【飲食業開業マニュアル】飲食業の開業準備には何が必要?開業費用や必要な資格まで徹底解説!

飲食開業手帳

飲食業の市場傾向や必要書類、飲食業を目指す人が使える支援制度などの理解を深めよう

暮らしの身近にあるビジネスの一つといえば「飲食業」です。生活に欠かせない衣食住のうちの食を担う、幅広い分野の飲食業が存在します。飲食業界にて開業を目指す人も少なくありません。

当記事では、飲食業界のビジネスに興味がある方に向けて、業界の特徴や必要な費用、手続きなどを紹介します。飲食業をサポートする支援などもまとめているので、参考にしてください。

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飲食業界の特徴


食品の加工や販売を中心とする飲食業界には、さまざまな特徴があります。どのような特徴があるのか、代表的なものをみていきましょう。

豊富な分野から開業できる

同じ飲食業界に関連するビジネスといっても、その分野は多岐にわたります。飲食業では、豊富な分野の中から自分に最適なものを選んで事業運営が可能です。

飲食業を細分すると、「外食」「内食」「中食」の3種類に分けられます。レストランや居酒屋など、店舗で飲食を提供するのが外食です。内食は顧客が自宅で料理を行って食べる商品向けの事業、中食はテイクアウトを主軸とする事業を指します。

食事のジャンルやターゲット層などにこだわることで、得意分野に絞った事業展開ができるでしょう。

常にニーズが期待できる

飲食業界は、その名のとおり食べ物や飲み物に関する事業であり、人々が生きるうえで欠くことのできない行為と密接しています。このため、常にニーズが期待でき、潜在的な顧客も一定数見込める業界といえるのです。

こだわりや情熱だけで事業をおこしても、必要とされていなければ成功は難しいでしょう。その点では、飲食は常に誰かから必要とされており、事業として成立しやすくなるのです。

ジャンルをしっかりと見据えれば、時代や流行に淘汰されることなくビジネスを継続できるチャンスがあります。一次的な流行や好みだけでなく、広い視点で飲食業界への参入を意識しましょう。

参入障壁が低い

飲食業界の大きな特徴として、他の業種に比べて参入障壁が低いことが挙げられます。比較的起業がしやすく、難しい資格がなくても事業をおこすことができるのです。飲食業未経験から開業する人もいるでしょう。

参入しやすい理由に、簡単な工程のみで商品やサービスを提供できる点があります。仕入れや作業プロセスの工夫次第では、軽微な調理のみで運営が可能です。もちろん事業形態にもよりますが、特別なスキルやノウハウが不可欠な分野に比べると、総合的には参入しやすいといえるでしょう。

ただし、参入障壁が低い分、ライバルも大勢います。同じように参入してくる他社も多くなるため、差別化や独自の戦略などでビジネスのクオリティに差をつけなくてはなりません。

市場の変化が激しい

飲食業界は変化が激しく、長期にわたって安定したニーズを読むのが難しい側面があります。変化の理由はさまざまあり、時代ごとに異なるニーズや流行などが例です。参入してくる競合他社が多いのも、変化をもたらす要因といえます。

コロナウイルスの流行も、飲食業界に多大なる変化をもたらしました。外食需要が減った一方、テイクアウトなど自宅での飲食需要は増加し、各社独自に対応しています。

このように、流行や外部要因の影響を受け、市場の状況が変わりやすい特徴があります。

飲食業界の市場傾向

飲食業のなかでも、多くを占めるのが外食産業です。外食産業の市場傾向を知ることで、同業界の流れもおおよそ把握できます。

一般社団法人日本フードサービス協会が公開した2022年の外食産業市場動向調査によると、全体売上は前年比113.3%となっています。原材料の高騰などから客単価が上がったことも、売り上げの増加に貢献したものと考えられるでしょう。

外食産業の売り上げは2021年度に比べて上昇しているものの、コロナ前となる2019年比では94.2%であり、以前と同じような状況に戻ったとは言い難い結果でした。

一方、ファーストフードの業種については前年比107.9%、2019年比108.6%で、好調な売り上げとなっています。ファーストフードは、他者との接触を控えられるテイクアウトやデリバリーが可能です。これは、飲食市場においてコロナの影響が根強く残っていることの裏付けといえるでしょう。

飲食業界の開業費用


日本政策金融公庫総合研究所のアンケート調査によると、2023年度新規開業実態調査における開業費用の平均値は1,027万円です。飲食業の開業においても、相場として1,000万円程度の費用が必要だとされています。

具体的にどのような費用がかかるのか、飲食業の開業費における内訳をみていきましょう。

店舗や設備にかかる費用

外食などの店舗を持つ事業形態の場合、物件の取得や内外装の工事といった費用が大きくなります。調理用具のほか、イスやテーブルといった細かな備品についても同様です。規模やジャンルに応じて費用の差が激しく、余裕を持った準備が求められます。

