新型コロナの影響でやむなく休業…宿泊予約のキャンセル対応は?ホテル旅館業務の達人が解説

理由や状況を踏まえた宿泊予約キャンセル連絡の仕方と顧客を逃さない方法

(2020/05/10更新)

今、新型コロナウイルスよる緊急事態宣言で休業を余儀なくされる宿泊施設が増えており、宿泊施設の現場では既にご予約済みのお客様への電話対応に追われています。
緊急事態宣言が発令されたとはいえ、日本の法律では営業自粛要請までしかできませんので休業をするかしないかの判断は各宿泊施設に委ねられています。
宿泊予約のキャンセルについて、現場が抱える問題点やそれらの解決策を旅館業務の達人に聞いてみました。

取材にご協力いただいた旅館業務の達人
ホテル旅館勤務一筋25年。フロント、予約、会計、ブライダル、レストラン、客室、などホテルの各セクションを経験し、リアルエージェント契約、オンライントラベルエージェントの在庫管理、プラン料金調整などを統括している。現場業務から30以上の予約サイトやツールでの集客、コンサルまで幅広い経験がある。

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宿泊施設側から宿泊予約のキャンセルは可能?不可能?

新型コロナウィルスの世界的大流行で、中国をはじめとする世界各国からの宿泊予約の多くは、お客様からキャンセル申請により取消となりました。
日本国内からの宿泊予約も同様、緊急事態宣言発令後は不要不急の外出を避けるようにとの要請により、お客様から自主的に宿泊予約のキャンセルの連絡をいただいております。

全ての予約がキャンセルとなり難なく休業出来る場合と、キャンセルの申し出のないお客様に宿泊施設側からご予定をお伺いして、宿泊予約キャンセルのお願いをしないと宿泊施設を休館にできない場合があります。
お客様の中には、宿泊予約をキャンセルしたくないと仰る方や、宿泊施設側の都合を客に押し付けるなとお怒りになる方などもいらっしゃいます。
旅館業法では、宿泊施設はお客様の同意なしに宿泊予約をキャンセルにする事、宿泊を拒む事は基本的にはできません。

しかし、コロナ影響下にある現状においては、「全国で緊急事態宣言が発令されている状況下であること」、「感染拡大防止とお客様の安全を第一に考えての事であること」を伝え、ご理解いただくよう丁寧にお願いする事で理解して頂いております。

宿泊施設に求められる責任と旅館業法第5条の解釈について

宿泊施設の存在意義を大別すると2つの責任に分けられると思います。

一つは、社会的責任です。
旅館業法第5条に記載のある項目に該当しない場合は、どんなお客様であっても受け入れなければならない社会的責任。
例えば、泊まる場所がなくて困っている人が、宿泊料金を支払うことができるのであれば、宿泊施設はそのお客様を拒んではならない。

もう一つは、経済的責任です。
観光、ビジネスなど様々な場において、宿泊施設なしに経済発展は望めません。
宿泊施設は都市や観光地になくてはならない存在です。宿泊施設があるからそこに人が滞在し、食や物の需要が生まれ、多種多様なサービスの供給が広がり、大きな経済効果が生まれます。

コロナ禍以前は、この社会的責任と経済的責任の側面が両立していましたが、新型コロナウイルスの世界的大流行により、完全に相反するものとなってしまいました。このことが宿泊予約のキャンセルを巡る問題の根底にあるのではないかと思います。

旅館業法第5条(*)の存在と認識や解釈の違いが生じている事を理解した上での、適切なキャンセル対応が求められるのではないでしょうか。

(*)旅館業法(昭和23年法律第138号)
第5条 営業者は左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一、宿泊しようとする者が伝染病の疾病にかかっていると明らかに認められるとき。
二、宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三、宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める理由があるとき。

コロナで変わった宿泊施設に対する価値観

宿泊施設の社会的責任においては、「宿泊施設はコロナに感染してしまった軽症者を引き受けるべきだ」という考えに変わり、「海外からの帰国した人、大都市圏からの移動してきた人も宿泊施設が受け入れるのが当然」との認識に変わりはじめ、政府も自治体もそれに同調してしまっているように感じます。

一方で、経済的責任については営業を続ける宿泊施設に対して、「他地域からコロナウイルスを引きつける可能性があるから危険だ」「休業せず営業を続けるのは地域の経済を破綻させる行為」と言われたり、今までとは全く逆の見方や価値観が出現するに至っています。

