人手不足な業界8選!人手が足りない原因や採用ポイントをご紹介
人手不足な業界の種類とその原因を把握しよう
十分な人材を確保できている企業は、事業の拡大や業績アップを実現しやすく、企業の成長が見込めます。
しかし、労働力の減少が見込まれる現代は、人材の確保に悩んでいる企業が多いです。
また、人手不足の問題は業界でも格差があります。具体的にどのような業界で深刻な人手不足が起きているのでしょう。
今回は特に人手不足が課題となっている業界をご紹介します。人手が足りていない原因や採用のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
人手不足な業界8選
人手不足は各業界で課題になっていますが、その中でも不足している業界がいくつもあります。人手不足な業界を8つピックアップしたのでご紹介します。
建設業界
国土交通省のデータによると、建築業での就労者数は2020年時点で492万人です。就業者数がピークであった1997年と比較すると、28%程減少しています。
就業者の年齢割合は55歳以上が34%程度なのに対して、29歳以下の若手は11%程です。
10年後には高齢の就業者が大勢引退することになり、若手の確保や育成がうまくいかないと建築業界はますます人手不足に陥ってしまうかもしれません。
建設業界において、労働力の需要はどんどん上がっています。その理由のひとつは、高度成長期以降に建設したインフラが一気に老朽化することが予想されているからです。
老朽化する施設が加速的に増えるとされているため、それに対応するための技術労働者の需要が高まっています。
しかし、建設業は長時間労働や休日が取りにくいなどの問題から、労働者のなり手が少なくなっている現状です。
医療・福祉業界
少子高齢化が進んでいる日本では、医療・福祉業界は非常に需要が高まっている業界です。
介護業界の場合、賃金水準が低い、雇用管理が不十分、重労働といった理由から人手不足に悩む施設は多いようです。
厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によれば、介護職員は2025年に約22万人、2040年には約65万人も不足すると予想されています。
人材の供給が予想どおりになれば、十分な人員の配置基準を満たさず行政処分の対象となる施設が増えたり、職員ひとりあたりの仕事量が増えて負担が大きくなったりする問題が懸念されます。
医療業界では、2024年4月から医師を対象に時間外労働時間に上限が設けられました。
医師の過度な労働を防げる反面、勤務可能時間の短縮によって医師が不足し、緊急時の医療体制が脆弱になるリスクがあります。
運輸・郵便業界
インターネットからの通信販売が普及したことから、宅配便の取り扱いが増加しています。それにともない、貨物を輸送する運輸・郵便業界の需要は高いです。
しかし、運輸・郵便業界ではドライバー不足が大きな課題となっています。トラック運送の場合、ドライバーの数は1995年をピークに減少している状況です。
ドライバーの高齢化も進んでいることから、今後ますます人手不足は加速すると考えられます。
人手不足の主な要因は、賃金水準の低さや女性進出の遅れ、需要増加による長時間労働の懸念などです。
また、自動車運転業務にも2024年4月から時間外労働時間の上限規制が適用されており、それによって人手不足や収入の減少、物流の停滞などのリスクが懸念されています。
メンテナンス・警備・検査業界
株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」によると、正社員の人手不足割合が高い上位10業種のうち、メンテナンス・警備・検査業界は第4位でした。
例えばビルメンテナンス業界の場合、「現場従業員を確保できない」という悩みを抱えている企業は多くみられます。
特に大規模な事務所ほど従業員の確保が難航しているようです。
この業界で人手不足に陥っている原因は、労働条件が悪い傾向にあるからです。
24時間稼働する現場や夜勤・早朝勤務、長時間にわたる野外勤務が求められる現場が多くみられます。
また、短時間シフトを導入している企業が少ないという特徴もあります。
拘束時間が長いゆえにプライベート時間を大切にすることが難しく、若者を中心に敬遠されやすいのです。
旅館・ホテル業界
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によれば、旅館・ホテルを営む企業の8割近くが人手不足に悩んでいます。
旅館やホテルはシフト制での勤務になっていますが、24時間体制で営業しているため従業員の負担が大きい業界です。
また、業務内容が多様な上に、接客業が中心となるのでストレスも大きく、離職率は高い傾向にあります。
コロナ禍で事業継続や規模縮小を理由に、人員削減を行った企業も少なくありません。
コロナ禍が収束し、観光地で国内旅行者や海外旅行者が増えているものの、人材の供給が追い付かないことが旅館・ホテル業界の悩みとなっています。
