個人投資家が起業できる?メリット・デメリットと注意点まとめ

創業手帳

個人投資家はコストも考えて将来の起業を視野に入れよう


個人投資家は、時間や場所にとらわれることがない働き方です。
少ない元手からでも投資で増やして、安定した利益を獲得している人も少なくありません。

収入が増えた段階で検討してほしいのが、法人の設立です。個人投資家として起業して法人を設立することには様々なメリットがあります。
今回は、個人投資家が起業するメリット・デメリットとその手順について紹介します。

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個人投資家とは


個人投資家は、自分の知識や経験をもとに市場の流れを読んで利益を生み出す仕事です。
投資する資産は、株式・債券・通貨などと多様で、収益にも売買益や配当金などがあります。
個人投資家といっても、その実態は千差万別で一概にはいえません。

一般的に個人投資家は、個人資産を自己の判断で投資する人を総称する言葉です。
投資スタイルや投資の目的が異なるとしても、利益を得る目的で投資をスタートすれば誰でも個人投資家を名乗ることが可能です。

個人投資家は、専業投資家と兼業投資家に大きく分けられます。
専業投資家といった場合には、投資のみで生計を立てる人を指します。
一方で兼業投資家は、普段は会社員で投資も行っている人のようにほかの仕事もしている個人投資家です。

また、「機関投資家」もニュースや雑誌で耳にしたことがあるかもしれません。
機関投資家は、株式や債券といった金融商品を大口の資金で運用する法人を指します。
機関投資家は、巨額の資金で取引きを行うため、市場に与える影響も大きいためニュースで話題となることも多いようです。

自分がどういった投資家に当たるのか、これからどのような投資家を目指すのかを検討してみてください。

個人投資家として成功するためのポイントとは


副業での投資家や、投資初心者から個人投資家として成功するケースは様々なところで聞かれます。
個人投資家になるためには、特別な資格や経験は不要で、投資をスタートして利益を得られるようになれば、個人投資家を名乗ることができます。

しかし、個人投資家を長期間継続するためには、コンスタントに利益を得るための知識は蓄えておかなければいけません。
例えば、株式投資であれば、各種銘柄の特性・選定方法・株式チャートなどの見方を知っておく必要があります。

また、投資と簡単にいっても、株式投資・債券・投資信託・FX・仮想通貨と多くの種類があります。
自分が始めたい投資の方法とその取引方法、リスクまでを把握してから投資を始めると良いでしょう。

個人投資家として成功するためには、月々の収支額を把握して、自分に合う投資スタイルを確立することがポイントです。
投資は実践しながら学ぶことも多いので、まずは少額から始めるようおすすめします。
そして、利益が安定した段階で起業を検討してみてください。

投資会社を設立するタイミングを考えよう


個人投資家として、一定の収入が得られるようになると投資会社を設立するタイミングが気になるところです。
個人と比較して法人は課せられる税金の上限が低く、一定額以上の所得になると法人のほうが税額は低くなります。
ただし、投資対象となる金融商品や納税方法によっても税金の扱いが異なります。

起業したほうが良いかどうかは、単純に税率だけで決めることはできません。
法人を設立すると登録免許税などの費用がかかる上に、今までは課せられていなかった税金が課せられます。
一方で、法人として経費が認められやすくなることで、節税になるケースもあります。

納税額は経費の内訳や置かれた環境によって異なるものの、所得が700万円を超えた段階が法人化の目安です。

個人投資家が設立する投資会社とは


投資会社や資産管理会社とは、その名前からもわかるように投資や資産管理を目的に設立された会社を指す会社です。
創業者の資産を有利に管理・運用する目的だけのために設立されるため、プライベートカンパニーと呼ばれることもあります。

税金面での優遇や社会的信用の確保などの理由で、個人投資家は利益が一定額を超えると投資会社を設立することを考えるようになります。
以下に、投資会社と関わりのある税金についてまとめました。

税金の違いで個人投資家と投資会社を比較しよう

個人投資家が投資会社を設立すると、税制での扱いが大きく変わります。
個人投資家と投資会社における税金での違いを紹介します。

個人投資家が支払う所得税

個人投資家の場合は、個人の所得税として課税されます。
所得税は累進課税制度が採用され、収入が高ければ高いほど税率が上がる仕組みです。
所得税は、5%~45%の中で段階的に設定されます。
最大の税率である45%に住民税を加えると、最大で55%もの税金を払わなければいけません。

