女性経営者のブランディング術とは? 新閃力・尾崎えり子社長インタビュー

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※このインタビュー内容は2016年03月に行われた取材時点のものです。

ママや子どもの発想をビジネスに活かす!子育ても強みに変える秘訣とは?

(2016/02/23更新)

正社員からフリーランス、そして経営者としてキャリアを築いてきた尾崎えり子氏。ビジネスの重荷と感じていた子育てさえも自分の強みに変えていったという経験や、女性経営者としての自己ブランディングのノウハウを伺いました。

尾崎えり子(おざきえりこ)
株式会社新閃力 代表取締役1983年香川県出身。早稲田大学法学部卒業後、経営コンサルティング会社に入社。営業とし4年間で2度優秀社員賞を受賞。結婚を機にスポーツデータバンク(株)へ転職。企業内起業でキッズスポーツクリエーション(株)の設立に参画。第一子の育児休業から復職後、代表に就任。第二子育休を機に退職し、株式会社新閃力を設立。今までビジネスの戦力外だった「ママ」や「子ども」の力で企業の新事業・商品サービスを成功に導くプロデュース事業を展開。NPO法人コヂカラ・ニッポン副代表や早稲田大学国際寮グローバル人材育成プログラム講師、市進HD社長特命アドバイザー、学研プラスアドバイザーなども行っている。4歳男児と2歳女児のワーキングマザー。

仕事において子育ては重荷だと思っていた

ー起業までの経歴をお聞かせください。

尾崎:2006年に大学を卒業後、組織人事コンサルティングを行うリンクアンドモチベーションに入社しました。

新卒で入った1年目は中小・ベンチャー企業に対して、採用や研修の仕組み創りをお手伝いしました。

2年目はスポーツチームの人事コンサル、3年目からは、IRを通して、会社と投資家の関係作りのお手伝いをしました。

大手企業の海外投資家向けアニュアルレポートの作成コンサルや、決算説明会サポートの仕事をしていました。

リンクアンドモチベーションで4年間仕事をした後、結婚を機に転職しました。

転職先では、企業内起業で、新会社の立ち上げと新製品の開発を行いました。

そんな中、初めての子どもを授かり、出産という人生の大きな転機がありました。

育児休業を取り、会社に復帰してから子会社の代表に就任し、さらにその一年後、第二子を出産して、再び育児休業を取りました。

最初の出産から職場復帰後に、育児と仕事の両立に苦しんだ経験がありました。

第二子の出産で、再度「育児と仕事の両立」を迫られることになりました。

そこで、大きな決断をしました。

「正社員として会社に復帰しなくても、もし仕事があれば、業務委託という形で仕事を受ける形の方が罪悪感を感じずに仕事ができるのではないか?」と結論に至り、会社を退社しフリーランスとして働くことに決めました。

ーその時の心境を教えてください。

尾崎:最初の育児休業中は子育てが辛かったです。

私は、「社会で私にしかできないことをやりたい」という思いが強いんです。

産まれたばかりの時は、一日中、誰とも会話しなかったり、外に出なかったりしたので自分がどんどん社会から離れていく気がする怖さ、苦しさがありました。

育児休業から復帰した後も、子どもの体調不良で思うように働けない自分がいました。

仕事は大好きだし会社からも責任のある仕事を任せていただいている。でも、思うように時間が取れない。

サポートしてくれる周囲への罪悪感もあり、苦しかったです。

このころから「私の強みを生かせる働き方」ができているのか疑問を持ちはじめました。

ー転機はありましたか?

尾崎:2回目の出産の育児休業中に、4歳の子どもと、テレビで仮面ライダーを見ていました。

その時に、「仮面ライダーの俳優は出世する。一方で、レンジャー系の俳優は出世しない。」ということにふと疑問を覚えました。

もしかしたら、そのコンテンツに何か秘密があるのでは?と思いました。

「仮面ライダーは、子どもとママを両方ひきつけるダブルターゲットを満足させるストーリーになのか〜!」など自分の中で仮説を立てたりしていたんです。

すると、今まで興味のなかった子ども向けのコンテンツがどんどん面白く思えてきたんです。

ちょっとしたことですが、日常の何気ないことも、実は深く考えていくと意味があるということに気が付いたんです。

「子どもと同じものを見て、それを自分の成長につなげることもできる」

という発見をしてから、見るものが全て私のビジネスのプラスになるように思えるようになりました。

何をしていても、「これがいつか生かせる」と思えるようになり、このきっかけがその後の大きな心境の変化につながりました。

何者にでもなれる自分でいる

ー委託で働き続ける、という選択をしてどうでしたか?