情報サービス業界
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」では、正社員の人手不足割合が高い上位10業種のうち、第1位は情報サービス業です。
DXの推進によって、特にシステム関連の需要が伸びています。しかし、DXを担う人材や最先端技術を熟知している人材が不足しています。
経済産業省の統計データから推計された「IT人材の供給動向の予測」によると、2030年には最高80万人程のIT人材が不足することが懸念されています。
情報サービスは比較的新しい業界であるため、他業界と比べて人材は少ない傾向です。
しかし、各企業でIT人材が不足している理由は、単純に数の少なさだけではありません。
IT技術の進化に合わせて企業は新しい技術に対応していく必要があり、採用において自社のニーズに適したレベルのIT人材が求められます。
しかし、自社が求めるレベルのIT人材が見つからず採用できないために、人手不足に陥りやすくなっています。
サービス・飲食業界
サービス・飲食業界は慢性的な人手不足に陥っている業界です。ほかの業界と比べて非正規雇用率や短期離職率が高い傾向にあります。
サービス業界の場合、スーパーやコンビニでは従業員ひとりあたりの仕事量が多く、それに見合わない賃金水準の低さが離職の要因となりやすいです。
飲食業も賃金が安い上に、長時間労働になりやすい傾向があります。
それに加えて競争が激しい業界であるため、開業地で定着できないお店も珍しくなく、安定して従業員を雇用できない実態もあります。
金融業界
厚生労働省の「労働経済動向調査」によると、2023年8月1日時点の正社員等労働者過不足判断DI値が最も低い業種は金融・保険業でした。
しかし、同年5月時点と比べて不足と回答した事業所が5ポイント増えて22ポイントとなっています。
このことから、労働者過不足判断DI値が低い金融業界でも人材不足と感じている企業は少なくありません。金融業界で特に不足しているのが、金融DXに対応できる人材です。
金融業界でもデータの活用や業務運営の効率化、革新的なサービス・ビジネスモデルの創出などに向けてデジタル化が進められています。
しかし、デジタル化に対応できるIT人材の不足からDX推進が進まない企業もあります。
人手不足な業界が陥っている問題や主な原因
人手不足の原因は業界や企業によって異なりますが、共通する問題は多くあります。ここで、人手不足な業界が陥っている問題や主な原因を紹介します。
少子高齢化の影響
人手不足な業界が増えている大きな原因は、少子高齢化の影響です。生産年齢人口に当てはまる15~64歳の人口は減少傾向にあります。
内閣府によれば、2020年時点の生産年齢人口は7406万人です。しかし、2065年頃には4,529万人になると予想されています。
生産年齢人口は、国内の生産活動の中核となる年齢層の人口を指します。
つまり、主力となる労働者の人口が減っているので、各企業で十分に人材を雇用できない状態になる可能性が高いです。
今後、ますます労働力が不足する可能性があり、早急に人手不足に対応していくことが求められています。
若者の仕事・働き方に対する価値観の変化
将来を担う働き手である若者の仕事や働き方に対する価値観の変化も、人材不足に影響する要素となっています。
現代の若者は働きやすさに加えて、自己成長やスキルアップできる環境かどうかも重視していることが多いです。
さらに、職場の人間環境とワークライフバランスを重視する若者も増えています。そのため、若者のニーズに合わない業界や企業は人手不足に陥りやすい現状です。
現在は転職を肯定的に捉える若者も多く、より良い労働環境・条件の企業や業界に移るリスクが高くなっています。
そのため、若者が働き続けたいと思う環境に整備することが求められるでしょう。
企業と求職者の間でのミスマッチ
企業と求職者の間でミスマッチが生じている問題もあります。
例えば、労働者が集まらず人手不足に陥る業界・職種がある一方、求人数が少なく希望する仕事に就けず悩む求職者もいます。
現状、労働市場では供給バランスが崩れ、業界・業種によって人材の偏りが生じているようです。
どんなに人手が欲しく求人を出しても、求職者が希望する仕事でない限り労働者を集めることが難しくなっています。
また、技術の進歩やグローバル化にともない、企業では高レベルな人材が求められるようになりました。
自社で求める人材レベルが高すぎるほど、求職者が持つスキル・経験との間に差が生じやすく、採用につながりにくい傾向にあります。
人材を採用できても期待通りの活躍が見られない、仕事内容や報酬・待遇、環境などが想定とは違っていたというミスマッチから早期離職や社員の定着率が下がるケースもあります。
情報の開示が不十分だと企業と求職者の間にミスマッチが生じやすいので注意が必要です。
人手不足な業界での採用ポイント
