知らずに飲食店を開業すると失敗する!飲食店開業資金はいくら必要?自己資金ゼロは本当か(前編)
飲食店開業時の初期投資に必要な自己資金の相場や内訳を解説!
(執筆:ITA大野税理士事務所 大野晃 飲食店開業融資専門税理士)
今回の連載では、飲食店を開業する前に、知らないと失敗する開業資金の考え方をご説明します。創業手帳や税理士などの専門家へ飲食店開業相談にいらっしゃる方の大半が開業資金に大して不安を口にされます。また、新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着いてきたものの、物価高の影響などもあり、飲食店の開業は資金調達のハードルが高くなっています。
過去に、開業資金の不安に対する解決策として日本政策金融公庫の開業融資を紹介し、申請に必要な「創業計画書」の書き方について説明をしましたので、融資による資金調達をお考えの方は以下のシリーズ連載をご参考にしてください。飲食店には一定の自己資金が必要です。そのための資金の算出方法や資金調達のための方法には、絶対に押さえておかないといけない鉄板の方法があります。
※新創業融資制度は、令和6年3月31日をもって終了しましたが、令和6年4月1日からは、新規開業資金など、各種融資制度をご利用できます。
本稿では、飲食店開業時の自己資金の重要性についてご説明します。実は、飲食店の開業資金には、自己資金として総投資額の3割が必要です。具体的に、どういうことなのかその詳細について見ていきましょう。
また、飲食店の資金の情報や飲食店の店舗立地の選び方、開業にあたって必要となる役所への届け出など、飲食店の開業において必要となるノウハウを詳しく知りたい方は、飲食開業手帳(無料)を参考にしてみてください。
創業手帳では、資金調達手帳(無料)もお配りしています。資金調達方法のまとめや、キャッシュフロー改善チェックシートなどを掲載しておりますので、ぜひ開業時の参考にしてみてください。
(創業手帳編集部)
この記事の目次
飲食店を自己資金0円で開業できるのか?
「0円で飲食店を開業できる」
そんな本のタイトルを見たことはないでしょうか?
これは、かなり特殊な状況です。実際は、ほぼ不可能。飲食店オーナーや出資者が別にいる場合は話は別ですがこのような自己資金で飲食店を開業し、軌道に乗せることは、私の経験上、ほとんどできません。
私が、いままでコンサルで入った飲食店開業の事例を見ると、最小の自己資金は180万円です。それも東京の中でもかなりの郊外で、いざ開業しても初めはかなり苦しそうでした。
このような経験から、東京都内で飲食店開業を希望されているなら、最低でも自己資金は300万円以上ないと厳しいです。安全に飲食店を開業するためには初期投資額としての目安となる約1000万円が必要となります。これを目安に、開業資金を貯めるように心がけてください。
飲食店開業後に少額の自己資金で苦しむワケ
それでは、なぜ少額の自己資金では、飲食店開業が難しくなるのかを説明します。2つの理由をあげて説明するので、開業後に資金で苦しむことがないよう覚えておきましょう。
初期投資でほとんど使い切ってしまうから
少額の自己資金では、初期の投資で融資と自己資金をほとんど使い切ってしまいます。開業後の客足は不安定なため、収入も不安定になります。
一方で支払いは、食材や飲料、家賃、融資の返済と利子など容赦なく襲いかかってきます。そのため、キャッシュフローが厳しいと、客が定着し軌道に乗る前にキャッシュが足りなくなり、廃業に追い込まれてしまう可能性が高くなってしまうのです。
これはオープンしたばかりの頃は客数・売上は多くても、開店後3か月経つ頃には次第に下がりやすいからです。売上が低迷したとき、持ちこたえるだけの資金が残っていれば乗り越える可能性が高くなるため、十分な自己資金の準備が必要です。
自己資金=開業資金と考えており家事資金を意識していないから
また、今まで相談を受けてきて強く感じるのが、「自己資金」=「飲食店開業資金」と考えている方が多いことです。開業資金は、開店してから数ヵ月程度の自分の生活資金も視野に入れて理解しなくてはいけません。つまり、正確には、「自己資金-家事資金(※)」=飲食店開業資金 というのが正しい認識です。
※家事資金とは飲食店を開業してから軌道に乗るまでの間の生活費(生活費は日本政策金融公庫の融資対象外)及び引越費用(開業場所付近に引越す可能性がある方)のこと。売上が少なく経費の支払いで精一杯になり生活費が確保できなくても、生活できるだけの準備が必要です。経営者の生活費=給料を忘れている方が多いので、飲食店開業資金とは別途に計算をしておいてください。