尾崎:退職後の3か月間、フリーランスでやってみました。

しかし、ママがフリーランスで仕事をすると自己実現や趣味だと捉えられてしまうことも多く、きちんと仕事をしても報酬を得られませんでした。

どうしても「フリーランス」だと、本気度や信用度では「会社」に劣ります。

大手企業との取引になると個人では、「契約」の締結や、取引の「口座」を持つことも難しいことが多いです。

私は対企業と仕事をしたかったので、対等にやり取りするため会社を設立しました。

企業と対等の関係で、価値を出し続けてもっと規模を大きくしていくことを目指すのであれば、会社を設立したほうが色々と便利だなと思います。

ー始める時に目標はありましたか?

尾崎:私は何を事業でやっていきたいかすら決まっていませんでした。

何者にでもなれる自分でいて、お声掛けをいただいたらその仕事をやるスタンスで、一年半が経ちました。

頂く仕事に結果を出して、また仕事が来る良いサイクルになってきました。

事業計画書を作ってはっきりとした看板を掲げて出すのがセオリーだと思いますが、そういうやり方にこだわらず柔軟に立ち位置を決めています。

「自分が世の中でどういう価値があって、何者であるか」ということは、社会とお客様が決めてくれればいいと考えています。

ー「何者にでもなれる」というのは珍しいパターンですが、女性の起業の特徴はありますか?

尾崎:女性の起業と言っても色々ありますから、ひとくくりにして特徴を出すことはできませんが、ママの起業は少しちがうかもしれませんね。

会社の成長のために24時間365日働けるだろう男性と、育児や介護など限られた時間の中で自分の価値を出していく女性(ママ)では、経営に関する考え方が大きく違うのではないかと思っています。

日々、実践を繰り返しながらアメーバ―的に変わっていくという感じです。

私自身、会計のことは会計士さんにほとんどお願いしているし、会社設立の知識はゼロです。

無駄な時間を取られてしまうのであれば、自分の強みの部分に時間を割いて、あとは人に任せるのです。

「ママ、尾崎えりこ」というブランド力

ーママだから得られる視点が仕事に活きていますか?

尾崎:ママであることが評価されて、今の仕事があります。

現在、塾や学校、教育系の出版社のアドバイザーをしています。

その中で、子どもたちが何に興味を示して、ママはどういうものだったらお金を払うのかという視点は、自分がママとして過ごしたり、ママとして誰かと関わる中で養われています。

都内でバリバリ働いている男性コンサルが持ちづらい「消費者(ママ)視点」とコンサルティング会社や企業内起業をした経験から得た「ビジネス視点」の双方を持っているところを価値として感じて頂いているのかなと思います。

ー視点を広く持つために、工夫されていることはありますか?

尾崎:色々な世代、価値観を持っている人と積極的にお会いしてお話するようにしています。

例えば自治会や大学の先輩が集まる会などシニア世代がたくさんいる所に月に1回は行きます。

シニア世代の会議は非効率的な部分もあるのですが、その中でお互いに見守りあい、強いつながりを作っているのです。エクセルで10秒もあれば出来る事を1時間かける。

1人でできることを10人でやる。ビジネスの世界では「非効率」と言われるやり方も、場所が変われば必要不可欠なコミュニケーションだということを教えてくれます。

小・中・高・大学生とも定期的に会う機会を持っています。

ビジネスマンが普段コミュニケーションを取らないような人達と話合うことが私のアイディアの源になっています。

ーご自身の強みはどのようにPRされていますか?