事業の運転資金

運転資金とは、事業を続けていくうえで必要となる資金を指します。食材やトレーの仕入れ、従業員への給与、広告費用などに使用するのが一般的です。ある程度の運転資金を開業時に用意しておかないと、思わぬ出費に対応できず、安定した事業継続が困難になる恐れがあります。

飲食店の開業に必要な資金について、詳しくは以下の記事にて解説しています。

知らずに飲食店を開業すると失敗する!飲食店開業資金はいくら必要?自己資金ゼロは本当か(前編)

開業においての必要書類

飲食業の開業に必要な書類は、雇用する従業員の有無や業務形態によって異なります。基本の手続き以外に、従業員を雇用するケースについても知っておきましょう。

飲食業に必要な基本の書類・届出

開業時に必要な書類や届出は、提出先ごとに異なります。飲食業の開業に必要となる基本の手続きについて、場所別にまとめました。

  • 保健所:営業許可申請または営業届出
  • 税務署:開業届、青色申告承認申請書
  • 消防署:防火対象物の使用開始の届出、火を使用する設備等の設置に対する届出

飲食業の多くは、管轄の保健所に営業許可を申請するか、営業届出をしなくてはなりません。いずれも、厚生労働省の提供する「食品衛生申請等システム」から手続きできます。ただし、営業許可については施設検査を受け、適合が確認された場合のみ許可書が交付されるため、準備を万全にしておきましょう。

税務署に提出する開業届は飲食業以外にも共通する書類であるほか、青色申告を利用するならその申請書も必要です。飲食業の多くは火を扱うため、消防署への届出も漏れなく行いましょう。

飲食業で従業員を雇用する場合に必要な書類・届出

従業員を雇用することが確定している場合は、場所ごとに次の手続きも必須です。

  • 税務署:給与支払事務所の開設届
  • 労働基準監督署:労災保険に関する届出
  • 公共職業安定所:雇用保険に関する届出
  • 日本年金機構:社会保険に関する届出

給与の支払に関する届出のほか、従業員に適用する各種保険の加入手続きが必要となります。社会保険の加入は法人化する場合に必須となるため、忘れずに手続きしてください。

飲食業界に必要な資格


飲食をビジネスとして開業するには、取得しておくべき資格があります。必ず取らなくてはならないものと、あれば事業に有利と考えられるものに分けて紹介します。

飲食店の営業に必須の資格

飲食店を営むために必須の資格は「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つです。特に「食品衛生責任者」については、食品営業許可の取得または食品営業届出をしているいずれの施設においても配置しなくてはなりません。

2つの必須資格について、さらに詳しく解説します。

食品衛生責任者

食品衛生責任者とは、食品衛生法で定められている衛生管理の担当責任者です。安全な食品の提供を行うために、添加物等の取り扱いや食品の製造・加工といった工程について意見ができる立場にあり、管理計画などの作成や検証なども行います。

食品衛生責任者資格の取得には、特定の資格を有しているか、取得要件を満たせる講習会の課程を修了する必要があります。

防火管理者

一定規模を有する防火対象物の所有者または代表者などは、その施設に対して防火管理者を選任しなくてはなりません。防火対象物となる飲食店の場合は、防火管理の有資格者を選任しましょう。

資格を取得する方法は、防火管理講習の受講が基本です。消防署職員として管理的な立場にあったなど、防火管理上必要な知識・技能を有することが認められる場合には、講習を受ける必要がなくなります。

飲食店の営業におすすめの資格

必須ではないものの、取得しておくと飲食業の開業において役立つ資格を紹介します。業種によっても重要度が左右されるので、ジャンルごとに判断しましょう。

調理師

飲食業界に関わる代表的な国家資格といえば「調理師」です。取得には調理師試験の合格か、調理師学校の卒業が必要となります。また、調理師資格の取得は、食品衛生責任者の資格取得要件の一つです。取得によって、食品衛生責任者の確保につながる利点もあります。

当資格で食の専門知識を保有することを証明でき、顧客や取引先からの信頼を得るのに役立つでしょう。

製菓衛生師

飲食業のうち菓子製造業を行う場合は、「製菓衛生師」の資格を取得するのが良いでしょう。いわゆるパティシエなど、お菓子作りを主力とする飲食業において、能力を証明する有利な資格となります。

フードコーディネーター

食の開発や運営の知識を示せる資格が「フードコーディネーター」です。飲食業界で開業するにあたり、独自のメニューやレシピ、演出づくりなどにこだわりたい人にとって、資格取得を通じて学べることが豊富にあります。

飲食業界に向いている人

飲食業界に向いている人の特徴を知っておくと、適性の有無を判断する目安にできます。代表的な条件を以下にまとめました。

対人スキルが高い人

ほとんどの飲食業において、対人スキルからなるコミュニケーション能力が必須です。対人スキルが高ければ円滑な接客が可能なほか、スタッフ同士の連携もスムーズに行えます。

単にコミュニケーションが好き、というだけではなく、相手の目線で気配りができるかどうかも重要です。細やかな配慮一つでお店の印象に差が出るため、柔軟な対処ができる対人スキルが求められるでしょう。

