌道修正を行っていくことです。
融資した金融機関からすると、事業計画の改善によって安定した返済が期待できるため、信用度が高まります。
また、これから資金調達を行いたい場合でも事業計画書の見直しは行っておくと良いでしょう。
例えば小規模事業者持続化補助金を申請したい場合、経営計画書を添付が要件となっています。
この内容も加味した上で審査されるため、見直しが重要となってきます。
事業計画書の見直しに適したタイミング
事業計画書の見直しはどのタイミングで行うべきか迷ってしまう方もいるかもしれません。そこで、見直し・改善に適したタイミングをご紹介します。
内部環境が変化した時
自社が保有する資産や商品・サービスなど、内部環境が変化した際に事業計画書の見直しを図るのがおすすめです。
自社が保有する資産の中には資金だけでなく、人材や設備なども含まれます。
例えば社内の人員体制が変わった場合、事業計画をそのままにしていると人が変わったことで目標達成に至らない可能性も出てきます。
また、工場に導入していた機械が壊れてしまい、計画策定時点で予期していなかった設備投資を行う場合も、事業計画書の見直しが必要です。
人員体制の変化によって現状の課題や目標がうまく共有できなくなってしまう可能性もあるため、事業計画書を見直して新たに共有していくことも大切です。
外部環境が変化した時
自社を取り巻く外部環境が変化した場合も、事業計画書の見直しを図ってください。外部環境の変化といっても様々な変化が挙げられます。
例えば取引き先の環境変化や法改正・税制改正、経済状況の変化などもあります。
また、新型コロナウイルスのように感染症の拡大によって人々の暮らしが大きく変化することも、外部環境の変化といえるでしょう。
こうした変化は企業でコントロールすることはできません。しかし、事業を継続していくには外部環境の変化にも柔軟に対応していく必要があります。
計画を達成する時期に大幅なズレが生じた時
当初計画していた達成時期より大幅な遅れが見られる場合、事業計画の立て直しを図る必要があります。
なぜ計画していた達成時期よりも大幅な遅れが生じてしまったのか、その原因を明らかにすることは事業計画の改善にも効果的です。
また、場合によっては計画していた達成時期よりも早く達成できる場合もあります。この場合でも事業計画書の見直しが必要です。
どの程度早まるのかを予測することで、取組みなども変化する可能性があります。
目標設定が低すぎる場合、ビジョンを再度深堀した上で正しい目標を設定し直すことが大切です。
事業計画書を見直すための5つのステップ
事業計画書を見直した際の効果やタイミングについて解説してきましたが、どのような流れで計画書を見直せば良いのか迷ってしまう方もいるかもしれません。
そこで、ここからは5つのステップで事業計画を見直す方法をご紹介します。
1.自社の現状やこれまでの実績を分析する
まずは自社の現状やこれまでの実績を洗い出し、分析します。
内部環境の分析では、人材や組織体制、商品力、ブランドの知名度、販路、資金力など、あらゆる観点から自社の強みや自社が置かれている現状を分析します。
これらは一度だけ分析するのではなく、定期的にモニタリングを実施することでどのような変化が起きているのかも把握することが大切です。
外部環境においては、市場調査・トレンド分析を行うことで現在のニーズを把握したり、競合他社を分析・比較することで動向や自社の強みと弱みを把握できたりします。
こうした内部環境・外部環境の分析も踏まえ、現状を把握していきます。
2.計画がズレてしまった原因を考える
現状が把握できたら、次に当初の事業計画で立てた目標と現状を比較し、ズレが生じているか確認してください。
もしもズレが生じている場合は、なぜ計画がズレてしまったのか原因を探ることが大切です。
原因を追究する際、定量分析と定性分析を活用していきます。
定量分析は具体的な数値を使った分析手法です。
例えば飲食店の売上高が計画よりも下回っている場合、ひとりあたりの顧客単価が計画時点では1,000円だったものの、現状は700円に下がったことが影響しているなど、根拠のある数値を使って原因を突き止めます。
定性分析は仮説ベースで原因を分析する手法です。
顧客単価が1,000円から700円に下がった要因として、原材料を変えたことで味に変化が起きた、人手不足によりホールスタッフの接客が雑になったなど、数値では表せない原因を追究できます。
定量分析と定性分析をうまく組み合わせることで、考えられる原因をすべて洗い出していきます。
3.現状と将来性を考慮して実現可能性の高い目標を決める
