法人が登記簿謄本を取得する方法とは?法人登記との違いや必要な場面も解説
法人の登記簿謄本は融資の申し込みや許認可の手続きなどで必要!
事業運営のために融資を申し込みたい、許認可の手続き申請が必要といった場面で、法人の登記簿謄本を求められることがあります。
登記簿謄本というと不動産に関連する書類をイメージされるかもしれませんが、法人にも登記簿謄本が存在します。
法人の登記簿謄本とは、どのような内容が書かれており、また取得するにはどのような手続きをとれば良いのでしょうか。
今回は、法人の登記簿謄本に関する基本情報から必要となる場面、取得する方法について解説します。
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この記事の目次
法人の「登記簿謄本」とは?似たような用語との違いを解説
そもそも法人の登記簿謄本とは一体どのような書類を指すのでしょうか。似ている用語との違いについても解説します。
法人の登記簿謄本とは
法人の登記簿謄本は、会社にまつわる重要事項を記した書類を指します。
法務局で登記申請を行わないと会社を設立できないことから、どの会社にも登記簿謄本が存在しています。
登記簿謄本は法務局から誰でも取得可能であり、自社はもちろん他社の登記簿謄本を取得することも可能です。
登記簿謄本に記載されているのは、以下の項目になります。
-
- 商号
- 会社所在地
- 設立年月日(申請日)
- 目的
- 資本金
- 役員事項
- 支店
設立年月日は主に登記申請を行った日が記載されています。また、目的は法人が取り組む業務内容に該当する項目です。
役員事項であれば取締役や監査役などの氏名が記載されており、法人の代表者に関しては氏名だけでなく住所も記載されています。
法人登記との違い
株式会社や合同会社、合名会社、合資会社などは法律上「商業登記」に分類されます。一方、法人登記は一般社団法人やNPO法人、一般財団法人など会社以外の法人が対象です。
しかし、法人の登記簿謄本は商業登記と同様の意味合いで使われることが多くみられます。
また、会社を設立する際に登記を行うことから「会社登記」と呼ばれる場合もあります。意味は商業登記と変わりません。
こうした背景から、定義は一応異なっているものの同じ意味で使用していてもあまり問題ではないということがい言えます。
登記事項証明書との違い
言葉は違っているものの、基本的には登記簿謄本と登記事項証明書は同じ書類を指しています。
これまで登記簿は紙媒体で保管されており、登記簿謄本が必要な時は法務局へ赴く必要がありました。
しかし、現代では登記簿の情報がデータ化され、インターネットからも取得可能になったことで、登記簿のデータを登記事項証明書と呼ぶようになったのです。
デジタル管理されているものでも登記簿謄本と呼ばれることはありますが、一般的にはデータ化された情報から取得する書類が登記事項証明書になります。
履歴事項証明書との違い
法人の登記簿謄本には主に3つの書類が存在します。その中のひとつが「履歴事項証明書」です。つまり、登記簿謄本という大きな枠組みに履歴事項証明書が含まれています。
履歴事項証明書とは、3年前の元日から現在までの履歴が記載されている書類です。現在効力を持つ登記事項のほかに、抹消された登記事項も掲載されています。
履歴事項証明書も一部証明書と全部証明書に分類されます。
なお、履歴事項証明書以外には「現在事項証明書」と「閉鎖事項証明書」があります。
現在事項証明書は今の登記事項が掲載されており、閉鎖事項証明書は過去に閉鎖されてしまった登記事項が掲載されている書類です。
いずれも履歴事項証明書と同様に一部証明書と全部証明書の2種類に分類されます。
法人の登記簿謄本はどのような時に必要?