飲食への探求心がある人

食べ物やお酒を飲むのが好きな人は、飲食業に向いています。好きなことに対する情熱はモチベーションになり、事業継続の原動力となるためです。特に、食への興味を深く持てる人のほか、味や空間づくりを追求できる人は飲食業と好相性でしょう。

興味も関心もない分野に対しては、いくらビジネスといえども長く続けることは困難です。飲食への絶えない探求心は、同業界との適合性を示す一つといえます。

心身ともにタフな人

飲食業の経営に必要不可欠となるのは、心身ともに健康かつタフであることです。厨房では一日中立ちっぱなし、ホール対応などで長時間動き回ることも珍しくありません。体力に自信がなければ、飲食業に向いているとはいえなくなるでしょう。

精神的に強い人材も、飲食業界では必要とされます。接客を伴うことが大半となり、時にはクレームの処理なども行わなくてはなりません。トラブルにも落ち着いて対応できる強靭なメンタルがあれば、飲食業界でも活躍できるでしょう。

接客にやりがいを見出せる人

飲食業界の仕事では、直接顧客と接する機会が多いのが特徴です。そのため、接客を通じた顧客の反応にやりがいを感じられる場合は、飲食業界に向いていると判断できるでしょう。

特に、ホールスタッフなどでは顧客の反応を見られる傾向が顕著になります。食べている人の笑顔を見るのが好き、美味しいと言われるとモチベーションが上がるといった、顧客からの反応をプラスの力に変えられる人におすすめです。

飲食業界の成功ポイント


飲食業界は参入しやすい分、淘汰も早いといわれています。少しでも長く事業を続けるために、成功のポイントを押さえておきましょう。

あらゆる面で競合他社との差別化を図る

飲食業界は競合他社が非常に多く、どこかで見たようなアイデアだけでは存続が難しくなります。他社との明確な差別化を図ることで、自社の強みを売り出していかなくてはなりません。

差別化においては、事業計画の立案やメニューの開発といった、企画段階から取り組むことが重要です。店舗を構える場合の内外装のデザイン、お店全体のコンセプトなども含まれます。集客においても同じことがいえるでしょう。

金銭管理を徹底する

経費の削減や定期的な資金調達など、金銭管理の徹底も飲食業での成功に不可欠です。仕入れ先の比較を行う、業務フローを見直して無駄をなくすなど、基本的な対策を怠らないようにしましょう。

金銭管理を的確に行うには、会計の知識が最低限必要です。帳簿のつけ方はもとより、正しい計上の方法や税制への理解なども求められます。場合によっては税理士などの専門家の力を借りて、金銭管理を徹底してください。

データやツールを事業に活かす

飲食業で成功を収めるには、データやツールを活かした事業運営を行う必要があります。勘や経験だけを頼りに運営するのは危険です。市場や他社の分析、日々の帳簿などから得られる会計データなど、さまざまな情報を駆使しなければ成功は難しいでしょう。

データの集計や分析を行う際には、ITツールを使うのがおすすめです。計算の自動化やデータのグラフ化といった便利な機能で、効率的に経営状況を把握できます。

飲食業界の成功事例

飲食業界では様々な方が活躍されていますが、創業手帳でも以下のような方々にインタビューを実施しています。

minitts 中村 朱美|コロナで2店舗を

USEN 田村 公正|DX時代の店舗総合サー

スタバ元CEO 岩田 松雄|【第一回】「ミッ

飲食業界の支援制度

飲食業で利用できるさまざまな支援について紹介します。開業時はもちろん、すでに飲食事業を営んでいるお店の支援策としても役立つでしょう。

飲食事業者向け経営基盤強化支援事業

「飲食事業者向け経営基盤強化支援事業」は、東京都内にある中小企業や個人事業主の飲食店業者が対象です。支援対象となる要件を満たした場合、1事業者につき1申込まで無料で支援を受けられます。

支援内容は、専門家を派遣しての課題解決サポート、審査を通過した店舗への助成金交付などです。支援規模数には限りがあるため、募集スケジュールを確認して早めに申し込みましょう。

地方創生起業支援事業

東京圏以外の道府県または東京圏の条件不利地域を対象とするのが「地方創生起業支援事業」です。当事業では起業支援金の申請ができ、新たに起業する場合や、事業継承などのケースも対象となります。

飲食業を地方でおこしたい、東京圏から出身地に戻って店舗を持ちたいなど、地方でのビジネスを検討しているなら重宝する支援です。事業地となる道府県の執行団体に、申請手続きに必要なものなどを確認しておきましょう。

創業手帳では、飲食開業のノウハウをまとめた「飲食開業手帳」を無料でお配りしています。飲食経営に必要な資金やその調達方法、開業までに必要なことをチェックリスト形式に掲載。飲食店の開業をご検討中の方は、是非こちらもあわせてお読みください。

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(編集:創業手帳編集部)

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