計画がズレてしまった原因をすべて洗い出せたら、いよいよ目標設定です。現在の問題を解決するために、軌道修正につながる目標を設定してください。
ただし、ここで実現可能性の低い目標を立ててしまうと、また計画にズレが生じてしまい目標が達成できなくなってしまいます。
確実に達成できるよう、将来性も考慮しながら目標を定めてください。
なお、数値目標を低く設定すると実現可能性は高くなるものの、従業員のモチベーションが低下してしまう恐れがあるので注意が必要となります。
4.財務予測の見直しも図る
事業計画書を見直す際には、財務予測の見直しを図ることも必要です。財務予測は事業計画の根幹にもなる重要な項目です。
財務予測が正確でないと、目標や計画にもズレが生じやすくなります。
事業計画を立て直す前に、まずは財務予測も見直して予測は正確か、目標とズレていないかを検証します。
財務予測の修正をする場合、市場・トレンドや戦略の変化に合わせて修正していくことが大切です。
5.事業計画書を見直す時期や条件を決める
事業計画書の見直しと改善が終わったら、次回どのタイミングで見直すかも決めておきます。事前に見直す時期を決めておけば、定期的な見直しが可能です。
また、時期だけでなく条件を設定しておくことで急激な変化にも対応しやすいです。
例えば計画書の売上達成率が50%以下になった場合など、具体的な数値で条件を設定することで、見直しのタイミングが図りやすくなります。
事業計画の進捗管理に役立つ手法3選
事業計画書の見直しを図ったら、進捗管理も継続的に行っていく必要があります。進捗管理が十分でないと、成果につながっているのかが把握できないためです。
そこで、事業計画の進捗管理に役立つ3つの手法について解説していきます。
1.PDCA
PDCAは、Plan(計画)・Do(実行)・Chack(評価)・Action(改善)の頭文字を取ったもので、事業活動はこのサイクルを繰り返すことで継続的な改善につながるという手法です。
PDCAではまず計画を立てて実行に移し、評価をして改善していきます。
どこに問題があるのか、どう改善していけばいいのかが抽出しやすく、管理・改善が行いやすい点がメリットです。
PDCAサイクルをうまく回して事業計画書の目標達成を目指すためには、現状の見える化を行うことも大切です。
特にPDCAの中で失敗しやすいのはPlanといわれており、大きな目標を立ててしまうことで、サイクルがうまく回らない傾向にあります。
まずは現状の見える化を行い、計画を確実に実行できる体制を作ることが重要です。
2.OODA Loop
OODA Loopとは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(行動)の頭文字を取ったもので、多くのビジネスシーンでも活用されているフレームワークです。
OODA LoopはPDCAサイクルと比較して客観性に優れており、臨機応変に対応しやすいというメリットがあります。
現状を観察した上で有効な手段を導き出し、すぐに実行してみるのがOODA Loopのやり方です。
ただし、このやり方だと個人の主観が判断基準に含まれやすく、戦略も長期的ではなく短期的なものになってしまいやすい点がデメリットになります。
また、会社やチーム全体で統制を図るためにもビジョンやミッション、目標を共有する必要があります。
3.OKR
OKRとは、個人や組織が目標を管理するためのフレームワークです。Objective(目標)・Key Results(主要な成果)の頭文字を取っています。
この手法はGoogleやFacebookなどでも導入しており、日本国内でも取り入れる企業が増えています。
OKでは、目標や成果を企業・部門・チーム・個人などの各階層で決めて管理していく形です。
例えば企業で設定した目標と個人に設定した目標はリンクさせ、進捗確認や評価を実施していきます。
会社としての目標や従業員のやるべきことが明確になるのはOKRの強みです。
まとめ・事業計画の見直しで目標達成を目指そう
事業計画書は事業目標を達成するために欠かせない文書です。当初は策定していても、つい放置してしまっている方もいるかもしれません。
しかし、内部環境や外部環境は常に変化し続けているため、その変化に合わせて事業計画書も見直し、改善を図っていく必要があります。
今回ご紹介したタイミングやステップなどを参考に、定期的な事業計画書の見直しを計画してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)