なので、経営が早く軌道に乗れば乗るほど、安心して生活できるということです。そのためには、やはり集客が必要でしょう。今回、この記事を書かせていただいている創業手帳が発行している無料の創業ガイドブックの冊子版の創業手帳では、飲食店および飲食店に限らずさまざまな創業の流れや資金調達、集客の方法などについて上手くまとめています。
税理士のような専門家や全国の官公庁や金融機関でも使われている起業の無料の定番の教科書なので、それを無料で取り寄せて一回読んでみると、起業の流れが整理されて頭に入るのでお勧めです。また、事業計画が簡単に作成でき、資金計画のシミュレーションができる「事業計画シート&資金シミュレーター」なども無料で使えるので、ぜひご利用ください。上手く創業手帳を使いこなすだけで飲食店開業の成功率は向上するでしょう。それぞれの特徴がひと目でわかるようになっていますので、実践できるものが見つけやすいはずです。
飲食店開業資金に必要な金額とは
それでは、自己資金で安全と言われる初期投資額=1000万円とはどのようなものかを見ていきましょう。もちろん、この金額はお店の立地や広さ、コンセプト(内装費に直結)によって変わってきます。
ここで重要なのは1000万円という金額もですが、これから開業しようと考えている皆さんが、「設備資金」「不動産資金」「運転資金」などの項目を考えて、初期投資資金を設定しているか、経営計画を立てているかということです。
具体的に、開業するために必要な備品や物件を買うにはいくら必要で、開業後はどのくらいの利益目標をどのくらいの期間で実現するか設定。さらに、目標に向けどのようなことをして、その費用はどのくらい必要なのかなど、取りまとめているとよいでしょう。なお、創業手帳では、経営計画をはじめとする「事業計画シート&資金シミュレーター」がありますので活用してみてください。
全ての項目を考えたうえで、500万円で大丈夫という場合もあるはずです。それならば、それで計画を立てれば良いのです。万一、漏れがある場合は、開業してから破綻する可能性が高くなるので、いち早く計画を見直しましょう。
ここからは、具体的に設備資金と不動産取得費、運転資金の内容を見ていきましょう。
不動産取得費:前家賃+保証金+礼金+仲介手数料
運転資金:最低3ヵ月分の自己資金 ※ただしコロナ禍では長期にわたり収入が見込めなくなることもあるので注意が必要です。
一般的に飲食店開業融資額は、600万円から900万円(融資額は専門家の支援の有無、本人の飲食店の勤務経験や実績、事業計画書の精度、立地によって変動しますので画一的な回答はできません)と言われていますので、もし開業の初期投資額の試算が1000万円ならば、残りは自己資金で賄う必要があります。
上記に挙げた総投資額1000万円というのは、私が思う都内で飲食店を開業するなら最低限必要という金額ですので、その差額の100万円〜400万円は自己資金が必要になります。
設備資金
飲食店を営業できる状態にするには、ただ物件を借りただけでは足りません。
本契約後に店舗用のスペースがあるだけのスケルトンの状態から、体裁を整えて飲食店にする必要があります。
店名などを書いた外看板・外装・内装・厨房に置く調理器具・来客用のテーブルや椅子・その他備品などあらゆる設備を準備しなければなりません。
外看板ひとつとっても、金額は幅広いです。ただ店名の入った看板を設置しただけでは夜暗くなると見えず、販促力が下がるでしょう。
夜も看板を目立たせるには、ライトの設置が必要です。ライトの種類や数、サイズなどでも金額が変わります。
こういったことから、店舗によって設備資金の金額に差が出ることが分かります。
不動産取得費
不動産取得費とは、保証金・敷金・礼金・前家賃・仲介手数料のことです。居抜き物件の場合は造作譲渡費がかかります。
それぞれの費用について、一覧表にして説明します。
保証金・敷金 | どちらも本契約時に家主へ預けるお金で、一般的な住宅と異なり敷金だけでなく保証金も必要です。 開店後経営状況が悪くて家賃が払えないときや、退去時の原状回復費用が払えないときにあてます。 家賃の10カ月分が一般的ですが、6~12カ月分が多いです。 人気のあるエリアは高い傾向があります。 |
礼金 | 家主に対して契約時に支払うお金で、返還はありません。 家賃の1~3カ月分が相場ですが、不要な物件も出てきています。 人気の物件ほど高めの設定です。 |
前家賃 | 契約した次の月の家賃まで前もって払うことで、日割りで計算します。 |