法人の登記簿謄本は様々なシーンで必要となります。具体的に必要な場面についてご紹介します。
1.融資の申し込みや補助金・助成金を申請する場合
銀行から融資を受けたい場合に申し込む必要がありますが、この時の提出書類に法人の登記簿謄本が含まれます。
法人として信頼できるかどうかを登記簿謄本の存在によって見極めます。
また、補助金や助成金を申請する際にも必要なケースが多いです。ただし、一部提出が不要になった制度もあります。
例えば、厚生労働省の雇用関係助成金は、以前まで登記簿謄本の提出を求めていました。法務省の登記情報連携システムで登記情報を確認できるようになったことから、2022年8月1日より申請時の登記簿謄本提出が不要になっています。
2.許認可の申請手続きを行う場合
業態によっては事業を運営するために許認可を受ける必要があります。許認可の申請手続きに、法人の登記簿謄本を提出しなくてはなりません。
例えば、飲食店であれば保健所からの営業許可が必要で、警備業を運営するには警察署から認定申請を受ける際にも提出します。
また、古物商許可を取得する際には履歴事項全部証明書の提出が必要です。
3.法人名義で銀行口座を開設したい場合
事業を運営する際には法人名義の銀行口座があると便利です。
法人名義のほうが社会的信用を得やすくなりますし、個人の資産に混ざってしまうのではないかと不安視されることもありません。
法人名義の銀行口座を開設する際に定款や代表者の印鑑証明書、会社の実印、銀行印などが必要であり、その中に法人の登記簿謄本も含まれます。
なお、必要書類に登記簿謄本が含まれていることから、会社設立の前に法人名義の銀行口座は作れないので注意してください。
4.登記事項を変更したい場合
登記簿謄本は会社設立時の情報が記載されているものですが、事業運営の中で以前と変化した項目が出てくることもあります。
例えば、会社名の変更や事業目的の変更、所在地の移転、役員の変更などです。そのような時は変更登記の手続きを行う必要があります。
特に役員の変更によって変更登記の手続きが必要となるケースが多いです。株式会社の場合、役員は最大10年までの任期とされているため、変更登記を行う機会が訪れます。
面倒だからといって変更登記を行わずにいると、代表者に100万円以下の過料が科される場合もあるため注意が必要です。
5.取引先の企業について調べたい場合
上記でも簡単にご紹介しましたが、法人の登記簿謄本は自社以外に誰でも取得することが可能です。つまり、取引先の企業について調べたい時にも登記簿謄本が使えます。
企業情報に関してはインターネットから検索することも可能ですが、それがすべて真実とはいえません。
不特定多数が書き込めるからこそ、本当の情報と嘘を見極めることが難しくなっています。
しかし、登記簿謄本は基本的に嘘の情報を記載すると、公正証書原本不実記載罪に該当する場合もあり罪に問われてしまいます。
こうした理由から、取引先の信用できる情報を得るために登記簿謄本が用いられているのです。
6.賃貸契約で審査を受ける場合
法人がテナントや事務所、駐車場、社宅などを借りる際に審査を受けることになり、この時の提出書類に、法人の登記簿謄本が含まれています。
法人の賃貸契約は個人に比べて社会的信用度の高さから審査も通りやすいといわれています。
ただし、会社の規模を重視する傾向にあるため、小規模の法人だと審査に通らない可能性も考えられるでしょう。
特に、資本金が5,000万円以下、従業員が100人以下の企業だと法人で賃貸契約を行うため、保証会社の利用が必須となるケースもあります。
7.税理士に決算申告を依頼した場合
法人は毎年度決算と税務申告を行っています。しかし、事業運営が忙しくなかなか手がつけられない場合もあります。
そのような時は税理士へ依頼すると決算や税務申告を代行してもらうことが可能です。
税理士に決算申告を依頼する際には法人の登記簿謄本を含め、決算・税務申告に必要な書類を準備しなくてはなりません。
登記簿謄本に関しては全部事項証明書または履歴事項証明書が必要になります。
書類が不足すると適正な決算・税務申告が行えなくなってしまうため、依頼する税理士にどのような書類が必要か、あらかじめ確認しておくと安心です。
法人の登記簿謄本を取得する流れ
法人の登記簿謄本は手数料を納付すれば誰でも取得できます。取得方法は主に窓口・郵送・オンラインの3つから選べます。
ここでは、それぞれの方法で取得する流れを解説していきましょう。
窓口で取得する方法