人手不足な業界で採用を成功させるためには、いくつかポイントがあります。そのポイントは以下のとおりです。
求める人材像を明確にする
どのような人材が欲しいのか人材像を明確にすることが大切です。
明確な人材像がないと、自社に必要なスキルを持つ人材を集めることができず、ミスマッチの原因となります。
強化したいことや不足しているスキルを洗い出し、求める人材像を決めてください。
特に創業期は経営の視点を持てる人材が求められます。
しかし、経営者と同じ考え・経験・スキルなどにこだわると、自分と求職者を比較してしまい、弱点や欠点ばかり目に付いて採用できなくなる可能性があるので注意してください。
また、会社の理念や事業に共感できること、会社の弱点をフォローできることも重要なポイントになってきます。
自社のブランディングをしっかり行う
知名度の高い企業ほど採用活動が有利な傾向にあります。そのため、自社の認知度を高める努力をしてください。
現在はインターネットから情報を集めることが当たり前となっているので、自社ホームページやSNSなどを活用してブランディングを行うケースが増えています。
自社ホームページやSNSは、少ないコストでPRができることもメリットです。
採用市場において自社のブランド力を高めていくためには、自社の理念や社風、労働環境、入社するメリットなどを積極的に発信することがポイントです。
企業に関する情報をしっかり開示することで、企業に対して魅力を感じた求職者が集まりやすく、ミスマッチのリスクも減るでしょう。
人事制度や働き方について検討する
業界によってはマイナスのイメージが強く、応募者が少ないケースも存在します。
そのような業界でも応募者を増やすためには、人事制度や働き方を見直し、他業界・他企業との差別化を図ることが大切です。
例えば、社内で人事評価の基準がわかりづらいという意見があれば、明確な基準を定めて提示する、よりシンプルな判断基準にするなどの改善が求められます。
ITツール・システムやアウトソーシングの活用によって業務効率化や長時間労働を減らす、リモートワークや短時間労働の導入など、働きやすい環境に整備できればワークライフバランスを重視する求職者に注目されやすくなるはずです。
また、労働力が不足している状況では、家庭と仕事を両立させたい女性や高齢者、障害者、外国人労働者も重要な労働力として期待されています。
多様な人材を受け入れられる体制を整えることによって、人手不足の解消につながるはずです。
経営状況に合わせて採用コストを検討する
採用活動では、求人媒体の登録・掲載費用や採用サイトの制作、採用・面接担当者の人件費など様々なコストが発生します。
採用コストの相場は、新卒が約90万円、中途採用では約100万円もするといわれています。
採用を成功させたいからとコストをかけ過ぎれば、資金繰りに影響が出るかもしれません。
資金繰りが悪化した状況で従業員を増やせば経営難となり、事業縮小や人員削減を検討する必要も出てくるでしょう。
採用後は、人材育成にかかるコストも考慮する必要があります。そのため、現状の経営状況を踏まえて、投資額を決めてください。
そして、自社のホームページで集客する、オンライン面接を導入するなど、採用コストを減らす工夫も必要です。
人脈・SNS・人材紹介会社を活用する
現在は、人脈を活かしたリファラル採用、SNSを使ったソーシャルリクルーティング、特定の業界・業種に特化した人材紹介会社の利用などの様々な採用手法があります。
リファラル採用の場合、自分や従業員など関係者の人脈を生かして採用を行うので、自社のニーズにマッチした優秀な人材を確保できる可能性が高いです。
また、SNSでは採用に関する情報を発信しつつ、ユーザーとの直接のコミュニケーションを通じて求職者に興味を持ってもらうことができます。
採用候補者の人柄やポテンシャルを把握でき、ミスマッチを防げることもメリットです。
特定の業界・業種に特化した人材紹介会社であれば、自社が求めるスキルを持つ人材が獲得しやすくなるでしょう。
求職者の希望条件も考慮してマッチングが行われるので、企業と求職者の間でミスマッチが起こりにくく、定着率の向上にもつながります。
このような多様な採用手法を活用しつつ、変更した人事制度・働き方などをうまくアピールできれば、効率良く求職者を集めることができます。
まとめ・人手不足な業界では採用戦略や対策が重要
労働人口の不足や劣悪な労働環境などの理由で人手不足に悩む業界は多くみられます。
人手不足な業界も社会にとっては重要な役割を持ち、ビジネスチャンスもあります。
そのような業界で成功していくためには、採用戦略や対策をしっかり考えて、人材を確保していくことが大切です。
特に知名度の低い創業期は人材確保に苦戦しやすいので、ご紹介したポイントを参考に採用活動に取り組んでみてください。
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(編集:創業手帳編集部)