仲介手数料 | 不動産仲介業者へ支払う手数料で、賃料の0.5~1カ月分(外税)が一般的です。 |
造作譲渡費 | 居抜き物件の場合の費用で、前の借主に対し設備や内装を引き継ぐために支払います。 |
運転資金
開業後、売上げが少なくても経営を続けるために、最低3カ月分の運転資金は用意しておくと安心です。
運転資金とは、毎月の家賃・水道光熱費・通信費・仕入費用・従業員への給料など経営に欠かせない費用を、売上がなくても支払うためのお金です。
準備する運転資金の額は、必要経費を計算して設定し不足しないようあらかじめ確保しましょう。
運転資金の目安は家賃の10カ月分ですが、現金仕入の場合はさらに余裕を持った額の設定が必要です。
ただし運転資金は飲食店の経営費用だけではなく、自身の生活費も計算に入れましょう。
売上げがなければ自身の生活費もまかなえないため、忘れずに運転資金へ含めてください。
飲食店の開業資金を抑えるポイント
開業費用を少しでも抑えられれば、開業資金をできるだけ多く手元に残せます。そのための3つの方法を紹介します。
資金の使い道に優先順位をつける
ひととおり開業費用をあげたあとで優先順位をつけ、今すぐ必要ではないものやなくても差し支えないものははぶきます。看板やホームページなど宣伝費、店舗の改装費など開店に必要最小限の費用だけに絞り込むと開業資金を抑えられます。
居抜き物件を借りる
以前入っていた店舗の内装や設備が残った物件を「居抜き物件」といいます。そのまま使えば、内装や設備投資の費用を大幅に削減することが可能です。
飲食店が入っていた居抜き物件の中でも居酒屋やカフェは人気があり、すぐに次の借り手がついてしまいます。
居抜き物件を狙うには早めに複数の不動産業者へ相談し、物件が出たらすぐに連絡してもらいましょう。
自分で店舗を改装する
業者に大がかりな店舗改装を依頼すると費用が高くなりがちですが、できる限り自分の手で改装を行うと、工賃などが省けて費用が抑えられます。DIY動画はネット上にたくさん上がっているので、参考にして店舗改装をしましょう。
中古品・アウトレット品を活用する
店舗に使用するものは新品でなくてもかまいません。きれいで新品同然の掘り出し物が見つかる場合もあります。中古の厨房のような大きなものを扱う店舗があるほか、テーブルやいすなどデザインのそろったものがいくつも欲しいときは、インテリアショップのアウトレット品を購入する方法もおすすめです。
リース契約を活用する
リース契約とは、ユーザーが機械や設備などを購入せず、リース会社が購入した設備や備品を毎月のリース料を支払って使う契約形態です。
直接購入した場合よりも、初期費用を抑えられるメリットがあります。
耐用年数に合った契約をしておけば、常に最新設備を少額で使い続けられ、毎月のリース料も経費として計上できます。
飲食店開業の資金調達方法
資金調達方法にも種類があります。一般的な融資先から、公的機関からの融資の他、一般ユーザーから資金を集める方法があるため、それぞれ比較してください。
金融機関から融資を受ける
金融機関は、最初に考えたい融資先です。実績がないと融資を受けることは難しいと思われがちですが、起業向けの融資なら実績がなくても申し込めます。
例えば、政府系金融機関の日本政策金融公庫では、「新規開業資金」として運転資金4,800万円まで融資を受けられます。運転資金の返済は10年以内です。
担保や保証人は原則不要なので、新規事業者の多くが利用しています。
また、銀行の「プロパー融資」や、信用金庫協会が間に入る「信用保証付き融資」が起業向け融資としてあります。
クラウドファンディングで調達する
クラウドファンディングとは、不特定多数が事業を応援する形で、少額ずつ出資してもらう方法です。また、出資の見返りとして、その事業が提供する商品やサービスを期待する出資者もいます。
飲食店であれば、飲み食べ放題券やグッズの提供が一般的です。
多数の起案者の中から選んでもらうため、事業への熱意を伝える工夫が必要です。ただ「飲食店に出資して欲しい」では資金が集まらないので、人の心を動かす熱意や、今までにないアイディアがあるなら、挑戦しても良いでしょう。
自治体の制度融資に申請する
各自治体では、起業や創業を促進する目的で制度融資を実施しているところがあります。制度融資とは、金融機関・信用保証協会・自治体の3つの機関が連携して実施する融資のことです。
自治体によって対象者や融資条件が異なるため、役所の窓口でご確認ください。
ただし、金融機関からの融資と比べて、制度融資は融資開始まで時間がかかる傾向があります。融資制度は3つの機関が連携するため、手続きが複雑になりやすい点に注意が必要です。