尾崎:仕事は紹介で広がっていく面があります。

そのため、サラリーマン時代に関わっていた3万人ぐらいの顧客の方にメルマガを送るということを継続して行っています。

メルマガの内容はただの情報の羅列ではなく、私の喜怒哀楽や、四苦八苦の様子を送っているので、皆さん読んでくださっていて、そこから引っかかってきたものがビジネスにつながっています。

5年ぶりぐらいに連絡が来ても、メールを送り続けているので毎月会っているような感覚になるのだと思います。

「居場所をつくれる力」を養う学校

ー「コペルニクスの学校」について教えてください。

尾崎:大学時代に法学部で少年法の勉強をしていました。

少年院にいた少年に話をする機会があり、「僕たちはここを出て今までと同じ学校や家やあの地域に戻っても、同じことを繰り返すだけだから帰りたくない」と話をしているのを聞いた時に、家や学校や地域に彼らの居場所を作らないといけないと思いました。

でも、ママになって子どもに居場所を作ることも重要だけど、子どもが自分自身で居場所を作れる力を身に着けさせてあげたいとも考えるようになりました。

居場所を作れる力というのは、自分でお金を稼ぐ力や、社会とつながっていく力と考えて、そういう力を小さいころから養えるようなコンテンツやプログラムを提供したいなと思いました。

それが「コペルニクスの学校」を作ったきっかけです。

ーどのような内容なのでしょうか?

尾崎:「学校の勉強は受験のためで、社会では使えない」を180度変えるというコンセプトで行っています。

社会で学ぶ「桶狭間の戦い」が社会でどう活かせるのか?理科の「摩擦力」がビジネスでどう活かせるのか?数学の「平均」が人生でどう活かせるのか?など、具体的に一個一個「教科書」と「社会」を紐づけています。

どんなに貧困で中卒で社会に出たとしても、中学までの義務教育さえ頑張っていれば、自分で社会に居場所を作っていける。

学校で学んだことは社会に出ても使える、ということを紐づけて理解することは、学校での学びのモチベーションを上げることにつながります。

「何となく勉強する」のではなく、「社会で生かせる」と思って学ぶ10年間と、そうじゃないと思って学ぶ10年間は全然違う。

インプットが変わればアウトプットは必ず変わるのです。

ー良質なインプットができる先生の標準化は難しいと思いますが、解決策はありますか?

尾崎:先生も一緒にプロジェクトに参加してもらうと良いと思っています。

先生よりもお父さんお母さんが家庭教育の中で少し意識することで大きな効果をもたらすと思っています。

学校が全てになってしまうと、学校の先生がきつくなる。

学校は基礎で、社会での応用を教えるのは親の役割にすると、ママやパパも教えられることが増えると思います。

女性起業家へのメッセージ

ー女性起業家へのメッセージをお願いします。

尾崎:女性は家でも会社でも守りの役割が多いので、なかなか攻めて失敗するということに慣れていない。

失敗すると恐ろしいことが待っているのではないかという不安だけが大きくなってしまって一歩が踏み出せない。

失敗をいくつしたかというのを勲章にして欲しいです。

人生において失敗なんてないです。成功するかネタ作りになるかのどちらかだと思っています。

最悪ネタになれば面白いし、それが活かせるときが必ず来ると思います。

とにかく「創業で失敗したって死にゃしない。」というのを伝えていきたいです。

「世界平和に貢献したいのですがどうすればいいのですか?」という質問に対して、マザーテレサさんが「今すぐ家に帰って家族を抱きしめなさい。それが、あなたができる一番の世界平和の貢献の仕方です。」とおっしゃった話が凄く好きで座右の銘にしています。

ママとして創業した時にスケール感の大きな仕事ができず、自分のしている仕事が凄く小さく見えたり、意味のないように思えたりすることがあると思います。

しかし、どんなに大きなことを言って、世界を平和にしたいといっても、何もしない人より、自分の身近な人を幸せにしているほうが、貢献度は大きいです。

自分のやっている範囲のことを小さいと思わない。それが私にできる最大であり、最高のことだと思うことは自分の仕事のモチベーションにとって大事なことだと思います。

(取材協力:株式会社新閃力/尾崎えり子)
(編集:創業手帳編集部)

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