コロナと最前線で戦う医療従事者の方々、全国で緊急事態宣言が発令される前から長期出張に出ていた人たちや、DV被害者、ネットカフェ難民など自宅に帰りたくとも帰れない人たちなど、様々な事情を抱えた人たちを受け入れるために営業を続ける宿泊施設もあります。

また、休業を選ぶ事で医療崩壊が起きた場合の最後の砦として最悪の事態に備える宿泊施設もあり、宿泊施設の存在意義や役割がコロナ禍によりさらに多様化して行くのではないかと思います。

そのような背景を認識し、宿泊施設としてとるべき方針を決めておくことは、お客様に宿泊予約キャンセルのお願いをする上でも重要な事の一つではないでしょうか。

宿泊予約キャンセルの種類と対応について

新型コロナウイルスの影響により休業せざるを得ない状況下、予約担当者以外の他部署のスタッフがキャンセル対応の業務を担う機会が増えてくると思います。
キャンセル対応の人的リソースの幅を広げるために、キャンセルの種類やケースを情報共有しておくと良いでしょう。

キャンセルには、以下の通り数多くのケースがあります。

無連絡で当日を迎えるnoshow(*)キャンセル

   →一番避けたいキャンセルパターンです。
    キャンセル料金を請求しても回収できない場合が多いです。
    宿泊施設側からの連絡に応じない場合はnoshowとなる可能性が大。
  (*)noshow:予約しながら最後まで現われない人

旅行代理店・OTA(*)からの連絡によるキャンセル

   →キャンセル料が発生する期間でもコロナ禍であれば免除される場合が多い。
  (*)OTA:Online Travel Agentの略。インターネット上で取引を行う予約サイトなどを運営する旅行会社。

お客様からの連絡によるキャンセル

  • 直接の電話予約でキャンセル料金の発生しないケース
  • 直接の電話予約でキャンセル料金が発生するケース(現地決済予約)
  •     →キャンセル料の請求書を郵送する為、請求先の確認が必要です。

  • リアルエージェント経由で予約されていて事前精算されているケース
  •     →宿泊クーポンなどの返金手続きは宿泊施設ではできない為、
         お客様より旅行代理店に連絡していただく必要があります。
         

  • リアルエージェント経由で予約されていて事前精算されていないケース
  •   →宿泊施設より旅行代理店に連絡する事でキャンセルが可能です。
      

  • OTA経由で予約されていて事前クレジットカード決済されているケース
  •     →宿泊施設よりOTA管理画面でキャンセル処理が可能です。
         キャンセル料金が発生するタイミングでも宿泊施設側の操作で免除可能。

  • OTA経由で予約されていて事前クレジットカード決済されていないケース
  •     →宿泊施設よりOTA管理画面でキャンセル処理が可能です。

※上記は一例です、この他にもポイント利用のある予約キャンセルのケースなど、宿泊施設ごとに対応が異なると場合もあるかと思います。

宿泊施設側からお客様に連絡をとり、日付変更などをお願いするキャンセル

  • オーバーブッキングの発生などにより日付変更をお願いするケース
  •  →あってはならない事ですが、システムエラー、人為的ミスなどにより生じた場合は、
      丁重にお詫びをしてキャンセル対応をさせて頂きます。
       

  • コロナ禍において休業するケース
  •  →お客様への電話連絡で、休業の意思決定に至った趣旨説明を丁寧に行います。
      また、公式HPなど公の場でも休業期間など詳しい説明を行うことが望ましいでしょう。

キャンセルをお願いしたお客様に再びご予約して頂くために

宿泊施設では、ご予約時かチェックイン時にお客様にご住所とご連絡先をお尋ねするお宿帳をご記入頂いています。インターネット経由の場合はご予約時に、直接の電話予約や旅行業者経由のご予約の場合は宿泊日当日にお宿帳をご記帳頂くことがほとんどです。

新型コロナウイルスの影響でキャンセルのご連絡を頂いた場合は、事態が収束した際に再びご予約をして頂けるように、宿泊施設側からの配慮があると良いでしょう。
そのためには、住所や連絡先などキャンセルされたお客様の情報を一覧表に記載しておき、宿泊予約を頂いた痕跡を宿泊施設内で情報共有しておく事が大切だと思います。その共有した情報をもとに、次回のご宿泊でご利用可能な館内利用券や割引クーポンなどを郵送でお送りさせていただいたり、専用の特典をご用意したりといった独自のサービス展開につなげます。

コロナの影響で宿泊施設に求められる価値観が多様化しても、変わることのない日本独自のおもてなしの心。その心をもってキャンセルのお願いをし、アフターフォローすることが大切です。

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