保証協会の融資を使用する
全国各地にある信用保証協会の融資を使用する方法もあります。
例えば、東京には「東京信用保証協会」があります。信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関です。
日本政策金融公庫との違いは、信用保証協会自体が融資を行わない点です。
特定の金融機関が融資した金額の保証をする立場で、飲食店事業にトラブルがあり返済困難なときは、信用保証協会が代わりに立て替えてくれます。
信用保証協会の保証があると、中小企業は金融機関からの融資を受けやすくなるでしょう。
信用保証付き融資の融資限度額は3,500万円までです。利息に加えて信用保証料が発生する点に注意してください。
飲食店開業後に活用できる補助金・助成金
飲食店を開業したあと、売上を伸ばしつつ補助金や助成金も活用して経営資金を上手にまかないましょう。
補助金と助成金のどちらも、応募して通ったあと初めて受け取りの手続きを行い、支給されます。
それまで時間がかかるので、補助金や助成金だけをあてにせず資金を増やす努力が必要です。
補助金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は中小企業や個人事業主が対象の制度で、販路の開拓や生産向上をめざした活動の一部を支援する補助金です。通常枠と特別枠(賃金引き上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠)にわかれ、最大200万円の補助があります。
IT導入補助金
IT導入補助金は、ITツールを導入する中小企業や個人事業主が活用できる補助金です。通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠があり、最大450万円が支給されます。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は新規事業に挑戦する事業者を応援する制度で、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援します。成長分野進出枠(通常類型)は、最大7,000万円、成長分野進出枠(GX進出類型)は、最大1.5億円が支給されます。
助成金
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由から事業を縮小せざるをえなくなった事業主が利用できる助成金で雇用の維持を目的に支給を受けられます。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例は、2023年3月31日で終了しています。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、契約社員や嘱託社員・パートタイム労働者・派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員化した場合、また処遇改善に取り組んだ事業者に支給される助成金です。「正社員化コース」では、有期雇用労働者を正社員として登用した場合、最大80万円の支給があります。
創業手帳では、補助金AIや補助金ガイドをご用意しています。補助金AIでは、自分にマッチした補助金情報を自動配信いたします。補助金ガイドでは、補助金・助成金の最新情報や活用方法などをご紹介。ぜひあわせてご利用ください。全て無料です。
飲食店開業時は事業計画書を作成して事業プランを客観視しよう!
飲食店を開くには店のアイディアやプランを客観視するだけでなく、資金計画を明らかにするための事業計画書の作成が必要です。
いくらアイディアやプランが充実していても資金繰りがうまく行かなければ、店はつぶれてしまいます。開業前には必要な資金がどれだけか不動産相場や設備資金の概算などを十分に調べて、事業計画書をつくりプランを見直しましょう。
また融資の申し込みにも事業計画書は必要なので、開業資金の融資を考えるときは以下のサイトを参考にまとめてみてください。
飲食店の事業計画書の書き方と融資のために押さえたいポイント
創業手帳では、融資ガイドにて資金調達での融資が通るためのポイントなどをまとめています。元・信金職員による「オススメの融資3つ」なども記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店開業に必要な不動産取得費には注意!