法人の登記簿謄本は法務局の窓口で申請し、取得することが可能です。法務局といっても最寄りに限らず、どの法務局でも申請できるようになっています。
取得するためには、まず交付申請書を記入し窓口へ提出します。
交付申請書は法務局内に設置されていますが、法務局のホームページからもダウンロードでき、事前に準備することも可能です。
申請書を提出する際は手数料600円も必要です。
なお、法務局によっては証明書発行請求機が設置されている場合もあります。
請求機があると、画面の案内に従って請求したい書類に関する情報を入力すれば整理番号票が受け取れます。
その後、必要な手数料学相当の収入印紙または登記印紙を購入しておき、名前が呼ばれたら法人の登記簿謄本を受け取れる仕様です。
待ち時間を短縮でき、申請書を書かなくても良いので、設置されている場合はぜひ活用してみてください。
郵送で取得する方法
郵送で書類を受け取りたい場合には、法務局のホームページから交付申請書をダウンロードし、記入して送付することで法人の登記簿謄本を取得できます。
交付申請書を送付する際は手数料分の収入印紙と、返信先が書かれていて送料分の切手も貼られた返信用封筒を同封してください。
郵送の場合も手数料は1通600円になります。返信用封筒の切手は1通だけであれば84円、2通必要な場合は94円の切手を用意してください。
登記簿謄本が法務局から返信されるまで数日間かかってしまいます。すぐに必要な場合には適していないので注意してください。
オンラインで取得する方法
オンラインからの交付請求は10分程度で簡単に申請でき、窓口や郵送を選ぶより手数料が安くなります。ここからはオンラインで取得する流れを解説します。
まずは申請者情報を登録
法務局が運営する「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、「申請者情報登録」をクリックします。
利用規約に同意したら申請者情報を入力していきます。入力項目は以下のとおりです。
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- 申請者ID
- パスワード(半角英数字および記号の組み合わせで8文字以上20文字以下)
- メールの受信内容選択
- 質問・答え(キーワード)
質問と答えはパスワードを忘れてしまった場合の認証に必要な項目です。すべてを入力したら「確認(次へ)」をクリックしてください。
請求書情報の入力・送信
申請者情報を登録したらログインを行い、「証明書請求メニュー」から「登記事項証明書(商業・法人)」を選択します。
次に、会社の選択方法を選びますが、「オンライン 会社・法人検索を使う」を利用すると取得したい会社法人等番号を入力することで簡単に検索可能です。
法人番号は国税庁が運営する「法人番号公表サイト」からも検索できます。
登記簿謄本を取得したい会社を選んだら、次は証明書の種類と数を入力し、さらに証明書の受け取り方法や郵送種別などを選択します。
あとは、手数料納付の画面で氏名と法人名を全角カナで入力し、「送信実行」をクリックしてください。
指定の法務局窓口や郵送で交付
「処理状況を確認する」ボタンを押すと、請求手続きをしている書類の一覧が出てきます。その中から該当する請求の「納付」をクリックしてください。
請求内容を確認して「電子納付」をクリックすると、e-Govのサイトに移行します。
インターネットバンキングを活用して電子納付の手続きが可能ですが、Pay-easy対応のATMからでも納付できます。
あとは指定した法務局窓口や郵送で交付すれば完了です。
法人の登記簿謄本取得にかかる手数料はいくら?
法人の登記簿謄本を取得するには手数料がかかります。
窓口・郵送での書面請求は基本的に600円となりますが、オンラインからの請求・郵送だと500円、オンラインからの請求・窓口での受け取りを選ぶと480円です。
電子納付で利用できる金融機関については、e-Gov電子納付の金融機関一覧から確認してください。
電子納付は確認が完了するまでに時間がかかってしまう場合もあります。
完了にならないからと再度納付手続きをしてしまうと、二重に納付されてしまうこともあるので注意してください。
まとめ
登記簿謄本は法務局から誰でも取得できる書類であり、手数料さえ支払えば自社だけでなく他社のものも取得できます。
今回ご紹介した必要な場面に応じて、法人の登記簿謄本を申請してください。
(編集:創業手帳編集部)
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