法人が支払う法人税

個人投資家が投資会社を設立した場合、法人税が課せられます。
2022年12月現在で法人税の税率は15%〜23.20%で、資本金の額や所得の額によって税率が変わる仕組みです。
これに法人事業税や法人住民税が課せられるものの、それでも30%前後の税率です。

個人と比較して、法人は税率の上限が低く抑えられています。
つまり、所得が少ない場合には個人に課せられる所得税のほうが税額は低いものの、所得が一定額を超えることで法人税のほうが税額は低く抑えられる場合があることを意味します。

個人投資家が法人を設立するメリット

個人投資家にとって、起業して法人を設立することはひとつの節目に当たります。
法人を設立して、どのようなメリットがあるのかを紹介します。

所得が一定額を超えると法人税率のほうが低い

前述のとおり、個人の所得に課せられる所得税と法人に課せられる法人税は仕組みが異なるため、利益が一定額を超える段階で所得税よりも法人税のほうが税額は低く抑えられます。

ただし、法人には法人税以外に法人事業税や法人住民税も課せられるため、単純に税率だけではどちらがお得かを比較することができません。
起業して会社を設立する費用や法人を維持するためのコストも考えて、投資法人のほうの税負担が軽い場合は起業するタイミングと考えられます。

社会保険料を経費に計上できる

法人を設立すると、社会保険は強制加入となります。
さらに、会社が負担する分の社会保険料を会社の経費として計上できます。

個人投資家の場合は、個人として社会保険料を支払い、社会保険料控除を受ける仕組みです。
しかし、法人の場合には半額が会社の経費で、残りの個人負担分を社会保険料控除で計算できます。
厚生年金に加入できる上、個人の保険料負担も軽くなる点がメリットです。

生命保険料を経費に計上できる

投資会社では、一部の生命保険料も経費として計上可能です。
これは、法人が契約者となっていて役員や従業員を被保険者とする生命保険が対象となります。

個人投資家の場合には、生命保険料控除の対象となりますが、経費には計上できません。
法人が契約者となれば、経費にして節税が可能になります。

経費と認められる範囲が広い

個人投資家と投資会社では、経費として認められる範囲も異なります。
法人はそもそも利益を求めることを目的としているため、利益を生み出すために必要なお金はすべて経費として計上できます。

一方で、個人投資家は個人としての活動なので、プライベートでの活動と事業のための活動を区分しなければいけません。
税務調査の時にプライベートの支出と経費が混在していれば指摘される場合もあります。
そのため、すべての取引きが事業関連といえる法人のほうが経費として認められる範囲が広くなります

家族に給与を支払える

個人投資家は、自分の給料や退職金を経費とすることはできません。
しかし、法人の投資会社であれば、妥当な額の報酬や退職金は経費に計上して、給与所得控除も受けられます

また、投資家の報酬だけでなく家族への給与も経費に計上可能です。
個人投資家の場合にも専従者給与として処理できますが、一定の制限があります。

一方で、投資会社であれば家族への給与も不相応に高額でなければ原則経費での処理可能です。これは所得を分散して節税するためにも有効な方法です。

赤字を10年間繰り越せる

個人投資家と投資会社では、損失が出た時の処理も異なります。
個人投資家の場合には、青色申告であれば損失を3年間は繰越しが可能です。

一方で、投資会社は青色申告をしていれば、発生した損失は10年間繰越しができます
ただし、2018年4月1日前に開始した事業年度で生じた欠損金額の繰越期間に関しては9年です。

繰越しの期間を過ぎた損失は、それ以上は控除するために使えません。
より長い期間にわたって赤字を繰り越せる点は大きなメリットです。

個人投資家が法人を設立するデメリット

投資会社設立は多くのメリットがあるものの、デメリットもないわけではありません。
起業前に知っておきたいデメリットについて紹介します。

個人ではかからない負担がある

起業して投資会社を設立すると、個人事業主の時にはかからなかった費用も発生します。
法人に課せられる税金は法人税だけではないため、トータルで思った以上に税金がかかると感じるかもしれません。