初期投資のなかで、不動産取得費は大きな割合を占めます。自己資金で不動産取得(前家賃 保証金 礼金 仲介手数料)する場合は、事前に開業したい場所の不動産相場を確認し貯蓄などの対策をしておきましょう。
ただし、貯蓄もすぐに溜まるわけではありませんので、クラウドファンディングなどの新たな開業資金を調達する方法を検討するとよいでしょう。
たとえば、クラウドファンディングサイトで、開業の想いや、開業後の特典、飲食のクーポンなどのサービスを提供する代わりに応援(寄付)してもらうなどがあります。クラウドファンディングで成功している人の実例や施策を参考にしつつ、まずは周囲の仲間にも協力を得て始めてみるとよいでしょう。
創業手帳ではクラウドファンディングを実戦形式で学べるセミナーをはじめ、資金調達に役立つセミナーを開催しています。セミナー情報はこちらをご覧ください。
そもそもなぜ不動産の取得に自己資金が必要なのか。それは、融資実行には原則的には不動産の契約書が必要です。つまり不動産取得費は、融資実行前に発生するため、自己資金で賄わないといけないのです。
そのような理由から、不動産取得費くらいは自己資金でカバーできる状態にしておくのが良いです。例外的な事例として、都心などの高額不動産取得費の場合には自己資金で賄えなくても大丈夫なケースがありましたが、特殊な事例と考えてください。一方、融資ありきの開業の場合は、専門家に早期に相談しておくとよいでしょう。
さらに気をつけてもらいたいのが、都心部や駅前などの人気の物件の特殊事例ですが、すぐに本契約を求められることがあるということです。本契約をするということは、解約までに数ヵ月間の家賃が発生するということです。なんらかの事情で開業前に契約した不動産を解約しようとしても、数ヵ月分の家賃を払わなければなりません。
今回説明したのは、一般的なケースです。地域やお店のコンセプトによって、設備資金、不動産取得費、運転資金は変わっていきます。重要なのは、貯金、クラウドファンディング、親族や知人からの譲渡などなど、あらゆる手段を講じて、自己資金を貯めるようにすることです。
それでも不安に感じる方は、それぞれの金額を紙に書き出してみましょう。その際に、利子返済などの金額も入れられれば、より正確な情報となるでしょう。
また、次回は、融資の審査を少しでも有利に運ぶコツをご紹介します。なお、飲食店の開業において融資を考えている場合には、専門家に聞きましょう。
―創業手帳・飲食店開業手帳編集部のコメント―
飲食店の開業には、事前のリサーチを行い、どれくらいの投資が必要なのか把握する必要があります。日本政策金融公庫が実施した※「2023年新規開業実態調査」では、
開業時に苦労したことに「資金繰り、資金調達」(59.6%)、「顧客・販路の開拓」(48.5%)、「財務・税務・法務に関する知識の不足」(37.5%)
などが主にあげられています。事前の準備不足を痛感している創業者が多いことを知りましょう。
※参照:2023年度新規開業実態調査
また、コロナ禍の飲食店開業では、これまでの形態にこだわらず柔軟に対応することがよいと言われていました。そのため、密になりがちな店舗ではなく、間借り営業やキッチンカーが増えてきました。こうした形態であれば、初期費用を抑えられますし、経営計画も変わってきます。
コロナが落ち着いた現在では、インバウンドの影響などもあり、コロナ禍での飲食店開業のトレンドとまた変わって来ている部分があるかと思います。本質的に、飲食店で「実現」したいあなたの想いを時代に合わせてどのようにカタチにするのか、資金・費用とのバランスを考えてみてください。
創業手帳では飲食店開業の無料相談も行っており、日々多くの飲食店開業者の方からの相談を受けています。その中で多いのはやはり資金調達の話です。創業手帳の飲食店開業相談を行っているアドバイザーの中には金融機関の出身者もいて、資金面のアドバイスも行っていますが、融資は申請の仕方や事業計画の作り方にコツがあります。定石を踏まえれば余計な失敗をしないで済みます。
飲食開業手帳では、飲食店開業のスケジュールを、開業前、開業3ヵ月前、開業、1ヵ月後、1年後と区分し、必要なことをすべて表にまとめています。事前調査が足りず、予定していなかった出費が発生してしまい、開業できなかったといった事態にならないためにも、しっかりとスケジュールを確認するとよいでしょう。(創業手帳編集部)
初めて飲食店を開業される方へ 役立つ情報をセットでお送りします!
(監修:ITA大野税理士事務所 大野晃 飲食店開業融資専門税理士)
(編集:創業手帳編集部)