新型コロナで宿泊業は大幅減収!今できることやるべきことをホテル旅館業務の達人が解説

創業手帳

雇用調整助成金の活用と経費削減でピンチを乗り切る方法を伝授

(2020/04/22更新)

今、新型コロナウイルスで宿泊業は大きな影響を受けており、先行きの不安を感じているのではないでしょうか。
非常事態宣言も発令され、宿泊施設の営業自粛や休館を迫られる中、人件費・雇用の確保の為に奔走されていることと思います。

「宿泊業において、今やるべきことやできることはなにか」について、助成金の活用方法などを含む具体的対策を旅館業務の達人に聞いてみました。

取材にご協力いただいた旅館業務の達人
ホテル旅館勤務一筋25年。フロント、予約、会計、ブライダル、レストラン、客室、などホテルの各セクションを経験し、リアルエージェント契約、オンライントラベルエージェントの在庫管理、プラン料金調整などを統括している。現場業務から30以上の予約サイトやツールでの集客、コンサルまで幅広い経験がある。

創業手帳 冊子版では、会社の立ち上げからやることがステップごとにまとめられています。利用は無料ですので参考にぜひご覧ください。

達人が目の当たりにした宿泊施設におけるコロナウィルスの影響

2月中旬より中国からの宿泊予約キャンセルの連絡が増え始め、3月上旬には3月のインバウンド予約がほぼ全てキャンセルとなりました。
新規予約よりキャンセルの方が圧倒的に多くなり、お客様の人数よりも従業員の人数が2倍~4倍多い日が目立つようになりました。
4月の桜シーズンには毎年多くの外国人のお客様が来館され、当館でも50%以上がインバウンド予約でしたが、それら全てがキャンセルになると同時に日本人のお客様のキャンセルも急激に増加しました。そのため、4月上旬にはゴールデンウイーク明けまで全館休館にする事となりました。

宿泊業者が今できること!営業するより休館、販売促進策より籠城作戦

ラクジュアリーホテル、高級旅館などのサービスに携わる人材を多く抱える宿泊施設ほど、ホテルを営業する為に必要な経費は大きくなります。
損益分岐点を大きく下回った客室稼働で営業を続けると、必然的に経営は行き詰ります。必要最低限の売上を担保出来ない事が予測される場合は、休館にして必要経費を抑える事が重要です。平時であれば少数のお客様でも営業しないといけませんが、緊急事態宣言の発令を受け、多くの宿泊施設では休館を余儀なくされているのが現状です。

従業員の雇用を守り人件費を効果的に圧縮する方法


休館にしたとしても、従業員の給料が無くなる訳ではありません。人件費における経費圧縮対策として、雇用調整助成金の活用が挙げられます。
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部が助成されるものとあります。
経済上の理由とは、今まさに起きているコロナウィルスの影響が該当します。
さらに、コロナウィルスが経済に及ぼす悪影響は甚大であるとして、特例措置が大幅に拡張されています。

雇用調整助成金と特例措置の条件や内容を確認して申請しよう

雇用調整助成金の基本内容
①雇用調整助成金は融資ではないため返済は不要
②ひとりあたり日額上限8,330円
③申請の窓口は労働局またはハローワーク

特例措置(緊急対応期間)
①緊急対応期間は4月1日~6月30日まで
②生産指標要件緩和→1ヵ月で5%以上の売上ダウン
③雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める
④助成率は、中小企業が五分の四、大企業は四分の三
⑤計画届の事後提出を認める(1月24日~6月30日まで)
⑥1年のクーリング期間の撤廃
⑦6ヵ月以上の被保険者期間が必要とされていたが撤廃
⑧支給限度日数は1年間で100日、3年間で150日にプラス4月1日~6月30日までの期間の休業日数

※上記は2020年4月15日現在のものです。
 緊急対応期間の延長、特例措置の変更があるかもしれませんのでご注意下さい。

社員には休養(休業)を与えつつガバナンス(社内統制)の強化を

休業日数が増えて在宅する時間が増えると、ストレスから様々な問題が浮上してきます。今一度、社内規定、入寮規則などを確認し管理体制・内部統制の強化もこの機会に行ってみてはいかがでしょう。

販売管理費を可視化して経費削減するためには

ビフォーコロナでは、各宿泊予約サイトで様々な特集に参画して広告を行いながら集客をしていたと思います。しかし、アフターコロナではそれらの経費をしっかり可視化して、無駄のない運営・集客方法へのシフトが重要となります。

各OTA(※)から送られてくる月次の請求書、各OTA管理画面での売上金額と請求額の確認を毎月エクセルなどにまとめて一覧表として管理しましょう。そうすることで各サイト毎に発生している手数料や販売促進費が可視化できます。
売上げが低迷している現状において、販売管理費や広告費、販売促進費といった経費をいかにして抑えていくかで、今後の明暗が分かれるといっても過言ではありません。

特に有料広告の購入などは、ビフォーコロナの時期に購入して対象が休業中の期間の広告は無駄打ちとなりますので、各OTA営業担当者に広告購入のキャンセル要請を行って下さい。

(※)OTA:オンライントラベルエージェントの略。オンラインによる宿泊予約サイト運営会社

今後のホテル・旅館業界における変化について

新型コロナウィルスによるパンデミックで、宿泊業界も大きな転換期を迎えようとしています。観光立国を掲げてインバウンド集客に注力してきましたが、基本戦略の見直しを迫られることになりそうです。

宿泊施設の形態と需要を5つに分類すると以下のとおりです、
形態:①リゾートホテル、②シティホテル、③ビジネスホテル、④旅館、⑤民泊・簡易宿所
需要:A.国内旅行、B.インバウンド、C.出張、D.団体旅行・MICE、E.カップル

アフターコロナでは、B.インバウンド、C.出張、D.団体旅行・MICEの需要は大きく低迷し、回復にはかなり長い時間を必要とするだろうと思います。

コロナウィルスの大流行により、しばらくの間、海外旅行は世界的に自粛ムードとなるでしょう。
また、今回の騒動を機にテレワークやWEB会議などの利用増加や企業の出張経費削減にともない、ビジネスホテルの需要は激減する事が考えられます。

不要不急の自粛要請が解除された暁には、A.国内旅行とE.カップル旅行の需要は高まり①リゾートホテル、④旅館、⑤民泊・簡易宿所は回復の兆しが見られるのではないかと思います。

「需要の回復が見込めそうな宿泊形態では収益の最大化」
「需要回復が厳しい宿泊形態は運営方針、営業形態の変化」

それぞれ大きな意思決定をしなければならないタイミングが差し迫っているのかもしれません。
新型コロナウィルスの収束と5G時代の幕開けにより、宿泊業界にも再び活気が訪れる日が来ることを願っております。

創業手帳 冊子版では、宿泊業はもちろん、さまざまな業種の創業期を支援する情報が満載です。お困りごとの解決にぜひお役立てください。

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