以下では、法人にかかる法人税以外の様々な税金について紹介します。

法人事業税

法人事業税は、法人が事業を行うために利用している公共サービスや公共施設について、その費用の一部を負担する目的の地方税です。
法人事業税は、所得に税率を乗じて計算するため、所得がない年には発生しません。
また、法人事業税は、事業に課せられる物税で翌年の損金算入が認められている点も特徴です。

法人住民税

法人住民税は、法人事業税と同じように行政サービスを利用する費用を負担する地方税です。ほかの税金との違いは、法人税割を均等割で構成されている点です。

法人税割は、法人税を基準に決められますが、均等割は資本金や従業員数に応じて決定します。赤字の場合でも、均等割の支払いを求められる点に注意が必要です。

事業所税

事業所税は、一定規模以上の事務所や事業所に対して課される税金です。
事業所税は特定の市区町村にだけ課される税金なので、事務所を置く地域でどうなっているのかを事前に確認してみてください。

設立と廃業に手間がかかる

会社は、設立にも廃業にも費用がかかります。
個人事業主であれば、大きな費用はかかりにくく、失敗しても損失は少ないことが多いかもしれません。
しかし、法人を設立すれば、登録免許税といった費用のほか、各種の税金も発生します。
さらに、廃業する時にも設立登記した法人格を抹消するための登記費用が必要です。

設立や廃業の手続きと関連する書類の準備には、手間や時間もかかります。
個人事業主と比較して、会社の設立から維持・廃業まで手続き面での負担は大きくなります

社会保険は強制加入になる

投資会社を設立すると、社会保険は強制加入です。
会社負担分を経費できるメリットはあるものの、利益が出ていない時にも社会保険の費用がかかり続けることはデメリットといえます。

社会保険の加入に関しては、社会保険事務所での手続きが必要になるほか、給与計算や保険料計算の手間もかかります。

決算申告が必要

投資会社になると決算や税務の手続きが煩雑になります。
個人事業主であれば、個人の確定申告を税務署に提出すれば完了していました。
一方で、法人になると貸借対照表や損益計算書といった決算書類を作成して提出しなければいけません。

税金によって税務署や都道府県の税事務所のように提出先も異なります。
自分ひとりで手続きするのが困難であれば、税理士などの専門家に依頼することも検討してください。

投資会社を設立するための手順


起業して会社を設立するには、様々な手順がかかります。ここでは、一般的な株式会社を設立する手順を紹介します。

①会社の基本情報を定める

会社を設立するには、会社の基本的な事項を決めて、定款を定めます
具体的には、本店所在地・出資金・事業の目的・発起人などの事項が必要です。

事業目的は投資の事業を目的にしていることがわかるように記載しますが、「株式、為替の投資運用」といった文言です。
また、事業目的に「前各号に付帯する一切の事業」と記載することで、関係する業務も行えるようになります。

②定款の認証を受ける

定款を作成した後には、公証役場で定款の認証手続きを受けます。
定款の認証は、合同会社や合名会社では必要ありません。

定款に基づく認証手数料は、設立する会社の資本金によって異なります。
また、謄本手数料や印紙代もかかるので、あらかじめ必要となる金額を調べておくようおすすめします。
定款の認証を終えたら、出資金を支払う流れです。

③書類を提出する

法人設立の登記申請には、定款のほか、印鑑証明書や本人確認書類などの書類を用意します。
書類を用意してから、会社の本店所在地を管轄している法務局の支局か出張所で登記申請を行ってください。

書類に不備がなければ、2週間程度で登記申請が完了します。
会社の登記簿謄本を取得できるようになるので、税務署や都道府県役場で「法人設立届出書」を提出しましょう。

まとめ

個人投資家は、副業として事業をするだけでなく、個人事業主として事業を行うことも可能です。所得が安定した段階では、法人化も視野に入れてみてください。

投資会社を設立するにあたり、定款の作成や認証手続きなど、様々な手続きがあります。
設立後も決算書の作成など、個人で行うのが難しい場合は、税理士などの専門家に頼ることも有効な手段です。

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(編集:創業手帳編集部)

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